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井原知一の100miler DAYS #13 | 走る生活(彩の国100mile)

2022.06.24
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文・写真:井原知一 構成:TRAILS

What’s 100miler DAYS? | 『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる、日本を代表する100マイラー井原知一。トモさんは100マイルを走ることを純粋に楽しんでいる。そして日々、100マイラーとして生きている。そんなトモさんの「日々の生活(DAYS)」にフォーカスし、100マイラーという生き方に迫る連載レポート。

* * *

トモさんの暮らしを「走る生活」「食べる生活」「家族との生活」という、主に3つの側面から捉えていきながら、100マイラーのDAYSを垣間見ていこうというこの連載。

第13回目のテーマは、「走る生活」です。

今回は、2022年5月に走り、60本目の100mile完走となった『トレニックワールド 100mile in 彩の国』(以下、彩の国100mile ※1) を紹介してくれます。

2016年にスタートしたこの100mileレースは、今回で7回目。実は当初からトモさんも興味を抱いていたレースでしたが、スケジュールの都合やコロナの影響で、これまで走るチャンスがありませんでした。

そんな念願だったレースに、今年、ようやく参加できることになったのです。トモさんにしては珍しく、コースの試走もこれでもかというほど実施。やれる限りの準備をしたそうです。

レースに向けたトモさんの日々の「走る生活」とは?

※1 彩の国100mile:正式名称は、トレニックワールド 100mile & 100km in 彩の国。埼玉県 (越生町・ときがわ町・飯能市ほか) の奥武蔵エリアで、2016年にスタートしたトレイルランニングレース。100mileと100kmの2カテゴリーがある。100mileは、North、South1、South2と呼ばれる3つのループコースで構成。制限時間は35時間、累積標高は9,990m。完走率が低いタフなレースとしても有名で、第1回目の大会では完走率0%。


何度も試走を重ねた彩の国100mile、ついに本番。

彩の国100mile:目標タイムを大幅クリアし、総合2位でゴール

2016年の第1回大会が完走者0%だったというこのレース。それを知ってからすごく興味があった大会でした。

当時は、このレースと同時期に開催しているTDT (※2) を走っていたため都合がつかず、いつか走ってみたいと思っていました。ただ、2020年からTDTに関しては選手ではなくサポート側にまわったので、ようやく走れることになりました。

ところが、2020年と2021年はコロナで中止となり、今年ようやく念願が叶ったというわけです。

※2 TDT:ツール・ド・トモ。2010年にトモさんが自ら企画した100mile走で、トモさんが初めて走った100mileでもある。スタート&ゴールは多摩川の河口、羽田空港近くにある鳥居で、高水山常福院を往復するコース。ロード8割、トレイル2割。毎年5月開催。


奥武蔵エリアの豊かな自然のなかを走る。

目標タイムは、これまでの大会記録の27時間20分を切ることでした。試走を重ねるなかでSUB28のイメージはできていました。

当日はあいにくの雨で、時々強い雨も降りましたが、試走も含めて過去に走ったなかで天候としては一番走りやすく、自然とペースも上がりました。そのため、1周目は予定より1時間もはやく終えることができました。

2周目、3週目はほぼ予定通りのペースで走って、結果26時間24分。目標タイムを大幅に上回り、総合2位でのフィニッシュとなりました。


予定よりも1時間近く早くゴール!

このトレイルはタフな印象を持たれがちですが、とにかく素晴らしい里山が広がっています。植物や動物、日本の田舎町、お寺や銅像などの歴史的な建物など、走れば走るほど本当に素敵なトレイルです。

ちなみにエイドステーションもクオリティが高く、なかでもスープパスタの麺がアルデンテで美味しかったです。日本のレースで一番充実しているんじゃないかと思うほどでした。

【走る生活 (その1):レース1カ月前】 レースに特化した練習をすべく、週に2〜3回は試走

3月末のバークレー (※3) でケガをして、完治するまで1カ月かかりました。彩の国まで残り7週間。残された期間でどこまであげられるかという不安もありましたが、同時にどこまであげられるかという期待もありました。

※3 Barkley Marathons (バークレー・マラソンズ):アメリカ・テネシー州のフローズンヘッド州立公園で毎年3月に開催されている耐久レース。「世界一過酷なレース」とも呼ばれている。1986年に第1回目が開催。以来、36年間で完走したのはたった15人。エントリー方法も公開されておらず、謎の多いレースでもある。トモさんは、2017年、2018年、2022年に出場してDNF (Do Not Finish)。


2020年は試走を11回、2021年に8回、合計19回走った。さらに2022年もコースの一部を試走しに行った。

本来は半年くらいかけてパフォーマンスを上げていくのですが、7週間だとできることも限られます。そのため、トレーニングは低強度のジョグと試走に絞り、レースに特化することにしました。

レースの2〜4週間前は、週に2〜3回は試走に行っていて、とにかく練習量的にはピークを迎えていました。週間走行距離は、4週間前が107km、3週間前が115km、2週間前が217kmでした。


