TRAILS REPORT

LONG DISTANCE HIKERS DAY 2022 イベントレポート③ | NEW YEAR HIKERS

2022.05.13
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今回は『NEW YEAR HIKERS』というテーマで、今年2022年に海外トレイルを歩くロング・ディスタンス・ハイカー9組10名が登場。新たな旅立ちをするハイカーたちの声をお届けします。

今年のハイカー (CLASS OF 2022) が、『LDHD2022』およびプレイベントの『準備ワークショップ & 相談会』でどんな刺激を受け、どんな思いで海外ロングトレイルを歩こうとしているのかを語ってもらいました。

今回登場するハイカーのなかには、すでにスタートを切っているハイカーもいます。生々しく初々しいハイカーの声をぜひお楽しみください。ここに、未来のあなたの片鱗があるかもしれません。

CLASS OF 2022 : 今年、海外トレイルを旅するハイカー


 
■ 宮崎正紀 – PCT
同じ思いを持った人との交流が面白かった。

出発直前にイベントに参加してくれた宮崎くん。4月28日にPCTのスルーハイクをスタート。

「イベント初参加でしたが、同じ思いを持った人との交流が面白かったです。さらに最新のトレイルの状況などの情報発信が、トレイルの変化を感じ取れて参考になりました。

一番印象に残っているコンテンツは、『TRAIL FOOD』(※1)。食生活が、結局みんなそれぞれで好きな食事だったり、工夫してたりと興味深かったです。

PCTのスルーハイキング、とにかく楽しんで歩いてきます」

※1 TRAIL FOOD:ロング・ディスタンス・ハイカーは、トレイル上でなにを食べているのか。現地の定番トレイルフードから、軽量化のTIPS、長距離を歩くための栄養術まで、ハイカーそれぞれの食生活を聞くトークセッション。

■ 新井篤史・美帆 – PNT
「こんなに遊んでいる大人がいるんだ!」と夫婦で驚いていました。

カップルでPNTをスルーハイキングする新井さんご夫婦。出発は6月を予定。

「遊びと自由にとことん向き合う、無邪気な大人の社交場のように感じました! 『こんなに遊んでいる大人がいるんだ!』と夫婦で驚いていました (笑)。

ロング・ディスタンス・ハイキングをした人、これからする人、いつかはしたい人、たくさんの方が参加されていましたが、その場の一体感というか、ワクワクしようぜ! みたいなオーラがつねに出ていました。

なかでも『2022 TRAIL TOPICS』 (※2) は良かったです。トレイルエンジェルの高齢化、ハイカーのマナーの悪化など、自分から調べようと思わなかったトレイルの現状を知ることができたからです。

手付かずで雄大な自然の中をハイキングするPNTに私たちは行きます。日本に情報がほとんどなく、手探りだらけでまさに冒険だと思っています。情報が少ないからこそ先人に縛られない自由と不自由を存分に楽しみたいです!」

※2 2022 TRAIL TOPICS:国内外のロング・ディスタンス・トレイルにおける、トレイル環境の最新情報やルール変更を、ハイカーのリアルで最新の情報や、現地のトレイル団体の情報をもとに共有するセッション。今年または来年に歩きたいハイカーのサポートとなる実践的な情報を提供する。

■ 川野直哉 – PCT
LDHDというハイカーコミュニティが、孤独感を癒してくれました。

LDHDに何度も来てくれている川野さん。ここ2年間、コロナで叶わなかったPCTへの挑戦がついに実現。

「海外のロングトレイルを歩こうとすると、計画は長期間にわたり、単独での準備には多少の孤独感も伴います。しかしLDHDというハイカーコミュニティが、その孤独感を癒してくれました。

先輩ハイカーの多くが、私の計画に対してかけてくれた言葉は「楽しんで来て!」。「気を付けて」とか「行ってらっしゃい」はほぼ皆無。定型の挨拶かもしれませんが、ワクワク感がさらに高まりました。

