TRAILS REPORT

LONG DISTANCE HIKERS DAY 2025 イベントレポート② | NEW YEAR HIKERS

2025.05.14
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『LONG DISTANCE HIKERS DAY 2025』のイベントレポートの第2回。

今回は『NEW YEAR HIKERS』というテーマで、今年に海外トレイルを歩くロング・ディスタンス・ハイカー12人の声をお届けする。

『LONG DISTANCE HIKERS DAY』(以下、LDHD) およびプレイベントの『準備ワークショップ & 相談会』で、今年のハイカー (CLASS OF 2025) たちはどんな刺激を受けたのか。そしてどんな思いをもって、今年、海外ロングトレイルを歩こうとしているのか。

旅立つハイカーたちの初々しい声が、これを読んでくれた人たちの新たな旅のブースターとなればと思う。

CLASS OF 2025 : 今年、海外トレイルを旅するハイカー


今年2025年に海外のロングトレイルを歩きに行く12人のハイカーたち。

■ 堀田 響志郎 “”Samurai” – CDT
CDTは、わがままに、且つ、ひたすら楽しんでいきたいと思います。



会場では国内外のロング・ディスタンス・ハイキングを楽しんできたハイカーが数多く登壇されました。それぞれのハイカーが持つ感性や視点で捉えた旅の話は、興味深かったです。

一番のオススメは登壇したハイカーと直接話せる点だと思います。リアルな旅の話を聞くには、やっぱり直で話さないと旅の温度感は味わえないと、感じました!LDHDはそんな貴重な場になっていると思いました。

今年はCDT (コンチネンタル・ディバイド・トレイル) を歩きます。昨年のPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) は変に他のハイカーを意識して自分の旅を見失い、前半はフィジカルもメンタルもボロボロになってしまいました。今回は2度目のロング・ディスタンス・ハイキングということもあり、変に気負わず自由な旅を、わがまま、且つ、ひたすら楽しんでいきたいと思います。

■ 岡野 拓海 “Takumi” – PCT
MYOGした道具を使って歩くのが、自分のテーマのひとつです。



LDHDには去年初めて参加して、そこでいろんなハイカーの体験談を聞いたり、会場で購入した書籍『LONG DISTANCE HIKING』(※1) を読んだことが、今年PCTに行くことを決めたきっかけになりました。

コンテンツで面白かったのは、SPECIAL TALKの『HIKING IN WILDERNESS 〜大自然に入るということ〜』(※2) でした。GNUさんをはじめ経験豊富なハイカーの方々が、自然に入ることのリスクや醍醐味を語るこのコンテンツが、最も印象的でした。

今年、PCTをSOBO (南向き) で歩きます。バックパックやタープなどMYOG (MAKE YOUR OWN GEAR) した道具を使って歩く、というのが個人的なテーマの一つです。わがままを聞いてくれた妻に感謝しつつ、HIKE YOUR OWN HIKEの精神で自分らしい旅にしたいと思います。

※1 『LONG DISTANCE HIKING』:TRAILSの出版レーベル第一弾として出版した書籍。Hiker’s Depot(ハイカーズデポ)長谷川晋氏による、自身の経験と数多くのロング・ディスタンス・ハイカーのリアルな声をもとに制作した、日本初のロング・ディスタンス・ハイキングにフォーカスした書籍。

※2 『HIKING IN WILDERNESS 〜大自然に入るということ〜』:ロング・ディスタンス・ハイキングの旅だからこそ、長く、深く体験する『大自然に入るということ』をテーマに、「人と自然」について、改めてハイカーの目線から語るコンテンツ。ウィルダネスには圧倒的な景色や野生動物との遭遇があれば、一方で、ときには命の危険もある不条理なまでの厳しさに晒されることもある。その両面からウィルダネスでの体験を語った。

■ 堀米 亜樹 “Aki” – JMT
『WOMEN’S HIKING TIPS』は毎年聞きに行ってます。



昨年JMT (ジョン・ミューア・トレイル) に挑戦したのですが怪我で途中で断念、リベンジで今年もJMTを歩く計画です。

LDHDは、今年で3回目の参加です。面白かったトークセッションは『WOMEN’S HIKING TIPS』(※3) です。これは毎年聞きに行ってます。女性ハイカーならではのトイレ事情や体調管理、スキンケアなどの話が聞けて相談でき、毎年新しい発見があります。

『HIKER’S TABLE』 (※4) の登壇者には、去年JMTでお会いしたハイカーや、昨年のLDHDで知り合ったハイカーもいました。またJMTの現地でお会いした日本人ハイカー全員と、LDHDの会場で再会することができました。そんな再会もLDHDの魅力の一つかなと思ってます。

