TRAILS REPORT

パックラフト・アディクト | #50 タンデム艇のABC 〜ギアレビュー ① Explorer42 vs Oryx vs Forager(概要編)〜

2021.09.01
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文・構成・写真:TRAILS

この夏のTRAILSの特集記事としてスタートした、パックラフトのタンデム艇 (2人艇) をフィーチャーした企画。全7回の総力特集だ。

第5回目の今回は、『ギアレビュー①』として、タンデム艇のモデル比較をしたい。

比較するのは、ALPACKA RAFTの代表的なタンデム・パックラフトである、Explorer42 (エクスプローラーフォーツー)、Oryx (オリックス)、Forager (フォレジャー)の3モデルだ。

それぞれの特徴を端的にいうと、Explorer42は、ALPACKA RAFTのなかで最軽量のULタンデム艇。Oryxは、クラシックなカヌー・スタイルをパックラフトで具現化した、フラットウォーター向けのタンデム艇。Foragerは、激しめダウンリバーでの対応力も兼ね備えた、ホワイトウォーター向けタンデム艇だ。

以下の記事本編では、これらのモデルを、主に使用用途、サイズ、重量の3点から詳細に比較していきたいと思う。自分のスタイルにフィットするモデルはどれか。ぜひ、タンデム艇を検討する際の材料にしてもらいたい。


左から、Classic (S / Alpaca)、Explorer 42、Oryx、Forager。右3つがタンデム艇だ。


まずは比較の基準となる、シングル艇『Classic (S / Alpaca)』のおさらい。



 
タンデム艇のディテールを紹介する前に、まずはALPACKA RAFTのフラッグシップモデルである、シングル艇の『Classic (S / Alpaca)』を簡単に紹介しておきたい (写真のClassicは旧モデルだが、サイズ表記は現行モデル)。

現在、数多くのブランドからパックラフトがリリースされているが、現代のパックラフトのオリジネーターであるALPACKA RAFTが開発したこのClassicこそが、ひとつのスタンダードである。

ClassicのなかでもSサイズにあたるAlpacaは、重量が3.2kg (ホワイトウォーターデッキモデル) 。サイズは、室内最大長 (L) が109cm、室内最大幅 (W) が37cm。身長158cm〜174cmの編集部Crew、4人全員が所有しているのがこのSサイズだ。

このシングル艇の大きさを念頭に置きながら、これから紹介するタンデム艇を見てもらえればと思う。まずは室内のサイズにフォーカスしつつ、それぞれの特徴をおさえていきたい。


SUL (スーパーウルトラライト) タンデム艇『Explorer 42』



 
ALPACKA RAFTのラインナップのなかで、最軽量のSUL (スーパーウルトラライト) タンデム艇。重量は3.7kg (初期モデルは3.1kg) と、シングル艇のClassic (S / Alpaca) と比べても500g増にとどまり、シングル艇を2つ携行するより2.7kgも軽量だ (※1)。

サイズも、ClassicとOryxの中間的な大きさ。タンデム艇としてはミニマムなサイズだ。室内の長さは、Classicより約50cm長く、大人2人がぎりぎり乗れるタイトな設計である (写真のExplorer 42は旧モデルだが、サイズ表記は現行モデル)。

ALPACKA RAFTのウェブサイトには、「子どもや愛犬とのトリップに最適」とあり、また「小柄の大人であれば2人で乗れる」と説明されている。

TRAILS編集部では、夫婦でExplorer 42を使用して釧路川をダウンリバーするという実験も行なっており、工夫次第では普通の大人2人で漕げることを確認している。


タイト感はあるものの、SULでの大人2人のダウンリバーも実現できる。

工夫したポイントは、ダブルパドルを用いるとパドルが前後の人でぶつかりやすいので、シングルパドルを使用したこと。さらにフロントシートに、重心を支えるためにバッグバンド (背もたれ) を追加で取り付けたことなど。バッグバンドなどの詳細なギアのレビューは、次のギアレビュー②の記事で紹介したい。

