It’s a good day! #02 | ソリチュードを楽しめるかい?
文・写真:鈴木拓海 構成:TRAILS
What’s “It’s a good day” ? | ロング・ディスタンス・ハイカーであり、バサーであり、スケートボーダーであるトレイルネーム Sunny (サニー) ことスズキタクミ。2021年よりTRAILS Crewにジョインしたタクミくんによる、ピースでイージーでちょっとおバカな気まぐれハイキングエッセイ。
なんとなくハイキング。で、なんとなくアメリカのあの⽇を思い出す。マストアイテムはウェイファーラーとラジオとハンバーガー。あとはULの屋根が切り取った三角窓のあの景色。それさえあれば、Itʼs a good day.
Enjoy solitude?
タクミです。今日もどこかのトレイルから、ごきげんよう!
バーガーをトレイルに持ち込んでかじりつけば、アメリカン・ハイキングの風が吹く。
今日はパーソナル・シークレット・フェイバリット・スポットへ。ぽんと空いた1日半をステキに過ごす、秘密の場所だ。
目と鼻をムズムズさせるフラワーパウダーと残雪のスキを突いて、春のゴキゲンを伺いに。ワッツアップ春。
夕方には秘密の場所に着く。サッとトレイルから姿を消す。
自分のためだけのシークレット・キャンプだから、ビールとラジオも持ち込む。ラジオは古いスカ・ミュージックを愉快に歌ってる。
まだ少し寒い、初春の森に身をあずけて三角の窓を眺める。陽気なリズムで暖を取る。
アメリカの縦断も裏山の散策も、ゴールや結果より過程が大事なんだ。過程が楽しくなきゃやってられないだろう。人生とおなじさ。毎日愉快でなくちゃ。
そんなアメリカでの愉快なグッデイを思い出す。
あるハイカーが言った。「ソリチュードを楽しめるかい?」
ソリチュード。ロンリーとは少し違う、充実感を伴った孤独感。そんな意味を持つ単語だ。
彼はアーミー上がりでターミネーターみたいなヤツだった。
コロラド州の街でコールドフロントの襲来を凌いでいる時。オレはターミネーターと同じホステルにいた。そこでハイカーではない一般客と、一緒になって酔っ払っていた時のことだ。
ホステルにいた一般客は、ターミネーターとオレを見て初めてロングトレイルを知ったという。大変そうとか辛そうとかより、「寂しくないのか?」というところに興味を抱いたようだ。
ターミネーターはこう答えた。「ソリチュードさ。一度その味を知ると、どんな街の生活より快適なんだ」。
その一言一句、同意するオレ。何日間も人や人工物に出会わない毎日は、孤独だけど寂しくはないのだ。地球のどこかで、疲れ果てる毎日だけど、確実に毎日前進していく日々。脚を前に出す、それだけが日々のやることなのだ。
「ソリチュードを楽しめるかい?」。これは全員にわかってもらうことはムリだと思うけど、そういうアホな人種が一定数いることも覚えておいてくれよな。
It’s a good day!
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