TRAILS REPORT

OMM JAPAN 2015 QUICK REPORT with 山と道

2015.11.20
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■山と道(夏目 彰 由美子)OMM2015大会直後インタビュー

ーー前回の小峯さんとのインタビューの時点ではまだOMMについてはまだまっさらな状態のお二人の素朴な疑問を伺う形でしたけれど、今回はそれから実際にOMMに参加してみて、歩ききった後の感想を聞いていきたいと思います。初日はやっぱり緊張されました? スタート前に、夏目さんが「これから戦場行くみたいな気分だ」っていっていたのがすごく印象的で。

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夏目 天候も悪かったし、僕らレースとかこういうイベント自体が初めてだから、ああいう緊張感は初体験だったよね。

由美子 ゲームとはいえ緊迫してたよね。

ーーで、スタート地点で地図を渡されて、すぐに戦略を立てて歩き始めなくちゃならないじゃないですか。そこはすんなり入れました?

由美子 始めはまったくコントロールがどんなもので、どんな場所にあるのかもわかっていなかったから戸惑いましたよね。

夏目 あと整地も一応練習してきたんだけど、スタート直後に「あれ、整地ってどうやるんだっけ?」ってなって(笑)。

由美子 忘れてたよね(笑)。私は憶えてたよ。

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ーー初日は始めの分岐が結構ポイントだったじゃないですか。みんな上に行くなか下に行く人もいて。

夏目 あそこは戦略の分かれ道だったよね。

ーー夏目さんたちはどうされたんですか?

夏目 由美子と一緒だとそんなに走れないだろうから、下の大量得点ゾーンを確実に取るなら上は捨てるべきだと思って、そこからトレイルを一気に降りましたね。そこから順調に取っていったんだけど、3つ目のコントロールあたりで完全に迷っちゃって。その時はまだそこまでOMMの地図が読めてなかったから、沢筋をトレイルだと勘違いして、わけわかんない方向に行っちゃって。ここは苦戦しましたね。普段の山でも破線ルートは行くけど、こういう場所は滅多に行かないから。で、この後も僕らまだOMMをよくわかってなかったから、次のコントロールまで「直進で行っちゃお!」って(笑)。パッと見た感じ行けそうだったんですよ。

由美子 開けていてね。

ーーああ、上から次のコントロールのあたりが見えたんですね。

夏目 そう。でもそうしたらすごいヤブとか見えてない小川とかいっぱいあって(笑)。だから途中で道路に出た時点でそのコントロールを諦めて、その後はトレイルを使って何個かコントロールを取って、後半の高得点ゾーンを目指したって感じですね。

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ーーどのへんでOMMの歩き方がわかってきました?

夏目 やっぱり迷ったときの、ヤブの深さの絶望感?

由美子 たしかに。「こんなとこ行かせるんだ」って思ったよね(笑)。

夏目 だから1日目でOMMがどんなものかやっと理解できて、2日目に入ったっていう感じだった。でも2日目は制限時間を間違えなければいい線行きそうだったよね?

由美子 でも走ってないからね。ずっと歩いていた。

ーー2日目は最初から100点のコントロールを取りにいくつもりだったんですか?

夏目 由美子と喧々諤久戦って、説き伏せたって感じだよね(笑)。今日はコントロールがほとんど道路の近くで難しそうな場所もなかったんですよ。だから、まず道路で行けるとこまで行けばどれくらいで戻って来れるかもわかるから、まずは端まで行って、あと一筆書きで戻ろうっていう戦略だったんですよ。それにしても今日はナビゲーションが決まったよね。

由美子 そうだね。

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夏目 等高線が重要だってことに気づいて、高度計で標高をチェックして等高線でどの位置にいるのか割り出すようにしたんですよ。あと歩数。25000/1の地図だと1cmが250mだから、そこを何歩で行けるかを数えて、だいたいの感覚を掴んだくらいで100点のコントロールの近くに着いたんですけど、コンパス合わせて、等高線と標高を合わせて、歩数合わせたらすごいヤブだったけど、1発で見つけたんだよね。

由美子 あそこを見つけたときはすごい嬉しかったよね。

夏目 だからそれからはもう迷いなし。全部ドンズバで(笑)。

ーー開眼しちゃったわけですね(笑)。

夏目 だから歩数と方角と等高線だよね。あと時間。僕ストップウォッチも動かしてたから。「あと何分でコントロールが現れる」とかわかってたしね。

由美子 「あと○歩」とかね(笑)。

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ーーそのやり方を憶えたらもう迷わずバシバシ取れるようになったんだ。すごい発見しましたね。

由美子 でもそれが正解のやり方じゃない気もするけどね。どうなんだろう?

夏目 でも、ズバン、ズバンて感じで取っていったよね。で、パルコール嬬恋のスキー場の手前で実は時間がオーバーしてることに気づいてさ…。

由美子 改めてまじまじと地図の注意書きを読んでみたら「6時間って書いてある…」って(笑)。

夏目 だから今日のやつ全部取れてたら、合計で635点ですよ。花の600点台(笑)!