同じ高尾に住んでいて、彩の国100mileに出場する千田誠 a.k.a. ランブラー (※4) と一緒に練習したりもした。

※4 ランブラー:トレイルランニングやULハイキング向け超軽量トレッキングポールのガレージブランド『Runblur』を手がけている。「夜明けのランブラー」というブログを持ち、ランニングチーム「RUN OR DIE」にも所属している。

【走る生活 (その2):レース1週間前】 直前も試走し、コースを頭と体に叩き込む

彩の国のコースはバリエーションに富んでいます。いろんな登りもあれば、根っこや岩場などテクニカルな場所もあって、トレイルのどの部分を走るか、といった走りやすいルートどりも重要です。また、ルートがわかりづらい箇所がありミスコースをしやすいという話も聞いていたので、試走をつづけていました。

オンラインコーチングをしているクライアントのなかで彩の国を走る方も多く、タイミングが合う時は一緒に試走に行っていました。


オンラインコーチングを受けているランナーと一緒に試走することもあった。

試走を重ねているなかで、トレイルと一体化した感覚が持てたタイミングがあったんです。なんだかこのトレイルに認められた感じがして、すごく自信が生まれました。

あとは別途、暑さ対策としてサウナにも行きました。サウナに行けない時は、自宅のお風呂で、40℃のお湯に40分入るといった練習もしたりしました。


彩の国100mileに出走した、山梨のトレイルランニング専門店「道がまっすぐ」店長の小山田隆二 a.k.a. RyuG (リュウジー) (写真右) とも、試走した。

【走る生活 (その3):レース直後】 完全休養 & TDT (ツール・ド・トモ) のサポート

レース直後の月曜日〜水曜日は、木曜日に控えていたランニングクラブの練習会でちゃんと走れるよう、完全休息しました。

また、その週末がTDT (ツール・ド・トモ) の開催だったので、金曜日からサポート業務を始めて、ほとんど寝る間もなく日曜までつづけました。


TDT (ツール・ド・トモ) のスタート&ゴール地点。

TDTの出走者はもちろん、ペーサーやサポーター、私設エイドの人など、みんなの思いや輝きを目の当たりにして、あらためて僕も刺激を受けました。


レース翌週末は、TDTのサポート業務に没頭。

【走る生活 (その4):レース3週間後】 練習がてら100kmのレースに参加

レース3週間後に、奥信濃100という長野県木島平で開催される100kmのレースに招待していただいていました。


奥武蔵100のレーススタート直前。

そのため、練習レースとして100kmを走ってきました。練習レースと位置づけていたとはいえ、最後は他の選手と競る場面もあったりして、想定よりも高強度の練習になりました。

コースはとても素晴らしかったです。ワイルドな沢沿いを渡渉したり、滑ったり、手足を全部使って登ったりと、とにかく最高でしたね。


無事に100kmを走ってゴール。

ここ数年、コロナの影響でレースは軒並み中止になり、トモさん自身は東海自然歩道FKTをはじめ、レースではない100mile超のチャレンジをしてきた。

そんなトモさんにとって、今回の彩の国100mileは、2019年の信越五岳ぶりの100mileレース。その間、ケガに悩まされたりといろいろあったトモさんにとって、総合2位という結果は、会心の走りだっただろうし、完全復活とも言えるだろう。

これからのトモさんが、ますます楽しみだ。

TRAILS AMBASSADOR / 井原知一
現在の日本における100マイル・シーンにおいてもっともエッジのた立った人物。人生初のレースで1位を目指し、その翌年に全10回のシリーズ戦に挑み、さらには『生涯で100マイルを、100本完走』を目指す。馬鹿正直でまっすぐにコミットするがゆえの「過剰さ(クレイジーさ)」が、TRAILSのステートメントに明記している「過剰さ」と強烈にシンクロした稀有な100マイラーだ。100マイルレーサーではなく100マイラーという人種と呼ぶのが相応しい彼から、100マイルの真髄とカルチャーを学ぶことができるだろう。

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井原知一

井原知一

1977年、長野県生まれ。アメリカの大学を卒業後、仕事を転々とした末、2007年にスポーツ商社に転職。同企業のダイエット企画がきっかけでトレイルランニングに出会う。当時31歳。すぐさま夢中になり、トレイルラン2年目でOSJ (アウトドア・スポーツ・ジャパン) のシリーズ戦全戦を完走。3年目にはSFMT (信越五岳トレイルランニングレース) で8位。初めての100マイルは、2010年に自ら企画した草レースTDT(ツール・ド・トモ)。以降100マイルの魅力にとりつかれ、『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げて走るようになる。つねにチャレンジしつづけることをモットーとし、90歳での100マイル完走も目標のひとつ。走ることの素晴らしさを広め、人生を変えるきっかけづくりのために、ポッドキャスト『100miles, 100times.』や、自ら立ち上げた『Tomo's Pit』を通じてコーチングも手がけている。

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