※3 『WOMEN’S HIKING TIPS』:女性のロング・ディスタンス・ハイカーならではの考え方、歩き方、トレイル上の生活術について情報をシェアするコンテンツ。トレイル上での体調管理や食生活は? 日焼け対策は? トイレの問題は? など、女性ロング・ディスタンス・ハイカーを迎え、普段メディアでは扱いにくいリアルな情報を提供している。

※4 『HIKER’S TABLE』:このイベントの第1回目からつづく、コア・コンテンツのひとつ。それぞれのハイカーが、ロング・ディスタンス・ハイキングで体験したリアルでパーソナルなストーリーを語ってもらうコーナー。

■ 國保 海彦 “Umihiko” – PCT
会場ではPCT 2025の同期と知り合えたのが大きな収穫でした。



LDHDは今年で3回目の参加です。初参加の一昨年は、ロングトレイル全般を知りたいという感覚でした。2回目の昨年は、PCT挑戦を決めてからの参加で、直近で歩いた方に直接話を聞ける貴重な機会でますます思いが強くなりました。

そして3回目の今年は、同じ興味を持つ人たちとつながれる場としての魅力を感じました。特に、PCT 2025の同期と知り合えたのが大きな収穫でした。

今年の5月中旬からPCTを歩き始めます。どうやったら楽しめるのかを考えながら、一歩一歩進んでいきたいです。歩き終わった後に自分がどんな感情や考えを持っているのかも楽しみです。また道中でどれだけ美味しいご飯を作れたり、見つけたりできるかも楽しみにしています。

■ 鳥村 達郎 “Tatsuro” – Colorado Trail
昨年はJMT、今年はコロラド・トレイルへ。今回は計画を細かく立てすぎずに。



今年はコロラド・トレイルを歩きます。昨年のJMTはとても楽しかったのですが、計画を細かく立てすぎてしまい、旅の自由さが減ってしまったような気もしました。今年は最低限の計画にとどめ、その場その時の自分の思いを大切にしようと思います。

今年のLDHDのコンテンツでは、SPECIAL TALKの『THRU-HIKINGとSECTION HIKING』(※5) が面白かったです。始めからトリプルクラウンを目指してスルーハイクする人がいれば、そのトレイルの一番良い季節にセクションで歩く人がいたり。体が歩くのに慣れてきてからの方がより楽しめるという人もいれば、体が慣れるまでの新鮮さを楽しみたいという人もいたり。自分がやりたいように楽しめばいいんだと実感しました。

※5 『THRU-HIKINGとSECTION HIKING』:このコンテンツでは、DAY1ではスルーハイキング、DAY2ではセクション・ハイキングについて、それぞれのスタイルで旅するハイカーたちが登壇し、スルーハイキングとセクション・ハイキングのそれぞれの醍醐味を語るコンテンツ。

■ 鈴木 善貴 “Yoshitaka” – AT
事前ワークショップでは、自分だけでは自信が持てない情報も確認できた。



今年に仕事を退職し、AT (アパラチアン・トレイル) を歩くことにしました。やってみたかったロングトレイルの旅へ向けて、コツコツと準備を進めてきました。

事前ワークショップでは、自分で調べただけでは自信が持てないような情報について、過去のハイカーの知見をもとにアドバイスを聞けたり、実際にATを歩いたハイカーからも情報を得ることができて、貴重な機会となりました。トレイルのことだけでなく、ギアについてのアドバイスも参考になりました。

昨年のハリケーン「へリーン」からの復興状況や、またトレイルの状態だけでなく、トレイルタウンで宿やシャトルをできる状況かも確認した方がよい等、具体的に留意すべき点も確認できて良かったです。」

■ 兼高 誠 “Doskoi” – PCT
PCTのスタート地点に!予想外のトラブルも含め、面白がりたい。



今回は初めてのLDHDへの参加で、とても刺激的でした。ネットやSNSだけでは知り得なかった、生きた情報を得るにはやはり対面してお話を聞かせていただくのが一番だと感じました。

LDHDで面白かったコンテンツで1つを選ぶのが難しいのですが、丹生さんの『Wanderland Trail』のお話がグッときました。PCTの途中に歩かれたことにびっくりしたのがその理由です。その「遊び心」や「好奇心」を自分も見習います。

今年初めてロングトレイルを歩くので、まずは自分が歩きながら何を考え、何を感じるかを知りたいです。「楽しく生きる」が人生のテーマなので、PCTでの予想外のトラブルも含め、どうやって面白がれるかがポイントかなと思っています。できるだけ力まないように歩きたいと思います。

■ 梨本 愛 “Ai” – PCT
昨年はJMTをスルーハイキング。今年はPCTのセクション・ハイキングへ!



