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シエラ山脈のオフトレイルを歩くサザン・シエラ・ハイルート(前編)|by リズ・トーマスのハイキング・アズ・ア・ウーマン#35

2021.10.20
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(English follows after this page.)

文: リズ・トーマス 写真:リズ・トーマス, フェリシア・エルモシージョ, ヴィクター・ハンソン・スミス 訳・構成:TRAILS

ジョン・ミューア・トレイル (JMT) で有名なシエラ山脈のエリア。エッジーなハイカーたちは、JMTのオルタナティブ・ルートとして、シエラの山々のさらに奥深くを歩くオフトレイルに注目している。それが「シエラ・ハイ・ルート (SHR)」だ。

2021年の夏。リズは、JMTの南側のセクションを並走するように歩く「サザン・シエラ・ハイ・ルート (SoSHR)」を旅してきたそうだ。


シエラ山脈の高所のオフトレイルを歩く。

しっかりしたトレイルも標識もないオフトレイル。当然、レベルの高いナビゲーションスキルやクライミングスキルも必要になる。しかし、それだからこそ、ほとんど人が立ち入らない「シエラの心臓」を旅することができるのだ。

リズの最新のトリッップ・レポートである「サザン・シエラ・ハイ・ルート」の旅を、前後編に分けてお届けする。抜群の景色が映る写真を見ているだけでも、シエラの山々に抱かれているような気持ちになるレポートだ。


JMTと並走するサザン・シエラ・ハイ・ルート。


ロング・ディスタンス・ハイカーにとって、シエラネバダ山脈といえばジョン・ミューア・トレイルを思い浮かべるでしょう。しかし、シエラにはハイキングのオプションがたくさんあります。高所エリアの、オフトレイルを歩くこともできるのです。

私は5年前に、ヨセミテの北からセコイア国立公園までの、約300kmのシエラ・ハイ・ルート (SHR) を歩いたことがありました。


サザン・シエラ・ハイ・ルートを旅するリズ。

今年は、シエラ・ハイ・ルートの延長線上にある、サザン・シエラ・ハイ・ルート (SoSHR) を歩くことにしました。このオフトレイルのルートは、アラン・ディクソンが考えたルートです。サザン・シエラ・ハイ・ルートは、JMTの南部のセクションを並走するように歩く、約160kmの距離を歩くルートです。JMTの南の起点であるマウント・ホイットニーよりもさらに南側まで、ルートが伸びています。

難易度の高いルートですが、シエラをスルーハイキングしたいハイカーにとって、このルートはさらなるチャレンジの対象になっています。またこのルートは、ほとんど人が訪れることがない、シエラの高所の山あいを歩くことができます。


JMTと並走するように、シエラ山脈の高所のオフトレイルを歩く約160kmのルート。


クライミングスキルも必要なオフトレイル。


私が5年前にシエラ・ハイ・ルートを歩いたとき、他のスルーハイカーから「他のスルーハイクと比べて、どれくらい難しいの?」と聞かれたことがありました。私は「シエラ・ハイ・ルートは、他のスルーハイキングとの共通点も多いけど、デイハイク的な要素もあるところですね」と答えました。


きちんとした道も、標識もない、オフトレイルを進んでいく。

そのように答えたのには、いくつか理由があります。まずハイ・ハイ・ルートでは、岩の上で手を使ってバランスを取って歩いたり、また自分の力で岩の上によじ登らないといけない場所があります。ロッククライミングのクラス3のレベルが必要な箇所もあります。


地形を読み取りながらのナビゲーションスキルも必要。

またシエラ・ハイ・ルートでは、悪天候のなかハイキングするのは危険です。そのときは、トレイル上で「ゼロデイ」を取るか、または安全な樹林帯まで退避する必要があります。

ほとんどのハイカーは、シエラ・ハイ・ルートは、通常のトレイルと比べて半分の距離しか歩くことができません。1日の終わりには、肉体的にも精神的にも疲れ果ててしまいます。しかし、自分で道を選び、地形を読み取り、自分の力で峠の上に立てる体験は、それだけでとても価値があることなのです。


誰もいない巨大な高山湖で、1日目のキャンプ。



今回の旅のメンバー。左からリズ、POD、フラミンゴ。

今回、一緒にサザン・ハイ・シエラ・ルートを歩いたハイカーは、「プリンセス・オブ・ダークネス (POD)」 というトレイルネームのフェリシア・エルモシージョと、フラミンゴです。フラミンゴは、最初の2日間だけ一緒に歩きました。

2人とも、オフトレイルの経験が豊富なハイカーで、ナビゲーションや地図読みについても高いスキルを持っています。露岩でのスクランブリングにも慣れているので、最高のハイキング・パートナーとなりました。


いよいよハイシエラの旅の出発。

私たちは、標高3,000mのコットンウッド・パスのトレイルヘッドから出発しました。最初は、古代からあるフォックステイル・パイン (クロマツ) の木の間を通る、よく整備されたトレイルを登っていきます。その後、緑がきれいなマイター盆地で、このトレイルから離れました。連休だったにもかかわらず、この巨大な高山湖でキャンプをしているハイカーは私たちだけでした。


