TRAILS REPORT

第四回 鎌倉ハイカーズ・ミーティング報告

2015.05.01
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■メーカープレゼンテーション報告

続いて参加メーカーからのプレゼンテーションが行われた。まずはウェブショップから実店舗にも進出したおなじみムーンライト・ギア。「ものぐさハイキング」を提案する同店には、そのコンセプトを体現するような363イクイップメントというオリジナル・ブランドがある。まず代表の千代田高史さんが紹介してくれたのは「タープパッチサック」。ハイカーに人気のスノーピーク・チタンシングルマグ450のサイズにぴったりにあわせたというスタッフバッグだ。だが、当然のことながらただのスタッフサックではない。底部が革張りになっていて、木や枝をタープのテントポール変わりにするときの受けに使えるというのだ。たしかにハイカーのなかでもとくにタープを使うようなハードコアなハイカーはもっぱらポールを歩くときに使わず、むしろタープやシェルターを張るために持っていっているという人も多いはず。これさえあればポールは不要だということだ。ただ、千代田さんの言っていたことで面白かったのが、とはいえキャンプグラウンドでちょうどいい木はなかなか見つからないから、歩いている間はずっといい木を探しているという話。「でもそれも自然に触れるという意味では楽しい」というマインドは、まさにハイカー・マインドではないだろうか。未来的なキューベンファイバー生地とオーセンティックな皮の組み合わせも面白い、なんともニッチなアイテムだった。

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そしてもうひとつ紹介してくれたのがアンドワンダーに別注をかけて作ったという「グラウンドシート・スカート」。普段からレインスカートをよく活用するという千代田さんが、ロングゲーターと合わせてちょうど良い長さのものを作って欲しいとリクエストから始まったこの企画、どうせならレインスカートとしては使わないキャンプ時にはグラウンドシートとして使えるようにしようと、リッジレストがちょうど収まるサイズにしたのだとか。アメリカのスルーハイカーもよくヒモ付きゴミ袋の底を開けたものを腰に巻いてレインスカート代わりにするという。一台二役をこなすまさにULらしいアイテムだった。

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次に登場したのが手前味噌ながら当TRAILS。ハイカーズ・デポの長谷川晋さんをアドバイザーに迎え、日本のダウン界の雄ナンガ制作で、なんと二人用スリーピングバッグをリリースするのだ。いつもふたりで旅をするという代表の佐井聡・和沙夫妻が感じていた二人用スリーピングバッグへの不満を解消することを目指したという。これまでの二人用バッグは一人用を単に横に広げたものが多く、足下に向けてテーパーがついているので二人で入ると身体が斜めになり、体の間に隙間ができてそこがコールドスポットになっていた。それを解消するために直線的なシルエットにし、さらにフード&ジッパーをオミットして軽量化に振り切った。さらにトップ&サイドはボックス構造で暖かさをキープしつつ体重で潰れる底面はシングルキルト構造にすることでダウン量500gの二人用ながら重量を860gに納めることができたという。BUDDY BAGというこのスリーピングバッグ、絶賛予約受付中です。

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ネオシェル使用の防水ローンピーク。右から試作1号、試作2号、左がほぼ製品版。

そしてアルトラやルナサンダルの日本代理店としてお馴染みのロータスからは、この夏発売予定のポーラテック・ネオシェルを使用した防水使用のアルトラ・ローンピークの紹介があった。上の写真には3足の試作品の防水使用ローンピークが並んでいるが、右が最初の試作で、ブーティー加工といって靴下状の防水メンブレンでシューズ内側を被ったもの。そして中が縫い目をテープでシームシーリングしたもの。だが、膨大なシューズ内部の縫い目にすべてテープを張り巡らせると、メンブレンが露出した部分がとても少なくなってしまう。結果、せっかく透湿性の高いメンブレンを使用していてもそのぶん透湿性が低くなってしまうのだという。ここでアルトラ開発陣はそもそもローカットシューズに完全防水は求められていないのではないかと気づき、シームテープをすべて外すことにしたという。完全防水を諦めたぶん50~60gほどの軽量化に成功し、ゴアテックスの3倍もの透湿性を誇るネオシェルの機能を活かし、シューズ上面と底面からの防水性と防風性を確保しつつ、裸足ではいても蒸れないほどの透湿性を実現したのだという。個人的にもトレイルランニング・シューズの魅力はその軽量さとメッシュによる通気性の良さだと思っているし、すぐに乾くので防水性よりもむしろ寒冷時の防風性のほうが欲しかった。そういった意味でもアルトラ開発陣のあえてシームテープを外して透湿性と防風性を高めた決断は非常に納得がいく。夏の発売が楽しみだ。

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WRITER
三田正明

三田正明

1974年東京都国立市出身。2001年に『Title』(文藝春秋)の連載「To The Boy /少年犯罪被害者の旅」でカメラマン/ライターとしての活動を始める。2001年にザンビアで皆既日食を見て以来南アフリカ・ジンバブエ・タイ・インド・オーストラリア・アルゼンチン・ブラジル・メキシコ・トルコ・ネパール・アメリカ・カナダ・モンゴルなどを放浪。これまでに皆既日食を五度、部分日食を二度、皆既月食を一度見ている。次第に旅の途上で出会った大自然の世界に傾倒し、気がつけばヒマラヤや北米大陸や日本各地のトレイルを歩くように。雑誌『スペクテイター』や『マーマーマガジン』を始めとする多くの雑誌にアウトドアにまつわるドキュメンタリーやトラベローグや連載記事を執筆、TRAILSではメインライターとエディターを務める。
masaakimita.web.fc2.com

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