TRAILS REPORT

ロングトレイルTOPICS #08 | CDT&PNTスルーハイキングに向けた最新情報(2023 Feb)

2023.02.24
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毎年、TRAILS編集部が取材やリサーチで集めた情報を中心に、ロングトレイルの最新情報や注目すべきトピックを発信する『ロングトレイルTOPICS』。2023年の第3回目は、CDT (コンチネンタル・ディバイド・トレイル) およびPNT (パシフィック・ノースウエスト・トレイル) 編。

TRAILS編集部が、CDTC (CDTの運営組織) のエグゼクティブ・ディレクター&共同創業者であるテレサ・マルティネス、PNTA (PNTの運営組織) のエグゼクティブ・ディレクターであるジェフ・キッシュに取材を行ない、2023年2月時点での最新情報を聞いた。

CDT (コンチネンタル・ディバイド・トレイル) は、メキシコ国境からニューメキシコ州、コロラド州、ワイオミング州、アイダホ州、モンタナ州を経てカナダ国境まで、ロッキー山脈に沿った北米大陸の分水嶺を縦断する3,100mile (5,000km) のロングトレイル。

Continental Divide Trail Coalition / エグゼクティブ・ディレクター&共同創業者 テレサ・マルティネス

 

一部パーミット (許可証) の変更あり。

シャトル運行のページ。(https://continentaldividetrail.org/southern-terminus-shuttle/より)

—— 編集部:2023年のスルーハイクにおいて、例年と比較してルールの変更点はありますか?

 
テレサ:「1つだけルール変更があります。これまでCDTハイカーはニューメキシコ州の国有地においてパーミット (許可証) の取得が必要でした。しかし今年からはこのエリアのパーミットは不要になりました」

—— 編集部:スタート地点へのアクセスは通常通りですか?

 
テレサ:「変わりありません。CDTのサザンターミナス (南の起点) においては、CDTCはシャトル運行を継続していますし、すでに販売もスタートしています。詳しくは上記ページを参照ください」

小さい町で宿泊する際は、事前に予約を。

モンタナ州のガーディナー。小さなトレイルタウンも多い。

—— 編集部:年々、ロングトレイルを歩く人が増えています。ハイカーの増加に伴って、注意すべきことなどはありますか。

 
テレサ:「CDTは他のロングトレイルと異なり、トレイル沿いの町は小さいです。

もちろん補給はつねにできるのですが、特にハイキングのピーク時には宿に泊まることが難しい場合もあるかもしれません。

いざとなったらテント泊ができるようにしておくといいでしょう。また、宿泊をするのであれば、事前に連絡をして部屋の予約をしておくことをおすすめします」

—— 編集部:町に降りた時も含めて、コロナに関しては気をつけるべきことはありますか?

 
テレサ:「現時点では、コロナに関する制限や要件はありません。

ただし、万が一に備えて、マスクや消毒用アルコールを携行したほうがいいと思います。現在は規制がないものの、今後規制が設けられる可能性もあります。ハイカーは準備をしておきましょう」

山火事をはじめとしたアラート情報をチェックする。

トレイルアラートのページ。(https://continentaldividetrail.org/closures-and-notices/より)

—— 編集部:アメリカで山火事が増えていると聞きましたが、CDTではどうですか? すでに閉鎖されているセクションがあったりしますか?

 
テレサ:「山火事の危険性については、春の終わり頃にならないと詳しい状況はわかりません。

CDTCはツイッターのアカウント (@cdnst1) を使用しており、トレイルアラートのページもありますので、ハイカーの皆さんはぜひチェックしておいてください。そこで最新の注意事項を手に入れることができます。

登録すると適宜最新情報のメールが届きますので、ぜひ登録してください」

緊急連絡用のデバイスを用意しておく。

iPhone 14とinReachを比較した、BACKPACKING LIGHTの記事。(https://backpackinglight.com/apple-iphone-14-vs-garmin-inreach/より)

—— 編集部:inReach (※1) を携帯するハイカーが増えています。CDTCでも、ハイカーに対してinReachの携帯を推奨していたりするのでしょうか?

 
テレサ:「CDTCは、特に指定はしていませんが緊急時に使用できる何かしらの通信手段の携行を推奨しています。inReachはその1つです。

アップルの最新機種のiPhone 14には、衛星経由の緊急SOSを発信する機能もあります (※2)。また、地図を持ち歩くのも有用です。それによって、テクノロジーだけに依存することなく、より多くの情報を手に入れることができるようになります。

いずれにせよ、緊急事態に備えて通信手段は用意しておいてください」

※1 inReach:GARMIN (ガーミン) が開発・販売している衛星通信デバイス。携帯電話の電波が届かないエリアでも、双方向通信が可能でSOS発信機能も搭載されている。最新機種の「inReach Mini 2」は、小型&軽量で、重量は100g。

※2 iPhone 14の衛星経由の緊急SOS機能:iPhone 14 および iPhone 14 Pro に搭載されている機能。電波が届かないところでも、衛星通信を用いて緊急通報サービスにテキストを発信することができる。

Pacific Northwest Trail Association / エグゼクティブ・ディレクター ジェフ・キッシュ

 

現時点でスルーハイキングにおけるルール変更はない。


PNTのスタート地点 (東端)。グレイシャー国立公園にあるベリー・リバー・トレイルヘッド。

—— 編集部:2023年のスルーハイキングにおいて、例年と比較してルールの変更点はありますか?

