スキーハイキング | #19 トニー、サニー、イエスのBCクロカン & MYOGハンモック・トリップ 2DAYS(ギア編 その1)

『SKI HIKING (スキーハイキング)』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした記事シリーズ。
BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力の高さで、スノーハイキングの旅を拡張してくれる (TRAILSがBCクロカンに惹かれた理由はコチラ)
今年はTony (トニー)、Sunny (サニー)という前年のメンバーに、新たにYes (イエス) が加わり、TRAILS Crewらしく「MYOG (※1)」 がテーマとなった。
今回の記事は、計画編、トリップ編につづく「ギア編 その1」。「バックパック」「BCクロカンのスキー板」「MYOGしたハンモックやタープ」など、3人それぞれが使用したギアのレビューをお届けする。
ULハンモックやULツリーストラップを自作するMYOG SCHOOLと、また自宅でそれらを自作するMYOG kitもリリースしたので、そちらもチェックしてみてください。(ULハンモック SCHOOL / ULハンモック MYOG kit / ULツリースストラップ SCHOOL / ULツリーストラップ MYOG kit)
※1 MYOG: MAKE YOUR OWN GEARの略。ギアの自作を指す。特にここでは、ロング・ディスタンス・ハイキングとウルトラライト (UL) ハイキングの文脈におけるギアの自作を指す。
左からサニー、イエス、トニー。
Tony (トニー)
TRAILS INNOVATION GARAGE(以下、GARAGE) の店長。2015年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) 、2023年にはCT (コロラド・トレイル) をスルーハイキング。
Sunny (サニー)
GARAGEの「MYOG番長」。2016年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) 、2019年にCDT (コンチネンタル・ディバイド・トレイル) をスルーハイキング。
Yes (イエス)
学生時代からTRAILSに出入りし、2024年にJMT (ジョン・ミューア・トレイル)を歩いた後、正式にTRAILS Crewにジョイン。JMTではタープやビヴィをMYOG。
ギアレビュー① バックパック
バックックパックは、TRAILSオリジナルプロダクト「ULTRALIGHT CLASSIC Series」の『LONG DISTNCE HIKER』(55L / 500g)。
トニー:「今回は、天気予報では−12℃〜-15℃くらいまで冷え込む予報で、そのなかでのハンモックでの雪中キャンプ装備、そして宴会の食材などもあって、みんな『LONG DISTNCE HIKER』(55L / 500g) という選択だったね。」
イエス:「スキー板の取り付けは、自分とトニーさん、前回の旅で実験したTIPSを活かして、バックパックのサイドパネルにあるバンジーコードと、それにストラップを組み合わせて取り付け、というやり方でしたね。こんなにシンプルなバックパックでも、スキー板の取り付けまで拡張できるんだ、というのはちょっとした自信になりました。」
昨年のTRAILS Crewのスキーハイキングで実験したバンジーコード (上部) とストラップ (下部) でスキー板を固定する方法。
サニー:「オレは、今回はスキーのアタッチメントのため、TRAILSのバックパックに、ベルクロを縫って付けたら完璧じゃんって思って。でも、さすがに自分たちが売ってるバックパックにハサミを入れちゃまずいな思ったんですよね。そしたら編集長の佐井さんから『それ、実験してみようよ!』ってまさかのOKが出ちゃって(笑)。で、ハサミを入れて、ベルクロを取り付けました。」
トニー:「実際、ベルクロでスキー板を取り付けてみて、どうだった?」
サニー:「めちゃくちゃ調子よかったです!スキー板の取り外しは、段違いで早くなりましたから!」
イエス:「サニーさんは、スキー板を履いたり、脱いでバックパックに付けるのが、僕たちより段違いで早かったですもんね。」
サニーは、バックパックのサイドにベルクロを縫い付けて、スムーズに板を取り外しできるように改良。
