パックラフト・アディクト | #52 タンデム艇のABC 〜ギアレビュー ③ タンデム艇の周辺ギア〜
文・構成・写真:TRAILS
この夏のTRAILSの特集記事としてスタートした、パックラフトのタンデム艇 (2人艇) をフィーチャーした企画。全7回の総力特集だ。
第7回目 (最終回) の今回は、『ギアレビュー③』として、タンデム艇で使用する周辺ギアをお届けする。
今回の記事では、パックラフト・タンデムで使用するシングルブレードパドルの特徴をはじめ、さまざまな周辺ギアを紹介したい。
タンデム艇特集のフィナーレとして、他のメディアにない、パックラフト・タンデムに特化したギア情報を惜しみなく出していこうと思う。その結果、膨大な情報量を詰め込んだ記事となった。
パドル以外の周辺ギアとしては、オプションやカスタムで追加するバックバンド (背もたれ) やキャリー・ハンドル (持ち手)、ドライバッグ、空気入れ、バックパックと、細かな点までカバーしている。
周辺ギアの多くは、メーカーのウェブサイトでも詳細には紹介されていないことが多い。TRAILS編集部もメーカーに直接問い合わせたり、自分たちで独自に調べて検証したりした。その最新の情報も含めて、今回の記事をお届けしたい。
タンデム艇だけではなく、その周辺ギアも、奥が深い。
タンデムで使用するシングルブレードパドル。
写真は上から、Aqua-BoundのShred Apart 240cmモデル、220cmモデル。一番下が、ALPACKA RAFT Sawyer Cedar Surge (5-piece) をリメイクしたもの。
タンデム・パックラフトで使用するパドルは、シングルブレードパドル (※) が基本となる。
代表的なモデルは、Aqua-Bound (アクアバウンド) のShred Apart (シュレッドアパート) だ。ALPACKA RAFTによって設計された、シングルブレードパドルとしても、ダブルブレードパドルとしても使える、分割タイプのパドルだ。
ベースになっているのは、Shred Carbonという、シングル艇で用いる、4ピースの分割式のダブルブレードパドル。このパドルに、付属のTグリップのエクステンションを接続すると、2つのシングルブレードパドルとして使用することができる。
写真上から、全長152cmのものはダブルブレードパドルの240cmモデル。写真中央、全長142cmのものはダブルブレードパドルの220cmモデル。Oryxが発売された当初は、ALPACKA RAFTのウェブサイトでは、タンデム艇のオプションとして142cm (220モデル) を販売していて、Explorer 42にもこのモデルを推奨していた。しかし現在は152cm (240モデル) のみを扱っている。
現在ALPACKA RAFTでは、152cm (240モデル) が、OryxとForagerにパーフェクトマッチと言っている。ちなみに、Aqua-Boundのウェブサイトではいずれの長さのモデルも販売されている。
現時点におけるTRAILS編集部crewの使用感としては、身長170cm前後の人がOryxを漕ぐ上では、220モデルでも240モデルでも問題はない。ただ、手足の長さなどの体格の個人差や、川の状態によって使いやすさは異なるため、自分の体と自分の遊び方にあったパドルを探すことをおすすめする。
また、Explorer 42はOryxより座面がかなり低く、前述のように220モデルが推奨されていたこともあり、220モデルをメインに据えながらも、240モデルも含めて実験中である。少なくとも、身長158cmの編集部crewにとっては、220モデルでさえも長すぎるという実感値はある。
※ シングルブレードパドル:ブレード (水をとらえる部分) がひとつだけのパドル。主に、カヌーを漕ぐ際に使用される。
ダブルブレードパドルをリメイクして、シングルブレードパドルに。
上段のALPACKA RAFT Sawyer Cedar Surge (ダブルブレードパドル) をリメイクして、下段のシングルブレードパドルにした。
ALPACKA RAFT Sawyer Cedar Surge (ダブルブレードパドル) をベースにしたシングルブレードパドルは、仲間のパックラフト・アディクトであるバダさんが、自らリメイクしたものである。
