SKI HIKING | #11 トニー、サニー、ノブのBCクロカン・トリップ あまとみトレイル2DAYS(トリップ編・その2)
TRAILSの『SKI HIKING』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事。BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力で、雪の世界におけるハイキングの旅を拡張してくれる。
今回、BCクロカンで1泊2日の旅をしたのはTRAIL Crewの3人。PCT、CTスルーハイカーのTony (トニー)、JMT、PCT、CDTスルーハイカーのSunny (サニー)、JMTスルーハイカーのNobu (ノブ) だ。
キャンプ場の管理人から「クレイジーだ!」と言われながら、吹雪のなか設営を無事に済ませた3人。待ちに待ったスノーキャンプでの宴会がスタート! 翌日のDAY2はどんな1日になったのか。天候は回復したのか。旅の後半戦「トリップ編・その2」をお楽しみください。
スノーキャンプでの宴会。カンパーイ! さぁ、鍋だ!
「ハラ減ったー」「メシ食わないと死んじゃう!」と言いながら、ノブが持参した自分用兼宴会用シェルター、「GoLite / Shangri-La 5」に3人が集結。
よし、鍋だ鍋だ! とその前に、まずはカンパイから。途中のコンビニで買った缶ビールをそれぞれ取り出し、プシュッ! カンパーーーイ!!!
3人とも一気にノドに流し込む。緊張感がほぐれ、全身が弛緩したかのようなこの感覚。寒さや空腹を一瞬だけ忘れることができた至福のひと時だった。
今夜の鍋は、キムチ鍋だ。
GARAGEに3人が集まってあーだーこーだ話し合った計画段階 (詳しくはコチラ) から、やっぱ鍋はキムチ鍋でしょ! と、満場一致で決めていたのだ。
しかも、下ごしらえは済んでいるので、鍋を火にかけて具材とスープの素と水をぶっ込むだけ。
というのも、出発前日の深夜、飲食店でのバイト経験を持つ料理番長のトニーが大量の具材をカットして仕込んでおいてくれたのだ。
鍋にはあふれんばかりの具材。今すぐにでも食べたくて待ちきれない!
3人を震撼させた、お好み焼き事件!
ハフハフ言いながらキムチ鍋をがっついていると、トニーがおもむろに何かの準備をしはじめた。
何か調理をするっぽいけど、キムチ鍋の味変? 何か焼くの? それとも、デザート?
聞けば、お好み焼きを作るとのこと! 実は、関西人 (大阪生まれ大阪育ち) のトニーは、根っからの粉もんラバーで、なかでもお好み焼きが大好物。学生時代は、長らくお好み焼き屋さんでバイトして腕を磨いたらしく、今まで見たことがないほど自信満々の笑顔。
そしてなんと、お好み焼きには小さいであろう、ミニトラ (「trangia / mini set」のフライパン) で焼きはじめた。
何の迷いもなく手際よくお好み焼きを焼くトニー。そのかたわらで、サニーとノブは「キムチ鍋にプラスしてお好み焼きも食べられるのかー、楽しみだなぁー」などと言いながら、ひたすらキムチ鍋をほおばっている。
今日は想定以上の雪でルート変更せざるを得なかったけど、なんだかんだで楽しかったねぇー。そんな振り返りモードに入った矢先、「ガシャン!!!」という音がしたとほぼ同時に、「うわぁーっ」とトニーが声をあげた。
なんと、自慢のお好み焼きを返すタイミングで、フライパンごとひっくり返してしまい、それがものの見事に地面の雪の上に落ちてしまったのだ。
もう終わった……と誰もが思った。
落ちたのがテーブルとかならまだしも、地面 (しかも雪) の上。見るからに手のほどこしようがなく、トニーの自信に満ちた表情は消え失せ、まるで心が折れてしまったかのようだった。
こういう時、たいていはすぐ何かしらの対処をするもんだが、この時ばかりはみんな放心状態。無惨な姿のお好み焼きはしばらく放置されていた……。
とそこで、「これ、雪ごとすくってひっくり返せば、いけるんじゃね? ちょっと水分多くなるだけっしょ」とサニーの起死回生 (?) のひとこと。
その手があったか! さっそくトライしてみると、お好み焼きの上にうっすらシャーベットが乗っているくらいの見た目で、焼いてしまえば何とかなりそう。
しばらく焼いて完成し、3人でちょっとビビりながら実食!
