TRIP REPORT

SKI HIKING | #10 トニー、サニー、ノブのBCクロカン・トリップ あまとみトレイル2DAYS(トリップ編・その1)

2024.02.16
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TRAILSの『SKI HIKING』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事。BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力で、雪の世界におけるハイキングの旅を拡張してくれる。

今回、BCクロカンで1泊2日の旅をしたのはTRAIL Crewの3人。PCT、CTスルーハイカーのTony (トニー)、JMT、PCT、CDTスルーハイカーのSunny (サニー)、JMTスルーハイカーのNobu (ノブ) だ。

前回の計画編で、使用するギアも選び、テンションも最高潮の3人。いったいどんな旅がはじまるのか。今回は、トリップ編・その1をお届けする。


しなの鉄道北しなの線「妙高高原駅」にて。ここがスタート地点だ。

東京から電車を乗り継いで約3時間。ついに、スタート地点の妙高高原駅へ!


長野駅ではまったく積もっていなかったが、妙高高原駅は雪景色だった。

東京から北陸新幹線に乗って長野駅まで。そこから、しなの鉄道北しなの線に乗り換えて妙高高原駅へ。

長野駅では雪はパラついてはいたものの、まったく積もってはいなかった。でも、妙高高原駅に近づくにつれ、あたりは雪景色になっていった。

ついに来たぜ! 雪のトレイルを、軽快に滑って歩く1泊2日の旅路。スタート地点へと近づくにつれ、いやがうえにも期待が高まっていった。もうワクワクしかない。


駅舎で準備。まだまだ余裕の表情。

妙高高原駅は、レトロで風情ある駅舎が特徴的。あたり一面雪景色で、長野駅から50分足らずだが、ずいぶんと遠くまで来た感じがした。

「いよいよ始まるねー」。お互いそんな言葉を交わしながら、旅支度。駅のコインロッカーに不要な荷物を置き、あらためて必要なギアをチェックしてパッキングをしなおす。

まだ歩いてはいないけれど、もう旅は始まっている!


今回の行程は、妙高高原駅をスタートしてから南下し、あまとみトレイルに合流後、いもり池を経由して苗名滝まで行き、そこから折り返して野尻湖のキャンプ場に向かうプランだ。

あまりの雪で、のっけからルート変更!


駅からはしばらく舗装路歩き。雪はしんしんと降っている。

はやる気持ちを抑えられない3人だが、それぞれJMTやPCT、CDTなどアメリカでのスルーハイキングを通じて自然の脅威を体感しているだけに、冷静ではあった。

天気予報だと、これから徐々に風雪が強くなり、平均風速は5mオーバー、積雪も60cmを超える見込み。電車の運休もすでに発表されていた。さすがに、やばいかも……。

当初のプランでは、妙高高原駅を出発して、信濃大橋のあたりからあまとみトレイルに入り、いもり池、杉野沢集落を経て、苗名滝まで向かって、そこで折り返して野尻湖まで行くつもりだった。

でもこれから天気が荒れてくことを考えると、苗名滝までは厳しいかも。でも、まずは前進! とりあえず杉野沢集落まで目指してみよう! となった。


除雪はされているものの、それなりの雪が積もっていた。

しばらくは除雪された舗装路を歩く。まだ板は履いてなく、バックパックに取り付けている。テント泊の装備、鍋の具材なども含め、バックパックは10kg超といったところ。

寒さもあってか思った以上にずっしりと重い感じがしたが、足取りは軽やか。というのも、今やスキーと言えばハイカットのプラスチックブーツが主流だが、BCクロカンはミドルカットの革製 (合皮) ブーツだからだ。

履き心地、歩き心地はトレッキングブーツと大差なく、とにかく歩きやすい!


いよいよ、あまとみトレイルに合流!

2時間ほど歩いたところに、あまとみトレイルの道標があった。ここから舗装路を外れて、トレイルへと入っていく。当然ながら除雪がされていないので、トレイル上にはがっつり雪が積もっている。

いよいよここから、僕たちのBCクロカンがはじまる。

意気揚々と滑り出すも、もはやラッセルに近くなかなか進まない。


あまりの雪の深さに、ノブが足を取られて転倒。

思った以上に雪が深かったこともあり、板を履いて歩き出した途端、ノブがバランスを崩して転倒!