軽量で長さ調整も可能な機能性、そして何より木目の美しいこのパドルは、パックラフト・アディクトの中でも熱狂的な愛好者が多い。それをシングルブレードパドルにリメイクした、ということでバダさんにその製作背景を教えてもらった。
「実はリメイクしたのは、片方のブレードだけが折れて破損してしまって、このSawyerのパドルが押入れに眠ったままになっていたからなんです。Oryxの購入を機に、これをタンデム艇に使えるシングルブレードパドルにリメイクしようと思いました」
製作時に必要になるのは、Tグリップ、ビニールテープ (Tグリップの径の調整・固定用)、熱収縮チューブ (ビニールテープの固定用) 、木の丸棒、パイプカッターだ。
まずは、シングルブレードパドルの長さにするために、シャフトを切断する。切断する際に、カーボンシャフトは歪んでヒビ割れることがあるため、それを防ぐためにシャフトの中に木の丸棒を入れて、パイプカッターでシャフトを切る。
その後に、Tグリップを、ビニールテープでシャフトの径に合うように調整しながら固定する。そして最後に、ビニールテープを、熱収縮チューブでさらに強く固定する。意外とシンプルな手順で、シングルブレードパドルのリメイクはできるのだ。
バダさんが、TAMAZONで購入したTグリップ。
ちなみに、リメイクするに当たってバダさんはこう言っていた。
「現在は本家Sawyerのウェブサイトでシングルパドル化するキットを購入できるので、わざわざ自作する必要はないかもしれないけど、手元に破損したパドルがあるならチャレンジしてもよいと思いますよ」
このリメイクしたシングルパドルは、軽さに加え、長さ調整ができるのが大きなメリットだ。
実測してみたところ、最大値が160cm、最小値が135cmだった。自分の持っている舟や身長に合わせて、漕ぎやすい長さに調整して使うことができるのだ。しかも、川原での野営でシェルターの支柱として使う際、長さ調整ができるのはとても機能的。つまりこれは、多用途なULパドルでもあるのだ。
Explorer 42 にカスタムで追加するバックバンド (背もたれ)。
上から、「FRONTIER PACKRAFT / EVA Backrest」(185g)、「ALPACKA RAFT / Backband」(171g)、上段とは別の時期に購入した「FRONTIER PACKRAFT / EVA Backrest」(198g)。
TRAILS編集長の佐井は、所有しているExplorer 42で使用するバックバンドを、長らくテストしつづけてきた。
SUL (スーパーウルトラライト) タンデム艇であるExplorer 42は、ミニマムな大きさであり、特に前席の人はパドリングの姿勢を保持するのが困難である。そのため、大人2人で漕ぐ際には、前席にはバックバンドがマストと言える。
これまで試したのは、3種類。上の写真の上下段がそれぞれ別のタイミングで購入したFRONTIER PACKRAFT (フロンティアパックラフト) のEVA Backrest、中段がALPACKA RAFTのBackbandである。
この3モデルを比較してみると、まずクッション性と、素材の保水性に違いが見られる。ALPACKA RAFTのものは、カスタムフォームを用いていて、防水性が高く、適度なクッション性と反発性、張りを兼ね備えている。一方、FRONTIER PACKRAFTのものは、EVA素材を用いていてクッション性はあるものの、反発性と張りは弱い。また、EVA素材が保水しやすい別素材で覆われている。
バックバンド3モデルの裏面。
舟との接続のためのストラップのついた背面側にも違いがある。FRONTIER PACKRAFTのものは、センター部分もサイド部分も同じストラップで、かなり余裕のあるサイジング。
ALPACKA RAFTのものは、センター部分がDリングと伸縮性のあるショックコードで構成。ショックコードの先にはトグルが付いており、舟本体との接続も簡単な、非常にシンプルなつくりになっている。
Explorer 42のフロントサイドに取り付けたバックバンド。
