スキーハイキング | #15　トニー、サニー、イエスのBCクロカン & MYOGハンモック・トリップ ２DAYS（計画編 その１）

※昨年のBCクロカン・トリップ: 「SKI HIKING | #10　トニー、サニー、ノブのBCクロカン・トリップ　あまとみトレイル２DAYS（トリップ編・その１）」https://thetrailsmag.com/archives/71835

※2 MYOG: MAKE YOUR OWN GEARの略。ギアの自作を指す。特にここでは、ロング・ディスタンス・ハイキングとウルトラライト (UL) ハイキングの文脈におけるギアの自作を指す。

左から、TRAILS CrewのSunny (サニー)、Yes (イエス)、Tony (トニー)。

Tony (トニー)
TRAILS INNOVATION GARAGE(以下、GARAGE) の店長。2015年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) 、2023年にはCT (コロラド・トレイル) をスルーハイキング。
Sunny (サニー)
GARAGEの「MYOG番長」。2016年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) 、2019年にCDT (コンチネンタル・ディバイド・トレイル) をスルーハイキング。
Yes (イエス)
学生時代からTRAILSに出入りし、2024年にJMT (ジョン・ミューア・トレイル)を歩いた後、正式にTRAILS Crewにジョイン。JMTではタープやビヴィをMYOG。

今年のBCクロカンのテーマは「MYOG」。

左から、TRAILS CrewのYes (イエス)、Tony (トニー)、Sunny (サニー)。

昨年はあまとみトレイルの野尻湖付近を、BCクロカン・トリップしたTRAILS Crew。

今年はどこに行くか。1泊2日で野営もできそうな場所を探し始めた。

トニー：「さて、今年はどこに行こうかね。戸隠のあたりもクロカンのクラシックなルートがあるし、比較的メロウに歩けそうなところがあるからよさそうだよね。」

イエス：「でも、戸隠だと去年に行ったあまとみのエリアと近いから、もう少し違うエリアを攻めてみたいっすよね。」

トニー：「っていうか、今のところの天気予報だと、予定している日が毎度のことながら『今期 最強寒波、大雪のピーク』って、予報なんだけど！いやぁ、これは標高を上げすぎないようにしないと。」

イエス：「去年も地元の人が『今年一番の豪雪の日』っていう日だったんすよね？」

サニー：「こりゃ、今年も雪からどう逃げるかだね (笑)」

「今期最大寒波」の予報にビビりながら、いかに影響を受けづらいところを懸命に探す3人。

トニー：「できるだけ南の方にして、群馬のあたりに行ってみようか。樹林帯がメインのメロウな感じのところで。」

サニー：「そういえば、がっつりMYOGしますよね？」

トニー：「そうね。せっかくなので、がっつりでどう？ULハンモックのMYOG SCHOOLも始まったし、春には恒例のHAMMOCKS for Hikerのイベントも控えてるので、MYOGerやHAMMOCK HIKERのためにもTRAILS Crew的にはアグレッシブな実験をしとかないとね (笑)」

サニー：「いいっすね！わざわざ雪のなかでMYOGハンモックのテストするあたり、バカっぽくて！じゃあ、みんなでMYOGしましょう。」

イエス：「おもしろくなってきましたね (笑)。せっかく3人だし、いろんなサイズのハンモックをMYOGして実験しましょう！」

ハンモックをMYOGする！

ミシンをセットして、みんなでMYOGを始める。
ということで、BCクロカンでの野営道具として、ハンモックをMYOG！

TRAILS INNOVATION GARAGEにある、ハンモックのマテリアルを見ながら、どの生地 (ファブリック) で、どんなサイズのものを作るかを、ワクワクしながら考え始める。

トニー：「まずは、サイジングだね。布1枚なんで、どんな幅と長さで作るか。」

サニー：「こんなときに、毎年TRAILSが出してる『HAMMOCKS for Hiker』のハンモックスペック調査が、すげぇ役に立つっすね。」(昨年の記事はコチラ)

イエス：「このスペック調査を改めて見ると、だいたいULハンモックは幅が120cmが基準ですね。」

トニー：「ULハンモックも、長さは240cmから300cmまで製品によってまちまちなんだよね。日本人の体のサイズを考えると、ULハンモックは、少し小さめのものを作ってみてもいいかなと。」

