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井原知一の100miler DAYS #11 | 食べる生活(フクロウ24耐)

2022.01.19
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文・写真:井原知一 構成:TRAILS

What’s 100miler DAYS? | 『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる、日本を代表する100マイラー井原知一。トモさんは100マイルを走ることを純粋に楽しんでいる。そして日々、100マイラーとして生きている。そんなトモさんの「日々の生活(DAYS)」にフォーカスし、100マイラーという生き方に迫る連載レポート。

* * *

トモさんの暮らしを「走る生活」「食べる生活」「家族との生活」という、主に3つの側面から捉えていきながら、100マイラーのDAYSを垣間見ていこうというこの連載。

第11回目のテーマは、「食べる生活」です。

今回は、トモさんにとって59本目の100マイル完走となった『フクロウ24耐』(※1) を紹介してくれます。

前回の記事で、10月に挑戦した『東海自然歩道FKT』を、脚のケガでリタイアしたことはお伝えしました。当時はリハビリの真っ最中でしたが、そこから2カ月後の100マイルとなったフクロウ24耐。

ケガ明けのトモさんはどんな走りを見せてくれたのでしょうか。そして、どんな食生活を送っていたのでしょうか。

※1 フクロウ24耐:高尾グリーンセンターをスタート&ゴールにした1周13.1km・累積標高462mのループコースを、24時間以内に好きなだけ走るイベント。2021年の夏にはじめて開催。2回目の今回はANSWER4のランニングクラブLDARCのプライベートイベントとして開催された。


ANSWER4のランニングクラブの仲間たちと、楽しみながら走ったフクロウ24耐。


フクロウ24耐:2021年唯一の100マイルを、無事完走


2021年はコロナの影響で、予定していたレース (HURT100、HK4TUC、Barkley Marathons、信越五岳) がすべて中止になりました。くわえて、8月頃に脚のケガをしてしまい、満足に走れない日々が続き、レースどころではないような状況でもありました。

振り返ってみると、100マイルイベントに最後に参加したのは、2020年12月に京都で開催されたWelcome to Kyoto 100 (WTK100)。12月に入って「2021年は100マイルを走らない年になるかぁ」と思っていた矢先に、開催されることになったのがこのフクロウ24耐でした。

これは、高尾山に設けた1周13.1kmのループコースを、24時間以内に好きなだけ走るイベントです。ちょうどケガも治ってきたし、自分の鈍っている身体を試す意味でも、24時間以内に100マイルを走るべく参加することにしました。


静まり返った夜の高尾を駆けめぐる。

2022年の1発目のレースが3月のBarkley Marathons (※2) なので、バークレーに対しての距離耐性があるかを知りたかったというのも、走る理由のひとつでした。

結果はというと、転倒して外傷があった以外、何のトラブルもなく走れました。もちろん100マイルなので、途中で脚が重くなったり、胃腸の気持ち悪さや睡魔、さまざまなウルトラ (※3) ならではの過程もありました。でも、過去に走ってきた58本の100マイルで経験したことがあるものばかりだったので、冷静に対応できました。

※2 Barkley Marathons (BM100):バークレーマラソンズ。アメリカ・テネシー州のフローズンヘッド州立公園で毎年3月に開催されている耐久レース。「世界一過酷なレース」とも呼ばれている。1986年に第1回目が開催された。以来、34年間で完走したのはたった15人。発案者は、ラズ(ゲイリー・カントレル)。総距離は100マイル以上、累積標高は2万メートル以上、制限時間60時間。エントリー方法も公開されておらず、謎の多いレースでもある。

※3 ウルトラ:ウルトラランニング (長距離レース) のことで、ロードであれば100キロ、トレイルであれば100マイル (160キロ) を指すことが多い。


フクロウ24耐に参加した、ANSWER4のランニングクラブの仲間たち。スタート & ゴール地点の高尾グリーンセンターにて。

今回はタイムも約23時間で走ることができてSUB24も達成。今後にもつながる良い練習にもなったので、2021年の走り納めとしては最高の形でした。


【食べる生活 (その1):レース1〜2週間前】 バランスの取れた食事が、ウルトラに耐えうる身体を作ってくれる


井原家は外食をする機会がとても少なく、妻が作ってくれることがほとんどです。

いつも、娘のさくらの健康を考えて作ってくれているので、それを自分も食べることで普段からバランスの取れた食事ができています。


妻手作りのちらし寿司。ウルトラに耐えられる身体は、バランスの取れた食事のおかげでもある。

僕は、食べたものが自分の身体の細胞になると思っています。なので、ウルトラのようなカラダへの負担の大きなスポーツをやっている上では、しっかりとした食事で栄養を取ることもパフォーマンスを向上させるためのひとつのファクターだと考えています。


【食べる生活 (その2):レース直前】 愛娘が作ってくれたクリスマス用のオードブルに舌鼓を打つ


フクロウ24耐は12月28・29日 (火・水) で開催されたので、数日前の週末は家族でクリスマスを楽しみました。

娘のさくらは、チーズやクラッカー、野菜を使ったオードブルを作ってくれました。美味しかったのはもちろん、クリスマスだけに栄養バランスが偏る食事になるかと思いきや、結果として良いバランスだったと思います。


家族みんなでクリスマスパーティー。娘のさくらが作ってくれたオードブルも絶品!

