TRAILS REPORT

IN THE TRAIL TODAY # 07 | コルシカ島・GR20の岩場を歩く1週間のセクションハイキング

2019.07.01
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話・写真:中村万里雄 取材・構成:TRAILS

What’s IN THE TRAIL TODAY / TRAILSは、トレイルで遊ぶことに魅せられたピュアなトレイルズたちの日常の中で発生した、 “些細でリアルなトレイルカルチャー” を発信するハンドメイドのコミュニケーションツール『ZINE – IN THE TRAIL TODAY』をスタートさせました。そのZINEにまつわるストーリーを『IN THE TRAIL TODAY』という連載でお届けしていきます。

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長旅をあきらめていた人にも、ロング・ディスタンス・ハイキングの世界への扉は開かれていることを伝えたい。そんな強い想いから生まれたZINE#02『SECTION HIKING』

その第2弾として先日リリースしたZINE#03『SECTION HIKING 2』には、あらたに世界中の魅力的なトレイルを厳選して詰め込みました。

今回の記事では、ZINEには載せられなかったけれど、セクションハイキングに絶好のトレイルを紹介します。

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地中海から眺めるコルシカ島。

そのトレイルとは、地中海、イタリア半島の西に位置するコルシカ島(フランス領)を貫く『GR20』。ここを2017年に歩いた中村万里雄くんおすすめのセクション(北側・88km)です。

地中海に浮かぶ、広島県ほどの面積の小さな島、コルシカ島。この島を南北に貫く山岳地帯を縦断するルートがGR20です。ヨーロッパでも難易度の高いトレイルとして有名で、ゴツゴツした岩場が特徴的。

他のロングトレイルとは一線を画すGR20の魅力を、中村くんにたっぷり語ってもらいました。

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島の北岸に位置するカルビの街を散策する中村万里雄くん。


歩くだけじゃなくて、体力的なチャレンジもしたかった。



ーー GR20を歩こうと思ったきっかけは?

これまでカミーノ・デ・サンティアゴや、アンナプルナ・サーキットを歩いた経験があって、もともと長いトレイルを歩くことが好きでした。

一方で、日本の山もけっこう登っていて、とにかく高い所と岩場が大好きで。そういう嗜好もあって、次のトレイルは体力的にもチャレンジングなところに行きたい! って思っていたんです。

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GR20といえば、花崗岩の険しい山々が最大の特徴。

実は昔、友だちと地中海をヨットで巡ったことがあったんですが、その時にコルシカ島に興味を持ちました。「海の中にある山」と誰かが言っていて、とにかく内陸が険しくて住めるのは沿岸部のみ。そんな地形にもそそられました。

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急峻な岩山を慎重にトラバースしていく。



北側のセクションは、自然の中をアドベンチャラスに楽しみたい人にピッタリ。



ーー 今回紹介してくれる北側のセクションは、まさに中村くん好み?

そうですね、南側には広大な牧場も広がっているのですが、北側は本当に岩だらけ。人が住んでいるところも少ないですし、アップダウンも多くて険しいですね。

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ときおりスラブ(一枚岩)もあるので、特に悪天時は要注意。

花崗岩のスラブ(一枚岩)もあったりして、そこなんかは雨が降ったりしたらすごく滑りやすいのでけっこう危険だと思います。

クライミングまではいきませんが、岩をはって登ったりするスクランブリングが好きな人にとっては、絶好のフィールドだと思いますよ。

ーー このセクションで一番印象に残っている場所はありますか?

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GR20は、妹の杏那(あんな)さんと一緒に旅した。モンテ・チントの頂上にて。

GR20からは外れるのですが、序盤にモンテ・チント(Monte Cinto / 標高2,706m)っていうコルシカ島の最高峰の山があって。ここは1時間もあれば往復できます。

頂上にメッセージをポストできるシステムがあるのも面白いですし、コルシカ島最高峰だけに、頂上からは360°の大パノラマ。眺めが最高でした。



コルシカ島は歴史も面白くて、自分も昔の海賊の気持ちになってみたいなと。



ーー 中村くんは、コルシカ島に渡る時に、飛行機ではなくフェリーを使ったそうですね?

その昔、地中海にはたくさん海賊がいて、このコルシカ島も海賊に攻撃された歴史があります。僕はもともと、ただ歩くだけではなく、歩きながらそこの歴史や文化も知るのが好きなんです。

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コルシカ島に向かうフェリーからの眺め。

コルシカ島に行く上で、効率的なのはもちろん飛行機なのですが、せっかくなら海を渡って行ってみたいじゃないですか。しかも、ここら辺は海賊だらけだったわけで、海賊がどんな気持ちでこの地中海を航海していたのか、自分もその気分を味わってみたかったんです。

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街で見かけたコルシカ島の旗と紋章があしらわれたオブジェ。

この島は、古代、アフリカ北部のカルタゴが覇権を握っていた時代の後、ローマに支配され、さらにジェノヴァ領を経てフランス領に……といった歴史の変遷もあって、とても興味深いですよね。

あと、コルシカ島はナポレオン生誕の地でもあります。そしてナポレオンの兄が生まれたのがコルテという街で、ここは昔の首都。風情ある街並みが本当にステキでした。

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中村くんは旅の途中、GR20から外れてコルテに寄り道した。



手作りのチーズは、臭いんですがとてもおいしいです。



ーー 文化を知るのが好きと言ってたけど、食文化も堪能しましたか?

トレイル上の山小屋の売店は、場所によってはいろいろストックがあって、焼きたてのパン、ケーキ、コルシカ独特の栗で作られたビール、栗のクッキー、コルシカで有名なハチミツもありました。

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山小屋で食べた焼きたての手作りケーキ。

全部おいしいですが、おすすめは手作りのチーズですね。すごい匂いがして臭いんですが、とてもおいしいです。朝ごはんにもなるし、携帯してランチに食べるのもいい。僕が歩いた時もかなり活躍してくれました。

GR20を歩くのであれば、ぜひ試してほしい食べ物です。



出会った人との再会が楽しめるのは、セクションハイキングならでは。



ーー 中村くんが思うセクションハイキングの魅力を教えてください。

セクションハイキングの場合、また同じトレイルの別セクションを歩きに行ったりするわけじゃないですか。そうすると、前回出会って仲良くなった人とまた再会できたりするのが、すごくいいですよね。相手からもWelcome back!(おかえり!)って言われたりして。

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お城からは港町のバスティアが一望できる。

コルシカ島は、港町も含めてハイカーを歓迎してくれるところも多いので、何度も訪れるのもおすすめです。トレイルが素晴らしいのはもちろんなのですが、前回出会った人に会い行く! という目的でセクションハイキングに行くのもありだと思います。

ちなみに、せっかくコルシカ島に行くのであれば、すぐ南にあるサルデーニャ島にもぜひ立ち寄ってほしいです。この辺りの海はものすごくキレイですし、リゾート地ならではの素晴らしい景観が広がっています。

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サルデーニャ島の海は、驚くほど透き通っていて美しい。



TRIP INFORMATION



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GR20のGRは、Grande Randonnéeの頭文字で、長距離ハイキングを意味している。コルシカ島を縦断しているルートで、総延長はカレンザーナ〜コンカまでの約180km。一般的には15日程度を要する。今回中村くんが紹介してくれたのは、北部のカレンザーナ〜ヴィザヴォナまでの約88kmの岩場だらけの山岳セクション。南部は牧場や牧草地なども広がっている。

■トレイル名
GR20
■セクション名
High-Corsica (カレンザーナ〜ヴィザヴォナ)
■歩く距離・日数
88km・7〜9日
■旅全体の日数
12〜14日
■WEBサイト
コルシカ地域自然公園(http://www.pnr.corsica/)※山小屋の予約
コルシカ地域自然公園(https://www.instagram.com/equipemontagnepnrc/)※登山道情報
コルシカ地域自然公園(http://randoblogpnrc.blogspot.com/)
■ベストシーズン
6〜9月(シーズン前後は雪山装備が必携。山小屋が閉まっているので食料の確保が難しい)
■パーミッション / ブッキング
PNRC(Parc Naturel Régional de Corse – コルシカ地域自然公園)の山小屋・貸しテントは出発前にネットで予約するのがベスト。テントを持って行けば、特に予約する必要はない、到着時にテント場利用券を買い、テントに取り付ける。
■予算目安
20〜25万円(総額)
[内訳]
エア代:15万円程度
現地宿代:テント場は1名あたり1泊700〜800円。小屋泊は1名あたり1泊1,700円。貸出テントは1名あたり1泊2,000円。
現地交通費:5,000〜8,500円
その他(食費など):山小屋の夕食は2,400〜3,000円、朝食は700〜1,000円。
■アクセス方法
[空港] バスティア空港:パリ経由で16〜20時間
[空港から近くの町へ] 鉄道:バスティア〜カルビ(約3時間)、バス:バスティア〜カルビ(2時間10分)
[IN:町からトレイルへ] バスでカルビ〜カレンザーナ。タクシーも可能。
[OUT:トレイルから町へ] 鉄道でヴィザヴォナ〜バスティア、もしくはヴィザヴォナ〜アジャクシオ。曜日、季節、年によってバスや鉄道の運行に違いがあるので要確認。
※現地交通
コルシカ鉄道:http://cf-corse.corsica/tarifs/
バス:https://www.corsicar.com/fr/autocars-lignes-regulieres-autocar-corse_11.html
■宿泊(町)
コルシカ島はリゾート地でもあるので比較的高い。私たちはカウチサーフィングや民間のキャンプサイトを利用。
■宿泊(トレイル)
PNRC(コルシカ地域自然公園)の山小屋(Refuge)だと小屋泊、貸出テント、個人テントの3パターン。また民間の宿(Bergerie・Auberge・Gite・Hotel)がところどころある。その他、羊飼い農家やスキー場のホテル。ホテル以外は山小屋宿泊代とあまり変わらない。宿泊しなくても、お昼などを食べるスポットとしておすすめ。
■補給方法(水、食料、燃料など)
自炊をするのであればバスティアやカルビの大きな街で最低限燃料と1日分の食料、行動食は買ったほうがいい。燃料を販売している小屋は少ないうえ、スクリュー式のバーナーに適用できないものも。山小屋には共用のガスコンロがある(無料、しかし待ち時間の可能性あり)。小屋によってストックされている食料の豊富さには大きな違いがある。パン、パスタ、クスクス、チーズ、フィガテル(コルシカのサラミ系)、果物、缶詰、ワイン、ビール、自家製ケーキなど。飲み水は山小屋や宿で無料でもらえる。トレイル上の水も浄水すれば使用可能。



ZINE#03 SECTION HIKING 2



ジョン・ミューア・トレイル(JMT)やアメリカの3大ロングトレイルをはじめ、ニュージーランド、北欧ラップランド、ヒマラヤなど、世界中のロングトレイル8つを紹介。いずれのトレイルも1〜2週間のセクションハイキングをするという方法にフォーカスし、上記『TRIP INFORMATION』も掲載している。

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ZINE – IN THE TRAIL TODAY #02 | 長旅をあきらめていた人のための、2週間で行く『SECTION HIKING』world trail編をリリース!


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トレイルズ

トレイルズ

佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
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