 
ジェフ:「2023年のPNTのルール変更については、現時点ではまだ確定していません。変更の対象となるのは主に国立公園でのパーミットですが、現段階ではPNTのハイカーにとって大きな変化はないと考えています。

スタート地点へのアクセスも変わりません。モンタナ州のイースト・グレイシャー・パークからトレイルヘッドまで、ほとんどのハイカーはヒッチハイクをしていますが、歩くのもおすすめです (詳しくはコチラの記事を参照)」」

—— 編集部:コロナに関しては気をつけるべきことはありますか?

 
ジェフ:「ほとんどの場所でマスクの着用は任意ですし、現在アメリカでは多くの人がマスクを着用していませんが、医療施設は例外で訪問者や患者にマスクの着用が求められる場合があります。

またあなた自身が病気にかかったり、咳が出たりする場合は、マスクを着用するようにしてください」

『Leave No Trace』や『クマ対策』を学ぶ。


PNTにおけるクマの種類や生態、ハイカーが行なうべき対策をまとめたページ。(https://www.pnt.org/bears/より)

—— 編集部:日本人をはじめ、アメリカのロングトレイルを歩く人が年々増えてきています。ハイカーが増えることによる影響や、そのなかで一人ひとりのハイカーが気をつけるべきことはありますか?

 
ジェフ:「より多様なハイカーがロングトレイルを歩いてくれるのは嬉しいことです。しかし、ソーシャルメディアの影響により、経験不足のハイカーや、アウトドアの倫理を知らないハイカーが増えているのも事実です。

かつては、PCTやATといった有名なトレイルをスルーハイクした経験豊富なハイカーだけが、次のレベルへの挑戦を求めてPNTにやってきました。でも最近ではPNTが初めてのロングトレイルというハイカーが増えてきています。

これは必ずしも悪いことではありませんが、PNTAとしては、『Leave No Trace』や『クマ対策』をはじめとした、ハイカーへの教育がより重要になると考えています」

『inReach』は、携帯電話の電波が届かない場所で連絡用に使うことが多い。

—— 編集部:inReachを携帯するハイカーが増えています。PNTハイカーのうちどのくらいの人が持っているのでしょうか? また、ハイカーに対してinReachの携帯を推奨していたりするのでしょうか?

 
ジェフ:「割合は把握していないのですが、増えているのは事実ですし、PNTAのトレイルクルーは全員携帯しています。

使用用途としては、携帯電話の電波が届かない場所で、普段の連絡用に使うことが多いです。ただ今後、携帯電話の機能が向上するにつれて、このようなデバイスは少なくなっていくかもしれません。

アメリカのハイカーたちは、最新機種のiPhone 14の衛星通信機能に歓喜しています。しかし、これはあくまで緊急用なので、まだinReachの機能を完全に置き換えるものではありません」

ノースカスケード国立公園は、山火事により閉鎖が解除されない可能性あり。


山火事をはじめアラート情報をまとめたページ。登録すると、最新情報が送られてくる。(https://www.pnt.org/pnta/know-before-you-go/plan-your-trip/trail-alerts/より)

—— 編集部:アメリカで山火事が増えていると聞きましたが、PNTではどうですか? すでに閉鎖されているセクションがあったりしますか?

 
ジェフ:「近年、山火事の発生件数が増えています。ノースカスケード国立公園のPNTのほとんどが2023年のハイキングシーズン中も閉鎖されたままになる可能性が高いので、注意が必要です。

この区間は迂回路がありません。唯一の選択肢はヒッチハイク (またはトレイルエンジェルにお願いする) をして、閉鎖区域の反対側にあるトレイルまで行くことです。

また火器に関しては、PNTAではガスカートリッジ式ストーブのみを推奨しています。トレイル沿いの各エリアにおいて、暑くて乾燥した季節にガスストーブが法的な必須条件となる可能性が高いでしょう」


今なお、原始のウィルダネスが残るPNT。

CDTCのテレサおよびPNTAのジェフの最新情報で共通していたのは、山火事に対する注意喚起。

アメリカでは山火事が増えているため、ハイキング中にいかにそれを回避するかが重要である。そのためにも、各トレイル団体のアラートページをこまめにチェックすることが欠かせない。またいずれの団体でも、緊急事態に備えた連絡手段の携行を推奨している。

今回の記事は、CDTおよびPNTのみならず、他のアメリカのトレイルを歩くハイカーにとっても、参考になる内容だった。

TRAILSでは、今後も『ロングトレイルTOPICS』として最新情報をお届けしていく予定なので、またチェックしてみてほしい。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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