STORY

井原知一の100miler DAYS #09 | 家族との生活(TTK100)

2021.09.17
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文・写真:井原知一 構成:TRAILS

What’s 100miler DAYS? | 『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる、日本を代表する100マイラー井原知一。トモさんは100マイルを走ることを純粋に楽しんでいる。そして日々、100マイラーとして生きている。そんなトモさんの「日々の生活(DAYS)」にフォーカスし、100マイラーという生き方に迫る連載レポート。

* * *

トモさんの暮らしを「走る生活」「食べる生活」「家族との生活」という、主に3つの側面から捉えていきながら、100マイラーのDAYSを垣間見ていこうというこの連載。

第9回目のテーマは、「家族との生活」です。

今回は、2年前の2018年10月に走った『高尾 to 笠取山100mile (以下、TTK100)』(※1) を紹介してくれます。

TTK100は、高尾の仲間たちと「高尾から100mileってどこまでかな?」と話したのがきっかけで誕生した、勝手100mileです。以前、TRAILSでも取材し、準備編から実走録 (前編)実走録 (後編) と3部作として公開しました。

この100mileの前後で、トモさんは家族とどう過ごしていたのか? TRAILSの記事でも触れていない、100mile前後の「家族との生活」について語ってもらいました。

愛娘のさくらちゃんと近所で遊んだり、クライミングジムに行ったり、家族団らんを楽しんだり。普通の日常ではあるのですが、そんな日々が、トモさんが100mileを走る上での一番の活力になっているようです。

※1 高尾 to 笠取山100mile (TTK100):2018年10月7〜9日に実施した、高尾発の勝手100mileイベント。高尾のトモズヘッド(南高尾の登山口)〜笠取山を往復するコースで、コースディレクターは高尾の仲間であるジャキさん (尾崎光輝)。100mileの予定だったが、実際は約110mile (約180km) で、累積標高は10,000m超。


TTK100の折り返し地点である笠取山 (標高1,953m) にて。


TTK100:高尾の仲間のおかげで完走することができた


自分にとっては、45本目の100mileでした。

走る前は、ルートを見て30時間くらいで完走できるだろうと思っていたんです。でも、レースの2週間前に台風が来たこともあって、トレイルにかなり倒木が残っていて。それを迂回したり、時にはくぐったりして、予想以上にハードでした。結果、37時間もかかってしまいました。


ハードながらも弱音を吐くことなく、走りつづけた。

ウルトラ (※2) って何が起きるかわからない玉手箱というか、かならず何かハプニングが起きるもの。だからハプニングが起きたときに、その状況をしっかりと理解して、臨機応変に正しい判断をする必要があります。

必ず完走する!という強い意志と、思い通りにならなかったときに、それでも完走するための柔軟性が必要なんですよね。

今回のTTK100は、その柔軟性が自分には欠けていたからツラく感じたんだと思います。時間が余計にかかってしまったり、予定より距離も累積標高も多かったのなら、それはつまりもっとトレイルを楽しめるってことだな! と思えるくらいの器になりたいですね。

※2 ウルトラ:ウルトラランニングのこと。長距離レースのことで、ロードであれば100km、トレイルであれば100mile (160km) を指すことが多い。


サポートクルーの高尾の仲間たち。Answer4のコバくん (右) とJindaiji Mountain Worksのジャキさん (左)。

でも、無事にゴールで本当に良かったです。ツラい時には毎度、仲間に助けられました。無理かもという気持ちがありながらも、みんなに頑張れ!って言われるとよしっ!と思ったりして。そういういろいろな気持ちがあるなかで、ゴールをみんなと分かち合えたのが、なによりも嬉しかったですね。


【家族との生活 (その1):レース1〜2週間前】 娘のさくらと高尾で遊ぶ


週末に、娘のさくらと遊びに行くことが多かったですね。一緒に高尾山口駅前の高尾山トリックアート美術館へ行ったり、高尾山にリフトで行ってアイスを食べたり。


高尾山トリックアート美術館は、子どもだけではなく大人も楽しめる。

実はこの年の7月に、さくらが自宅の雲梯 (うんてい) から落ちて、手首を骨折してしまっていたんです。この時期は、まだ激しい運動をしてはいけなかったので、なるべく身体を使わない控えめな遊びが多かったですね。

レース1週間前は、ちょうどさくらの小学校の運動会でした。TTK100でもサポートをしてくれたアキラさん (詳しくはコチラ) もお子さんが同じ小学校だったので、一緒に観戦しました。なぜかAnswer4のコバくんも運動会にいました (笑)。