実際に、佐井のExplorer 42 (2015年購入モデル) にALPACKA RAFTのバックバンドを取り付けたのがこちらである。
現行モデルと異なり、旧モデルには、前に乗る人用のバックバンドを取り付けるためのタイダウンがデフォルトで付いてはいない。そのため、自らDリングやストラッププレートなど計6カ所を後付けして、バックバンドを固定できるようにした。
ちなみに、現在ALPACKA RAFTでは、カスタムオーダーでExplorer 42の前席にバックバンドをプレインストールしてもらうことができる。
上から見るとこういう仕様になっている。四隅にはDリングを、中央両サイドにはストラッププレートを後付けしている。バックバンドの後ろ側のクッションコードに付いているトグルを、両サイドのストラッププレートのスリットに入れて固定している。
パックラフトの両サイドにセーフティライン (取っ手) として取り付けているグレーのストラップは、SEA TO SUMMMITのAlloy buckle Accessory Straps (アロイバックル・アクセサリーストラップ) の20mm × 1.5mモデル。一般的にここには、レスキュー用のフローティングロープを用いる。しかし佐井は、パックラフティングを終えた際に取り外して舟のコンプレッションに用いることを考えて、これを採用。ULの発想から生まれたマルチユースだ。
応急措置として、こんな風にバックバンドとアクセサリーストラップを接続することもできる。
ちなみにこのアクセサリーストラップは、このようにバックバンドと接続することもできる。実際に釧路川で体験したが、後付けしたDリングは、DIYということもあって外れるリスクもある。その際に、この可変長のストラップであれば、代用できるというわけだ。
ただし、こういう長さのあるアクセサリー類は、フリップした際に何かに引っかかる危険性もあるため、あくまで緊急時のイレギュラーでの使用に限られる。
ギアやロープの固定に使用するタイダウン・パーツ。
左から、Classic (S / Alpaca)、Explorer 42、Oryx、Forager。画像のExplorer 42は旧モデルだが、タイダウンの数と場所は現行モデル仕様になっている。
バウバッグやバックバンド、セーフティロープなどをパックラフト本体に固定するために必要なのが、タイダウンと呼ばれるパーツである。
ALPACKA RAFTには、「D-ring」「Grab Loop」「Strap Plate」「Carrying Handle」という4種類のタイダウンが用意されている。
上の画像は、現在販売中のモデルごとにデフォルトで装備されている「D-ring」「Grab Loop」「Strap Plate」を示したものである。
左から、Grab Loop、Strap Plate、D-ring、Carrying Handle。
D-ringは、ベースの布製プレートにD型の樹脂製リングが付いているもの。強度が高いため、バックバンドなど長時間にわたって強い張力がかかるものへの使用に適している。
Grab Loopは、ナイロン製のループが付いているもの。D-ringほどの強度はないが、軽量性と強度のバランスが良い。
Strap Plateは、プレートに細長い穴が2つ設けられていて、そこにストラップを通すことができる。ALPACKA RAFTのウェブサイトには、自転車やスキー、フライロッドケースなどの固定に最適だと書かれている。
Carrying Handleは、バウ (船首) に付けるもので、ポーテージなどパックラフトを運ぶ際に便利なパーツだ。
ALPACKA RAFTのD-ring (左) とFRONTIER PACKRAFTのD-ring。
D-ringに関しては、ALPACKA RAFTのものと、FRONTIER PACKRAFTもので、布製プレートの大きさが大きく異なる。ALPACKA RAFTのほうが径が大きいため、固定力があり、強度がより高いつくりになっている。
TRAILS編集部crewで旅しているときに、バックバンドを固定するために、自分でカスタムで追加したD-ringが剥がれてしまったことがあった。その後、この失敗経験を教訓にして接着方法を見直したところ、かなりキレイに貼ることができたので、そのTIPSを紹介してみたいと思う。