サニー：「長さを少し短めにするのは、試してみてもいいと思います。」

トニー：「例えば、アメリカのロング・ディスタンス・ハイカーでも定番のENOのSub6™だと、幅120cmの、長さ270cm。これを基準に、長めなものと、短めなものを作って、実験してみよう。」

イエス：「自分は体は小さめですが、ハンモックはゆったり寝たいんで、快適性の方に振ってみようなかと思います。」

トニー：「自分は、長さが短めのサイズを試すわ。アメリカ人の身長や体格と比べれば、少し短くしてもいいんじゃないかと思うんだよね。」

ハンモックの生地の切り出しから。

サニー：「生地の厚さもいろいろ組み合わせてみましょうよ。自分はSub6™とサイズは同じにして、生地はより薄い20Dにしてみますわ。」

トニー：「GARAGEにあるハンモック用生地のHexonも、20D、30D、40Dと3種類あるからね。カラーもいろいろあるし。自分は小さめサイズを30Dで作ってみよ。」(生地の詳細はコチラ )

サニー：「そういえば、GARAGE 常連のMYOGerが、ハンモックには向かないリップストップ (引き裂け防止)なしのシルポリの生地で先んじて実験してくれて。案の定、ハンモックに寝てすぐに破れたらしいっすよ (笑)」

トニー：「じゃあ、いまGARAGEにあるダブルリップの20Dシルナイロンでも、ハンモックを作ってみる！ハンモック用の生地と実際に比べて、コーティングのあるシルナイロンって、本当にハンモック向きではないのか？というのを実際に確認してみたいし。破れてしまうのかどうかも、雪の中で人体実験してみよう。被検体は自分がやるんで(笑)」

イエス：「被検体ありがとうございます (笑)。では、MYOGするハンモックは人数より1つ多く、4つ作る感じですね！」

　

ハンモックのMYOGに必要なのは、本体の生地とロープのみ。写真は、Hexon 1.2 リップストップ・ナイロン 30D(オレンジ)と、ダイニーマ®︎ロープ 2.8mm Amsteel® Blue (グレー)。

トニー：「改めてだけど、ハンモックは生地とロープだけのシンプルなギアだよね。そんなに、MYOGのレベルとしても難しくないし。」

イエス：「構造はきわめてシンプルっすよね。生地を切って、両端にロープを通すところを作って、そこにロープ通しておしまいですから。でも、自分でタープを作ったときもそうでしたが、デカいものつくるときは、まっすぐ切ったり、まっすぐ縫うのが、神経を使いますよね。」

