オフシーズンにできるスルーハイキングの準備・10TIPS |by リズ・トーマスのハイキング・アズ・ア・ウーマン#37
(English follows after this page.)
文・写真:リズ・トーマス 訳・構成:TRAILS
今回の記事では、冬のあいだにできるスルーハイキングの準備についてのTIPSを、リズが紹介してくれる。
内容はベーシックなものを中心に、10個のTIPSとしてまとめたもの。長い旅に出るならば、やっておかなればいけないことばかりだ。
リズは今回の記事について、以下のように説明してくれた。
「冬が深まると、多くのハイカーは寒さのためにスルーハイキングの計画を考えることさえできなくなります。でも、なにも雪の中で手をかじかませたり、キャンプしたりしようというのではなく、ハイキングシーズンに向けてハイカーができることや、すべきことはあるのです。
今回の記事では、春の終わりから夏にかけてのハイキングを楽しむために、冬の間にやっておくといいことをいくつか紹介します」。
今回の記事は、今年にスルーハイキングを予定しているハイカーだけでなく、いつかスルーハイキングをしてみたい人にとっても、参考になる基本を紹介してくれている。
雪のなかのハイキングは、冬のあいだにできるスルーハイクの準備のひとつですが、そこまでの寒さを味わなくてもできる準備は、他にもいろいろあります。
準備 -1:トレイルを理解する
本を読むことで、冬場のスルーハイクに備えることができます。アウトドア・リテイラー・ショーで自著の書籍を手にするリズ。 photo by Whitney LaRuffa
まずは、あなたが歩くトレイルについてよく調べましょう。そのトレイルを踏破したハイカーが書いた、本やブログを読んでみましょう。そうすると、どんなことが待ち受けているのか、どんな装備やスキルが必要なのか、が見えてきます。
あなたが歩こうとしているトレイルには何か大変ことがあるのか。ピッケルやパックラフトの使い方を覚える必要はあるのか。事前にトレイルのことを理解しておけば、冬のあいだに、計画や準備を進めることができます。
準備 -2:他のハイカーと話をする
スルーハイキング経験者からもアドバイスをもらいましょう。
長期のハイキングトリップの準備をする際に、他のハイカーと話すことは、適切なアドバイスを得るための有効な手段です。最初はトレイルに関する心配や不安があると思います。その疑問に答えてくれるでしょう。
まずは、あなたが行きたいトレイルを歩いたハイカーを探しましょう。近くに住んでいるのであれば、直接会ってみるといいでしょう。遠方に住んでいるならば、ビデオ通話で話してみましょう。どちらの場合でも、その人たちが旅で使用したギアを見れば、自分のギアリストづくりの参考になります。
準備 -3:講習を受ける、スルーハイキングのグループに参加する
ハイキングの講習やイベントは、多くの学びを得られます。
ハイキングの講習に参加すれば、ロング・ディスタンス・ハイキングに必要なスキルを身につけることができます。もちろんハイキング中に習得できる技術もありますが、事前に知識をつけておくと、より自信を持つことができます。
またそうすることで、何かを習得する際の、心理的なハードルも下がります。ハイキングの前にどれだけ準備をしていても、習得すべきことは常に存在しているものです。経験豊富なスルーハイカーであっても、ファーストエイドや緊急時の薬、雪上でのナビゲーションや安全対策などのクラスを再受講することは、プラスになるでしょう。
準備 -4:地図の入手と許可証の申請
事前に地図やガイドブックも入手しましょう。
スルーハイキングのために、地図を入手してじっくりチェックしましょう。多くのロングトレイルには代替ルートもあります。PCTのように、ハイキングにあたって許可証が必要なトレイルもあります。
海外に長期滞在する場合は、ビザが必要な場合もあります。冬の時期にこそ、ベースとなる旅のスケジュールを考え、それに応じて許可証やビザの書類を手配しておきましょう。
準備 -5:ギアリストの作成
早めにギアリストを作成して、必要なギアを手配しましょう。
海外のギアを買う場合、届くまでにオーダーから数カ月かかることもあるので、早めにギアリストを作成しましょう。
もし可能であれば、購入する前に、他のハイカーからそのギアを借りてみたり、あなたが興味がありそうなギアを見せてもらったりすることもおすすめです。
準備 -6:ギアの使い方の練習
自宅の庭や、近所の公園などで、試し張りをしましょう。
PCTやATを歩くスルーハイカーでも、それまでにテントを一度も張った経験がない、というハイカーもたくさんいるものです。
しかし、きちんと練習をしておいて、強風のなかでも、雨が降っているなかでもテントを張れる、と自信が持てるくらいにしておきましょう。また、スルーハイク中の状況を想定して、狭い場所や凸凹のある地面でもテントを張れる練習をしておくとよいです。
準備 -7:パッキングの練習
使用するバックパックを用いて、パッキングの練習をしておきましょう。
経験豊富なスルーハイカーは、バックパックのなかの、どこに何が入っているのかを、すべてのギアについて把握しています。
