TRAILS REPORT

ロングトレイルTOPICS #01 | コロナ期のハイキング最新情報 by リズ・トーマス(2022 Feb)

2022.02.25
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今回から始まる『ロングトレイルTOPICS』では、TRAILS編集部が取材やリサーチで集めた情報を中心に、ロングトレイルの最新情報や注目すべきトピックを発信していく。まずは2022年のアメリカのロングトレイルのトピックスを、5回に分けてお伝えしたい。

2022年は日本からアメリカのトレイルへ行くハイカーも、少しずつ復活しそうである。TRAILS編集部にも、今年、海外トレイルを歩く予定の多くのハイカーが、コンタクトを取りに来てくれている。

そこで、今回の『ロングトレイルTOPICS』の1回目は、2022年にアメリカのトレイルを歩く際に、注意すべきことをまとめた。TRAILSのアンバサダーであり、北米のリアルなロング・ディスタンス・ハイカーであるリズ・トーマスに、最新のアメリカの状況を聞いてみた。

『LONG DISTANCE HIKERS DAY』 (以下、LDHD) も2022年4月23日 (土)・24日 (日) に開催予定なので (予告編はコチラ)、今回の記事とともに、今後の更新情報を合わせてチェックしてみてほしい。

TRAILSのアンバサダーであり、ロング・ディスタンス・ハイカーであるリズ・トーマス。

旅の資金は、コロナ関連の追加費用を見込んでおく。

体調が悪くなったり、コロナに感染したりすれば、ホテルやモーテルでの自主隔離が必要になる。

—— 編集部:以前の記事で、ハイキング前のワクチン接種や、海外旅行保険の費用など、コロナ禍における準備についての記事を書いてくれました。変わらず、お金は多めに用意しておいたほうがいいですか?

 
リズ:「昨年の記事でも伝えましたが、コロナ禍においては、通常よりも旅の資金に余裕を持った方がよいことを伝えました。2022年もこれは同様です。コロナ関連の医療費をカバーできる海外旅行保険に入っておくことをおすすめします。

アメリカにおける最新の隔離規制は、10日間から5日間に短縮されました。しかしそれでも、ハイカーが新型コロナウイルスにかかった場合、5日分のホテル代が発生します。

また体調が悪くなった場合、コロナの検査を受けるための費用も必要になります。ちなみに現在、コロナの検査キットは入手困難な状況なので、症状があっても感染しているかどうかを確かめるまで、時間を要するかもしれません」

—— 編集部:お金以外で用意しておくべきものはありますか。

 
リズ:「ワクチン接種の証明書をつねに携帯しておいたほうがいいですね。ただ、証明書の提示を求められるほとんどの場所は、携帯電話の写真でOKだと思います。念のため、それよりもベターな方法があるかどうか、大使館に確認しておくと良いかもしれません」

トレイル上でも消毒は意識的に。トレイルタウンや密閉空間ではマスクを。

アメリカでは現在、ハイキング中にマスクをすることはほぼない。

—— 編集部:ハイキングをするときも、マスクが必要ですか?

 
リズ:「トレイル上では、ほとんどのハイカーはマスクをしていないです。ただし、他のハイカーと食べ物を共有したりすることには慎重になっていて、頻繁に手の消毒をするようにしています。それ以外は、スルーハイキング自体に変わりはありません。

一方、トレイルタウンでは状況が異なります。カリフォルニア州では、2月15日まで、食料品店やレストランを含む屋内ではマスクが義務付けられていました。今後、数カ月間延長される可能性もあります (編集部注:2月15日をもって解除された)。

ホテルやレストランはもちろん、食料品店なども含め、屋内ではマスクをしたほうがいい。

カリフォルニア州では、ホテルにチェックインするときや、カフェで注文するとき等は、マスクを着用するのがルールになっています。しかし、カリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州の多くのレストランや企業は、このルールを遵守することを拒否しています。

アメリカの特に地方では、ワクチン未接種の人の割合が比較的高いです。ヒッチハイクやシャトルバスで町に行く場合、運転手がマスクを着用したり、ワクチン接種をしていたりすることは、ほとんどありません。なので車に乗るときは、マスクの着用をおすすめします」