「うまっ!」「めちゃくちゃうまいじゃないですか!」「一回落ちたとは思えないうまさ!」と大絶賛。キムチ鍋をがっついたあとに絶品お好み焼きを食べ、さらには酒をあおり、幸せな夜は過ぎていった。
誰ひとりいない広大な雪原を、BCクロカンで歩く。
翌朝はほぼみんな6時に起床。昨日の吹雪がウソのように、雲ひとつない快晴だ! まさしく雪遊び日和! BCクロカン日和!
そして、昨日のうっぷんを晴らすかのように、BCクロカンそっちのけで急に雪上ではしゃぎ出すサニー。
おい、BCクロカンをしにきたんだぞ (笑)。
さて、今日はBCクロカンでどこに行こう?
快晴ではあるものの、雪はかなり積もっている。ヒザくらいまであるから50cmくらいの積雪だ。昼くらいにはスタート地点の妙高高原駅に戻らないといけないので、遠出はできない。
あたりを見回してみると、湖畔に高台があって、テント場からそのまま登っていけそうだった。勾配もちょうどいい感じで、BCクロカンにはもってこい。さっそく3人で登っていくことにした。
トニーとサニーの板の滑走面には、ウロコと呼ばれるステップカットが刻まれている。ノブの板の滑走面には、滑り止めのシールが貼られている。このおかげで、登りも難なく進んでいくことができるのだ。しかも、滑り歩きができるからスノーシューより直進性が高く、速く進めて気持ちがいい。
坂を登り詰めると、そこには足跡ひとつない雪原が広がっていた。
「うぉーーーーっ!」と、自然と声がもれる。
ゲレンデならファーストトラックという感じだろうか。誰も足を踏み入れていない場所を、BCクロカンで縦横無尽に歩き回り、道を作っていく感覚は、もう最高でしかなかった。
隠し持っていた秘密兵器の「アドレナリン・ソリ」を、実戦投入!
高台を往復したところで、サニーがバックパックをおろし、中からとあるものを取り出した。
インフレータブルのスリーピングマット?
ちっちゃなパックラフト?
浮き輪かな?
この物体の正体は、Alpacka Raftの『Adrenaline Sled』。そう、あのパックラフトのオリジネーターとして有名なAlpacka Raftのプロダクトだ。
しかもパックラフトではなく、Sled (ソリ) である。名前を直訳すると、アドレナリンが出るソリ、といったところだろうか。この、本気でふざけている感じがたまらない (笑)。
はたして実用性があるソリなのか? そこがまったくわからない。ネットでいろいろ調べてはみたものの、まだレビューがぜんぜんないのだ。
とりあえず、膨らましてみた。ただ単に空気を入れるだけだから、準備は簡単。あっという間に完成だ!
まずは平地での試乗から。
少し助走をつけて、腹ばいになって乗ってみる。
「おぉー、めっちゃ滑るじゃん!」。どうせ大して滑らないかと思ってたら、よくあるプラスチック製のソリよりも、だんぜん滑る。なんだこれ、やばいな (笑)。
よし、次は斜面を滑ってみよう!
さっきBCクロカンで往復した斜面は、いい感じでトレースがついているからバッチリなはず。
めちゃくちゃスピードが出る! 3人で代わるがわる乗ってみたけど、みんなそのスピードにやられて、アドレナリンが出まくっている。そうか、だから『Adrenaline Sled』という名前なのか!
夢中になって滑っていたら、ソリ遊びだけであっという間に1時間が経過していた。そろそろ片付けて駅に戻らないといけない。
あまとみトレイルでのラッセル、吹雪のなかでのテント泊、さらにはBCクロカンからの仕上げのソリ。最高の2DAYSトリップだった! さーて、帰りながら次のトリップのプランを立てるぞ。
DAY1の吹雪&撤退からキャンプ場での大宴会、DAY2の快晴のもとでのBCクロカン、そして想像以上の面白さだったソリでのライディング。
TRAILS Crew3人の珍道中は、とにかく楽しさにあふれていた。次回からは、2回にわたってギア編をお届けするので、お楽しみに。
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