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イタリア・リマ川 家族旅行のついでにデイ・パックラフティング | パックラフト・アディクト #71

2023.09.13
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(English follows after this page.)

文・写真:コンスタンティン・グリドネフスキー 訳・構成:TRAILS

TRAILSのアンバサダーであるコンスタンティンが、今回レポートしてくれるのは、イタリアのトスカーナ州にあるリマ川。

コンスタンティン自身、初めてのイタリアでのパックラフティング。しかも、個人のブログやSNSでの川下りの情報も非常に少なく、いつになく川の情報も手に入りにくかったようだ。

リマ川は一体どんな川なのだろうか? パックラフティングに適した川なのだろうか? コンスタンティンによる、イタリアでの貴重なパックラフティング・レポートをお楽しみください。


イタリア中部トスカーナ州を流れるリマ川。

イタリア旅行のついでに、パックラフティングはできるのだろうか?


妻と娘と一緒に、1週間の家族旅行。

今年の2月下旬、妻と娘と私はイタリアのトスカーナへ1週間の家族旅行に行くことにした。そしてもちろん、パックラフトを持っていこうと思いました。

どんな川があるか調べてみると、驚いたことに、トスカーナでパックラフトのツアーを開催している地元の会社がいくつもありました。しかも、正真正銘のパックラフトです。バリ島で見たような2人乗りのインフレータブルのバナナボートではなく (バリ島の記事を参照)、1人用のクラシックなタイプです。

ツアーの種類としては、比較的穏やかなもの (大きく、広く、静水で急流なし) もあれば、より冒険的なもの (急流) もありました。私は後者を望んでいました。

リマ川は、私たちが飛行機で向かったピサから北に少し行ったアペニン山脈にある川です。ネットで見たところによると、少なくとも4つの会社がラフティングやパックラフトのツアーを提供していて、リマ川はこのエリアで人気のあるホワイトウォーター・リバーのひとつでした。

リサーチしても川の詳細情報がなく、ツアーに同行させてもらおうと考えた。


リマ川は、ラフティング人気は高い。

でも、川の詳細や、どこを漕ぐのがいいのかなど、もっと詳しい情報を探そうとしても、あまり見つかりませんでした。そこで、いくつかの会社に連絡を取り、同行させてもらえないか頼んでみることにしました。

まだシーズンは始まっていないみたいで、否定的な返事ばかりでした。ただ、フィレンツェ・ラフティングという会社とは話をすることができました。

彼らは、自分たちのツアーはないけれど、彼らのパートナー会社がシーズン前に何人かのお客さんと一緒にツアーをやっていて、もしそれでよければ参加できると教えてくれました。

「約3.5kmの距離を1時間半かけて下ります」と彼らは説明してくれた。私自身、あまり時間がなかったので、これはちょうど良い行程でした。

クラスIIIの瀬があるホワイト・ウォーター。


フィレンツェ・ラフティングのオーナーであるゼノ。彼のおかげで、今回リマ川をパックラフティングすることができた。

イタリアに到着した翌朝、レンタカーで約束の待ち合わせ場所であるファブリーチェ・ディ・カサバスキアーナ村のダ・マルスカ・ピッツェリアへ向かいました。

そこで、ゼノという名前のスリムな笑顔の男性が迎えてくれました。実は私がやりとりしていたのは彼だったことがわかりました。

彼はフィレンツェ・ラフティングのオーナーであり、この日は休日でしたが、この雨の土曜日に友人たちと一緒にカヤックを楽しむことにしたそうです。後で話を聞いてみると、彼はアフリカのザンベジ川を漕いだこともあるベテランのカヤッカーでした。彼の英語はとても上手で、あとで友人たちの通訳もしてくれました

他のお客さん3人とガイド4人もすでにそこにいました。簡単な自己紹介のあと、ベースキャンプまで歩き、パドリングウェアに着替えて、狭い渓谷にかかる吊り橋から川を眺めました。


スタート地点にある吊り橋からの眺め。パックラフティングが楽しめそうな瀬が見える。

橋のすぐ横には目を引くクラスIII (※1) の瀬があり、私たちが漕ぐ予定の区間で最大の瀬であることがわかりました。

川を紹介してもらった私たちは、2台のバンにパッククラフト (客用) とカヤック (ガイド用) を積み込み、川を700mほどさかのぼったところにあるプットインポイントに向かいました。橋の下には、クラスIIの瀬のすぐ下にいい淵があり、私たちはそこでウォーミングアップをしました。

※1 クラス:瀬(川の流れが速く水深が浅い場所)の難易度。クラス(グレードや級とも表現される)が I〜VI(1〜6級)まであり、数字が大きいほど難易度が高い。ちなみに、I は飛沫もなく静かな流れ、II はやや高い波があるが規則的な流れ。ただし、同じ瀬であっても川の水量や地形の変化などによって難易度は変わってくるので、あくまで目安である。


リマ川のパックラフティング・トリップ、ついにスタート。

3人のお客さんはいずれも30代のイタリア人で、パックラフトで漕ぐのは初めてでした。そのため、ガイドは基本的なことを説明し、フェリーグライド (※2) やエディキャッチ (※3) のやり方を教えました。

30分ほど練習をしたあと、フリップ (転覆) もありましたが、ガイドたちは準備ができたと判断し、川を下り始めることにしました。

※2 フェリーグライド: 水の力を利用して、流れの中で左右に移動するテクニック。船首 (バウ) を斜め上流に向け、ボートの底で流れを受け止めながらパドリングし、水の力を使って効果的に横方向にスライドする技術。