さくらの小学校の運動会。写真左が、アキラさん。


【家族との生活 (その2):レース直前】 レースに向けて、娘がハンバーグを作ってくれた


さくらが、「パパがまた走りに行くからパワーがつくように!」と言って、僕の大好きなハンバーグを作ってくれました。

美味しいハンバーグ屋さんもたくさんあるけど、家で食べるハンバーグが一番好きですね。


一生懸命ハンバーグを作るさくら。

さくらは、料理が好きでよく作ってくれるんです。以前もバレンタインの時に、僕がチョコレートを食べないこともあって、その代わりにハンバーグを作ってくれました。

味付けは、妻監修なので最高です。味はもちろんなのですが、何より娘が僕のために作ってくれるっていうその気持ちが嬉しいです。


家族団らんがあるからこそ、レースにもリラックスして臨むことができる。


【家族との生活 (その3):レース直後】 ボルダリングを楽しむ娘を見るのが、嬉しい


当時はさくらもまだ7歳ということもあって、100mileがどんなものなのかはよくわかっていませんでした。だから、木がいっぱいあった? とか、夜も寝ないで走ってたんでしょ? どんな動物見たー? とか、そんなことを聞いてましたね。

レース翌週には、さくらがお医者さんから運動を開始して良いと許可をもらうことができました。

それで、久しぶりに川崎に住んでいた頃にお世話になっていたクライミングジムに行って、控えめに登ってきました。楽しそうに登っている姿を見て嬉しかったですね。


さくらがケガをしてから、しばらく休んでいたクライミングジムへ。

それを見ながら、自分もケガをして走れなかった時期を思い出しました。ケガが治ってから初めてのランニングは、なんとも言えない格別な気持ちでした。まるで、お花畑のなかを天使が舞っているかのような感覚というか。おそらく、さくらも同じだったんじゃないですかね。


嬉しそうに登る姿を見て、僕自身も、あらためて走る喜びを思い出した。


【家族との生活 (その4):レース2週間後】 家族みんなでハロウィンパーティー


ちょうどハロウィンの時期だったので、家族で一緒に料理を作ったり、仮装をしたり、ハロウィンパーティーをしました。

仮装はさくらだけの予定が、僕も酔っ払った勢いでやることになって、なぜか宝塚歌劇団のメイクをすることになりました。インスタグラムにアップしたら反応が薄かったんですけど、家族にはウケていたので良かったです。


魔女のコスプレをして満足そうなさくら。

また過酷なチャレンジができるように、しっかりと充電する場所が自分にとっては家族です。

妻にはいつも健康面において食事でサポートしてもらい、さくらにはいつも元気玉をもらっています。


TTK100の翌月は、さくらの七五三だった。久しぶりにみんな正装。

100mileはもちろん、何気ない家族との普通の日常も思いっきり楽しんでいる姿が、なんともトモさんらしいですね。

いよいよ、10月1日 (金) からは自主企画のチャレンジ「東海自然歩道FKT」がスタートします。トモさんにとっては、1年10カ月ぶりの100mileを超えるラン。

トモさんも、かなりモチベーションが高く楽しみで仕方がない様子。どんな走りを見せてくれるのか楽しみです。

TRAILS AMBASSADOR / 井原知一
現在の日本における100マイル・シーンにおいてもっともエッジのた立った人物。人生初のレースで1位を目指し、その翌年に全10回のシリーズ戦に挑み、さらには『生涯で100マイルを、100本完走』を目指す。馬鹿正直でまっすぐにコミットするがゆえの「過剰さ(クレイジーさ)」が、TRAILSのステートメントに明記している「過剰さ」と強烈にシンクロした稀有な100マイラーだ。100マイルレーサーではなく100マイラーという人種と呼ぶのが相応しい彼から、100マイルの真髄とカルチャーを学ぶことができるだろう。

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WRITER
井原知一

井原知一

1977年、長野県生まれ。アメリカの大学を卒業後、仕事を転々とした末、2007年にスポーツ商社に転職。同企業のダイエット企画がきっかけでトレイルランニングに出会う。当時31歳。すぐさま夢中になり、トレイルラン2年目でOSJ (アウトドア・スポーツ・ジャパン) のシリーズ戦全戦を完走。3年目にはSFMT (信越五岳トレイルランニングレース) で8位。初めての100マイルは、2010年に自ら企画した草レースTDT(ツール・ド・トモ)。以降100マイルの魅力にとりつかれ、『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げて走るようになる。つねにチャレンジしつづけることをモットーとし、90歳での100マイル完走も目標のひとつ。走ることの素晴らしさを広め、人生を変えるきっかけづくりのために、ポッドキャスト『100miles, 100times.』や、自ら立ち上げた『Tomo's Pit』を通じてコーチングも手がけている。

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