TRIP REPORT

パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) | #01 スルーハイキング準備編(行程と行くと決めていたスポット) by Teenage Dream(class of 2022)

2023.08.11
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文・写真:Teenage Dream 構成:TRAILS

毎年、多くの日本人ハイカーが海外トレイルを歩きに行く。スルーハイキングだったり、セクションハイキングだったり、ソロだったり、カップルだったり……それぞれが思い思いのスタイルでロング・ディスタンス・ハイキングを楽しんでいる。

そんなハイカーたちのロング・ディスタンス・ハイキングのリアルを、たくさんの人に届けたい。できれば、それぞれの肉声が伝わるような旅の記録、レポートを紹介することで、読者の方々にその臨場感や世界観をよりダイレクトに感じてほしい。

そこで前回 (詳しくはコチラ) から、ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズをスタートさせることにした。

シリーズ第2弾は、2022年にパシフィック・クレスト・トレイル (PCT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) Teenage Dreamによるレポート。

まずは、Teenage DreamがPCTに憧れるようになったきっかけも含めて、プランニング編をお届けする。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、ハイカー同士トレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


Teenage Dreamが10年以上憧れつづけていたPCT。

パシフィック・クレスト・トレイル (PCT) とは?


アメリカ西海岸らしい開放感あふれる景色も特徴のひとつ。

メキシコ国境からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を経てカナダ国境まで、アメリカ西海岸を縦断する約2,650mile (4,265㎞) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。スルーハイキングに要する期間は、4〜6カ月。

アメリカ西海岸の山地、山脈を貫くトレイルで、砂漠地帯、高山地帯、樹林帯などバリエーションに富んだ自然環境が広がっている。JMTの大部分を包含してることもありシエラネバダの風光明媚な風景も楽しめる。

また、1968年に制定されたNational Trails System Act (国立トレイル法) によって作られたNational Scenic Trailにおいて、アパラチアン・トレイル (AT) とともに一番最初に認定されたトレイルとしても有名。

国境を目指して、砂漠から氷河までを歩くロマン。


自作のバックパックとともにPCTをスルーハイキングした、Teenage Dream。

物心ついた時から探究心が強く、わからないことは図鑑などの本を広げたり、機械を分解して、ロボットを作って大会などへ出ていました。さらにボーイスカウトを通して、最小限の旅道具の面白さ、奥深い思想に感銘を受けました。

そして高校生のころに読んだBE-PAL (2009年10月号「軽い旅道具」) が一番最初のきっかけで、ロングトレイルという文化に初めて触れました。

2009年といえばハイカーズデポが創業して2年目の年。軽い旅道具でハイキングのために必要最低限のウルトラライト装備でJMTを旅する土屋さんに衝撃を受けました。

この時にウルトラライトハイキングを知り、JMTを知り、PCTを知り、軽ければ遠くへ行けることを意識しはじめました。

自作道具でなんとかするウルトラライト装備で旅をする感覚は、これまで自分で道具を作ってきた私にとって、すんなりと腑に落ちる気がしました。JMTを1番歩いてみたいけど、国境を目指して砂漠から氷河までを歩くロマンに気持ちが傾き、レイ・ジャーディン (※2) へのリスペクトもあり、PCTを歩きたい夢ができました。

その後、自転車で日本一周をしながら登山をして、日本の文化に触れ、アウトドア総合メーカーへ就職をしました。お金を貯めて、アメリカのPCTを歩くという夢ができました。

ちなみに就職面接では「PCTへ行くので3年くらいで辞めます」と宣言していました。

たいそうな夢だと感じるかも知れませんが、歩きたいと思えるきっかけはなんでも良いと考えています。人生を強制リセットさせたい、再設計したい、困難を乗り越えたい、ただ歩いてみたい、旅をしてみたい。歩く理由は人それぞれ、どんな事でも素晴らしい理由だと思います。

※2 レイ・ジャーディン:ウルトラライトハイキングの方法論を確立した人物。2000年にULハイカーのバイブルでもある『Beyond Backpacking』を出版 (1992年の初版は『PCT Hiker Handbook』、2008年に『Trail Life』に改題)。彼の独自の方法論は「レイ・ウェイ」と呼ばれている。

退職し、自らアウトドアメーカーを起業してPCTへ。


他のハイカーとも度々顔を合わせて仲良くなり、一緒に歩いたりもした。

何かを決めるということは、何かを捨てることだと思っています。そして半年以上のロングトレイルはこれまでの人生の区切りであり、過去と未来をこれからどう生きるのか? 考える期間だと思います。