自分もそうでしたが歳を重ねると親との時間も減ってくるので、こうやって家族で過ごす時間を大事にしていきたいですね。


【食べる生活 (その3):レース直後】 タラバガニ、お寿司、すき焼き、おせち……年末年始ならではのごちそう


フクロウ直後は年末年始だったので、親戚を高尾に招いて2021年を振り返りつつ、2022年に向けて頑張れるようにと、ごちそうを食べました。

年末は北海道のタラバガニ、お寿司、すき焼きと、自分にとってはオールスターチームのような料理で、とても幸せでした。


年末に1年を振り返りながら食べたタラバガニ。

年が明けてからは、妻が作ったおせち料理や大好きなお雑煮も食べることができて言うことなし。ただ、体重もしっかりと満たされてしまったので、焦りつつも2022年を頑張れるパワーだと思ってリミッターを振り切って食べることを楽しみました。


年始は、妻が作ってくれたおせち料理を食べながら、のんびり過ごした。


【食べる生活 (その4):レース1週間後】 大好きなラーメンやクラフトビールで、身も心も満たす


普段は節制して炭水化物を控えめにしているのですが、1年ぶりの100マイル後は、その反動が大きく、大好きなラーメンのハシゴをしたり、大好きなクラフトビールを飲む機会が多かったです。

身体に良い悪いはいったん置いておいて、大好きな食べ物を食べることで胃だけでなく、心の空腹も満たしました。


ストレスを溜めないよう、メリハリが大事。ということで、大好きなラーメンも思う存分食べた。

自分の場合、しっかり息抜きをしないと何事もうまくいかないことが多いんです。たとえばトレーニングをものすごく頑張ったレースの後は、比較的多めにレストを取るとか。そうすることで、また集中して頑張れるようになるのです。

これから3月のバークレーマラソンズに向けて、しっかり準備します。


年末年始で休息も充分。あとは3月のバークレーに向けて仕上げるのみ。

100マイルを走る上で、食事が大事だと語るトモさん。ただ、つねにストイックに節制しているわけではなく、特にレース後は好きなものを好きなだけ食べてメリハリをつけている。

100マイルは精神力が問われるレースでもあるだけに、トモさんの食生活スタイルは、カラダづくりだけではなく良い精神状態で本番を迎える上でも、プラスに働いているのだろう。

次のレースは、3月に開催される予定のバークレーマラソンズ。調子は上がってきているようなので、今から楽しみだ。

TRAILS AMBASSADOR / 井原知一
現在の日本における100マイル・シーンにおいてもっともエッジのた立った人物。人生初のレースで1位を目指し、その翌年に全10回のシリーズ戦に挑み、さらには『生涯で100マイルを、100本完走』を目指す。馬鹿正直でまっすぐにコミットするがゆえの「過剰さ(クレイジーさ)」が、TRAILSのステートメントに明記している「過剰さ」と強烈にシンクロした稀有な100マイラーだ。100マイルレーサーではなく100マイラーという人種と呼ぶのが相応しい彼から、100マイルの真髄とカルチャーを学ぶことができるだろう。

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WRITER
井原知一

井原知一

1977年、長野県生まれ。アメリカの大学を卒業後、仕事を転々とした末、2007年にスポーツ商社に転職。同企業のダイエット企画がきっかけでトレイルランニングに出会う。当時31歳。すぐさま夢中になり、トレイルラン2年目でOSJ (アウトドア・スポーツ・ジャパン) のシリーズ戦全戦を完走。3年目にはSFMT (信越五岳トレイルランニングレース) で8位。初めての100マイルは、2010年に自ら企画した草レースTDT(ツール・ド・トモ)。以降100マイルの魅力にとりつかれ、『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げて走るようになる。つねにチャレンジしつづけることをモットーとし、90歳での100マイル完走も目標のひとつ。走ることの素晴らしさを広め、人生を変えるきっかけづくりのために、ポッドキャスト『100miles, 100times.』や、自ら立ち上げた『Tomo's Pit』を通じてコーチングも手がけている。

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