TODAY’S BEER RUN #12 | サワー・スワンプ (千歳船橋)
文:根津貴央 写真・構成:TRAILS
What’s TODAY’S BEER RUN? | 走って、至極の一杯となるクラフトビールを飲む。ただそれだけのきわめてシンプルな企画。ナビゲーターは、TRAILSの仲間で根っからのクラフトビール好きの、ゆうき君。アメリカのトレイルタウンのマイクロブルワリーで、ハイカーやランナーが集まってビールを楽しむみたいに、自分たちの町を走って、ビールを流し込む。だって走った後のクラフトビールは間違いなく最高でしょ? さて今日の一杯は?
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『TODAY’S BEER RUN』の第12回目! 案内役は、毎度おなじみ、ゆうき君 (黒川裕規)。
彼と一緒に走って向かうのは、東京の世田谷区にあるビアバー&ボトルショップ『SOUR SWAMP』(サワー・スワンプ)。
なんと、2022年11月11日にオープンしたばかり! かつメディアの取材も今回が初! という超フレッシュなお店である。
新しいながらも、店主がこの連載の#05で紹介した和泉ブルワリー出身ということもあり、ゆうき君は立ち上げ前から情報を耳にしていたし、自分はというと自宅が近いこともありInstagramだけはしれっとフォローしていた。
そんなわけで、ゆうき君も僕も実は前々から気になっていた、新進気鋭のビアバー&ボトルショップなのだ。なにより、直訳すると『サワー沼』 (SOUR SWAMP) という店名が気になって仕方がない。
では、今回の『TODAY’S BEER RUN』をお楽しみください。
起点となる『TRAILS INNOVATION GARAGE』に集合した、ゆうき君 (右) とTRAILS編集部crewの根津。
NAVIGATOR / ゆうき君 (黒川裕規)
パタゴニアのフード部門『パタゴニア プロビジョンズ』で食品やビールを担当。前職がヤッホーブルーイングということもあり、ビールの知識も豊富。そもそも根っからのビール好きで、10年以上前からクラフトビールを個人的に掘りつづけている。TRAILS編集部crewの根津とは8年来のトレイルラン仲間で、100mileレースをいくつも完走しているタフなトレイルランナーでもある。『TODAY’S BEER RUN』のルール
①日本橋にある『TRAILS INNOVATION GARAGE』からお店まで走って行く ②『TODAY’S BEER RUN』のオリジナル缶バッジを作る ③ゆうき君おすすめのお店で彼イチオシのクラフトビールを飲む
GARAGE to サワー・スワンプ
スタート地点は、東京は日本橋にある『TRAILS INNOVATION GARAGE』。
この場のコンセプトである「MAKE YOUR OWN TRIP = 自分の旅をつくる」を体験するべく、まずは恒例の『TODAY’S BEER RUN』オリジナル缶バッジづくりから。
MYOG (Make Your Own Gear) ができる『TRAILS INNOVATION GARAGE』で、オリジナルの缶バッジを作るゆうき君。
オリジナルのバッジが完成! これをキャップに付けて走る。
前回の『TODAY’S BEER RUN』は真夏だったこともあり、走る前からクラフトビールが飲みたくて仕方がなかった。しかし、あっという間に時は過ぎて今や冬。
出無精になりがちな季節だけに、大して動きもせず飲み食いすると罪悪感を感じるもの。でも、この企画のおかげで健康的に、ポジティブにクラフトビールが飲めるなんて最高じゃないか。運動不足気味のゆうき君と僕は、笑顔でスタートを切った。
今回のルート
『SOUR SWAMP』までは、約16km。前半と後半でガラッと雰囲気が変わるのが特徴的なルートだ。
前半の渋谷までは、まさに首都東京! といった感じの都会ならではのビル群が多い。でも、渋谷を越えると住宅街が増え、郊外に来た印象を受ける。
たかだか16kmでも、そんな風景の移り変わりが楽しめるなかなか良いルートだと思う。
終盤、梅の名所としても名高い (今は季節外れではあるが) 羽根木公園に立ち寄ってみた。
園内にはイチョウ並木もあり、その並木の間を僕たちはトレイルランニング気分で、颯爽と駆けぬけた。
ずっと舗装路だと脚への負担が大きいが、こうやって公園にちょっと寄り道するだけでトレイルも味わえるし、気分もアガる。そしてクラフトビール欲はどんどん高まってくる。
千歳船橋の駅前商店街に現れた新星、『SOUR SWAMP』
『SOUR SWAMP』は、小田急線「千歳船橋駅」北口から徒歩3分、商店街の一角にある。
2022年11月にオープンしたばかりということもあり、店構えも店内もとてもキレイなのだが、一方で新店にもかかわらず、変に目立ちすぎることなく商店街に馴染んでいるのが、なんとも好感が持てる。
控えめな出で立ちではあるものの、実は『SOUR SWAMP』は、千歳船橋において初のクラフトビール専門店 (しかも酸っぱいビールに特化) なのである。
「待ってました!」という人も少なくないかもしれない。もちろん、僕もその一人である。
自然派ワインがきっかけで、サワーの美味しさに気づく
出迎えてくれたのは、店主の安中眞理子 (あんなか まりこ) さん。
安中さんは、もともとWEBデザイナー志望だったという。昔からクラフトビールが好きで、クラフトビールのデザインができる会社に入社。その会社がビアバーを運営していたため、勉強がてら現場にも立つことになったことが、今につながっている。
その後、ビストロを経て、原宿にあるビアバー「BEER CELLAR SAPPORO原宿店 (現Highline Liquid)」の立ち上げにかかわり、2年間勤めて、2022年に独立した。
なぜまたサワー (※1) なのか?