トニー:「BCクロカンの板は普通のスキー板よりも軽いから、ベルクロにビンディングをひ引っかけるだけで、ちゃんと固定されていたね。このミニマムな拡張だけで、かなり機能性が上がっているよね。」
ギアレビュー② スキー板 (BCクロカン)
左から、「FISCHER / Excursion 88 Crown」179cm、「MADSHUS / EON 62」165cm、「WhiteWoods / Titan」160cm。
トニーが使用したのは、「WhiteWoods / Titan」(160cm)。
トニー:「自分が今回選んだのは、ホワイトウッズのタイタン。これは長さ160cmと短めで、小回りの良さを期待してこれにした感じ。」
サニー:「去年は、カルフのすごく長いの使いましたよね。」
トニー:「そう、去年はカルフの10th マウンテンツアーという2mくらいの長い板を使って。直進性は優れていたんだけど、小回りや板の取り外しがやや大変というのがあって、今回は極端に長さの違うものを実験してみたいと思ったの。で、ホワイトウッズのタイタンは、小回りの良さは期待通り。デザイン面でも木目のクラシックな感じもお気に入りでした。」
イエス:「そういえば、今回のトニーさん、僕たちよりも多く雪に埋まってた印象ありましたよね。」
トニー:「長さが短い分、今回の豪雪に対しては浮力が弱かったよね、実際のところ。今回の雪質、雪の量だったら、正直に言うと、前回のカルフの板の方が、長くて浮力があってよかったと思う。このホワイトウッズのタイタンは、また雪がかたまった春スキーとかでも改めて試してみたい。」
サニーが使用したのは、「FISCHER / Excursion 88 Crown」 (179cm)。
サニー:「自分が使ったフィッシャーのエクスカージョン88 クラウンは、長さ179cmで昨年使ったマズシャスのイオン (165cm) と比べても長く、加えてしっかりしたキャンバー (※板のセンター部分が、アーチ型に反っているいる形状) も手伝って、かなり軽快に滑走できましたね。」
トニー:「そうだね、ソール (板の接地面) もワックスをかけていた効果もあったのか、サニーのはひと蹴りで進む距離も長い感じがした。」
サニーとトニーが使用したビンディングの、ロッテフェラー / BCオート。わざわざかかがまずに、前の部分をトレッキングポールの先で押すだけで、ブーツを取り外せる。
サニー:「そうですね。春スキーのビシャ雪でもかなり楽しめそうな板でした。
ちなみにビンディングはロッテフェラーのBCオートで、昨年は同じブランドのBCマニュアルを使いましたが、BCオートはかがまずに、立ったままブーツを板に装着できるのでとても快適でした。
もちろん、去年のBCマニュアルは、かがまないといけないという手間はありますが、構造がシンプルで不具合が発生しづらいメリットがあり、それぞれ良し悪しがあるのですが。」
イエスが使用したのは、「MADSHUS / EON 62」(165cm)。
イエス:「僕が選んだのは『歩く』と『滑る』の機能のバランスの良さで定評のある、マズシャスのイオン62 (165cm) です。
自分は小さい頃にスキーをやっていたので、『滑り』もやりたくてこのモデルを選びました。
サニー:「歩くと滑るのバランスは、マズシャスのイオン62はいいよね。」
イエス:「今回は、かなり深い新雪だったこともあり、あんまり滑りの性能を実感できるフィールドはなかったのが残念です。トラバースなどでスイスイ行けるところでは、『歩く』と『滑る』の間という感覚で、すーすーと進む気持ちよさはありましたね。
テント泊装備を持っても十分な浮力もあったところも良かったです。滑走性も含め、違うフィールド環境で、この板の機能が発揮されるところで、また使ってみたいと思いました。」
ギアレビュー③ ハンモック & タープ
今回のMYOGしたハンモックとタープでの、雪中ハンモックキャンプの風景。
トニー:「今回いろいろなサイズで、ハンモックをMYOGしてみたけど、それぞれどんな感じだったか、みんなでレビューしてみよう。」
イエス:「今回まず大前提ですが、破けたり、壊れたりはしなかったですね (笑)。」
トニー:「今回はアメリカのロング・ディスタンス・ハイカーでも定番のENOのSub6™のサイズ幅120cmの、長さ270cmを基準にしながら、長めなものと、短めなものを作って、実験してみました。生地の厚さも組み合わせでバリエーションを作ってみたね。 (詳細はコチラ)」
ギアレビュー③-1 ハンモック & タープ (トニー)
シルポリ20Dで、実験してみたハンモック。
トニー:「まず実験的に作ってみたシルポリ20Dのハンモック。