ーー今回スコア・ロングで優勝した人が2日間で1306点だったから、それだけ取れれば優勝争いに絡めるかも(笑)。

由美子 でも結局1時間以上オーバーしてるじゃん。

夏目 まあ、失格なんですけど…(笑)。

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ーーでも今日500点でも男女混成部門だったらけっこういい線まで行ってたと思いますよ。ベスト5には入ってたかも。

夏目 じゃあ由美子とふたりでこれからどこまで行けるか、試してみるのも面白いかも。でも、僕ら今日はナイスパートナーだったと思うんだけど、由美ちゃんどう?

由美子 でもこの人、朝コンパスなくしてたんですよ。それって失格じゃないの? コンパスはひとり一個必携でしょ。

夏目 じゃあどちらにせよ失格だったのかな(笑)。

 ーー今回初めてOMMに参加してみて、端的にどんな感想を持ちましたか?

由美子 面白かったよね。「こんな遊び方があるんだ」って。

夏目 前回の取材でもいったけど、こういう破線やバリエーションルートみたいな場所を大手振って「ワーイ!」って遊べるのってそうそうないし、そこでみんなが迷ってるの見てるだけで面白いしさ。ヤブのなか突っ込んでいったり、ヤブからいきなり人が出て来たり(笑)。

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ーー普通だったら「絶対こんなとこ行かないよ」ってヤブにあえて突っ込んでいったりしますからね(笑)。

夏目 で、1日目終わったあとに夜みんなで話すじゃないですか。そのとき印象的だったのが、みんなどれだけ大変な目にあったのか目をキラキラさせながら自慢しててさ(笑)。「初日にビバークした人こそヒーローだ!」なんて話したよね。

由美子 ツラさ自慢したいよね(笑)。

ーーその体験をこれだけの人数でシェアできるっていうのも面白いですよね。自分たちがどれだけ大変だったかとか、自分たちがどれだけうまくやったかとか、みんな語りたいはずですよね。

由美子 誰かもいってたけど、この地図見ながら何時間でもお酒飲めるよね(笑)。

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ーー僕の感想としては、OMMのスコアは大人の宝探しなんだなって。

由美子 うん、本当にそうですね。ドラクエみたいだし。ウチらがやってた「右に何歩、左に何歩」なんて正にそんな感じ(笑)。

夏目 スコアはそうだよね。でもストレートはまた全然違う世界なんだろうな。

由美子 ぜんぜん過酷だし、違う遊びなんだろうね。

ーーでもそこがまたOMMの面白いとこだなって。スコアだけじゃなく、ストレートだけじゃなく、両方合わせてOMMってところが。ランナーもハイカーも一緒に集えるような、懐の深さがありますよね。

夏目 だから、みんなにそれぞれのOMMがあるんだよね。でも、最高に面白い遊びであることは間違いない。

由美子 本当そうだね。失格になったけど充実感はあったよね。

ーーツラさより面白さが勝るんだ。

由美子 コントロールを見つけた時はすっごく嬉しいしね。

夏目 予想通りのとこに合ったときは本当に嬉しいよね。迷ったら迷ったで面白いし。

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ーー普段なら雨のなか一日中右往左往するのってそんなに楽しいことじゃないと思うんですけど、コースとコントロールと地図を与えられて、同じように参加している人たちがいると、たちまち面白い遊びに変わるという。この面白さってまだなかなか理解されていないと思うんですけれど、理解が広まったら参加したい人はいっぱいいる気がしますね。

夏目 でも人数増えすぎてもウチらが参加できなくなりそうで困るけどね(笑)。この楽しさを教えたいようで教えたくないというか(笑)。でも、今回は自分が知らなかったことを勉強できたのも良かったな。それは2日目に現れたよね。

由美子 たしかに1日目より2日目の方が成長を感じられたよね。

夏目 ナビゲーションに関してはちょっと自信がついた。

由美子 たった2日だけどね(笑)。

ーー身につけたスキルをもっと使ってみたくなりますよね。

夏目 使ってみたいね。3日目あったらいいのに(笑)。

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三田正明

三田正明

1974年東京都国立市出身。2001年に『Title』(文藝春秋)の連載「To The Boy /少年犯罪被害者の旅」でカメラマン/ライターとしての活動を始める。2001年にザンビアで皆既日食を見て以来南アフリカ・ジンバブエ・タイ・インド・オーストラリア・アルゼンチン・ブラジル・メキシコ・トルコ・ネパール・アメリカ・カナダ・モンゴルなどを放浪。これまでに皆既日食を五度、部分日食を二度、皆既月食を一度見ている。次第に旅の途上で出会った大自然の世界に傾倒し、気がつけばヒマラヤや北米大陸や日本各地のトレイルを歩くように。雑誌『スペクテイター』や『マーマーマガジン』を始めとする多くの雑誌にアウトドアにまつわるドキュメンタリーやトラベローグや連載記事を執筆、TRAILSではメインライターとエディターを務める。
masaakimita.web.fc2.com

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