TRIP REPORT

パックラフト・アディクト | #37 嵐山渓谷・槻川のデイ・パックラフティング

2020.09.30
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文・写真・構成:TRAILS

嵐山と言っても京都の嵐山ではなく、今回行ったのは埼玉の武蔵嵐山 (むさしらんざん)。

そこに増水時にしか下れない小さな川がある。

御岳渓谷 (多摩川) や長瀞 (荒川) が増水して漕げないときに、この川だったら面白いのかも、と思って目をつけていた。しかし、どうもタイミングが合わず、なかなか足を運べずにいた。

最近、パックラフト仲間のI君がこの川に行っていたので、「増水していなくてもパックラフトなら行けたりしない?」と聞いてみた。そしたら「ぎりぎり行けるんじゃないですね」という返答。

そんなことで8月某日、渇水覚悟、ライニングダウン (※) の部活状態になること覚悟で、武蔵嵐山の槻川 (つきかわ)に行ってみた。

(※)ライニングダウン:浅瀬など舟に乗ったままでは通れない所で、舟を降りてロープ等で舟を引きながら浅瀬を歩くこと。

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今回はTRAILS編集部crewの根津、小川と、それに小川のご近所さんのパックラフト仲間であるタカセ君の3人で。



増水したときにだけ行ける川:嵐山渓谷・槻川。



関東のパックララフターにとってのホームリバーである、御岳渓谷や長瀞は、台風や大雨が降ったときは、水位が上がって危険な状態となり、しばらくの間パックラフトでの遊びをがまんして、家でチーンと静かにしていなければいけないときがある。

一方で嵐山渓谷はどうやら、増水時にしか下れないらしい。多摩川などが増水して漕げないときに、反対に増水時にしか下れない川があるとは好都合だ。しかも、それほどレベルも難しすぎないらしい。そんなことで埼玉の嵐山渓谷を流れる槻川に行ってみることにした。

カヤックやカヌーなら本格的な増水時にしか漕げないような川を、ちょっとでも水が多めなら漕げてしまえるのは、パックラフトの得意領域でもある。

ただ、僕らが行った日は、増水時どころか、晴れの日が続く、渇水の8月。「増水時にしか下れない」なんて前評判は気にせず、とにかく自分たちで行ってみることにした。

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スタートポイントの、小川小学校 下里分校。廃校になったあとにカフェとして再生され、賑わっている。



里山の田舎風景のなかを流れる川。



東武東上線の小川町駅で電車を降り、駅前のローソンで行動食を買う。そして3人だったのでタクシーでスタートポイントの小川小学校 下里分校まで直行。

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小川小学校 下里分校の裏から、川へとアプローチ。

学校の前でタクシーを下車し、そのままその学校の裏を流れている川へと向かう。

川にたどりつくまでに、草がぼうぼうに育って、踏み跡も見つけづらい河原を進んで、プットイン・ポイントを探しにいく。

そしてようやく槻川に到着。

しかし、あまりに浅い・・。

足のくるぶしくらいの深さしかなく、水もまったく流れていない。一同、一時的なショック状態になる。しかし気持ちをとりつくろい、「しかたないね。」と口にしてみる。

「舟を浮かべられそうなところまで、川を歩いて行こう」と、今度は川のなかをじゃぶじゃぶと歩いて行く。

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大雨後などの増水時は、学校裏のここからスタートができる。



なんとかパックラフトを浮かべるも、すぐに座礁しライニングダウン。



幸いにして、少し川の中を歩いた先に、パックラフトをぎりぎり浮かべられる深さになった。いったんここでパックラフトを膨らませ、川下りの準備をする。ちょっと気持ちを立て直すために、3人揃った記念写真も一枚撮っておく。撮った写真を見返すと、悲しいくらいに水深が浅い・・(冒頭にある3人の写真)。

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出発早々、浅すぎてライニングダウンの連続。

いざスタートしてみると、予想どおり最初はライニングダウン (浅瀬で舟が進まず、舟を引きながら進むこと)の連続。何度も舟を降りては、川を歩くことになる。

しかし、周りを眺めると、里山に流れる川の風情が気持ちいい。

目の前に穏やかな形の山が見え、晴れた空に、生い茂った緑がよく映えている。

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御岳渓谷とも長瀞ともちがう、メロウな田舎景色。

この槻川は荒川水系のひとつで、秩父山地を源流とし、山間部を抜けて小川盆地のなかを流れる。小川町の駅前を歩くと、古くからの和紙屋さんを目にするが、それはこの槻川の清流を生かして生産されているらしい。

