TRIP REPORT

SKI HIKING | #13 トニー、サニー、ノブのBCクロカン・トリップ あまとみトレイル2DAYS(ギア編・その2)

2024.03.08
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TRAILSの『SKI HIKING』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした企画記事。BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力で、雪の世界におけるハイキングの旅を拡張してくれる。

今回、BCクロカンで1泊2日の旅をしたのはTRAIL Crewの3人。PCT、CTスルーハイカーのTony (トニー)、JMT、PCT、CDTスルーハイカーのSunny (サニー)、JMTスルーハイカーのNobu (ノブ) だ。

計画編、トリップ編、ギア編とお届けしてきたが、今回がついに最終回。TRAILS Crew3人の実体験をベースにして、今回のシチュエーションにおける、TRAILSレコメンドのSKI HIKINGギアリストを紹介する。

これからスキーハイキングをやってみたいという方は、ぜひ参考にしてみてほしい。


1泊2日のBCクロカン・トリップで、さまざまなギアを試してきた。

TRAILSレコメンドのSKI HIKINGギアリスト


  

 
※Base Weight (ベースウエイト) :水、食料、燃料などの消費するものを除いたバックパックの重量。背負うバックパックの重量を測るための基準であるため、ハイキング時に着用するウェアやシューズ等はベースウエイトに含まない。ベースウエイト4.5kg以下 (10ポンド以下)が、UL (ウルトラライト) の一般的な基準となっている。また消費するものを含めたバックパックの重量を、パックウエイトと呼ぶ。

厳冬期のあまとみトレイルにおける、1泊2日のBCクロカン・トリップ。今回のトニー、サニー、ノブの3人のインプレッションをもとに、3人が使用したギアをベースに、TRAILSレコメンドのSKI HIKINGのギアリストを作成した。

テーマは「UL × MYOGのSKI HIKING」。

BCクロカンによるSKI HIKINGは、僕たちTRAILSとしては、スキーというジャンルのアクティビティというよりは、ハイキングの延長としての遊びだと捉えている。

だからギア選びにおいても、スキー専用のものではなく原則ハイキングで使用しているギアを選んでいる。また、UL (ウルトラライト) ハイキングをベースにしながら、TRAILS INNOVATION GARAGEで日々制作しているMYOGも組み合わせたギアリストとなっている。

歩く&滑る:SKI HIKING GEAR


[バックパック] TRAILS / LONG DISTANCE HIKER

BCクロカンはスキー板を担ぐシチュエーションもあるし、厳冬期における雪中キャンプをするため、当然ながら無雪期のハイキングと比べると、かなりギアが増える。

それを考慮するとある程度の容量、耐久性、快適性が必要だった。もちろん、快適性を求めつつも軽量性を犠牲にはしたくない。

僕たちにとってはハイキングの延長としてのBCクロカンであるから、スキーバッグではなくハイキング用のバックパックでありたい。

そこでチョイスしたバックバックが、TRAILSのULバックパック『LONG DISTANCE HIKER』だった。容量55Lで重量は500g。メインのファブリックは、超軽量でありながら強度と耐久性と防水性を兼ね備えた最先端の生地『ULTRA200』。

このバックパックがBCクロカン・トリップでどのくらい通用するのか。実験的なテストも含めていたが、結果は満足のいくものだった。

雪上での防水性や耐久性は充分。また拡張性という観点では、オプションのアイスアックスループを用いてアックスも装着でき、スノーショベルも『ULTRA STRETCH』を用いた強度の強いフロントポケットにより、収納力も強度も抜群であった。

また、実験的にバックパックにスキー板を取り付けて歩いたテストでは、重量がかなり増えたにもかかわらず、しっかり腰荷重ができていて快適そのものだった。


[スキー板] MADSHUS / EON 62 165cm, [ビンディング] Rottefella / BC Auto, [キャップ] patagonia / Brodeo Beanie, [ベースレイヤー (Jacket)] Teton Bros. / MOB Wool Hoody, [ベースレイヤー (Pants)] Teton Bros. / MOB Wool Pants, [ミドルレイヤー] patagonia / Micro Puff Hoody, [レインジャケット] westcomb / Switch AK Anorak, [レインパンツ] patagonia / Torrentshell Pants, [ゲイター] MYOG / DCFゲイター, [ソックス] Darn Tough / Hiker Micro Crew Midweight with Cushion, Darn Tough / Hiker 1/4 Midweight with Cushion, [アンダーウェア] ACLIMA / WarmWool Boxer Shorts, [ブーツ] CRISPI / NORDLAND HOOK GTX BC, [トレッキングポール] Black Diamond / Vapor Carbon Ski Poles, [サングラス] FLOAT / RIGEL, [インナーグローブ] ibex / GLOVE LINER, [アウターグローブ] MYOG / DCFミトン, [スタッフサック] MYOG / DCF Stuff suck M

