TRAILS 環境LAB

TRAILS環境LAB | トレイルズなりの “ 大自然という最高の遊び場の守り方 ” を STUDY (知る) × TRY (試す) で模索する

2020.07.08
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2020年3月に掲載した連載記事『PLAY!』で、環境保護のTRAILS的なスタンスをアップデートすべくパタゴニアを訪れた。

この記事で、僕たちは2つのアクションを起こすことを宣言した。

その具体的なアクションのひとつが、今回お届けする「TRAILS環境LAB」という新しい記事シリーズの定期的な発信だ。

昨今の世界的な気候危機 (※1) を目の当たりにし、もはや悠長なことは言ってられないと感じていた。「TRAILS環境LAB」では僕たちなりの環境保護、気候危機へのアクションをさまざまなカタチで発信していく。

環境保護といっても、僕たちは環境の専門家ではないし、なにが本当に正しいかわからないこともある。それでも自分たちなりに勉強し理解する、自分たちが当事者の一端となり試してみることを実行していきたい。

そんな思いから、このシリーズを「STUDY(知る)」×「TRY(試す)」という2つの軸で発信していくことにした。

TRAILSなりの環境保護を考えたときに思い浮かんだフレーズは、“ 大自然という最高の遊び場の守り方 ” だった。

自分たちの遊びと旅のフィールドが、その素晴らしさを失うことなくずっと先の世代まで続いていくことを、この言葉に託したい。

※1 気候危機:環境省による2020年版「環境白書」において、「『気候変動』から『気候危機』へ」という表現が用いられた。

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10年前、TRAILS編集長の佐井が夫婦で旅したJMT (ジョン・ミューア・トレイル) にて。


TRAILSとしての環境保護に関する出発点


僕たちの環境保護に関する出発点は、ウェブマガジンを立ち上げるよりも前にある。それぞれが一人のハイカーとして、トレイルで遊び、旅するようになった時からだ。その時から山や川にある自然の貴重さと素晴らしさを知り、また失われつつある自然環境についても意識的になっていった。

ハイカーとしての環境意識は、必然的にTRAILSを立ち上げる時の思いにも込められていた。

「トレイルで遊んだり旅したりする人が増えれば、おのずと自分たちの遊び場である自然への愛情が増し、環境保護に関心を持つ人も増えるだろう。それによって少なからず地球環境が良い方向にシフトするはずだ。
 
つまり、大自然の中での遊びや旅の啓蒙こそがTRAILSらしい環境保護へのアクションである」

 
この「大自然の中での遊びや旅」を中心に置くスタンスは、トレイルカルチャーを発信するメディアとして、立ち上げ時も今も、そして今後も変わることはない。

環境保護という大きくて圧倒的な正義と義務に立ち向かうときも、このスタンスから出発する以外にないと思っている。

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TRAILS編集部crewによるニュージーランド・トリップ。


ロングトレイルにフォーカスした環境をめぐる情報発信


TRAILSは、2016年から『LONG DISTANCE HIKERS DAY』という「ハイカーによる、ハイカーのための、ロング・ディスタンス・ハイキングのカルチャーの発信」をテーマにしたイベントを、ハイカーズデポと共同で毎年開催してきた。

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毎年、大勢のロング・ディスタンス・ハイカーが集まる『LONG DISTANCE HIKERS DAY』。「NEW YEAR TOPICS」発表時のひとコマ。

このイベントの「NEW YEAR TOPICS」という定番コンテンツでは、毎回、日々変化するトレイルの環境にまつわる最新情報をハイカーと共有してきた。

山火事のことや積雪量のこと、台風のこと、火器使用方法のこと、そしてハイカーが守るべきマナーのことなど。

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カリフォルニア州の降水量が少なく、PCTハイカーにとっては、水場が枯れたり、山火事のリスクが高まる恐れがあることを伝えた年もあった。『LONG DISTANCE HIKERS DAY』のスライドより。

アメリカの山火事による自然消失のインパクトは凄まじい。エリアによっては発火原因のひとつとされることも少なくないアルコールストーブの使用が禁止になるなど、それまで当たり前であったハイカーの遊びや旅の仕方も変えていく必要があることを学んだ。

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山火事で大きなダメージを受けたアメリカのPCT (Pacific Crest Trail) の森林地帯。photo by Kaoru Honma

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アルコールストーブは、アメリカの一部のエリアで使用禁止に。『LONG DISTANCE HIKERS DAY』のスライドより。


ホームトレイルの房総を襲った台風の衝撃


一方国内においては、去年の台風が大きなトピックだった。特に編集長・佐井と小川のホームトレイル (地元) でもあり、NIPPON TRAILの連載でも取り上げた千葉、房総半島は、甚大な被害を受けた。

台風15号は、観測史上初めて風速57.5メートルの暴風をともなって上陸した。家屋の屋根を吹き飛ばし、クルマを横転させるほどの風。山の木々もなぎ倒し、トレイルは倒木だらけになった。