人からなぜ行くの? と聞かれても上手く答えられません。好奇心以外の何ものでもないからです。しかし、PCTを歩き終えた後の自分の変化には興味がわいています」

■ 田安仁 – PCT
ロングトレイル経験者の方々から刺激を受け、早く歩きたいという気持ちが一層強くなりました。

LDHD初参加の田安くん。PCTが、初めてのロング・ディスタンス・ハイキング。スタートは5月上旬。

「LDHDのイベントにはずっと参加したいと思っていました。PCTを歩くことが決まり、日本を発つ前に参加できたことで、ロングトレイル経験者の方々から刺激を受けました。そして、早く歩きたいという気持ちが一層強くなりました。

一番面白かったのは、『釣りとロング・ディスタンス・ハイキング』(※3) です。このトークセッションを聞いていて、トレイルの生活のなかで釣りを取り入れても面白いと思いました。自分の中でロングトレイルへの考え方、向き合い方の幅が広がりました。

PCT、とにかく楽しみます!」

※3 釣りとロング・ディスタンス・ハイキング:「ロング・ディスタンス・ハイキング」 × 「釣り」。旅をしながら釣りをする、というスタイルを実践しているハイカーに、これが最高の組み合わせであることを、存分に語ってもらうトークセッション。

■ 石丸隆司 – CDT
今回は、ゴールには向かうけど縛られない、今を楽しめる余裕を持った、自分に正直で自由な旅がしたいです。

2019年にPCTをスルーハイクした石丸くんは、今年はCDTへ。

「『HIKER’S TABLE』 (※4) でCDTの話をしてくれたシゲさん (丹生茂義) と拓海さん (鈴木拓海) の話はとても興味深く聞かせてもらいました。2人とも孤独を楽しんでいるところがよかったし、2人のCDTの写真も素敵でした。

なぜ行くのかと問われて、シゲさんの言ってた『楽しそうだから』は、ほんとにそれでしかないよなと共感しました。自分もここに行くのかと思うと楽しみですね。

3年前にPCTを歩いてた時は、必死にゴールを目指して、休んでいるときも進まなきゃみたいな焦りがつねにあったし、余裕や余白がぜんぜんありませんでした。よく『Enjoy your hike!』って挨拶されることがあったんですけど、その度に、自分のハイクとは? 自分は今楽しめてるのか? と自問自答してました。

だから、次はゴールには向かうけど縛られない、今を楽しめる余裕を持った、自分に正直で自由な旅がしたいです。あとPCTでは付けられなかったトレイルネームが絶対欲しい!」

※4 HIKER’S TABLE:このイベントの第1回目からつづく、コア・コンテンツのひとつ。それぞれのハイカーが、ロング・ディスタンス・ハイキングで体験したリアルでパーソナルなストーリーを語ってもらうコーナー。

■ 板谷学 – PCT
この長い距離を歩く中で自分の心身がどんな風に変化していくのか、楽しみです。

4月23日にPCTを歩きはじめた板谷さん。LDHDには来られなかったものの、事前の「準備ワークショップ & 相談会」に参加。

「2月に開催された『準備ワークショップ & 相談会』の時期は、スタート地点に立てる準備はできたものの、実際大丈夫なのか? と細々したことなどがいろいろ不安でした。でも、PCTハイカーの根津さんと筧さんにオンラインながらお会いできてお話しできたことがとても嬉しく、なんだか心が軽くなりました。ありがとうございました。

まだ10日間ほどしか歩いてませんが (5月5日時点)、まずは北のターミナスまで行きたいと思ってます。それだけが目的ではないですが、そこまで歩き切ることはまず目指したいです。

その中での自分のハイカーとしての成長も楽しみにしています。他のハイカーから学びたいとも思いますし、この長い距離を歩く中で自分の心身がどんな風に変化していくのか、そんなことも楽しみです。

また、訪れるそれぞれのトレイルタウンの様子もいろいろと感じ取りたいと思ってます。
見聞したことが、帰国後に何か自分の仕事に活かせることがあればと思い、意識して見るようにしています。