どれだけコロナの対策をしても、感染リスクがゼロになることはない。

サンディエゴ・トランス・カウンティ・トレイル (SDTCT) にて。リズは、なるべく室内で過ごさないようにしていた。

—— 編集部:リズは、年末年始に、サンディエゴ・トランス・カウンティ・トレイル (SDTCT・全長240km) を、仲間とスルーハイクしていましたね。

 
リズ:「そうです。SDTCTでは高性能のN-95マスク (※) を携帯し、補給のために密閉空間に入るたびに着用しました。もし私がもっと長いトレイルを歩いていたら、町に出るたびに新しいマスクを購入するつもりでした。

このときは、基本的に室内で過ごすことを避ける計画でした。でも、ほとんどのスルーハイクで起こることですが、計画通りにすべてを実行するのは困難なものです。

実際、天候が非常に悪くて、ずぶ濡れになったときに屋外のパティオではなく、屋内で食事をとることにしたのです。夜はキャンプをする予定でしたが、代わりにホテルに泊まることにしました。

※ N-95マスク:アメリカ合衆国労働安全衛生研究所 (NIOSH) のN95規格をクリアし認可された、微粒子対応マスク。北米の一般的な通販サイトで購入可能。

スルーハイキングにはヒッチハイクがつきものだが、必ずマスクを着用すること。

ホテルへの往復は車。幸いにもそのときは運転手がマスクをしていました。しかし、レストランでマスクをしていたのは私たちだけ。レストランのスタッフもマスクをしていませんでした。

注意はしていたものの、車に乗せてくれたドライバーのひとりが、ハイキングの後、コロナの陽性反応が出たため、みんなとてもストレスを感じました。後日その人に話を聞いたところ、人との接触は私たちを車に乗せたときくらいだったようで、どうして発病したのかはわからないそうです。

その後、私も検査をして陰性と判定されましたが、一緒に歩いたハイカーたちは、彼らが住む町では需要が多すぎて検査が受けられなかったそうです。今後、検査が受けられるようになることを願っています」

トレイルエンジェルは、クローズしているところもたくさんある。

どのトレイルエンジェルがハイカーを受け入れているかは、まだわからないところが多い。

—— 編集部:コロナになってから、閉鎖しているトレイルエンジェルもいますよね。今年のハイカーは、トレイルエンジェルを頼らないプランも立てておく必要がありそうですね。

 
リズ:「これまでどおりハイカーに自宅を開放しているエンジェルもいますが、閉鎖しているところも多くあります。

私は、個々のトレイルエンジェルにメールをして、2022年にオープンするかどうかを尋ねるつもりです。

ただ、トレイルと道路が交差するところで料理を振る舞う人やトレイルマジックなどは、依然としてたくさんあるとは思います」

高性能なマスクを使用するのも、対策のひとつ。

以前はリズも、使い勝手のよいネックゲイターを使用していた。しかしオミクロン株の登場により、N-95マスクに変更した。

—— 編集部:オミクロンが猛威を奮っています。それによって、なにか状況が変わる可能性はありますか?

 
リズ:「オミクロンは非常に感染力が強いので、人々はこれまで以上に慎重になっています。

私は以前、布製のマスクやBuffのようなネックゲイターを持ってハイキングしていました。これらは高性能のN-95マスクよりも、バックパックに入れて持ち歩くのが簡単だったからです。でも今は、ハイキングのときも、町で使用しているN-95を携行するようにしています。

この春、スルーハイキングのシーズンが始まる前に、オミクロンがピークを過ぎることを願っています」

サンディエゴ・トランス・カウンティ・トレイル (SDTCT) を歩くリズ。

今回リズは、このコロナ禍でスルーハイキングをする上での心構えと、さまざまなTIPSを共有してくれた。

ロング・ディスタンス・ハイカーならではの実体験にもとづくTIPSは、今年歩くハイカーにとって非常に貴重な情報だ。

次回は、PCTの運営組織であるPCTAのスタッフから、PCTの最新情報を紹介してもらう。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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