通常ハンモックで使用されるコーティングなしの生地と実際に比べて、コーティングのあるシルポリとかシルナイロンって、本当にハンモック向きではないのか?という実験だね。」
イエス:「トニーさんが座ってみて、かなり滑ってましたよね。」
トニー:「そう、想定をしていたとおりだけど、コーティング面がツルツルして、滑って体が全然安定しなかったね。寝てみても、生地の滑りやすさだけでなく、伸縮性もないことで体のフィット感、ホールド感がないのが難点だったね。」
サニー:「常識の再検証という感じでしたが、実際にやってみて体感する納得感がありますね。」
トニーがMYOGしたハンモック。使用し生地は、Hexon 1.2 リップストップ・ナイロン 30D。
トニー:「今回、自分がMYOGしたのは、長さが少し短め260cmで設計したハンモック。生地は、軽量さと快適さを両立した厚みのHexon 1.2 リップストップ・ナイロン 30Dですね。」
イエス:「僕も普段使ってるENOのSub6™より長さが10cm短いサイズですね。斜めに寝たりするのも、問題なくできました?」
トニー:「うん、問題なかった。少し短めの長さでも、自分の体型だったら十分にフィットするなという感覚を得られたのは収穫だったな。生地の肌触りもさらさらして、個人的にも好みだったなぁ。」
トニーの野営システム。タープの生地は、タイベック® ハード。
イエス:「タイベック® ハードで作ったタープはどうでしたか?もともとの90cm幅の生地を、両面テープで2枚を貼り合わせた感じですよね?」
トニー:「小さいのは承知の上で試してみたけど、体に近づけて張るようにとか工夫はしたものの、正直、サイズは小さかったね。結構、粉雪も吹き込んできてしまったり。あと、想定していた通りではあるんだけど、どうしても生地のガサガサする音が気になってしまった。木から雪が落ちてきて、タープに当たったときとか、ガサッ!ってすごい音したもんね。」
サニー:「あの、寝袋から手と足が出るNunatakのRakuはどうでした?」
トニー:「防寒の観点では、NunatakのRakuと、アンダーキルトで使ったWestern Mountaineeringのスリングライトの組み合わせは、今回の-12℃の気温でも快適な温かさを保てたね。Rakuは、寝袋の足側をジッパーで開けて足も出せるから、ハンモックで寝たり起きたり、ちょっとハンモックから離れて物を取ったりするのも、寝袋のなかの温かさを維持したままできるのが良かった。」
ギアレビュー③-2 ハンモック & タープ (サニー)
サニーがMYOGしたハンモック。使用した生地は、Hexon 1.0 リップストップ・ナイロン 20D。
サニー:「みんなでいくつか作成したハンモックのうち、自分の使用モデルはサイズ的にちょうど中間で何も不備なく快適に揺られました。」
イエス:「3人の中で一番薄手の生地で、軽量さを重視した20Dの厚さの生地ですよね。」
サニー:「20Dの生地で、トニーさんのより自分の方が少し長いハンモックですが、重要的には自分のが143gと、トニーさんのより20gくらい軽くなったしね。寝心地も、30Dや40の生地と比べると、快適さはやや劣るけど、全然自分は問題なかったね。時間があればフチに小さくループを付けて、蚊帳やアンダーキルトを吊るせる快適仕様にアップグレードしてみたいっすね。」
サニーの野営システム。タープは、シルポリ20D。
トニー:「タープはシルポリ20Dで作ったやつだね?」
サニー:「そう、気兼ねなくどんなシチュエーションにも持ち出せるように、DCFより安価な生地で作りました。大きめの240cm x 300cmのサイズ。今回は、みんなの宴会用の屋根としても活躍させていただいて。本当は入り口を、吹き込みを抑えるためにドア型にできればと思ったけど、それには大きさが足らなかったです。」
イエス:「寝袋のシステムはどうでしたか?」
サニー:「Highland designsのダウンバッグとトップキルトの組み合わせで、ダウンバッグでハンモックごとぐるっと巻いて、なかのトップキルトに潜り込む作戦。あとTHERM-A-RESTのNeoAir XLite NXTを中に敷いてました。
就寝直前はそこまで寒く感じなかったから、ダウンバッグの中でトップキルトをお腹にかけるだけで寝たんだけど、就寝後1時間して寒くて目が覚めちゃって(笑)。でもちゃんとキルトを体にかけなおしたらばっちりでした。
ギアレビュー③-3 ハンモック & タープ (イエス)
イエスがMYOGしたハンモック。使用した生地は、Hexon 1.6 リップストップ・ナイロン 40D。
