TRAILS REPORT

SKI HIKING | #03 BCクロカンで旅する、厳冬期のイエローストーン国立公園

2019.05.01
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文:根津貴央 写真:福地孝、土屋智哉、根津貴央 構成:TRAILS

今回は、冬のイエローストーン国立公園(アメリカ)を舞台にした、BCクロカンのトリップレポート!

このトリップは、たんにイエローストーンを旅しよう! というものではなく、実はこのエリアに生息するオオカミがお目当て。

さながら探検隊的なノリで、「最低気温はマイナス40℃ !? 厳冬期のイエローストーンで、オオカミの群れを追え!」といった感じなのです。

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旅の仲間はこの5人! 前列中央が土屋さん、左がシンペーちゃん、後列は左から根津、福地さん、タッチーさん。

このトリップの発起人かつ隊長は、アルトラの福地さん(前回の記事で登場した、アルトラの輸入・販売を手がける株式会社ロータス代表)。

その他のメンバーは、ハイカーズデポの土屋さん、フーディニやノローナを扱うフルマークスのタッチーさん(舘下さん)、フォトグラファーのシンペーちゃん(小関くん)、そしてTRAILS編集部の根津。

いったいどんなBCクロカン・トリップになったのでしょうか。さっそくご覧ください。

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クルマでスタート地点に向かう途中で、すでにバッファローの群れが。これはきっとオオカミもいるに違いない。


スキーで移動しながら、冬のオオカミを探しに行きたい!


発端は、福地さんがアメリカ在住時代にたまたま見たテレビ番組だった。ナショナルジオグラフィックの番組で、その内容は、とあるフォトグラファーが野生動物を求めて、イエローストーン国立公園をスキーで巡るというものだった。

福地:2008年くらいにナショジオの番組を見て、すごく憧れたんです。こんな風に旅をしてみたい。そして、冬のイエローストーンのオオカミを見てみたい!と。

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「National Geographic – Christmas in Yellowstone Nature」は、福地さんの憧れのきっかけとなった番組。(https://www.youtube.com/watch?v=SxJ627UAUzc)

当時、僕のまわりの人たちはUL(ウルトラライト)にハマっていて、いろいろギアを自作していたわけです。で、その中に、フルカーボンのスキー板のソールを、ドリルかなんかで削ってウロコを作っている人がいて(笑)。これならシール(※)の着脱もいらないからラクじゃんって思って、まずはテレマークスキーから始めたんです。

※シール:スキーシール(クライミングスキン)のこと。スキー板の底面に貼り付けるシール状のもので、これを用いると斜面を登ることができる。

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福地さんが、イエローストーンの旅を想定してテレマークスキーを始めた時に使用していた、メレルの半プラ・半革ブーツ。

2013年にアメリカから帰国して、そのタイミングで、今回一緒に旅したハイカーズデポの土屋さんからBCクロカンなるものを聞いて興味を持ったんです。特にイエローストーンは山を登るというよりは、細かいアップダウンを繰り返す感じなので、このBCクロカンはピッタリだなと。

そこからハマり始めて数年経って、満を持して仲間と一緒に憧れのオオカミを探す旅をしようと決意したわけです。

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トレイルヘッドには駐車場があるため、そこまでクルマで移動。ラマー・リバー・トレイルというトレイルを入っていく。距離は、DAY1が5.3km、DAY2が8.3km、DAY3が5.8km。


DAY1 / 10年越しのイエローストーン


当時調べたところによると、冬のイエローストーンはブリザード(激しい吹雪)が吹くと、−40℃にもなるとのことだった。それを想定しての旅だったため、2泊3日とはいえ、担ぐ荷物も20キロ前後にまで膨れ上がっていた。

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福地さんはロープも携行していたのでこのボリューム。とはいえ、初日はお互いに写真を撮りあったりと和気あいあいとした雰囲気。

福地:アイゼン、ピッケルはもちろん、寒さに備えてオーバーブーツも探して用意しました。もしかしたらテントペグも刺さらないかもと思ってアイススクリューも携行して。さらには、川の下のほうに降りることも想定して、30メートルのロープも持っていったんで重かったですね。