使用するのは、割り箸、GEAR AID (ギアエイド) のAQUASEAL FD (アクアシールFD)、ペイパーウェイト (文鎮) である。
左から、割り箸、AQUASEAL FD、ペーパーウェイト、D-ring。
手順としては、まずはパックラフトの空気を可能な限り抜いて、フラットな場所に置く。大きめのテーブルに置くと作業がしやすい。D-ringにAQUASEAL FDを割り箸の先を用いて満遍なく薄く塗る。割り箸の先には中央に溝があり適度に硬いため、粘性の高いものを均一に塗るのに適しているのだ (ナイフでさらに溝を増やすと尚良し)。粘性が高いアクアシールFDをハケで均一に塗るのは至難の業、硬くて溝があるものがオススメだ。
D-ringを当該箇所に押し付けて、上からペーパーウェイトをのせて8〜12時間待てば完成だ。ちなみにこの時の接着では、1つのD-ringに対して6つのペーパーウェイトをのせた。
タンデムの持ち運びに便利なキャリー・ハンドル (持ち手)。
左が、旧モデルのExplorer 42のバウに取り付けたキャリー・ハンドル。右は、Oryxのバウにデフォルトで付いているハンドル。
ALPACKA RAFTのタンデム艇 (現行モデル) のバウ (船首) には、最初からキャリー・ハンドルが取り付けられている。これはポーテージをはじめ、タンデムを引いたり持ったりする際に運びやすいからである。
ちなみに、現行モデルはExplorer 42、Oryx、Foragerのいずれもバウにはキャリー・ハンドルが付いているが、スターン (船尾) には付いていない。
ポーテージなど持ち運びの際には、2人分の道具の重量が加算されることも少なくないので、前後の両方にハンドルがあると利便性がかなり向上する。ハンドルを付ける際、2カ所のGrab Loopを使えば、自分で簡単に取り付けることができる。
佐井が所有している旧モデルのExplorer 42には、バウのハンドルがなかったので、自作で後付けしている。
ハンドルに使用したのは、SEA TO SUMMMITのAlloy buckle Accessory Straps(20mm / 1m)。
使用したのは、SEA TO SUMMMITのAlloy buckle Accessory Straps(20mm / 1m) 。そのままだと長すぎるので、ちょうどいいサイズにカット。
フローティングロープでもよいが、幅のあるストラップを使用したのは、舟に宿泊用のギアなど重量のある荷物を積むこともあるので、握りやすさも考慮したため。
Oryxのバウにデフォルトで付いている純正のキャリー・ハンドル。
Oryxのバウには、純正のキャリー・ハンドルが搭載されている。シンプルかつ握りやすい仕様で、同じものが現行モデルのExplorer 42にも付いている。
左がExplorer 42、右がOryxのスターン。いずれも後付けのキャリー・ハンドルだ。
続いて、後方のスターン (船尾) 側。スターンには、どのモデルもキャリー・ハンドルは付いていないので、自分で取り付けておくとよい。
Explorer 42に付けたキャリー・ハンドルは、バウと同じく、SEA TO SUMMMITのAlloy buckle Accessory Straps(20mm / 1m)。
さきほどのExplorer 42には、バウにも取り付けたSEA TO SUMMMITのAlloy buckle Accessory Straps(20mm / 1m) を使用。
Oryxに付けた、自作のキャリー・ハンドル。
TRAILS編集部crewの小川が所有しているOryxのスターンに付けているキャリー・ハンドルは、仲間のパックラフト・アディクトのナカザワ君が自作したもの。
1本のストラップと4つのバックルからなるシンプルな構造。長さが調整できるので、自分が持ちやすい長さにして使用している。
カーゴフライシステムとドライバッグ。
Oryxのスターンにある止水ジッパーを開けて、ここからドライバッグを入れる。
カーゴフライとは、パックラフト本体に止水ジッパーが付いていて、本体のチューブの中に荷物を収納できるシステムのこと。