サニー：「そうね。まずは生地の切り出しを、丁寧にやらないとね。ちゃんと真っ直ぐ切れるように、慎重に線を引きながら切るようにしよぉ。」

GARAGE店長のトニーは、さっそくがしがしミシンで縫う。

GARAGEの「MYOG番長」ことサニーも、どんどんMYOGを進めていく。

トニー：「切り出した後の縫製は、ぴゅーっと真っ直ぐ縫うだけだ。勢いよくいけるな。」

イエス：「たしかに。タープとかビヴィみたいに、生地を張り合わせたりもしないから、多少の誤差は気にせず、気楽に縫えるのもいいっすね。」

イエスもがんがんミシンを踏んでいく。

サニー：「よおぉーし！もう、あとちょっとで、できあがり！」

トニー：「自分もあとちょっとでできあがり。だいたいハンモックをMYOGするのに、3時間だね」

イエス：「やっぱ、自分でMYOGすると、ギアの構造とか理解できるし、楽しいっすね。だんだんできあがってく感じも嬉しいですね。」

タグを縫い付け。

トニー：「あとは最後にロープを通しておわり！やっぱりシンプルだ。」

サニー：「そうっすねー。」

トニー：「それほど難易度が高くないから、MYOGが初めての人も含めて、いろんなハイカーに楽しんでもらえるんじゃないかなぁ。」

最後にロープを通して完成！

MYOGハンモック完成！そして計量！

完成したMYOGハンモックに笑顔のトニーとサニー。

トニー：「じゃあ、重量を測ってみますか！」

サニー：「うっす。しかし、端材でスタッフサックを作ったから、みごとに形がバラバラっすね (笑)」

トニー：「MYOGらしくて、いいじゃんね！」

イエス：「僕が使うブルーのやつ、長すぎですね。腸詰めみたい (笑)」

大きさがバラバラのスタッフサック。

トニー：「まずは一番小さいサイズのやつ。150gを切ったりするかな？」

サニー：「どうでしょ？これだけ、ハンモック向けのファブリックじゃなくて、コーティングされてるシルナイロンですから。ちょっとだけ生地が重いっすよね。」

XSサイズ。幅120cm × 長さ255cm。生地はシルナイロン20D。

イエス：「150gは下回らなかったっすね。でも、サイズが小さい分、やっぱり軽いですね。」

サニー：「じゃあ、次はSサイズ、いってみようか。」

Sサイズ。幅120cm × 長さ260cm。生地はHexon 1.2 リップストップ・ナイロン 30D(オレンジ)。

トニー：「166gかぁ。ENOのSub6™が166gだからほぼ同じだ。サイズはSub6™より小さくしたけど、ちょっとロープとか長めに作っちゃったから、サイズは小さいのにやや重いのかな。」

サニー：「じゃあ、次はMサイズいきますよ。」

Mサイズ。幅120cm × 長さ270cm。生地はHexon 1.2 リップストップ・ナイロン 20D(グリーン)。

トニー：「おっ！143g！」

サニー：「なるほどぉ、20Dの生地でつくると、これだけ軽くなるんすね。Sサイズより10cm長いけど、23gも軽い。」

トニー：「同じ20Dでも、シルナイロン20Dで同じサイズのハンモックを作ると178gになるから、21g重くなる感じ。」

イエス：「ちなみに、僕が使うLサイズは256gでした。40Dの快適な生地を使って、長さもゆったりだから納得です。市販のライトウェイトハンモックも、だいたいこれくらいの重量だから妥当ですね。」

ということで、ハンモックは全部完成！

次はツリーストラップをMYOG！

ツリーストラップのマテリアル。ロープはダイニーマ®︎ロープ 2.8mm Amsteel® Blue (グレー)、テープはUHMWPEウェビング 25mm、ハンモック本体との連結はダッチ・ビナー Dutchwar、チタニウム・ダッチ・クリップ Dutchware。

トニー：「次はツリーストラップね。」

サニー：「これも、基本的に構造はシンプルですね。テープのところはステッチを重ねても強度が落ちる素材じゃないので、ステッチをたくさん入れておけば、ちゃんと体重を支えてくれる強度は出そうっすね。」

トニー：「じゃあ、さっそくミシンを踏もう！」

イエス：「うっす！」

気分も乗ってきて、どんどんミシンを進めていく。

トニー：「ロープのところはウーピースリング (※3) を作ろう。」

イエス：「ロープにテンションがかかると止まって、緩めると長ささの調整ができるアレですね。」

*2 ウーピースリング：圧がかかった状態で固定され、緩めると長さを調整できるロープ。簡単に、かつ無段階で自在に長さを調整できるのが特徴。

ロープの中に、このように細い棒状のものを通す。専用の道具もあるが、ヒモ通しやペグなどでもできる。

ウーピースリングのできあがり。上に向かって出ているところを引っ張ると、長さ調整できる。

サニー：「これ、自分で最初にやったとき、ブログとか動画を見ながら作ったっすけど、やってる最中は構造が全然理解ができなくて。でも、できあがったら、なーるほど！って感じ。1回やるのが、すごく大事なやつですね。」

トニー：「これはほんとにやってみるのが一番早い。やり方を覚えれば、すごくシンプルだよね。」

完成したツリーストラップ。

タープもMYOG。これでハンモック・キャンプのメインの道具は全部MYOG！

3人がMYOGしたタープ。左からイエス (DCF1.4oz)、トニー (タイベック® ハード)、サニー (シルポリ20D）がMYOGしたタープ。

トニー：「さいごはタープだね。これはみんな過去にMYOGしたやつを組み合わせて、持っていこうか。」

イエス：「自分はJMTのときにMYOGしたタープを持っていきます！めっちゃ気に入っている、DCFのツートンカラーのやつです。」

サニー：「自分はシルポリで作ったやつっす。てか、トニーさんのタイベックのタープ、めっちゃパンチありますね (笑)」

3人のMYOGタープ。

今回のSKI HIKINGのテーマは「MYOG」！ということで、まずはハンモック・キャンプのギアをMYOGした3人。

次回の生地ではBCクロカンのスキー板選びと合わせて、スキーギアやスノーキャンプ関連のMYOGもお届けするので、お楽しみに！