WHAT’S MC2T / マウンテン・レースを始めよう
取材:TRAILS 構成/文:三田正明 写真:MC2T撮影班
■マウンテン・サーカスって何だ?
紅葉も真っ盛りな2013年11月の土曜日、TRAILS取材班は一路神奈川県の丹沢山系へと向かっていた。とは言え、これから山に登るのではない。「マウンテンランニング・レース」の取材に行くのだ。ここで読者の頭に当然浮かぶであろうでかいクエスチョンマーク。「マウンテンランニング・レースって何なのさ!?」…当然我々にもわかるわけがない。だからこそ今からそれを確かめにいくのだ!
そのレースは名前を『マウンテン・サーカス』といい(何とも謎めいたク―ルな名前だ)、第1回目はTRAILSでもお馴染みのスカイハイ・マウンテンワークスの北野拓也氏と彼のランニングチームMt.Rokko Hard Core(MRHC)がホストとなり2013年6月にスカイハイの地元六甲山で行われた。今回はその第2回目なのだという。
このレースはサーカスよろしく各地を転戦しながら開催することをコンセプトとするため、今回はホスト役を関東のランニングチーム「RUN OR DIE!!(ROD!)」と「TRAIL TOBA」が務め、運営はすべて彼ら自身の手で行われている。つまり、ランナーのランナーによるランナーのための草レースだ。
取材前のリサーチのため「マウンテン・サーカス」と検索してみても、第1回目の情報は出てきても肝心の第2回の情報が出てこない。ネット全盛のこのご時世に!? この界隈の「情報通」TRAILSの佐井聡に「何人くらい集まるの?」と尋ねると、「だいたいスタッフ60人でランナー50人って聞いてますけど」との答え。100人以上も集まるイベントで今どきブログやフェイスブックやツィッターが一件も引っかからないとは、ますます謎が謎を呼んだ(後でわかったことだが、まったくのステルスで行われるレースのため、事前に外部に情報を流すことは一切しなかったとのこと。現在では第2回マウンテンサーカスの大会報告用ウェブサイトも閲覧出来る)。
昼過ぎに選手/クルーの宿泊所件前夜祭会場となるキャンプ場に着くと、今大会の実質的責任者のROD!ランブラーさん(トレイルランニング/ULハイキング系の有名ブログ『夜明けのランブラー』を執筆しているため仲間うちからこう呼ばれている)が出迎えてくれ、TRAILSチームにも撮影班の役割が割り振られた。そう、この大会はまったくのDIY。参加するからには何らかの役割を果たさなければならないNo Spectatorなレースなのだ。
さて、「マウンテンランニング・レース」とは何なのか? 通常のトレイルランニング・レースではランナーの安全のためコース上に大量のマーキングが置かれ、また極力危険のないコースが選ばれる。だが、そのためランナーが「お客さま」状態になってしまうこともあり、それに違和感を感じるランナーがいることもまた事実だという。
「ならば参加者自らリスクを負えるクローズドな環境ならば、ルートファインディングや徒渉や岩場でのクライミングなど、トータルな山のスキルが必要とされるレースができるのではないか?」とスカイハイ・マウンテンワークス北野拓也氏が発想し、それをマウンテンランニング・レースと名付けた。
すると賛同するランナーやランニングチーム、全国各地のランニングショップが次々と集まり、さらにはそれら各地のチームが持ち回りでサーカスのように転戦しながらレースを開催することによって自分たちのホームグラウンドを紹介し、ランナー同士の横の繋がりも深めようという構想も瞬く間に決まっていったのだという。
午後になると続々と全国各地からランニングチームが集結を始めた。静岡や三重、新潟や岡山や京都、遠く愛媛から参戦するチームもあり、北野氏率いるMRHCも兵庫県芦屋川から到着した。第1回マウンテン・サーカスに参加したチームも多いため再会を喜ぶ和やかな雰囲気の中でコース・ブリーフィングが始まり、コース班、医療班、エイド班、車両班などからの報告が行われた。
皆さすが社会人だけあって草レースとは思えないほどキッチリとした報告ぶりであったが、ROD!もTRAIL TOBAもレースを主催するのは初めての経験であり、今回はコースに危険箇所も含むため、ブリーフィングにも緊張感が漂っていた。最後に第1回大会のブリーフィング以来お約束になったという「生きて帰ってきて下さい!」というメッセージが画面に映し出されて一同爆笑、キャンプ場に場所を移してお待ちかねの前夜祭に突入した。
前夜祭班による食事が振る舞われ、総勢100名以上からなる盛大な宴が始まった。クルーや選手にはショップやガレージメーカーのオーナーなどこのシーンのキーパーソンが幾人もいたため、彼らのおかげで豪華賞品が揃ったじゃんけん争奪大会も大いに盛り上がった。焚火には次々と薪がくべられ、ホットワインは空になり、ランナー同士の会話は深夜まで途切れることがなかった。
あらためて一般には告知していないにも関わらず、ここにこうしてこれだけの人々が集っていることに驚きを禁じ得なかった。マスメディアや大メーカーの与り知らぬ場所で、こんなに面白いことが起こっているのだ。ここで何が起きているのか、僕たちはもっと深く知るべきだと思った。それには直接話を聞くのが一番だ。 そんなわけで、TRAILSでは前夜祭会場で第1回と第2回のマウンテン・サーカスの中心的な役割を担った方々を集め、緊急座談会を敢行することにした。
【マウンテン・サーカス緊急座談会に続く】
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