現行のExplorer 42、Oryx、Foragerには、すべてに最初からカーゴフライが付いている。このシステムがあれば、キャンプ道具も含めた2人分のギアを、余裕をもって本体の中に収納することができる。
使用するドライバッグについて、ALPACKA RAFTは、OryxとForagerに関しては自社の『XL Roll-Top Internal Dry Bags』(以下、XLロールトップ・ドライバッグ) を推奨している。
Oryxの内部に、荷物をパンパンに入れたXLロールトップ・ドライバッグを収納。
実際にXLロールトップ・ドライバッグを入れてみて疑問に思ったのは、固定しなくて大丈なのか? ダウンリバー中に動いてしまうのではないか? という点。
ALPACKA RAFTのウェブサイトには、シングル艇のカーゴフライに使用する、ジッパー式ドライバッグとロールトップ・ドライバッグには、バックルが付いていてパックラフト内部に固定できるが、XLロールトップ・ドライバッグは固定できないと書いてある。
なぜなのか? 僕たちはALPACKA RAFTにメールで問い合わせてみたところ、数日後に回答が返ってきた。
その内容は、XLロールトップ・ドライバッグにフルに荷物を入れた場合、その大きさ (パックラフトのチューブ径にフィットする) と重量から、多少動くことはあっても基本的に所定の位置に固定される、というものだった。
また、その回答の中には、OryxやForagerの内部にはアタッチメント・ポイントがあるから、ジッパー式ドライバッグとロールトップ・ドライバッグ (XLサイズを除く) を固定することもできると書かれていた。
Oryxの内部にあるアタッチメント・ポイント。
ALPACKA RAFTの純正のドライバッグ (XLサイズを除く) ならば、このアタッチメントで固定できることがわかった。
では、ALPACKA RAFT純正のドライバッグ以外を使用するときはどうするのか? デイトリップや数泊くらいの旅の場合は、XLロールトップ・ドライバッグの大きさはオーバースペックでもある。また、できれば純正品以外のドライバッグも使えるほうが便利だ。
別の小型のドライバッグを、ガイラインとカラビナを用いて固定してみた。
そこで小型のドライバッグで試してみた。アタッチメント・ポイントにガイラインを結び、そこにカラビナを付けてドライバッグを固定。これならわざわざバックルを購入しなくても、純正ほどのクオリティではないものの自前のギアで固定することができる。
左から、ALPACKA RAFTのXL Roll-Top Internal Dry Bags、SEA TO SUMMITのBIG RIVER DRY BAGS 65L、SEAL LINEのNIMBUS SACK 40L、Hyperlite Mountain GearのRoll-Top Stuff Sack XL。
あらためて、XLロールトップ・ドライバッグと他のドライバッグとのサイズ比較をしてみた。XLロールトップ・ドライバッグがかなり大容量であることがわかる。左から2番目の65Lのドライバッグと比べても、それよりひと回り大きいサイズである。
ちなみに、アメリカでは、2気室以上の舟を使用しなければいけない川があり、チューブ内のドライバッグは、緊急時の追加の気室としての役割もある。
タンデムの空気入れギアのモデル比較。
左が、ALPACKA RAFTのインフレーション・バッグ、右上段が、FLEXTAILGEARのTINY PUMP (白) とMAX PUMP 2 (オレンジ)、右下段が、K-PUMPのK-Pump Mini。
タンデムはシングル艇よりもサイズが大きい。空気を入れて膨らませるにあたっては、どのギアが最も適しているのだろうか? 今回、簡易的な実験を試みた。用意したのは4モデル。
まずは王道のALPACKA RAFTのインフレーション・バッグ。そして、いまやパックラフターのあいだでかなり普及している、小型電動ポンプ。今回は、FLEXTAILGEARのMAX PUMP 2と、その超小型版のTINY PUMPをチョイス。そして最後に、K-PUMPのK-Pump Mini。選ぶ基準となるのは、重量、サイズ、膨らむまでの時間、壊れにくさ、あたりだろう。