※1 比較したのは、Classicのホワイトウォーターデッキモデルと、Explorer 42のカーゴフライモデル。

■ TRAILS VIEW
Explorer 42は、ぎりぎりまでULを攻めたい人に、ぜひ検討してみてほしいモデル。タンデム艇で3.7kgというのは、SULモデルと言える。
 
ミニマムなタンデム艇ゆえ、大人2人で漕ぐにはタイトな大きさだが、いかにそれを使いやすくするか工夫を凝らすのも楽しい。
 
また大きすぎない全長が『ソロ+α』という楽しみ方にも相性がよく、多用途に対応する絶妙なサイズ感も魅力。自転車を載せたり、愛犬と旅したり、釣りをしながら漕いだり、とソロでの遊びの幅を拡張してくれるパックラフトでもある。


カヌースタイルでメロウに楽しむ『Oryx』



 
Oryxは、クラシックなカナディアンカヌーのスタイルを、パックラフトで実現した「パックラフト・カヌー」。湖やクラスⅠ (※2) の緩やかな川の使用に適した、フラットウォーター向けのタンデム艇だ。

重量は4.9kgと、シングル艇のClassic (S / Alpaca) と比べて1.7kg増ではあるが、シングル艇を2つ携行するよりは1.5kgも軽量であり、十分にULなパックラフトと言える。

プロダクトの特徴としては、座面が高いシートと、舟全体の細長いシェイプが挙げられる。これによりそれまでのパックラフトにはなかった、カヌースタイルのメロウな旅ができる舟に仕上がっている。パックラフティングシーンに起きた小さなタンデム艇ムーブメントの火付け役と言えるだろう。


座った姿勢がラクで、長く漕ぎ続けることができる。

パテント (特許) も取っているOryx専用のシートは、ALPACKA RAFTの他のモデルとは、まったく異なる設計思想で作られたもので、Oryxの大きな特徴のひとつである。このシートは、人間工学に基づいて設計されており、リラックスした姿勢で漕ぎ続けることができる。また舟全体が細長いシェイプになっていることで、フラットウォーターでの直進性に優れていることも特徴である。

ちなみにALPACKA RAFTのウェブサイトには、「経験者であれば、クラスII+ の川でも使用できる」と説明されているが、ホワイトウォーターを漕ぐスキルをきちんと持っている必要があるので、その点は注意しよう。

※2 クラス:瀬(川の流れが速く水深が浅い場所)の難易度。クラス(グレードや級とも表現される)が I〜VI(1〜6級)まであり、数字が大きいほど難易度が高い。ちなみに、I は飛沫もなく静かな流れ、II はやや高い波があるが規則的な流れ。ただし、同じ瀬であっても川の水量や地形の変化などによって難易度は変わってくるので、あくまで目安である。

■ TRAILS VIEW
クラシックカヌーで旅するような、タンデム艇らしいメロウな旅をしたいなら、このOryxがオススメだ。
 
重量4.9kgは、2人で乗ることを想定すると、1人あたり2.45kg。シングル艇の3.2kgと比べても軽く、ULなタンデム艇だ。
 
カヌースタイルと同じ姿勢で漕げるシートの快適さも、メロウな旅をサポートしてくれる。湖で使うもよし、クラスⅠ の緩やかな川をダウンリバーするのもよし。TRAILS編集部crewも、釧路川や久慈川で実際に使用しており、流れの緩やかな川との相性の良さは確認済みだ。


セルフベイラー付き、ホワイトウォーター向けの『Forager』



 
Foragerは、ホワイトウォーター向けのタンデム艇だ。

プロダクトの特徴として、大きくは次の3点が挙げられる。セルフベイラー (自動排水機能 ※3) が付いており、ホワイトウォーターでの排水性が高いこと。Oryxと比べても、安定性を重視した構造になっていること。頑丈さを上げるため、チューブに厚い素材を使用していること。


チューブが太く、舟全体も大きく、安定感に優れている。

安定性の面で言うと、Oryxのほうが長さはあるが、舟全体で見ればForagerのほうが大きい。室内の横幅46cmは、Oryxと比べてもワイドな構造。また写真でOryxとForagerを見比べてもらうとわかるが、Foragerは、舟の前部と後部のチューブが太い。

