TRIP REPORT

SKI HIKING | #11 トニー、サニー、ノブのBCクロカン・トリップ あまとみトレイル2DAYS(トリップ編・その2)

2024.02.21
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TRAILSの『SKI HIKING』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事。BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力で、雪の世界におけるハイキングの旅を拡張してくれる。

今回、BCクロカンで1泊2日の旅をしたのはTRAIL Crewの3人。PCT、CTスルーハイカーのTony (トニー)、JMT、PCT、CDTスルーハイカーのSunny (サニー)、JMTスルーハイカーのNobu (ノブ) だ。

キャンプ場の管理人から「クレイジーだ!」と言われながら、吹雪のなか設営を無事に済ませた3人。待ちに待ったスノーキャンプでの宴会がスタート! 翌日のDAY2はどんな1日になったのか。天候は回復したのか。旅の後半戦「トリップ編・その2」をお楽しみください。


吹雪のなかテントを設営。徐々に雪はおさまっていった。


DAY1は、妙高高原駅から野尻湖のキャンプ場まで。DAY2は、キャンプ場周辺を散策。

スノーキャンプでの宴会。カンパーイ! さぁ、鍋だ!


ようやく安堵感に包まれた3人。まずは缶ビールでカンパイ!

「ハラ減ったー」「メシ食わないと死んじゃう!」と言いながら、ノブが持参した自分用兼宴会用シェルター、「GoLite / Shangri-La 5」に3人が集結。

よし、鍋だ鍋だ! とその前に、まずはカンパイから。途中のコンビニで買った缶ビールをそれぞれ取り出し、プシュッ! カンパーーーイ!!!

3人とも一気にノドに流し込む。緊張感がほぐれ、全身が弛緩したかのようなこの感覚。寒さや空腹を一瞬だけ忘れることができた至福のひと時だった。


山盛りのキムチ鍋で、宴会スタート。火が通るまで待ちきれない。

今夜の鍋は、キムチ鍋だ。

GARAGEに3人が集まってあーだーこーだ話し合った計画段階 (詳しくはコチラ) から、やっぱ鍋はキムチ鍋でしょ! と、満場一致で決めていたのだ。

しかも、下ごしらえは済んでいるので、鍋を火にかけて具材とスープの素と水をぶっ込むだけ。

というのも、出発前日の深夜、飲食店でのバイト経験を持つ料理番長のトニーが大量の具材をカットして仕込んでおいてくれたのだ。

鍋にはあふれんばかりの具材。今すぐにでも食べたくて待ちきれない!


シメに投入したのは、おっきりこみ。

3人を震撼させた、お好み焼き事件!


トニーが用意したのは、冬用アルコールストーブ「Shara Project / Shara Ex Stove」と、「trangia / mini set」のフライパン。

ハフハフ言いながらキムチ鍋をがっついていると、トニーがおもむろに何かの準備をしはじめた。

何か調理をするっぽいけど、キムチ鍋の味変? 何か焼くの? それとも、デザート?

聞けば、お好み焼きを作るとのこと! 実は、関西人 (大阪生まれ大阪育ち) のトニーは、根っからの粉もんラバーで、なかでもお好み焼きが大好物。学生時代は、長らくお好み焼き屋さんでバイトして腕を磨いたらしく、今まで見たことがないほど自信満々の笑顔。

そしてなんと、お好み焼きには小さいであろう、ミニトラ (「trangia / mini set」のフライパン) で焼きはじめた。


トニーの十八番、大阪お好み焼き。

何の迷いもなく手際よくお好み焼きを焼くトニー。そのかたわらで、サニーとノブは「キムチ鍋にプラスしてお好み焼きも食べられるのかー、楽しみだなぁー」などと言いながら、ひたすらキムチ鍋をほおばっている。

今日は想定以上の雪でルート変更せざるを得なかったけど、なんだかんだで楽しかったねぇー。そんな振り返りモードに入った矢先、「ガシャン!!!」という音がしたとほぼ同時に、「うわぁーっ」とトニーが声をあげた。

なんと、自慢のお好み焼きを返すタイミングで、フライパンごとひっくり返してしまい、それがものの見事に地面の雪の上に落ちてしまったのだ。

もう終わった……と誰もが思った。

落ちたのがテーブルとかならまだしも、地面 (しかも雪) の上。見るからに手のほどこしようがなく、トニーの自信に満ちた表情は消え失せ、まるで心が折れてしまったかのようだった。

こういう時、たいていはすぐ何かしらの対処をするもんだが、この時ばかりはみんな放心状態。無惨な姿のお好み焼きはしばらく放置されていた……。


瀕死のお好み焼きが、奇跡的に復活!

とそこで、「これ、雪ごとすくってひっくり返せば、いけるんじゃね? ちょっと水分多くなるだけっしょ」とサニーの起死回生 (?) のひとこと。

その手があったか! さっそくトライしてみると、お好み焼きの上にうっすらシャーベットが乗っているくらいの見た目で、焼いてしまえば何とかなりそう。

しばらく焼いて完成し、3人でちょっとビビりながら実食!