周囲のみんなからいただいたこの半年を、とにかく楽しみながら、タフでクールでヒューマンタッチなハイカーになれるように精進したいです」

■ 伊東大輔 – PCT
周りの目や固定概念に縛られず、ありのままの自分を思いっきり解放してきたいです。

事前の「準備ワークショップ & 相談会」に加えて、LDHDにも参加してくれた伊東くんは、5月初旬からPCTを歩きはじめる。

「トレイルの生きた情報が多く集まる場であることはもちろんですが、長い旅を経験したハイカーたちから、生き方や考え方、人生の参考になるものを吸収できるのが一番の魅力だと思います。そんなかっこよくてクレイジーな大人たちと繋がることができる貴重な場であると感じました。

以前、あるハイカーから『ロングトレイルのコミュニティはほんま狭いよ。1人つながったらすぐ友達増えてくで!』という風に言われたことがあります。

実際、初めてLDHDに参加した2年前と比べると友人も増えましたし、その中で自分の人生や考え方に影響を与える出会いもありました。今後どんな出会いがあるのか楽しみで仕方ないです!

PCTのスルーハイキングは、とにかく欲望のまま自分中心で楽しみたい! 周りの目や固定概念に縛られず、ありのままの自分を思いっきり解放してきたいです。

あとはビールを飲むこと (笑)。日本ではお酒をほとんど飲まないのですが、他のハイカーと笑顔でビールを飲むのは最高のコミュニケーションになるのではないかと。あと単純にビール片手にダラダラしてるハイカーがかっこいい!」

■ 石井康世 – PCT
毎日夢の中にいるような、最高な日々を送っています。

石井さんは、事前の『準備ワークショップ & 相談会』に参加。4月20日にPCTを歩きはじめ、早くもPinecone (松ぼっくり) というトレイルネームをゲット!

「『準備ワークショップ & 相談会』に参加して、実際にPCTを歩いた方にバウンスボックス (※5) の送り方など日本ではイメージしづらいことが聞けてよかったです。

PCTで実現したいことは、アメリカ人ハイカーの友人を作ること、カウボーイキャンプ、焚き火です。

毎日を楽しむ! がモットーです。いろんな出来事がありますが、毎日夢の中にいるような最高な日々を送っております」

※5 バウンスボックス:郵便局への局留めを利用して、自分自身に送る荷物のこと。つねに携行しておく必要のないものを入れて送ることが多く、たとえば先のエリアの紙地図やガイドブック、ギアのスペアなど。

■ 飯塚真吾 – AT
すでにトレイルエンジェルやトレイルマジックを経験しました。後はトレイルネームを付けてもらうことを期待しています。

『準備ワークショップ & 相談会』に参加してくれた飯塚さん。4月23日開催のATのイベントに参加し、すで歩きはじめている。

「2月開催の『準備ワークショップ & 相談会』に参加しましたが、実際に行かれた人たちの話は神の言葉です。心強く嬉しくなりました。

天気のことやクマ対策など参考になりました。今回、私以外でATを歩く日本人は知らず、不安だったので参加して良かったです。

ATのイベントが開催されるハーパーズフェリーへの行き方も大して調べず、電車利用にアプリが必要だったり、食料調達などにも手こずりました。そういう困ったことをひとつひとつ解決していくのが楽しいです。

すでにトレイルエンジェルやトレイルマジックを経験しました。後はトレイルネームを付けてもらうことを期待しています。シェルターでの会話やトレイルで出逢う人たちとの笑顔でのあいさつもいいものですね。これからどんなことが起こるかとても楽しみです」


今年は、たくさんのハイカーが海外トレイルを歩く。それぞれどんな旅をしてくるのだろうか。土産話を楽しみに待ちたい。

3回にわたる『LONG DISTANCE HIKERS DAY 2022』のイベントレポート、いかがでしたでしょうか。

今年参加してくれた人は、来年もぜひお越しください。そして今年参加できなかった人は、来年こそぜひ遊びにきてください。

2023年の『LONG DISTANCE HIKERS DAY』では、今回CLASS OF 2022として登場してくれたハイカーが、スピーカーとしてリアルなエピソードを語ってくれるはず。どんな体験談を聞かせてくれるのか、今から楽しみで仕方ありません。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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