頑丈さの面では、チューブ素材が420デニールナイロンと、Explorer42およびOryxの倍の厚さとなっている。

このようにトータルとして、タフな作りのタンデム艇になっているのが、Foragerなのだ。安定性や頑丈さを重視したぶん、重量はALPACKA RAFTのラインナップのなかでも最も重い6.1kg。

※3 セルフベイラー:舟の底に複数の穴が開いていて、艇内に入った水が排水される機構のこと。波をかぶった際に艇内に水が溜まることがないので、特にホワイトウォーターで有用。

■ TRAILS VIEW
本格的なバックカントリー・トリップや、スキルが必要なホワイトウォーターにタンデムでチャレンジしてみたい人には、Foragerが選択肢に入るだろう。
 
ALPACKA RAFTのウェブサイトでも、Foragerは「アラスカの僻地での旅、自給自足のハンティングの旅でも十分に使えるものだ」と紹介されている。
 
重量はあるものの、Oryxと比べても広い船内空間を活かして、湖で子どもをたくさん乗せたり、贅沢に寝っころがりながら、湖面にただようのもよいかもしれない。


タンデム艇3モデルのスペック比較


ここまでは、モデルごとの用途や特徴にフォーカスして紹介してきた。ここからは、スペックの違いを、詳細に比較していこう。

スペック比較には、現時点 (2021年8月) での最新版モデルの情報を使用した (ALPACKA RAF Tのウェブサイトの公開データを使用)。

<大きさ>

まずは、各タンデム艇の大きさ比較から。OryxとForagerの長さは、シングル艇のClassic (S / Alpacka) よりも1mほど長く、舟全体の長さは3mを超える。それに比べ、Explorer 42は、Classicより50cmほど長いだけであり、タンデム艇としてミニマムな大きさで設計されていることがわかる。

横幅も、OryxとForagerは、Classicと比べ、10cmほど広い。一方、Explorer 42の横幅は、Classicとほぼ変わらない。

<重量 × 長さ>

次に、重量をタテ軸、全長をヨコ軸に、各タンデム艇をプロットした。

このマップからも、Explorer 42は、シングル艇 (Classic) と、Oryx、Foragerとの中間的な位置づけのモデルであることがわかる。Explorer 42は、重量も4kg以下にとどまっている。

OryxとForagerの2つを比べると、全長はOryxのほうが長いが、重さは5kg以下にとどまる (4.9kg)。Oryxの重量は、Classic2艇よりも、1kg以上軽い。Foragerは、安定性と頑丈さを重視しているぶん、全長に対して重量は重い。

<スペック詳細比較表>

 
最後に、各モデルのサイズ、重量のスペック詳細を、ALPACKA RAFTのウェブサイトの情報を参照し、一覧できる形でまとめた。それに、TRAILS編集部の見解も踏まえ、各モデルの特徴・スタイルを加えたのが、この表である。

特徴をあらためてまとめると、Explorer 42は『Ultralight tandem』、Oryxは『Flatwater tandem』、Foragerは『Whitewater tandem』と位置付けることができるだろう。

Explorer 42の重量3.7kgは、あらためて驚くべきULである。そのぶん、サイズはタイトな設計だ。Oryxは、軽さもある程度実現しつつ、カヌースタイルの快適でメロウな旅を実現できる設計になっている。Foragerは、チューブ素材の厚さや最大積載量などを見ると、タフで大きな舟であることがわかる。

発売初期にはメインのタンデム・モデルであったExplorer 42が、現在ではタンデム艇ラインナップのなかの最軽量モデルと位置づけられているように、今後のラインナップの変化によって、各モデルの位置づけは変わっていくだろう。


 
今回の「タンデム艇のABC」5回目では、「ギアレビュー①」として、ALPACKA RAFTのタンデム艇『Explorer42』と『Oryx』と『Forager』の、船体にフォーカスして徹底解剖した。

次回は、「ギアレビュー②」として、この3艇のシート構造の違いをはじめ、ディテールのパーツや機能を比較してレビューする。タンデム艇をさらに深掘りしていくのでお楽しみに。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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