安中さん:「もともとはホッピーなビール (ホップの苦みや香りが効いたビール) が好きだったので、サワーは飲んだことはあったものの正直ちょっと苦手だったんです。でも、ビストロに勤めていた時に自然派ワインに出会って、変わりました。酸化熟成 (※2) のワインとかに触れて自然派ワインの物差しを持ってから、サワーにも共通点を感じるようになって好きになったんです」
てっきり、クラフトビールを飲みまくってサワーに行き着いたのかと思いきや、自然派ワインがきっかけだったとは。であれば、自然派ワインの道に行きそうなものだが、安中さんはそうではなくクラフトビールに戻るのがまたユニークである。やっぱりビールが好きなんだそうだ。
安中さんは、自然派ワインを提供するビストロを経ているだけあって、提供しているクラフトビールを、ぜひ食中酒としても楽しんでほしいと言う。
安中さん:「自分は料理人ではないので、しっかりした料理は提供できないですけど、ペアリングも楽しんでもらいたいですね。あと、ハレの日とかにワインをお任せで選んでもらうことってあると思うんですけど、そういう感じでクラフトビールも相談してもらえたら、よろこんでご提案します。そういう人が増えたらいいなと思いますね」
ゆうき君のイチオシの「TODAY’S BEER」
ゆうき君の今日のイチオシはこれ。
『Bellwoods Brewery / Jelly King』(ベルウッズ・ブルワリー / ジェリーキング)
ゆうき:「カナダのBellwoods Breweryの定番ビール『Jelly King』。スタイルは、ほどよい酸味に加えて、ホップも効いていてサワー系を普段飲まない人にもぜひおススメしたいDry Hopped Sour。
トロピカルな香りで、口に含むと酸味とほのかな苦みが口いっぱいに広がって、酸味と苦み両方が楽しめる大満足なビール。しかもボディも軽めだから、走ったあとにもゴクゴク飲めるサワーだね。
ちなみこの定番の『Jelly King』にプラムやラズベリー等のさまざまなフルーツを加えたアレンジ版もあって、そっちも個性的で美味しいのでぜひ飲んでみてほしい!」
『SOUR SWAMP』が提供するサワーだけあって、酸っぱいのが来るぞ、来るぞと思って飲んだのだが、意外や意外、最初の飲みくちはホップ感が強くサワーとは思わないくらい。
ただ、そのあとに酸味がぐわーっときて、後味がとてもスッキリしているのが印象的。最初の1杯とは言わず、2杯、3杯と飲んでも飲み疲れしないビールだ。
ひとくちに『サワー』と言っても、イメージは人それぞれ。サワーという言葉にとらわれずに、こんな感じのが飲みたいんですけど! と安中さんに気軽に相談してみると、新たな発見があるはずだ。
安中さん:「酸味のあるシードル (※3) も置いていますし、自分が酵母感があるものや、食中酒が好きなこともあって、その延長でワインのブドウ品種を添加してワイン樽で熟成させたビールもあったりします。ビールの垣根を越えるようなものも提案できますので、相談してもらえるとうれしいです」
そう、『SOUR SWAMP』が扱っているのは、クラフトビールがメインではあるものの、何もビールだけではない。シードルやジンも扱っているのだ。
しかも、抜栓料が相場より安い100円ということもあり、タップ (常時5-6種類) 以外のボトルも、気軽に購入してその場で飲むことができるのもうれしい。大瓶のラインナップも結構あるので、仲間と一緒にきてシェアするのもおすすめだ。
最後に僕は、TRAILS編集部crewへのお土産ビールを、安中さんにセレクトしてもらった。こうやって相談して、ベストなクラフトビールを提案してくれるのは、純粋にうれしいし心地よいものだなと感じた。
今回も、走ったあとのクラフトビールは最高!
『SOUR SWAMP』は、サワーに馴染みのない人を連れてきても楽しめるし、ワイン好きの友だちを連れてきても楽しめる、そんなビールとワインの垣根をなくしてくれるビアバー&ボトルショップでした。
さて、次はどこのクラフトビールを飲みにいこうかな。
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