※3 エディキャッチ:岩などの障害物に流れがぶつかると、その下流には水がとどまり渦巻いている箇所が生まれる (エディ)。本流から抜け出てこのエディに入るテクニック。下流を観察したり、水上で休憩したり、上陸する際に必要な止まる技術。


スタート地点からゴール地点まで、距離にして約3.5kmを1時間半かけて下る。短いコースだが、たくさんの瀬があるため満足度は高い。

パックラフトが初めてという3人も一緒に、リマ川をダウンリバー。


スリリングな瀬を楽しんだ。

この辺りはリマ川のなかでも川幅が狭く、吊り橋から見えたところ以外にも魅力的な瀬がいくつもありました。水の流れは速く、比較的寒かったですが、私はここでパックラフティングができることがとても嬉しかったです。

ゼノが私についてくれることになり、大きなドロップ (落ち込み) の手前で、私が下れそうな面白いラインを提案してくれました。


距離も時間も短いながらも瀬が多く、スリリングでテンションが上がる。

他の3人はパックラフトに乗るのが初めてというわりには、比較的うまくいっているようでした。その後何度かフリップしていましたが、めげずに続けていました。彼らのそばに5人も安全をサポートしてくれるカヤッカーがいたのも、安心材料だったのでしょう。

そして彼らは、パックラフトをとても楽しんでいるようでした。岸辺にある巨大な岩から川へ飛び降りることができる場所では、彼らは真っ先にそこにいました。もう濡れても平気だったのでしょう。


パックラフトが初めての人も、とても楽しそうだった。

彼らが使っていたパッククラフトは、スプレーデッキ (※4) もセルフベイラー (※5) もない、クラシックな舟でした。そのため、度々止まって排水しなければなりませんでした。

それでも、扱いが難しいデリケートな舟ではないこともあって、初めてのパックラフト体験には問題なかったようです。ゼノは「ウクライナのレッド・リバー社製だよ」と教えてくれました。

※4 スプレーデッキ:パックラフトのコックピット内に水が侵入するのを防ぐための装備。

※5 セルフベイラー:舟の底に複数の穴が開いていて、艇内に入った水が排水される機構のこと。波をかぶった際に艇内に水が溜まることがないので、特にホワイトウォーターで有用。

次回は、リマ川から数日かけて海にでるパックラフティング・トリップがしたい。


ゴール付近は霧で覆われていて幻想的だった。

ゼノにリマ川について聞いてみると、アイデア次第では数日間のトリップが可能だという。私たちがスタートした場所の上のセクションは、よりテクニカル (クラスIV) だが、下のセクションはより簡単 (ほとんどがクラスII) とのことでした。

セルキオ川との合流点までは、「ソフト・ラフティング」と呼ばれる、子ども連れの家族に適した静水域を下る簡単な川下りが行なわれています。ソフト・ラフティングという言葉は、私も初めて耳にしました。そして、セルキオ川を漕いで海まで下ることもできるそうです。

実際、先に進めば進むほど、川は開けてきました。雨予報でしたが天気は予想以上に良く、雨の代わりに霧が立ちこめ、あたりは神秘的な風景が広がっていました。


下流域は、子ども連れの人にもピッタリの静水域。

水上で2時間過ごした後、マッシモ・ベッティ橋で降りると、すでに1台のバンが待っていました。私は、ダ・マルスカ・ピッツェリアに戻り、妻と娘と合流しました。二人は2時間ほど待っていて、そこでイタリア料理を楽しんでいました。「このデザート、ぜひ食べてみて。死ぬほどおいしいわよ!」と妻は言いました。

こうしてようやく私たち家族のイタリア旅行が始まり、それぞれが好きなものを楽しみました。

川については、もう一度イタリアに来て、海まで漕いでみたいと思っています。もちろんデザートも楽しみながらね。


ゴール後に妻と娘と再会して、イタリア料理を楽しんだ。

家族旅行でありながらも、しれっとパックラフトを持っていってしまうのが、さすがパックラフト・アディクトのコンスタンティンだ。

今回はたかだか2時間程度のトリップだったが、今後のロングトリップに向けた良い下見になったようだ。

すでに、リマ川をスタートして海でゴールするという次回のトリッププランを立てたコンスタンティン。そのレポートがいつになるのか、楽しみに待ちたい。

TRAILS AMBASSADOR / コンスタンティン・グリドネフスキー
コンスタンティン・グリドネフスキーは、ヨーロッパを拠点に世界各国の川を旅しまくっているパックラフター。パックラフトによる旅を中心に、自らの旅やアクティビティの情報を発信している。GoPro Heroのエキスパートでもあり、川旅では毎回、躍動感あふれる映像を撮影。これほどまでにパックラフトにハマり、そして実際に世界中の川を旅している彼は、パックラフターとして稀有な存在だ。パックラフトというまだ新しいジャンルのカルチャーを牽引してくれる一人と言えるだろう。

(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)

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Konstantin Gridnevskiy

Konstantin Gridnevskiy

1978年ロシア生まれ。ここ17年間はオランダにある応用科学の大学の国際旅行マネジメント課にて、アウトドア、リーダーシップ、冒険について教えている。言語、観光、サービスマネジメントの学位を持っていて、研究は、アウトドアでの動作に電子機器がどう影響するか。5年前からパックラフティングをはじめ、それ以来、世界中で川旅を楽しんでいる。これまで旅した国は、ベルギー、ボスニア、クロアチア、イギリス、フィンランド、フランス、ドイツ、日本、モンテネグロ、ノルウェー、ポーランド、カタール、ロシア、スコットランド、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、オランダ。その他のアクティビティは、キャンプ、ハイキング、スノーシュー、サイクリングなど。

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