まあ、ある程度の荷物を背負ったBCクロカントリップでは、転ぶことは珍しくはない。大して気にもとめずに進もうと思ったけど、ノブがなかなか起き上がらない。雪が深いのと荷物が重いのとで、起き上がることができなかったのだ。すぐさまトニーがポールを差し出してサポートする。


気を取り直して、前進、前進。

これは思った以上に手こずるかもなぁ……。そんなことを思いながら、緩やかな登りを進んでいく。

でも、地図を見る限り3kmくらい進んだら下りに入るようだ。そこまで行ければラクになると思い、ラッセルをしながらぐんぐん進んでいく。

しばらくして現在地をチェックしてみると、トレイルに入ってから2時間歩いてたった1kmくらいしか進んでいない。マジかよ! とツッコミたくなった。降雪も積雪も、天気予報以上にひどいように思えた。そういえば、地元の人が驚くくらいの今年一番の雪と言っていた人がいたなぁ。

「そろそろ戻ったほうが良くないですか?」とサニー。あまりに距離をかせげてないし、激しくなるばかりの雪。さすがに、このまま進んだとしても日没までにキャンプ場には着けそうにない。

「とりあえず引き返そう」というトニーの号令のもと、トレイルを進むのは諦めて、舗装路を使って野尻湖の湖畔にあるキャンプ場に向かうことにした。


思った以上に進みが遅く、このあたりで引き返すことを決断。

行き交うクルマの運転手に奇異な目で見られながら、キャンプ場へ。


国道18号線。僕たち以外に歩いている人はいない。

あまとみトレイルから外れ、国道18号線へと入っていく。

雪はどんどん強くなってくる。歩いている人は誰もいなく、地元の人であろうクルマが、前後両方から走ってきては通り過ぎていく。

大雪でクルマもさほどスピードは出していない。車内の人と眼が合うことも度々あったが、ほぼ全員ギョッとした目をしていた。そりゃそうだ、こんな日には地元の人ですら歩いていないのに、明らかに地元の人でないであろう3人が重装備で国道を歩いているのだ。気に留めないことのほうが難しい。

「乗って行きますか?」と何回か声もかけられた。正直、嬉しい! 乗りたい! とも思ったのだが、今回はBCクロカン・トリップに来ていることもあり、丁重にお断りさせてもらった。


トンネルは雪がなく、風も防げるので、安心感がある。

アップダウンのない道を歩いているだけだと、さすがにカラダが冷えてくる。早くキャンプ場に着かないかなぁと思っていると、野尻湖の手前にコンビニを発見!

嬉々として中に入ってホットコーヒーを買い、熱々のコーヒーを流し込む。「あぁー、生き返ったー」と声が漏れる。


コンビニでしばらく休憩。みんな笑みがこぼれる。

こんな日にオレたち何やってんだろ? と思わなくもない。でも、誰もやらないようなことだから面白いし、予定調和じゃない旅をしている感じがして、こんな日だからこそ来て良かった! とも思うのだ。

降りしきる雪の中、テントを設営して寝床を確保。


日が暮れる前に急げ、急げと、整地にいそしむ。

野尻湖にあるキャンプ場には、15時過ぎに到着して受付へと向かった。ホテルが運営しているキャンプ場なので、受付はホテルである。

支配人は日本生まれのアメリカ人のテッドさん。キャンプ場を予約している旨を伝えると、開口一番「この天気でキャンプするなんて、クレイジーだ!」と。もう苦笑いするしかない!

「何もこんな天気の日に無理してキャンプしなくてもいいじゃじゃないか」「ホテルの客室が空いているから泊まったらいいじゃないか」など、いろいろ提案された。

最初は、大丈夫、大丈夫! と軽く答えていたものの、本気で心配しているテッドさんは引き下がらない。そりゃそうだ、相手がごく普通のオートキャンプ利用者だったら、僕たちも逆の立場なら必死で止めただろう。

僕たちは素性を明かし、3人ともアメリカでのスルーハイキング経験者で、悪天候下でのテント泊も幾度となく経験していることを伝えた。テッドさんも納得してくて、「でも本当にやばくなったらホテルに来るんだぞ」と言って送り出してくれた。

日没前には設営を終わらせたい。そう思って、3人で協力しながら急いで整地をし始めた。


すっかり日が暮れてしまったが、あと一息で設営完了だ。

雪がヒザ上くらいまで積もっていたので、3人分のテント場を整地するのは、なかなか大変。

気がつけば、あたりは暗くなり始めていた。ヘッドランプを出して照らしながら、それぞれのテントを設営する。

さらに雪が強くなってくる。もう横殴りの雪だ。「雪やばいねー」「早くテントの中に入って休みてー」とぶつくさ言いながらも、ちょっと高めなテンションになって楽しくなってきているから不思議だ。

3人のテントが完成した時には、あたりは真っ暗、吹雪いてもいて、湖畔のキャンプ場のはずが雪山にでも来ているかのようだった。


吹雪いてきたものの、なんとか設営完了。このあとは、苦難が待ち受けているのか、それとも安堵に包まれるのか……。

あまりの雪で、当初のプランを変更して短縮ルートでキャンプ場にたどり着いた3人。

ホテルの支配人から「クレイジーだ!」と驚かれた3人は、無事に夜を越せるのか? 2日目はどんな旅になるのか? 次回のトリップ編・その2をお楽しみに。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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