このまま地球の気温上昇が続けば、さらに規模の大きな台風が襲ってくることも予想される。想像ではなく、現実と向き合う覚悟を突きつけられた出来事のひとつであった。

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2020年の年始にTRAILS編集部crewの小川が房総半島を歩いたときの写真。台風15号の爪痕がかなり残っていた。


プロダクトを通じたTRAILSなりの環境保護の意思表明


またプロダクト開発においても、環境保護を意識したアイテムを複数リリースしてきた。

たとえばオリジナルのトレイルミックス『MYOM (Make Your Own Mix) 』は、100%オーガニックのドライフルーツとナッツを使用。

オーガニック (※2) を選んだ背景には、TRAILSなりの環境アクションの意思があった。あらためてオーガニックの特徴について調べたり専門家にヒアリングするなど勉強し、コストは高いが地球環境にやさしい可能性が高いと判断し、オーガニックを選択することにしたのだ。

※2 オーガニック:オーガニックによる農産物の食品づくりは、化学農薬や化学肥料を使用しないため、水、土、大気を汚染から守ることにもつながる。それはまた地球温暖化の抑制、生物多様性の保全にも貢献する。

詳しくは、農林水産省による有機農産物の説明資料 (https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/hozen_type/pdf/kan_panf.pdf)。IFOAM (国際有機農業運動連盟:有機農業を普及に努めてきた世界最大の国際的なNGO) は、オーガニックの原則として「生態系」「健康」「公正」「配慮」の4項目を掲げている。オーガニック食品も、農薬使用有無だけでなく、生産方法全体での温室効果ガスの排出量の削減、また加工や流通の工程における環境負荷の軽減など、さまざまな要素が影響する。

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100%オーガニックのドライフルーツ&ナッツのオリジナルトレイルミックスは、“MAKE YOUR OWN TRIP = 自分の旅をつくる” がコンセプトの『TRAILS INNOVATION GARAGE』で提供。

オリジナルの『PINT CUP』は、クリーンカンティーンのステンレススチール製のパイントカップがベース。同ブランドは、使い捨てボトルのゴミをなくすべく最高品質のリユース可能ボトルをつくり続けている。このコップは、紙コップやプラスチックカップなどとは異なり何度でも使うことが可能で、ゴミが減るため環境にもやさしい。

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ステンレス製でBPAフリーのリユース可能なカップは、地球にもやさしい。


TRAILSの環境保護に関するスタンスとアクションのアップデート


気候危機を目の当たりにした僕たちは、危機意識が強烈に高まった。環境保護に関するTRAILS的なスタンスもアップデートする必要があることは自明だった。

そこで新たなアクションを起こす前に、まず話を聞きたいと思ったのが “ ビジネスと環境保護の共存を目指す ” というメッセージを発信し続けてきたパタゴニアだった。

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PLAY!出社前に遊ぼう # 06 | TRAILS × 篠健司・佐々木拓史(patagonia) 地球を救うためにできること

今年発表された環境省による2020年版「環境白書」では、「『気候変動』から『気候危機』へ」という表現が用いられた。これも衝撃的なことであった。

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プラネタリー・バウンダリーは、人間が生きつづけるための地球の環境容量を、科学的な根拠にもとづきに示したもの。

パタゴニアの取材を経て、TRAILSとして、行動変容を生みだす2つのアクションを起こすことにした。

① WEB MAGAZINE
毎月、環境保護に関する記事を発信する

② TRAILS INNOVATION GARAGE
SCHOOLで、環境保護に関する体験コンテンツをつくる


「TRAILS環境LAB」スタート!


そしてこのたび、「TRAILS環境LAB」を立ち上げることにした。

「環境」はスケールがとてつもなく大きく、全体像もとらえづらく、専門性が高く、さまざまな考えや意見がある。そのため、何から手をつけてよいかわからなかったり、間違っていて批判されたらどうしよう……と、思いがあったとしてもついついアクションがストップしがちだ。

でもそれで手をこまねいていたら何も変わらない。一時的な失敗や批判をおそれず、体当たり的でもかまわないからトライ & エラーを繰り返しながら等身大で環境問題に取り組むスタンスを、TRAILS読者と共有したい。

トレイルでの遊びと旅、トレイルカルチャーを愛する人たちの集団として、身近な自然を守るためにやれることをやる。そもそもみんな自然が好きなのだから、きっと共感してもらえると思う。

冒頭でも少し説明したように、自分たちなりに勉強し理解する、自分たちが当事者の一端となり試してみる、というアクションを実行していく。そんな思いから、この「TRAILS環境LAB」のシリーズは、「STUDY(知る)」×「TRY(試す)」という2つの軸で発信していくことにした。

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記念すべき1回目は、「STUDY」として、川鮭をテーマに環境問題に取り組んでいる松並三男 (まつなみ みつお) くんというトレイルで遊び、旅することが大好きな仲間による連載レポート#01をお届けする予定だ。

トレイルカルチャーに関しても、環境保護に関してもTRAILSとバイブスが近く共感でき、リスペクトしている彼の活動やトレイルライフを通じて、鮭と川という視点から環境問題について学んでいきたいと思う。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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