TRAILS REPORT

ロングトレイルTOPICS #03 | ATスルーハイキングに向けた最新情報(2022 Feb)

2022.03.04
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TRAILS編集部が取材やリサーチで集めた情報を中心に、ロングトレイルの最新情報や注目すべきトピックを発信する『ロングトレイルTOPICS』(全5回)。3回目の今回は、AT (アパラチアン・トレイル) 編。

TRAILS編集部が、ATC (ATの運営組織) のコミュニケーション・ディレクターであるジョーダン・ボウマンに取材を行ない、2022年2月時点での最新情報を聞いた。

ATは、前回のPCTとは異なり、トレイル上のシェルターや、トレイル沿いのホステルが数多くあるという特徴がある。コロナによって、なにか変化はあるのだろうか。その点も含めて、ジョーダンからの最新情報をお届けする。

AT (アパラチアン・トレイル) は、アメリカ東部、ジョージア州のスプリンガー山からメイン州のカタディン山にかけての14州をまたぐ、2,190mile (3,500km) のロングトレイル。

ATの特徴であるシェルターが、多くの場所で閉鎖されている。

ATC (ATの運営組織) のコミュニケーション・ディレクターであるジョーダン・ボウマン。ATのスルーハイカー (2014) であり、ATCにジョインする前は、作家、ジャーナリスト、英語教師として活動していた。

—— 編集部:2022年のスルーハイクにおいて、例年と比較してルールの変更点はありますか?

 
ジョーダン:「ATCでは、ワクチン接種の有無にかかわらず、すべてのビジターセンターでマスクの着用を義務付けています。

これにはハーパーズフェリー・ビジターセンター、5月オープンのボイリング・スプリングス・ビジターセンター、6月オープンのモンソン・ビジターセンター、そしてオープン日が未定のダマスカス・トレイルセンターも含まれます。

ATには、トレイル上にシェルター (避難小屋) があるのが大きな特徴。トータル250以上あるが、そのうち55カ所以上が閉鎖されている。

また、ATのシェルター (避難小屋) は、シェルター内でソーシャルディスタンスを取ることが難しいため、土地管理局により55カ所以上が閉鎖されたままです。ただし、ほとんどの場合、閉鎖されたシェルター周辺でのキャンプは許可されています (ヴァージニア州グレイソン・ハイランズ州立公園のワイズ・シェルターを除く)。

2020年に始まったコロナ禍以降、トレイル沿いのお店やホステルなども、徐々に再開しつつありますが、ATCはビジターセンター以外の施設やサービスを管理していません。そのためハイカーは、ホステル、レストラン、アウトフィッターなどに、営業しているかどうか、あるいは新しいルールがあるかどうか、を確認する必要があります」

トレイル沿いにはホステルも数多くあるが、営業しているかどうかは事前に確認しておくこと。

—— 編集部:スタート地点へのアクセスは通常通りですか?

 
ジョーダン:「一般的にATへのアクセスをサポートするサービスは再開されていますが、ハイカーは事前に各事業者に営業時間やサービス内容を確認したほうがいいでしょう」

シェルターを頼らずとも、野営でスルーハイクできる準備をする。

コロナ期の現在、ATを歩く際には野営が増えることが見込まれる。

—— 編集部:今年のスルーハイカーが、特に気をつけるべきことはありますか?

 
ジョーダン:「ATCはこれまで、ハイカーがトレイル沿いのシェルターに頼らず、自分自身でテントを準備することを推奨してきましたが、このコロナ期には特に重要です。

動物から自分の食料を守るために、フードストレージは必須アイテム。

公式のオープン、クローズにかかわらず、ハイカーはシェルターを避け、自分専用のテントやフードストレージを持参してください。

コロナ期における安全なハイキングのためのTIPS一覧は、下記を参照ください」

ATCで推奨している、コロナ期にスルーハイクする上での最低限のTIPS。

ATCのウェブサイトで登録を行ない、つねに最新情報を入手する。

ATCのウェブサイトにてアップデートしている、コロナに関する最新情報。ハイカーはつねにチェックしておこう。https://appalachiantrail.org/explore/plan-and-prepare/hiking-basics/health/covid19/a-t-restrictions/

—— 編集部:特に、アメリカ国外からのハイカーが気をつけるべきことはありますか?

 
ジョーダン:「ATCでは、コロナの感染拡大に伴い、ウェブサイトで最新のガイダンスを掲載しています。

ハイカーは、このページにくわえて、コロナに関係なく重要なトレイル閉鎖や警告などを掲載するトレイル・アップデートのページを定期的にチェックしてください。

コロナ以外の、トレイルの最新情報はこちら。https://appalachiantrail.org/trail-updates/

また、すべてのスルーハイカー、セクションハイカー、およびグループは、『ATCamp』に登録し、ATCからのニュースの受信を選択することを強くおすすめします。

特に海外からのハイカー、飛行機で米国に到着するハイカーは、米国国務省およびCDC (アメリカ疾病対策センター) のウェブサイトで、最新の渡航要件および制限を確認してください」

ATハイカーは、スルーハイカーにしろセクションハイカーにしろ、登録するのがおすすめ。登録することで随時、最新情報も送られてくる。https://atcamp.org/

他のハイカーを距離を保つ。食べ物をシェアしない。トイレの後は手を消毒する。

ハイカー同士で水や食べ物を共有しないことも、リスクヘッジとして重要。

—— 編集部:ここ最近は、オミクロン株が猛威を振るっています。

 
ジョーダン:「新型コロナウイルスは、すべての人に大きな変化とシフトをもたらしました。今後も、ATを含めてあらゆることにおいてそうでありつづける可能性が高いです。

ATCは、パートナー機関と緊密に連携してコロナを監視し、最新のガイダンスをウェブサイトに掲載していく予定です」

焚き火やキャンプサイトでは、ハイカー同士コミュニケーションを取ることも多いが、6ft (約1.8m) の距離を取ること。それが難しい場合は、マスクの着用が望ましい。

—— 編集部:これまで話してくれたこと以外で、ハイカーができることはありますか。

 
ジョーダン:「もっとも重要なことは、ハイカーは他のハイカーと少なくとも6ft (約1.8m) の距離を保ち、距離が取れない場合はマスクを着用すること、ハイカー同士で水や食べ物を共有しないこと、トレイル沿いでトイレに行った後は手を消毒することです。

万が一、ATでコロナに感染した場合は、ATCのウェブサイトにある下記報告書に記入をしてください。

コロナに感染した場合に入力するフォーム。https://forms.office.com/pages/responsepage.aspx?id=utVD0lb6O0SfRwscnhG1SLPZFgiUl_hNhgNxeF4JdplUMkxUSDhMVkgxQk9BTTRKOFRBRFFRMDlVWC4u&web=1&wdLOR=c4A38D3D3-9681-E54F-9F00-F932348EA5ED

また、病気になった場合は、ハイカーはCDCのガイドラインに従い、検査を受けるべきか、他の措置を取る必要があるかを判断する必要があります」

ATを安全に楽しむためにも、今回、ATCのジョーダンが話してくれたことを徹底しよう。

マスクを携行する、旅の資金を多めに用意しておくなどは、どのトレイルを歩くにあたっても最低限のリスクヘッジであろう。

それにくわえて、ことATに関しては、シェルター利用における注意点や、ハイカー向けの独自の登録システムがあるので、そこをしっかり押さえておくことが重要であるようだ。

次回は、CDT (コンチネンタル・ディバイド・トレイル) の運営組織であるCDTAのスタッフから、CDTの最新情報を紹介してもらう。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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