それが、行ってみたら驚くほど暖かくて(苦笑)。冷え込んでもマイナス数度レベルでした。

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出発前に、レンジャーステーションで取得したバックカントリー・パーミット。旅行の手段は、スキーと明記されている。

まあでも、それは些細なことで、特に1日目は憧れの地に来た高揚感でいっぱいでした。レンジャーステーションでパーミットもゲットしてね。ついに来たぞ! 10年越しで念願が叶う時が来た! と思っていました。

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トレイルヘッドの駐車場にクルマを停め、いざスタート。まずはラマー・リバー・トレイルを行く。


DAY2 / 現地のレンジャーお墨付きのオオカミスポットへ


DAY1はベースキャンプ地までの移動で終わり、オオカミ探しの旅の核心はこのDAY2だった。事前に調べておいたオオカミの生息地に向かって、歩いて登って滑ってを繰り返す。果たして、オオカミと対面することはできるのか。

福地:オオカミの群れがどう分布しているかが分かるWEBサイトがあるんです。事前にそれをチェックしていたのですが、いちばんいそうなところに行くなら今日だなと。

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イエローストーンのオオカミの群れ(WOLF PACKS)の情報を提供しているWEBサイト(https://www.yellowstonewolf.org/yellowstone_wolf_packs_historic_ranges.php?)

このプランに関しては、昨日、パーミットを取る際に担当のレンジャーにも伝えていて。そしたら「それは間違いない!」って言ってたんでかなり期待してました。

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レンジャーも、僕たちのプランに太鼓判を押してくれた。この時は、オオカミに出会える! という確信しかなかった。

僕のイメージだと、広大な雪原にオオカミの群れがブワーッとあって、さらにムースが川の中をバシャバシャ走って……というイメージでした。

でも、この日に狙ったとこには、結局オオカミはぜんぜんいませんでした(苦笑)。仲間からは、動物を見るんだったら動かずじっとしているべきだよねー、なんていう正論も出たんですけどね。

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川は凍っている箇所もあったので、適宜渡りながらオオカミを探した。でもこの後、別のエリアで氷が割れるという大事件が……。

でも、やっぱり移動したいわけですよ。だって、BCクロカンで歩いたり滑ったりするからこそ楽しいわけで。そのあと、川に落ちるっていうまさかのハプニングはあったけど、川沿いの移動も気持ち良かったなぁ。

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川の氷が割れてヒザまで水に浸かってしまった隊長の福地さん。ベースキャンプに戻ってから、うなだれた表情で衣類をひたすらに乾かすことに。


DAY3 / BCクロカンで歩いて滑るだけでも楽しい


オオカミに出会うことなく2日間が過ぎ、いよいよこの旅も最終日。DAY3はDAY1とほぼ同じルートを戻る行程。オオカミを見る秘策などは存在しない。あとは運にかけるのみ。10年越しの夢は実現に至ったのか。

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最終日は快晴! 今日はなんだか良いことが起こりそうな予感。

福地:1日目、2日目は曇りだったけど、ようやく晴れたよね。最高の天気。青空の下で滑ったり、ジャンプしたり、そういう楽しみ方ができるのがやっぱBCクロカンだなと。ぶっちゃけ、オオカミはちょっと無理なんじゃないかと思ってました。

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こういった下り斜面を、滑って楽しめるのもBCクロカンの特徴。オオカミのことなど忘れたかのように夢中になる福地さん。

そんな時に、あれ? って思って。遠くになんか動物いるなと。それで単眼鏡で見たら、おぉぉぉーーー! って。一匹オオカミでした。もう立ち尽くしたよね。10年間思い続けて、ようやくその時が来た。最高の仲間たちと最高の瞬間です。写真を撮るタイミングは逃したけど、満足でした。

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ゴール地点にて。福地さんも、達成感と満足感でいっぱいのよう。でも、次は10日間くらいかけてじっくりとオオカミを探しにきたい! とのこと。隊長の野望は尽きることがない。

次回、BCクロカン4部作の最終回は、『BCクロカンで旅する、春の信越トレイル』。TRAILS編集部Crewによる、雪が残る信越トレイル1泊2日の旅です。お楽しみに。

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根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年、TRAILSに正式加入。2024年よりTRAILSのHIKING FELLOWに就任。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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