昨年JMTを歩いたのですが、LDHDの会場では、帰国して初めて会う方々に「おかえり!」って言ってもらえたのが、とても嬉しかったです。

一番面白かったのは、SPECIAL TALKの『THRU-HIKINGとSECTION HIKING』でした。このコンテンツでは、セクション・ハイキングでも、ロング・ディスタンス・ハイキングの旅を楽しめることを、いろんなハイカーたちが話してくれました。家族や体調などの都合で、数ヶ月の期間歩くことが難しい人たちにとっては、選択肢が広がるコンテンツだと思いました。

今年はPCTのセクション・ハイキングを予定しています。アメリカのトレイルカルチャーに触れられるような旅にしたいと思います。

■ 桃井 美穂 “Miho” – JMT
『WOMEN’S HIKING TIPS』を聴いて、JMTへ向けた心配事が一つ減りました。



今回初めてLDHDに参加しました。1人で参加したのですがアットホームな雰囲気だったので、最初から最後まで楽しく時間を過ごせました。会場は、遊びのある素敵な大人がたくさんいるこの空間が心地良いなと思いました。

印象に残っているコンテンツは、梨本さんのJMTのHiker’s Tableと、『WOMEN’S HIKING TIPS』です。今年JMTに行くので、気候や体調などのトラブル等も交えて話をしてくれたり、リアルな話が聞けてワクワクとドキドキが増しました。

『WOMEN’S HIKING TIPS』は、今までネットや本で調べても出てこなかった女性ならではの困り事や対応の仕方を聞くことができて、すっっっごく良かったです。おかげで心配事が一つ減りました。

■ 森 恵吾 “Keigo” – PCT
LDHDは、同じ志を持つ仲間と自然体でつながれる貴重な場。



初めてLDHDに参加しましたが、参加者同士の距離も近く、同じ志を持つ仲間と自然体でつながれる貴重な場でした。

SPECIAL TALKの『THRU-HIKINGとSECTION HIKING』で語られた、歩く人、歩き方、時期や環境、感じ方によってそれぞれの物語があり、歩きながら自分とどう向き合っていたのか、という話がとても印象的でした。

今年は、PCTをSOBO (南向き) で歩きます。ハイキングと出会い、ウルトラライト (UL) という概念に出会ったことで、自分の中で生活や思考が研ぎ澄まされるような変化がありました。今回の旅では、より過酷でシンプルな環境に身を置くことで、その変化が自分の中でどのように深まっていくのかを体感してみたいと思っています。

■ 西蔭亮佑 “Ryosuke” – CDT
トレイルカルチャーと自己対話を楽しみたい!とりあえず、生きて帰ってきます!



今年、CDTを歩く予定です。LDHDでは、事前ワークショップに参加しました。とても喋りやすい雰囲気で、期待以上の情報量でした。

確実にCDTの解像度が上がり、不安は小さくなっていきました。スタート地点までのアクセスやゴール後のことなどは他のイベントでは語れることがほとんどないので、その相談ができたのは心強かったです。

最初は絶景がみたくてPCTに行きたいと思っていました。しかし次第に自分の内面に入り込みたいという興味が湧いてきて、人が少ないCDTを目指すようになりました。トレイルカルチャーと自己対話を楽しみたい!とりあえず、生きて帰ってきます!

■ 坂田 海馬 “Kaima” – PCT
気負わずにPCTという一本の道の上で自分なりの線を描く。



LDHDで面白かったのは『リスクマネジメント』(※6) のコンテンツです。どうしても楽しい側面だけが脚光を浴びやすいロング・ディスタンス・ハイキングですが、リスクマネジメントという取り上げられにくいトピックについて、生の情報を得られたのは有益でした。どのようなリスクがあるかを把握し、それに対処するための知識を予め身につける必要があるなと感じました。

僕は今年の3月に大学を卒業した後に、就職を半年遅らせてPCTに行くという、珍しいタイミングでPCTへと向かいます。

就職というある種のタイムリミットがある状況ですが、カナダまで歩き切ることを絶対のゴールにせず、気負わずにPCTという一本の道の上で自分なりの線を描くことを意識していきたいと思っています。

※6 『リスクマネジメント』:ロング・ディスタンス・ハイキングにおいては、渡渉や火事、雪、感染症など、さまざまなリスクがある。ハイカーそれぞれに、実体験をもとに具体的な対策や注意点を語るコンテンツ。


CLASS OF 2025のハイカーたちはどんな旅をするのか。いまから楽しみだ。 (photo: Samurai)

来年、2026年の『LONG DISTANCE HIKERS DAY』では、今回CLASS OF 2025として登場してくれたハイカーが、スピーカーとして旅のエピソードを語ってくれるはず。どんな体験談を聞かせてくれるのか、今から楽しみでならない。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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