私は仕事を辞めて、家業の酒屋を継ぐとともにアウトドアメーカーも起業し、製品テストを兼ねてPCTのスルーハイキングと、アウトドア用品を作る生活を選びました。

理想としては休職ですが、仕事を辞めなくてはならない場合がほとんどかと思います。ロングトレイルへ行くべきか悩んでいるなら、多くの時間を使ってパートナーや友人に相談してみましょう。決めた後はPCTへ向けて行動あるのみです。

1日17.1mile (27.4km) を最低でも歩くことだけを考えた。


南端のカンポをスタートして、北端のマニング・パークを目指すNOBO (ノースバウンド) を選択。

PCTは全行程で約2,600mile (約4,200km)。アメリカのB2ビザの有効期限が182日。入国や出国前後の余裕も含めたゼロデイやニアゼロが30日。2600 / (152-30) = 17.1mile。1日17.1mile (27.4km) を最低でも歩こうとなんとなく決めていました。

バウンスボックス (※3) は費用がかかるのでなるべくしませんでした。しかし、レイクタホ (シエラネバダの北部) とポートランド (旅の後半) に不要だけど捨てたくないものをまとめていました。まとめた物は到着した時に日本へ送り返すことにしました。

※3 郵便局への局留めを利用して、立ち寄る予定の町に事前に荷物を送ること。


半年という長い期間のため、計画は変更になることを前提としていた。そのため、補給で降りる町は現地で決めることにした。

計画はざっくりこんな感じで、どうせ計画は変わるので具体的なリサプライ (補給) 計画はしないようにしていました。リサプライの情報はFarOut (GPS地図アプリ) や他のハイカーからの話で現地で決めていました。

行くと決めていたスポット (時系列順)
・パフィシックサーフライナー (特急列車)
・ADZPCTKOの岩
・モハベ砂漠
・バスケスロック
・デビルズポストパイル
・ヨセミテバレー
・クレーターレイク
・ティンバーラインロッジ
・PCT DAYS
・REI シアトル


細かい行程の計画は立てず、1日17.1mile (27.4km) を歩くことだけを決めていた。

一番の憧れの地は、かつてキックオフパーティーが開催されていた場所。


今はなきPCTのキックオフパーティが開催されていた場所。

特にADZPCTKO (Annual Day Zero Pacific Crest Trail Kock Off) の岩は高校生の頃から憧れていた岩です。ここはかつてPCTのキックオフパーティーの会場となっていたキャンプ場です。

私がPCTに興味を持った時、本やインターネットなどを使って調べましたがPCTの情報はほとんど存在しませんでした。

しかし、ADZPCTKOの岩は、キックオフパーティーの会場として写真がインターネットへ載っていました。おそらく企画者やエンジェルが撮影したものだと思います。

一時はここがスタート地点だと勘違いしていたこともありました。PCTといえばこの石から始まると勝手に考えるようになり、憧れも高まっていきました。

特に場所も公開されていないためスタート周辺の地域を調べ、位置を特定して調べて向かいました。マウントラグーナのキャンプ場にポツンとあるこの石をぜひ探してみてください。

キックオフパーティーが無くなってから10年以上、なので知っている人はほとんどいないのかも知れません。

しかし、私にとっては国境のモニュメントよりも神聖なスタート位置に感じるほど憧れた場所です。


PCTの砂漠地帯。

今回は、PCTをスルーハイキングするにあたっての「プランニング編」として、PCTを歩くきっかけから、半年間におよぶ旅の計画までを語ってもらった。

次回は、ギアリストを紹介してもらう。Teenage Dreamは、自作のバックパックのテストも兼ねてスルーハイキングしたので、そのバックパックの詳細についても紹介してもらう予定だ。

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Teenage Dream

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子どもの頃から父と一緒にロボットコンテストに出場するほどのモノづくり好きで、機械加工やレザークラフトに夢中になる。大学時代には自転車で日本一周をしながら登山もし、卒業後はアウトドア総合メーカーへ就職。プロダクトデザイナーとしてさまざまなプロダクト開発に携わる。2021年に独立し、アウトドアメーカー『MIYAGEN Trail Engineering』を創業。同時に、念願だったパシフィック・クレスト・トレイル (PCT) をスルーハイキング。

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