「うまっ!」「めちゃくちゃうまいじゃないですか!」「一回落ちたとは思えないうまさ!」と大絶賛。キムチ鍋をがっついたあとに絶品お好み焼きを食べ、さらには酒をあおり、幸せな夜は過ぎていった。

誰ひとりいない広大な雪原を、BCクロカンで歩く。


昨日とは打って変わって、穏やかで最高の朝!

翌朝はほぼみんな6時に起床。昨日の吹雪がウソのように、雲ひとつない快晴だ! まさしく雪遊び日和! BCクロカン日和!

そして、昨日のうっぷんを晴らすかのように、BCクロカンそっちのけで急に雪上ではしゃぎ出すサニー。

おい、BCクロカンをしにきたんだぞ (笑)。


何の前触れもなく、いきなり回転しはじめたサニー。

さて、今日はBCクロカンでどこに行こう?

快晴ではあるものの、雪はかなり積もっている。ヒザくらいまであるから50cmくらいの積雪だ。昼くらいにはスタート地点の妙高高原駅に戻らないといけないので、遠出はできない。


ようやく、本気のBCクロカンがスタート!

あたりを見回してみると、湖畔に高台があって、テント場からそのまま登っていけそうだった。勾配もちょうどいい感じで、BCクロカンにはもってこい。さっそく3人で登っていくことにした。

トニーとサニーの板の滑走面には、ウロコと呼ばれるステップカットが刻まれている。ノブの板の滑走面には、滑り止めのシールが貼られている。このおかげで、登りも難なく進んでいくことができるのだ。しかも、滑り歩きができるからスノーシューより直進性が高く、速く進めて気持ちがいい。


広大な雪原を、滑るように歩く。

坂を登り詰めると、そこには足跡ひとつない雪原が広がっていた。

「うぉーーーーっ!」と、自然と声がもれる。

ゲレンデならファーストトラックという感じだろうか。誰も足を踏み入れていない場所を、BCクロカンで縦横無尽に歩き回り、道を作っていく感覚は、もう最高でしかなかった。

隠し持っていた秘密兵器の「アドレナリン・ソリ」を、実戦投入!


ジャジャーン! と自慢げにアピールするサニー。

高台を往復したところで、サニーがバックパックをおろし、中からとあるものを取り出した。

インフレータブルのスリーピングマット?
ちっちゃなパックラフト?
浮き輪かな?


Alpacka Raftのソリ。(https://www.alpackaraft.com/products/adrenaline-sledより)

この物体の正体は、Alpacka Raftの『Adrenaline Sled』。そう、あのパックラフトのオリジネーターとして有名なAlpacka Raftのプロダクトだ。

しかもパックラフトではなく、Sled (ソリ) である。名前を直訳すると、アドレナリンが出るソリ、といったところだろうか。この、本気でふざけている感じがたまらない (笑)。


とりあえず、膨らましてみる。

はたして実用性があるソリなのか? そこがまったくわからない。ネットでいろいろ調べてはみたものの、まだレビューがぜんぜんないのだ。

とりあえず、膨らましてみた。ただ単に空気を入れるだけだから、準備は簡単。あっという間に完成だ!


傾斜がなくても、かなり滑る。

まずは平地での試乗から。

少し助走をつけて、腹ばいになって乗ってみる。

「おぉー、めっちゃ滑るじゃん!」。どうせ大して滑らないかと思ってたら、よくあるプラスチック製のソリよりも、だんぜん滑る。なんだこれ、やばいな (笑)。


これはめちゃくちゃ楽しい!

よし、次は斜面を滑ってみよう!

さっきBCクロカンで往復した斜面は、いい感じでトレースがついているからバッチリなはず。

めちゃくちゃスピードが出る! 3人で代わるがわる乗ってみたけど、みんなそのスピードにやられて、アドレナリンが出まくっている。そうか、だから『Adrenaline Sled』という名前なのか!

夢中になって滑っていたら、ソリ遊びだけであっという間に1時間が経過していた。そろそろ片付けて駅に戻らないといけない。

あまとみトレイルでのラッセル、吹雪のなかでのテント泊、さらにはBCクロカンからの仕上げのソリ。最高の2DAYSトリップだった! さーて、帰りながら次のトリップのプランを立てるぞ。


左から、サニー、トニー、ノブ。3人とも大満足の2DAYSとなった。

DAY1の吹雪&撤退からキャンプ場での大宴会、DAY2の快晴のもとでのBCクロカン、そして想像以上の面白さだったソリでのライディング。

TRAILS Crew3人の珍道中は、とにかく楽しさにあふれていた。次回からは、2回にわたってギア編をお届けするので、お楽しみに。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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