大切なのは、自分に合ったシステムを作ること。よく使うものはすぐにアクセスできるところに入れましょう。使用頻度の低いものや、キャンプ時にのみ使用するものは、バックパックのボトム部分に入れておきましょう。
パッキングは、天気が悪くてハイキングに行けない時でも、家で練習することができます。快適にバックパックを背負えるようになれば、荷物を持って1日中ハイキングするのも楽になるはずです。
準備 -8:荷物の出し入れの練習
いかに素早くテントを撤収し、パッキングして出発するか。スルーハイキングではとても重要なことです。
多くの新米スルーハイカーは、朝の出発前のパッキングに1時間以上かかることがあります。
朝、外が寒い時にパッキングをするのは、1日の始まりとして嫌なものです。ですから、スピーディーにパッキングできることは、あまり取り上げられないスキルではありますが、家で練習しておく価値があると思います。
テントの設営と撤収は、練習すれば速くなるスキルです。私は、幾度となく朝の撤収作業をしてきたので、今では10分足らずでテントを畳んでパッキングまで完了させることができるようになりました。
どんな状態のバックパックがいいか、バックパックのどこに何を入れるか、を知っておくと効率的です。それぞれの荷物を入れる場所が決まれば、朝、楽に素早く行動することができるようになります。
準備 -9:身体のトレーニング
スルーハイキングでケガをしないよう、冬場にトレーニングをしておきましょう。
よいコンディションの体でトレイルを歩き始められれば、毎日のハイキングが楽になります。そのため、冬のあいだになにか運動をしておくべきです。そこで、おすすめの運動をいくつか紹介します。
ウォーキングや立ち続けるトレーニングは、スルーハイク中に辛くなりがちな、足首と足の筋肉を鍛えられます。ランニングやウェイトトレーニングは、脚力全体の強化になります。
しかし多くのハイカーは、脚力 (腿やふくらはぎの筋力) は鍛えやすいが、足 (足首より下の筋力) は鍛えづらいと感じているようです。結局、脚ではなく足が、筋力的に一番弱くなってしまうのです。それは、脚の筋肉は、小さな足の筋肉よりもより速く強化されるからです。ですから、体の一部分を鍛えるとしたら、足首と足を優先させるべきでしょう。
冬のあいだは、立ったり歩いたり、あるいは何時間も立ちっぱなしでいる練習ができます。室内や街中で、重さのあるバックパックを背負って歩けば、体を鍛えることができます。山歩きほど楽しくなく、景色もよくないですが、どんなトレーニングもスルーハイクのための体づくりにつながります。
準備 -10:友人や家族 (場合によっては職場の同僚) に旅のことを伝えておく
どんなトレイルにどんなプランで臨むのか。周りの人にちゃんと伝えておきましょう。
長期間家を空けるのであれば、今回の旅について、身近な人に説明しておくと良いでしょう。
あなたがハイキングをしている間、植物やペットの世話をする人が必要ですか? あなたの家族は、あなたとどのように連絡をとればいいか知っていますか? あなたの上司や同僚は、あなたがハイキングのために退職することを知っていますか?
早めにこういった話をしておくと、過度な期待をされないで済みますし、家庭生活のあり方においても少しは楽になるでしょう。
スルーハイキングをスタートするまでのプロセスは、とてもエキサイティングです。冬は、計画をし始めるのにベスト時期ではないかもしれませんが、ハイキングの準備のために自宅でできることはまだまだたくさんあります。
医療品や修理用具など、忘れがちな小物も含めてパッキングリストを作成することが大事。
今回の記事は、スルーハイキングを予定しているハイカーにとって、知っておくべき基本となる内容だ。より詳しい内容を知りたい方は、ぜひ『LONG DISTANCE HIKING』の書籍を読んでみてほしい (詳細はコチラ)。
まだコロナの影響によって、特に海外トレイルの予定は立てにくい状況だが、旅に向けた準備は進めることができる。リズが書いてくれているように、旅そのものだけでなく、旅を始めるまでのプロセスは、とてもワクワクするものだ。
TRAILS AMBASSADOR / リズ・トーマス
リズ・トーマスは、ロング・ディスタンス・ハイキングにおいて世界トップクラスの経験を持ち、さまざまなメディアを通じてトレイルカルチャーを発信しているハイカー。2011年には、当時のアパラチアン・トレイルにおける女性のセルフサポーティッド(サポートスタッフなし)による最速踏破記録(FKT)を更新。トリプルクラウナー(アメリカ3大トレイルAT,PCT,CDTを踏破)でもあり、これまで1万5,000マイル以上の距離をハイキングしている。ハイカーとしての実績もさることながら、ハイキングの魅力やカルチャーの普及に尽力しているのも彼女ならでは。2017年に出版した『LONG TRAILS』は、ナショナル・アウトドア・ブック・アワード(NOBA)において最優秀入門書を受賞。さらにメディアへの寄稿や、オンラインコーチングなども行なっている。豊富な経験と実績に裏打ちされたノウハウは、日本のハイキングやトレイルカルチャーの醸成にもかならず役立つはずだ。
(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)
- « 前へ
- 1 / 2
- 次へ »
TAGS: