TRAILS REPORT

信越トレイル 全線開通10周年記念!113人のハイカーの声 by TRAILS research

2018.10.10
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文・構成・写真:TRAILS

日本のロングトレイルのパイオニアである信越トレイルが、全線開通10周年を迎えた。9月中旬にその記念イベントが行なわれた。

この記念イベントのために、我々TRAILSは、ハイカーの信越トレイルに対する思いや感謝を届けるべく、ハイカーの声を集めるアンケートを企画した。そのイベントに集まる、信越トレイルをつくり、維持してくれている人たちに、ハイカーからの声をプレゼントしたかったからだ。

そして蓋を開けてみれば、1週間くらいで、この企画に参加してくれたハイカーは113人!日本全国から、信越トレイルへの思いが集まった。今回は、その中身をTRAILS researchの記事として、10周年記念イベントでは時間の関係でお伝えできなかった内容も加えて、お届けしたいと思う。

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信越トレイルをつくり、維持してくれている人たちに、ハイカーの声を届けよう。


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【回答対象者】 TRAILS読者、信越トレイルのHP、SNSの閲覧者
【回答者数】 113 人
【調査実施⽇】 2018年9月
【調査⽅法】 インターネット調査

9月中旬の週末、斑尾高原ホテルにて「信越トレイル 全線開通10周年 記念感謝イベント」が開催された。昼の部は、ロングトレイルについての基調講演や、加藤則芳氏が抱いていた想いや夢を語り合うトークセッション、そして今まで信越トレイルを支えてくれた整備ボランティアの方への表彰式などが行なわれた。

我々TRAILSは、夜に開催された「交流の部」のトークセッションに登壇させていただいた。僕らの役割は、その場でハイカー視点から信越トレイルへの思いを届けるということだった。そこでTRAILS編集部の視点だけでなく、10周年記念のお祝いとして、100名以上のハイカーの声を集めて、信越トレイルをつくり、維持してくれている人たちに届けよう、というプロジェクトを企画した。

今回のアンケート企画で集めた声は、この記念イベントの場で発表された。そして、その場で紹介しきれなかったすべてのハイカーのコメントも、後日、TRAILSから信越トレイルクラブへとお届けした。

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ハイカー113人に聞きました。信越トレイルのどこが好き?


このアンケートの参加者には、「信越トレイルが好きすぎて、仕事を辞めました!」といって、信越トレイルとの出会いをきっかけに、ロングディスタンスハイキングにどっぷりハマったハイカーから、飯山の地元に小さい頃から住み続け、地元の里山につくられたトレイルとして信越トレイルを愛するハイカーまで、いろいろなハイカーが声を寄せてくれた。

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最初に掲載した「ロングトレイルのエッセンスが凝縮されたトレイル」というのは、北米の何千kmにもおよぶトレイルを歩いたハイカーからの声。そんなハイカーから見ても、そう感じさせてくれる魅力が信越トレイルにはある。

古くから生活のための峠道として使われていた場所であることも、ハイカーの声に挙げられていた。里山の森を歩きながら、かつて生活道だった峠道などと交わる。そんなトレイルの景色から、きちんとその土地に存在する理由があるトレイルであること、その土地のもつ物語も感じながら歩くことができること、を感じる。これも信越トレイルが愛され続ける理由のひとつとなっている。


ハイカーは、信越トレイルの理念やポリシーを愛している。


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記念イベントの会場で、「この質問の1位はなんでしょう?」とクイズ形式で、会場にいる信越トレイルに携わってきた人々に投げかけてみた。会場の圧倒的多数の人々が、ハイカーの多くが感じている「NPOやボランティアが中心となって、整備し、維持し続けている」という答えを当ててみせた。

加藤則芳氏が、信越トレイルを「大地に刻まれた一本の引っ掻き傷」と表現したように、人力で復元したトレイルであることも、多くのハイカーに支持されるポイントとして上位にあがった。信越トレイルの道は、人の手により人一人が歩ける程度の幅で整備されている。トレイルが、森の木々や植物のなかをくぐるように伸びている景色が、信越トレイルを歩いた記憶のなかに残っていることと思う。

ハイカーは、トレイル自体やそこから見られる景色だけでなく、トレイルのポリシーやフィロソフィーも愛している、ということが伝わってくる結果だ。


信越トレイルの延伸について、賛成?反対?


信越トレイルは、現在、苗場山の方向に向けて、トレイルの延伸を計画している。詳細なルートはまだ確定していないらしいが、山だけでなく、地元の集落なども含めて、さらに長いトレイルをつくっていく計画であるらしい。その延伸の計画について、ハイカーの意見を聞いてみた。

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アンケートに記入してくれたすべてのコメントに、TRAILS編集部は目を通しているが、多くのハイカーは「延伸賛成」だ。その内容は、長くなればさらにロングトレイルの旅の楽しみが増える、集落を通るというあらたな楽しみができる、といったようなものだ。

一方、現在のような維持管理をきちんとできる範囲でトレイルを守っていってほしい。舗装路をできるだけ通らずに、今のようにほとんどを山のなか森のなかを通るトレイルであってほしい。そんな声も一部であるが挙がっている。

TRAILSとしては、ハイカーの視点を届け続け、これからの信越トレイルのありかたを、サポートしていきたいと思っている。


歩き続けること。歩ける状況をつくり続けること。


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現在の80kmという長さは、北米などの何千kmというトレイルと比べれば、ロングトレイルとしては、それほど長い距離ではない。しかし信越トレイルは、間違いなく日本で初めてロングディスタンスハイキングの、カルチャーやフィロソフィーを本気で注ぎ込まれてできたトレイルだ。信越トレイルを歩けば、ロングトレイルの旅のエッセンスを凝縮して体験することができる。

ハイカーにできることは、なにより歩き続けることだ。トレイルを整備してもらえることで、ハイカーは歩くことができる。そして歩くハイカーがいることで、トレイルを存続していく状況が作られていく。

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信越トレイル10周年イベントの会場に、「信越トレイル、ありがとう」の声がたくさん貼り付けられたメッセージボード (製作: TRAILS)

信越トレイルも全線開通から10年。信越トレイルの母体となった「なべくら高原 森の家」の誕生から数えれば、すでに20年以上の年月が経っている。きっとトレイル関係者のいろいろな苦労と喜びの上に、続けてこられたのだろう。

さてこれからの10年は?10年という時間の長さは、一般的な組織でも、新陳代謝が起こり、新たな組織として生まれ変わらなければいけない状態が発生する。ただそのまま続けていく、というのは難しいはずだ。きっと信越トレイルを維持していく人たちにとっても、同じようなことが起こるだろう。そこにハイカーとして、なにがしかのサポートをたやさず続けていきたい。

信越トレイルは、日本のロングトレイルのパイオニアとして、そこにあり続けてほしい。それがハイカーの切なる願いである。日本にロングディスタンスハイキングのカルチャーが続いていくことを願いつつ、私たちもいつまでも歩き旅を続けていく。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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