イエス:「自分のハンモックは、幅130cm × 長さ280cmと幅も長さも大きめの設計にしました。自分が普段使っているハンモックが幅120cm × 長さ270cmのハンモックなので、少し快適さに寄せたものを試してみたいなと思って、このサイズにしました。」
トニー:「イエスが使ったのは40Dの生地で、今回のなかでは一番快適さ重視のものだよね。」
イエス:「かなりゆっくり寝れました。生地の肌触りも、自分的にはトニーさんが使った30Dのものよりもコットンみたいなしなやかな肌触りで気持ちいいですし、生地の厚さもあるし、伸縮性もほどよい感じで、体のホールド感もよいなと感じました。
快適さを重視したハンモックキャンプをするときは、このおお大きさと生地の組み合わせはオススメですね。」
イエスの野営システム。タープの生地は、ダイニーマ®︎ コンポジット・ファブリック 1.43oz。
サニー:「タープは、自分の身長に合わせたサイズのタープを作ったよね?」
イエス:「自分は身長が161cmなんですけど、それに合わせて長さを短めにした200cm x 260cmのタープをMYOGしました。
去年、ジョン・ミューア・トレイルへ行くのに合わせて作ったやつですね。このブルーとブラックのDCFの組み合わせが、めちゃくちゃ気に入ってます。次はもっと軽い生地で、また作りたいなと思ってます。」
トニー:「今回の寝袋のシステムはどうだったの?」
イエス:「SEA TO SUMMITのSpark Sp IIIと、それにアンダーキルトはHighland designsのFlapWrap +という組み合わせだったんですけど、寒さについては問題なかったですね。快眠です。」
ギアレビュー④ サングラス
今回テストした、サイドカバー付きサングラス。FLOATのSIERRA (シエラ)。
サニー:「トニーさんは、今回、発売されたばかりのFLOATのサイドカバー付きのサングラスを使ってましたね。どうでしたか?」
トニー:「FLOATのSIERRAね (※詳しくはコチラ)。それなりに雪が降ってたけど、サイドカバーは雪の吹き込み防止の効果を実感できたね。あとサイドカバー付きサングラスは熱がこもることで曇りやすいけど、SIERRAは歩いている移動中とか、風が吹いてる状態だったら、換気機構もしっかり働いて、曇りづらかったね。あのレンズ上部とフレーム上部にある通気口が、ちゃんと空気の循環をサポートしてくれてるんだな、と。」
イエス:「これからの春スキーの季節とか、より活躍できそうな感じですね。わざわざゴーグル持っていくという感じでもないことが多いくなっていくので。」
ギアレビュー⑤ ミトン、ゲイター
MYOGしたミトン。生地はダイニーマ®︎ コンポジット・ファブリック 1.0oz)
トニー:「スノーギア関連だと、ミトンとゲイターは去年にMYOGしたものから、アップデートをかけたよね。ミトンはちゃんとカフ (手首を覆う部分) を付けたのは、わかりやすい改善。これで袖からミトンのなかに雪が入ってしまうのは防げた。」
サニー:「一方、サイジングとパターンはまだイマイチでしたねぇ。握ったときに、縫い目にテンションがかかりすぎてパツパツになっちゃって、生地に負荷がかかりすぎている感じがあった。」
MYOGしたゲイター。生地は、ダイニーマ®︎ コンポジット・ファブリック 1.0oz)。
イエス:「ゲイターはバンジーコードを、シューズの下と周りの両方に通して、かなり固定されている感じがありましたね。」
サニー:「去年のは、シューズへの固定力が弱くて失敗しちゃったからね。トニーさんが使ったけど、ゲイターがズリ上がっちゃって、ずっとシューズのなかに雪が入ってましたもんね (笑)。」
トニー:「今回のは新雪のバフバフの雪のなかに足が埋まっても、ゲイターがまくり上がらずにしっかりと雪の侵入を防げたから、バッチリだった。」
サニー:「今回はたくさんMYOGしたものを、フィールドでテストできましたね。」
トニー:「だね。みんなでいろんなサイズのハンモックを作ってみたり、タープもそれぞれが作ったものを使ったり。今度はこうしたい!というのもたくさん見えてきて、MYOG熱がまた上がっちゃったなぁ。
サニー:「またみんなでやりましょうよ!」
トニー:「次回も楽しみだ。次は『今期 最強寒波 豪雪』じゃないときに!」
次回の記事では、今回の詳細なギアリストの記事をお届けするので、またお楽しみに!
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