TRAIL FOOD #03 | パックラフティング × トレイルフード by 羽原健二
話・写真:羽原健二 構成:TRAILS
What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキングやハンモック・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。
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ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。
そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。
第3回目の今回は、これまで『パックラフト・アディクト』の連載にも何度か登場してくれている、パックラフターの羽原健二 (はばら けんじ) くんだ。
パックラフティング × トレイルフード
ケンジくんは、広島在住でパックラフティング歴9年のパックラフター。TRAILS編集部crewとも、四国の四万十川支流の黒尊川 (くろそんがわ) をはじめ、東北の閉伊川 (へいがわ)、紀伊半島の北山川など日本各地の川を一緒に漕いでいる仲間だ。
彼は激しい流れの川よりも、キャンプと組み合わせたメロウなツーリングの旅を好む。そして川旅では、何より河原キャンプで、まったりと焚き火とメシと酒を楽しむのが大好きな男である。
そんなケンジくんは、実際のところ、パックラフティングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。
・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード
第1位:キノコとチーズのホイル焼き
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
アルミホイルを使うことで、フライパンなどを余計に持たず、荷物を減らすことができるのがよい。重い食料を持ち込んで、グリルなどミニマムなULギアだけで調理している矛盾も心地よい。
僕の旅では、たいがい川へのプットイン・ポイントの近くにある、地元のスーパーで食材を調達する。パックラフトの旅では、荷物は舟に積んで運べる時間が長いので、バックパックの中身は、ハイキングのときよりも重量に対する許容量が上がる。そのためパックラフトの旅では、フードはちょっと贅沢にできるのだ。
僕が毎回作っているのは、キノコとチーズのホイル焼き。ホイル焼きでは、アスパラや魚などもやったりするが、きのこが定番になっている。きのこは、だいたいどこでも手に入るし、自分の地元には売っていない、ご当地キノコを見かけることもしばしばあり、それも楽しいのだ。
「焚火で作るホイル焼き」というだけで特別感が増すし、仲間にも喜ばれる。
■ 作り方
数種類のキノコにチーズを乗せ、ホイルで包んで焚火の遠火でじっくりと。
最後に醤油をほんの少し。チェダーチーズを使用するとインパクトが出て特別感が増す。余ったチーズはいぶりがっこなどと一緒にどうぞ。
第2位:グラノーラ
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
川の上は日差しを遮るものがない場所が多く、バウバッグ (※1) やカーゴフライ (※2) の中は高温になりがち。そのため食材は、常温保存ができるものがメインとなる。
以前、TRAILS crewとも一緒に旅した、四国の黒尊川のロングツーリングで、行動食が足りずシャリバテになったことがあった。それがきっかけで、バウバッグにグラノーラを忍ばせるようになった。
なんとなく選んでいたところもあったが、調べてみるとカロリーも高く、鉄分やビタミンなどもバランスよく含まれている。長めの川旅にはもってこいのトレイルフードだ。
休憩中のおやつとしても満足感があるし、二日酔いぎみの朝は豆乳やミルクティーをぶっかけて流し込むのがおすすめ。
■ 作り方
お好みのグラノーラをどうぞ。ドライフルーツやナッツを追加するとワンランクアップ。水で溶けるスティックタイプのミルクティーと相性良し。
第3位:地元食材の焚き火焼き
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
舟でしか辿り着けない、河原での焚き火は最高だ。旅先のローカルスーパーで調達したご当地食材を、焚き火で焼いて食べるのが僕のパックラフトの旅における定番である。
パックラフティングは川沿いのローカル鉄道を利用して移動することが多く、町と町をつなぐ旅でもある、と思っている。旅先のローカルスーパーでの買い出しは、その土地の食文化を感じることができるため、僕の旅ではイベントのひとつになっている。
焚き火でよく食べるもののひとつは、焼き野菜。地元で調達した野菜を焚き火で焼くだけだが、野菜本来の味が凝縮され、かつ瑞々しさもあって最高だ。
他にも、川で出会った釣り師の方から、鮎をいただいたこともある。もちろん焚き火で焼いた鮎はこの上なく美味しく、これこそ川旅で味わうローカルフードの最たるものだ。
■ 作り方
旅先で地元の食材を調達して焚き火で焼くだけ。
記憶に残るトレイルフード:ローストビーフ
■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント
川から上陸し友人がおもむろに取り出した肉の塊。「痛んでないの?」と半信半疑だったが、きちんと保冷されていた。
さきほども書いたが、多少の重量増でも、パックラフティングなら舟に乗せて運んでしまえば、それほど苦にならないというところが利点だ。肉の塊?とも思ったが、それを仲間とシェアすると考えれば、意外と一人当たりの重量はそれほどでもないかもしれない。
この肉の塊は、前日の雨で湿った薪では思うような火力が得られず、燻る焚火台で1時間以上かけて焼き上げた。結果、最高の焼き加減とスモーキーな香り。人生で最上のローストビーフとなった。
これこそパックラフトの醍醐味。河原の焚き火料理のなかでも、いままでで一番インパクトがあったパックラフトメシだ!
■ 作り方
肉に下味を付け、弱火でじっくりと火を入れる。肉が大きすぎて持ち上げれなかったのでペグを差し調理した。
パックラフトの旅は、焚き火をしながらの河原キャンプが大きな楽しみのひとつだ。そのため、ケンジ君のトレイルフードも、焚き火での調理がメインのものを挙げてくれた。
ハイキングと異なり、パックラフティングでは、川の上では荷物は背負わず、舟に載せて運べるというのが特徴のひとつ。そのため、ハイキングのときよりも、フードの重さに対する許容量が少し上がる。また山奥と比べ、川の近くには町があることが多いため、ご当地食材など現地調達をしやすいこともパックラフティングの旅の特徴かもしれない。
そんなパックラフトのメリットを存分に生かしたケンジくんのトレイルフードには、川旅の魅力が詰まっていた。
また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!
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