高所の湖で、水の補給をする。


急峻な岩や崖がつづくなか、ルートファインディングして進んでゆく。


翌朝、まずはクラブツリー・パスへと登っていきます。ここはスティーブ・ローパー (アメリカのクライマーでありシエラ・ネバダの歴史家) が「グリーン・ランプ」と呼んだ草地の斜面で、ここは手を使わずに登っていけます。

遠くには今日の目的地であるマウント・ホイットニーが見えます。でも、今日中にそこまでたどり着くのは無理なのではないか、と感じていました。


マウント・ホイットニーへ向かう道。

私たちは花崗岩のスラブを谷底までくだり、急峻な砂地のところに、ようやく歩ける道を見つけました。特に標高3,700mのエリアでは進むのに時間がかかり、シューズの中に砂がたくさん入ってしまいました。

このような状況だったので、ホイットニー・トレイルにたどり着き、整備された道を5kmほど歩いたときには、ほっと安心しました。一緒にいたフラミンゴは、マウント・ホイットニーの頂上 (標高4,418m) からトレイルを降りて、家路につきました。PODと私は、そのまま旅をつづけました。


落石に注意しながら進んだ、マウンテニアーズ・ルート。

次に、マウンテニアーズ・ルートという険しくて急な道を下っていきました。マウンテニアーズ・ルートは以前に登ったことがある場所なのですが、下りは覚えていたものよりも大変でした。地盤が緩んでいて、落石が起こりやすくなっていたのです。幸いにも、私たちの上方には他のパーティーはいなかったので、よかったのですが。

この日は、ロウアー・ボーイスカウト・レイクでキャンプをしました。ここはマウント・ホイットニーを登るハイカーに人気のある、湧き水が出るエリアです。キャンプ地で、他のハイカーと一緒になったのはここが最後でした。


他に誰もいないシエラの山のなかでキャンプ。


アメリカ大陸で最も標高の高い湖、トゥレンヨ湖を望む。


翌朝、私たちはラッセル・カリリオン・コルに向けて、ふたたび砂地を登っていきました。しかし、コルと思われる場所の反対側の地形を見ると、その下に広がる盆地が地図と一致しませんでした。

PODは私たちが今どこにいるのかを確かめるため、近くにある岩の塔をよじ登ってくれました。その頂上から見渡してみると、自分たちがきちんと目的の場所にいるということがわかったのです。


ルートファインディングに苦戦した、ラッセル・カリリオン・コル。

この峠をくだるには、崖をはって降りていかなければなりませんでした。ガイドブックには、荷物を下ろすための短いロープの使用が推奨されていましたが、私たちにとってはそこまで難しい場所には見えませんでした。

眼下にはアメリカ大陸で最も標高の高い湖、トゥレンヨ湖 (標高3,909m) が青く広がっていました。周りは高い峰々に囲まれています。降雪が少ない年だったのですが、そこにはまだ雪や氷が残っていました。


トゥレンヨ湖の景色。

旅の前半戦から、シエラの天上の世界を見せてくれるような、素晴らしい写真の連続であった。

次回の記事でお届けする「サザン・シエラ・ハイ・ルート (SoSHR)」の旅の後半では、また趣の異なった景色が展開されていく。次の記事もまた楽しみにしていてください。

TRAILS AMBASSADOR / リズ・トーマス
リズ・トーマスは、ロング・ディスタンス・ハイキングにおいて世界トップクラスの経験を持ち、さまざまなメディアを通じてトレイルカルチャーを発信しているハイカー。2011年には、当時のアパラチアン・トレイルにおける女性のセルフサポーティッド(サポートスタッフなし)による最速踏破記録(FKT)を更新。トリプルクラウナー(アメリカ3大トレイルAT,PCT,CDTを踏破)でもあり、これまで1万5,000マイル以上の距離をハイキングしている。ハイカーとしての実績もさることながら、ハイキングの魅力やカルチャーの普及に尽力しているのも彼女ならでは。2017年に出版した『LONG TRAILS』は、ナショナル・アウトドア・ブック・アワード(NOBA)において最優秀入門書を受賞。さらにメディアへの寄稿や、オンラインコーチングなども行なっている。豊富な経験と実績に裏打ちされたノウハウは、日本のハイキングやトレイルカルチャーの醸成にもかならず役立つはずだ。

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(英語の原文は次ページに掲載しています)

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Liz Thomas

Liz Thomas

2011年にアパラチアン・トレイルを女性の最速タイムで踏破した記録(当時)を持っていることで知られている。彼女はトリプルクラウンを達成しただけでなく、米国に15以上あるトレイルでのスルーハイクを経験し、今まで15,000マイル以上ものトレイルを歩いてきた。また、彼女はその経験をロング・ディスタンス・ハイキングのコミュ二ティに還元することにも熱心で、American Long Distance Hiking Assosication-West(ALDHA-West)のバイスプレジデンドも務めている。彼女がハイキングを本格的に始める前は、イエ-ル大学の森林環境学部で環境科学の修士課程を修了し、彼女が手がけた、ロング・ディスタンス・ハイキング・トレイルとその保護およびコミュニティに関するリサーチは、名誉あるDoris Duke Conservation Fellowshipの賞を受けた。スポンサーはAltra, Gossamer Gear, Probar, Vermont Darn Tough socks, Mountain Laurel Designs, Sawyer filters, Montbellで、アンバサダーとして活躍している。
http://www.eathomas.com/

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