まず、重量を計測したので、軽い順に並べてみよう。TINY PUMPの軽量さが際立つ。
TINY PUMP 93g
インフレーション・バッグ 141g
MAX PUMP 2 155g
K-Pump Mini 564g
続いて、タンデムがパンパンに膨らむまでにかかった時間も計測した。タイムが短い順に並べてみよう。手動で膨らますインフレーション・バッグも、意外と時間がかからないことに気づく。
MAX PUMP 2 2分56秒
インフレーション・バッグ 3分23秒
K-Pump Mini 5分20秒
TINY PUMP 9分27秒
各モデルの重量と、膨らますのにかかった時間。
この2つの結果からしても、結論は、インフレーション・バッグもしくはMAX PUMP 2の二択である。
MAX PUMP 2は、圧倒的にラクである。ただ、壊れたり、充電切れなど、使えなくなるリスクもあるため、長期のトリップには不向きである。
一方、インフレーション・バッグは、故障のリスクは少ない。落としても、水に濡れてもOKで壊れにくい。さらに充電切れで使えなくなるというリスクもない。ただし、手動なので労力は必要になる。
K-Pump Miniに関しては、重量、速さでは他に劣るが、高圧力をかけられる強みがある。パックラフトはチューブ内の空気の内圧を高い状態にしたほうが、剛性が高まり、安定性もでる。その点においてはK-Pump Miniの優位性はある。ただし、必要以上に高圧にすると、パックラフトが裂けやすくなるリスクもあるので、注意が必要だ。
ちなみに超小型・超軽量モデルとして期待していたTINY PUMPは、出力が足りず、空気を入れるのに時間がかかりすぎたため、現実的な選択肢とはならなかった。
タンデムのパッキング。
佐井の『Ultralight Adventure Equipment (ULA) / Epic』(左) と小川の『Hyperlite Mountain Gear (HMG) / 3400 Porter』。
パックラフトは、その名の通り、パッキングできるラフトであることが、最大の特徴でもある。
それは、シングル艇に限らずタンデム艇でも同じだ。旅の道具であり、ハイキングとパックラフティングを組み合わせて旅するのが、TRAILSがおすすめしたいスタイルでもある。
というわけで、最後に、タンデム艇のパッキング例を紹介したい。
上の写真の左が編集長の佐井、右が編集部crewの小川が愛用しているバックパックであり、いずれもOryxがパッキングされている。
佐井のパッキングスタイル。
佐井はULAのEpicを使用。バックパックの背面とドライバッグの間に、折りたたんだOryxを収納。バックパックの中にOryxを収納するスタイルである。これは、佐井が以前から親交のある『Hiking in Finland』というメディアを運営しているヘンドリックのスタイルを参考にしたものだ。
小川のパッキングスタイル。
小川はHyperlite Mountain Gear の3400 Porterを使用。細く丸めて縦長の形状にして、バックパックの中に収納するスタイルである。55Lのバックパックのなかに、余裕をもって収まる。
タンデム艇の旅では、1人が舟本体を持てば、シートやパドル、またはキャンピングギアなどの他の道具は、もう1人のバディと分担して持つことができる。そうすれば、シングル艇と同様、ハイキング & パックラフティングの旅も可能になるのだ。
パックラフト・タンデムで、次はどこを旅しにいこう。
これにて、パックラフトのタンデム艇 (2人艇) をフィーチャーした、全7回の総力特集『タンデム艇のABC』が完結!
タンデム艇の魅力から、遊び方、モデル比較、周辺ギアまで、タンデム艇を徹底解剖し、網羅的に紹介した。
この特集記事を通じて、少しでもパックラフト・タンデムに興味を抱いてくれた人がいたら嬉しい。
TRAILSとしても、これからもタンデム艇での旅、そしてギアの実験を続けていくので、ご期待ください。
Go Tandem Packrafting!
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