小川盆地を抜けると、流れは武蔵嵐山の渓谷部に入り、独特の岩盤に囲まれた景色が現れる。渓谷の先で都幾川 (ときがわ) と合流し、その後も、さまざまな川に合流しながら最後は荒川へと注ぎ込む。

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カヤックだと通れない、浅くてぎりぎりの水深でも、岩を避けながら下っていく。



核心部の嵐山渓谷へ。里山のなかに隠れる渓谷。



下里の滝あたりを過ぎると、少しずつ渓谷の様相となってくる。

このあたりから水深も少し深くなってきて、舟を降りることも少なくなってくる。渓谷の入り口には、きれいな竹林に囲まれた景色が続いている。

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嵐山渓谷の入り口付近に続く、竹林の風景。

嵐山渓谷は、御岳渓谷のようないかつい岩壁の景色とも、長瀞の広大な岩畳のような華麗さとも違う、里山のなかに隠れた小さな秘境のような渓谷だ。

遠山甌穴(おうけつ)のあたりで、2箇所ほどちょっとした瀬が出てくる。水量があればそれなりにダイナミックな瀬となりそうだ。

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遠山甌穴あたりにある瀬。

スタートの小川小学校 下里分校から、ゴールの嵐山渓谷バーベキュー場手前の河原までの距離は、約7km。

10時半頃にスタートしたが、バーベキュー場の手前で時間を確認すると、すでに14時頃になっていた。前半がライニングダウンの連続だったため、すいすい進まずに、たった7kmの距離だが思ったよりも時間が経っていた。

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嵐山渓谷の景色。緑に覆われたやわらかさを感じる渓谷の景色。

当初はもう少し先の学校橋まで漕ごうと思ったが、もう体もいい感じに疲れてきたので、バーベキュー場手前の河原に上がって、舟を片付けることにした。

前半は座礁の連続でなかなかハードだったが、渓谷部に入ってからは、浅いながらも岩を避けながら進むテクニカルな感じのダウンリバーが、なかなか楽しかった。河原にいたキャンプを楽しんでいたギャラリーは、あんなに浅いところでも進むのか、とみんな驚いていた。実際、間違いなくカヤックでは漕げない浅さだったが、パックラフトの強みを発揮して遊ぶことができた。



小川町の麦雑穀工房で最高のクロージング。



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パックラフトを漕ぎ終わった後に、すぐさま向かった先は?

実は今回、僕たちは渇水でも、まったく動じない理由があった。

今回は漕いだ後に、麦雑穀工房の極上のクラフトビールが飲めることがわかっていたからだ。

いや、むしろ麦雑穀工房の醸造所&タップルームに行こうと思っていたら、近くに嵐山渓谷の川があることを思い出した、というのが正直な経緯である。

麦雑穀工房は、ビール好きからも評価が高いクラフトビールのマイクロブリュワリー。自家栽培や地元産の原料を使っているのが特徴だ。特にここのヴァイツェンビールが絶品。

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麦雑穀工房のヴァイツェンビール。タップルームは、コロナ対策により現在は予約制で、1組2名まで。

さっそくヴァイツェンを一杯。小麦の香りがすばらしい!こんなに小麦感の豊かなヴァイツェンビールはなかなかない。

くーーっと一杯飲んだら、もう今日の前半に、川が浅すぎて座礁しまくったことなんかは、どっか遠くに吹っ飛んでいた。

ナルゲンボトルをグラウラー代わりに使って、たっぷり1リットルのお土産用のビールも投入してもらって、バックパックのサイドポケットに差し込んだ。


<リバーマップ(川地図)>
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里分校 (廃校を利用したカフェ) からスタートし、ゴールは嵐山渓谷バーベキュー場手前の河原。距離は約7km、所要時間は3時間半 (渇水時: 当日水位 馬橋82.58m)。川の難易度は、御岳渓谷を漕げる人ならば問題ないレベル。遠山甌穴と月川荘キャンプ場の手前に瀬あり (初めての場合は要スカウティング)。嵐山渓谷バーベキュー場より下流の、学校橋には駐車場あり。ここもゴール・ポイントとして利用可能。スタートの小川小学校 下里分校へは、小川町駅からはタクシーで約10分。バスの場合は、パークヒル行きに乗り「下里」バス停下車し、バス停から徒歩10分。

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トレイルズ

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

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TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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