ロングトレイルTOPICS #05 | PNTスルーハイキングに向けた最新情報(2022 Feb)
TRAILS編集部が取材やリサーチで集めた情報を中心に、ロングトレイルの最新情報や注目すべきトピックを発信する『ロングトレイルTOPICS』(全5回)。最終回の今回は、TRAILSでも連載記事があるPNT (パシフィック・ノースウエスト・トレイル) 編。
TRAILS編集部が、PNTA (PNTの運営組織) のエグゼクティブ・ディレクターであるジェフ・キッシュに取材を行ない、2022年2月時点での最新情報を聞いた。
ジェフは、TRAILSのアンバサダーでもあり、PNTに関する連載記事 (詳しくはコチラ) も書いているので、そちらもぜひチェックしてほしい。
スルーハイクにおけるルールは、例年どおり。
—— 編集部:2022年のスルーハイクにおいて、例年と比較してルールの変更点はありますか?
ジェフ:「ルールは例年と変わりありません。すべてのエリアにおいて、クマ対策用のフードストレージのレギュレーションも変更はありません。パーミット (許可証) に関しても例年どおりです」
—— 編集部:スタート地点へのアクセスは通常通りですか?
ジェフ:「例年どおりです。ただ、モンタナ州のイースト・グレイシャー・パークからトレイルヘッドまで車で行くのは少し大変かもしれません。
ほとんどのハイカーはヒッチハイクをしていますが、スタート地点までグレイシャー国立公園内をハイキングすることも可能です。ここはPNTのハイライトのひとつであり、公園内でのハイキングは非常に楽しいのでおすすめでもあります (詳しくはコチラの記事を参照)」
この冬の厳しい天候により、トレイルのコンディションが悪い可能性がある。
—— 編集部:今年のスルーハイカーが、特に気をつけるべきことはありますか?
ジェフ:「アメリカ北西部はこの冬、例年にない厳しい天候に見舞われました。そのため、メンテナンス・クルーがそれほど稼働しないシーズン初めは、トレイルのコンディションが悪い可能性があります。
また、歴史的な洪水と大雪の影響で、倒木が多く、路面が崩れていたり、さらには道路が流失しているケースもあり、ハイカーが町へ移動するのに支障をきたすかもしれません」
国境を越えてカナダ側に入ることは違法。
—— 編集部:特に、アメリカ国外からのハイカーが気をつけるべきことはありますか?
ジェフ:「カナダとの国境に近いため、PNTのほぼ全域がアメリカ国境警備隊の管轄になっています。
ハイカーは、国籍に関係なく、つねに身分証明書を携帯する必要があります。国外からのハイカーは、パスポートなどをいつでも提示できるようにしておくべきでしょう。
またPNTには、カナダ国境まで歩いて行ける場所や、国境を越えて往復できる場所が数カ所あります。PNTAは、ハイカーにこのようなことをしないようにアドバイスしています。いくら僻地であったとしても国境はつねに監視されていて、越えることは違法になります」
クマがPNT全域に生息しているため、フードストレージは必須ギア。
—— 編集部:PNTは、ジェフのトリップ・レポートにもあったように、手つかずの自然が多く残っていて、野生動物もたくさんいます。そういった動物に関して注意は必要ですか?
ジェフ:「モンタナ州とアイダホ州、そしてワシントン州最東部に、グリズリーが生息していますが、モンタナ州以外で遭遇することはないと思います。ただし、全域にブラックベアが生息しています。
クマに関するもっとも深刻な問題は、ハイカーの安全よりも、クマを人間や人間の食べ物に慣れさせないようにすることです。
アメリカにおいて、グリズリーは絶滅の危機に瀕しています。ですが、もしグリズリーが人間の食べ物を知ってしまい人間にとって危険な存在になれば、政府は彼らを殺すことになるでしょう。そのため、人間の食べ物にアクセスできないようにクマを守ることが非常に重要なのです。
PNTではフードストレージとしては、ウルサック (Ursack ※1) を使用するのが一番いいと思います。なぜなら、ウルサックであれば各エリアのルールも遵守できますし、ベアキャニスターより軽くてバックパックに収納しやすく、木の幹に縛ればいいので高い位置の枝に吊るす必要もないからです」
高性能のN-95マスクかKN-95マスクの着用を推奨。
—— 編集部:ここ最近は、オミクロン株が猛威を振るっています。
ジェフ:「オミクロン株の感染は、PNT周辺の人口の多い地域ですでにピークを迎えており、人口の少ない地域でも3月中にピークを迎えると予想されています。
新しい亜種が出現しない限り、ハイキングシーズンが始まる頃には、北西部全域でコロナウイルスの感染者が少なくなっている可能性があります。
一部の施設では、ワクチン接種の証明 (最新のブースター接種を含む可能性あり) が必要となる場合もありますが、現在PNTのいずれの州でも、企業に対してワクチン接種状況の証明を義務づけることはしていません。
ただし、モンタナ州とアイダホ州の接種率は、他の州に比べて低いので、ハイカーは注意が必要です。ワシントン州のワクチン接種率はかなり高いです。ハイカーは、そういった場所ごとの状況に応じて、自分自身を守るための方法を考えておくべきでしょう」
—— 編集部:ハイカーがコロナの感染を防ぐためにすべきことはありますか?
ジェフ:「PNTでコロナに感染する可能性がもっとも高いのは、トレイルヘッドまでの電車や町への行き来の際の乗車など、密閉された乗り物で移動するときです。幸い、いったんトレイルに入れば、乗り物を利用することなくPNTの全行程を移動することができます。
お願いしたいのは、マスクをつねに携帯することです。できればN-95 (※2) かKN-95 (※3) が望ましいです。感染リスクがある状況ではこれらを使用してください。
現在アメリカでは、レストランではテーブルに着くまで着用を求められるのが一般的です。飲食時は外すことができますが、他人の近くを歩くときはふたたび着用しなければなりません。
また、ウェイターと話をする際にもマスクの着用が求められます。ほとんどのレストランでは、暖かい季節にはお客様に屋外の席を提供するようにしています。これはもっとも安全な対策です」
2022年スルーハイキングのシーズンが始まる前に、『ロングトレイルTOPICS』として全5回で、現在のアメリカにおけるロングトレイルの最新状況をお伝えしてきた。
これらはいずれもTRAILS編集部が、アメリカ3大ロングトレイルをはじめとしたトレイル団体に取材して得た情報や、TRAILSのAmbassadorであるリズから得た現地のリアルな情報だ。
コロナ関連の追加費用の用意。医療体制の逼迫も考慮しリスクのある行動は控えること。またトレイルエンジェル宅のクローズやATのシェルターの閉鎖を前提とした旅のプランニングの必要性など、きわめて具体的かつ実践的な旅の情報をお届けできたのではないかと思う。
これらの情報は、今年、アメリカのトレイルを歩く人はもちろん、来年以降に海外のトレイル・トリップを予定している人にとっても有益な情報になっている。今後も『ロングトレイルTOPICS』として、また最新情報をお届けしていく予定なので、今後の動きもまたチェックしてみてほしい。
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