TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #48 タンデム艇のABC 〜2人艇の遊び方 ② 〜

2021.08.04
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文・構成:TRAILS 写真:Masayuki Tonegawa, Ryuji Takase, TRAILS

この夏のTRAILSの特集記事としてスタートした、パックラフトのタンデム艇 (2人艇) をフィーチャーした企画。全7回の総力特集だ。

第3回目の今回のテーマは、前回の「2人艇の遊び方」の続編。

パックラフト・タンデムのポテンシャルは、2人で漕ぐことだけにとどまらない。愛犬との旅、釣り、自転車を載せたバイク・ラフティングなど、パックラフトでの旅を拡張してくれるギアなのだ。

パックラフト・タンデムならではの大きさと安定性を活かすと、このようにさまざまな遊びの可能性が見えてくる。今回の記事では、これらの遊び方を、パックラフト・タンデムを使って実験しているパックラフト・アディクトたちに登場してもらって、その魅力を語ってもらった。


[case5] タンデム艇なら、愛犬がカヌー犬ならぬパックラフト犬に



柴犬のタモツは、今回が2回目のパックラフティング。

高瀬隆司:「愛犬のタモツと初めて一緒にパックラフトを漕いだのは、2020年の夏の本栖湖でした。1人艇でしたが、静水ということもあって特に問題はなかったです。ただ今回ALPACKA RAFTのOryx (オリックス) を漕いでみたら、圧倒的に安定感が違いましたね。より安心して乗せることができました。

犬とアウトドアに遊びに出かける場合、移動手段が限定されるんです。公共交通機関は別途ゲージが必要になったりと、荷物が増えて使いにくいこともあって、車を利用しがちです。

そうなると、スタートとゴールを同じ場所にしたいので、犬とパックラフティングをするなら、おのずと川ではなく湖になります。タモツと一緒に、いろいろなエリアの湖ハンティングをしてみたいですね。

そのためにも、日本でドッグフレンドリーなフィールドがもっと増えるといいですね。まだまだ日本では動物への理解が浅く、僕も必要以上に気をつかうことが多いんです。妻とタモツと、Oryxで気兼ねなくパックラフティングを楽しめたら最高ですね」


夫婦で、タモツのしぐさや表情を見られるのが楽しい。

高瀬江里:「1人艇と違って、タンデム艇だと夫婦ふたりで乗っているので、安心感がありました。犬は予想外の動きをしたりするので、大人がふたりいると相手を頼れるので安心です。

また、これまでも夫婦でそれぞれ1人艇に乗って一緒に漕いできましたが、意外と舟どうしに距離ができるんですよね。

でも、タンデム艇だとつねに一緒なので、協力して漕いでいる感じが新鮮でした。しかもタモツが、いまどんな状況で、なにをしているのかもふたりで共有できる。それがすごく楽しかったです」


タモツと一緒に、湖をメロウに漕ぐのが気持ちいい。


[case6] 長短2本の竿を持って、パックラフト・フィッシング



使用したのは、ALPACKA RAFTのForager (フォレジャー) 。安定感があるので、キャスティングもしやすい。

利根川真幸:「ただ単に釣りをするだけなら、1人艇でも充分可能です。でも、パックラフトで旅をしながら、キャンプ道具を持ちながら、となるとタンデム艇はより快適だと感じました。

しかも今回はいろんなバリエーションを試そうと、バス用の短めの竿と、大物ニジマス用の長めの竿の2本を持ってきたのでなおさらです。積載量の多いタンデム艇なら、大きめのタックルボックスも持っていけるので、釣り方の幅も広がりますし、さまざまなシチュエーションにも対応できそうです。


今回は、あえてグリップの長いランディングネットを使用。これだけの長さがあれば魚を遠くでキャッチできるので、ルアーのフック (針) をパックラフトの本体に引っかけて穴が開くことを避けられる。

1人艇と比べて、安定感も抜群でした。1人艇だとキャスティングの際に舟が旋回しがちですが、タンデム艇はかなり安定していました。静水で風もなければ、立ち上がってキャスティングすることだってできると思います。

いつか、タンデム艇で北海道の湖を巡りながら、イトウを釣りあげたいですね。


舟の後部には、タックルボックスやソフトクーラーボックスなど、さまざまな荷物を載せた。


[case7] 1人艇で試していたバイク・ラフティングをタンデム艇で



ALPACKA RAFTのExplorer 42と組み合わせたMTBは、SALSAのDEADWOOD。

佐井聡:「これまでは、パックラフトにMTBを載せられること自体が最高すぎて、1人艇の狭さなんて気にもかけていなかったんですよね。ただ、Explorer 42を試してからは、少なくとも湖などの静水や瀬の少ない緩めの川でMTBを載せるなら、だんぜん42をメインに使ってみたいという考えに変わりました。

舟の長さが絶妙なんです。自転車を載せてパドリングする上で、パドルが自転車にぶつかることに気をつかわずパドリングできるのが、とにかく快適なんですよね。1人艇だと、どうしても舟の全長が短いこともあって、振り返ってみると気にしながら漕いでいたなと。

であれば、より大きなタンデム艇であるOryxのほうがいいのでは? というとそうではなくて。Oryxは2人で漕ぐことが前提の仕様なので、1人で漕ぐのであれば、Explorer 42くらいのサイズでタブルブレードパドルのほうが、圧倒的にコントロールしやすいです。それに、1人で担いで旅するにはOryxは重量が4.9kgと重すぎます。


バウ (船首) に自転車をしっかり固定。後方には、キャンプ道具などをドライバッグに入れてくくり付けた。

その点、自分の初期モデルのExplorer 42は3.1kg (現行モデルは3.6kg) と1.8kgも軽量で、大きさもOryxよりかなり小さく、ALPACKA RAFTのタンデム艇のなかでもっともUL(ウルトラライト)なモデルです。

自転車を載せてとか、犬と一緒にとか、釣りをしながらとか、ソロ+αでの使用がメインで、Oryxなどに比べてやや窮屈さを感じるものの2人でも楽しみたいという人にはベストなタンデム艇だと思います。ULでありながらソロの遊びの幅を拡張してくれるタンデム艇ですね」


大きすぎず小さすぎず。Explorer 42の絶妙な大きさが、バイクラフティング向き。


 

今回の「タンデム艇のABC」3回目では、「2人艇の遊び方②」として、たんに2人艇に乗るだけではなく、犬と旅したり、釣りをしたり、自転車を載せたりと、パックラフト・タンデムのポテンシャルの広がりを感じさせる遊び方を紹介した。

TRAILS編集部も、「きっとまだまだパックラフト・タンデムの遊び方は “開発” できるはずだ」と、今回の記事をつくりながらワクワクしていた。

次回は、番外編として、パックラフト & キャンプの記事をお届けしたい。ULスタイルのキャンプの参考としても、楽しみにしてもらえればと思う。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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