ウェアに関しては、今回のフィールドは多少のアップダウンはあれど、標高が低い比較的フラットなところがメイン。

そのため、停滞時間が少なく行動時間が多いことを踏まえ、保温力がありながらも蒸れにくいウェアリングを意識した。ベースレイヤーには今まで冬季の使用でも速乾性・汗冷え対策と保温性のバランスで信頼感のあったTeton Bros.のMOB Woolに、インサレーションには濡れに強い化繊で、軽量ながら保温性の高いpatagoniaのMicro Puff Hoodyを組み合わせた。

また、超軽量であることや、自分にとっての必要十分を考えて、MYOG (Make Your Own Gear) も積極的に取り入れ、ゲイターはDCFゲイター、アウターグローブはDCFミトンを自作した。

寝る:SLEEPING GEAR


[シェルター] LOCUS GEAR / Khufu Sil

シェルターは、「LOCUS GEAR / Khufu Sil」。470gと超軽量なワンポールフロアレスシェルター。居住性が高く、冬用のギアや濡れたギアなどを雑に置いておけるので、SKI HIKINGにおいても使い勝手に優れている。

フロアレスゆえ設営時に地面との隙間は生まれるが、スノーショベルを用いてその隙間を雪で覆ってしまえば密閉性が高まるので、まったく問題がない。むしろフロアレスのおかげで撤収もラク (フロアが濡れたり、雪がついたりすることがない) であることが、大きなメリットでもある。


[スリーピングバッグ] TRAILS / BUDDY BAG, [スリーピングマット] KLYMIT / Insulated Static V, [スリーピングマット] MYOG / DCF + Sil Bivy, [インサレーション (Jacket)] NUNATAK / Skaha UL Down Sweater, [インサレーション (Pants)] NUNATAK / Kobuk Down Knickers, [インサレーション (Boots)] MONTANE / Fireball Footie, [スタッフサック] MYOG / DCF Stuff suck S, M, L, [ペグ] MYOG / Snow Anchor (4 piece)

寝袋は、2人用ULスリーピングバッグ「TRAILS / BUDDY BAG」を、半分に折り畳んで二重にし、ビビィに入れるという、2人用寝袋を1人用として使用するギミックを実践した。実はこの寝袋は、最初からこのように使える仕様になっているのだ。

この寝袋のスペックは、快適温度が0〜10℃、限界温度が−6℃、重量は約860g。しかし折り畳んだところのダウン量が倍になっているので、今回朝方に-12℃くらいまで冷え込んだが、まったく問題なく熟睡することができた。

組み合わせたスリーピングマットは、「KLYMIT / Insulated Static V」。プリマロフトの化繊綿入りの4シーズン用マットながら、重量は399gと軽量。

さらに、他ブランドの軽量モデルの幅は50〜55cmがほとんどだが、このマットは58cmと幅広。安心感が高く、睡眠中にどんな体勢になっても寝心地が損なわれることがなかった。

食べる:COOKING GEAR


[クッカー] (Unknown) / GREASE POT, [カトラリー] Tritensil / Spoon & Folk / Knife, [ストーブ] Shara Project / Shara Ex Stove, [ストーブ] TOAKS / Titanium Windscreen, [リフター] Trangia / Mini Handle, [ウォーターキャリー] Platypus / platy 2L, [ボトル] THERMOS / 真空断熱チタンボトル, [ライター] BIC / Regular Lighter, [フードバッグ] MYOG / DCF Food Bag, [コジー] BIG SKY / Insulated Pouch

クッカーは、アメリカのULハイカーにとってはお馴染みの「GREASE POT」。重量99gで容量900mlと、この大きさにおいては超軽量だ。

一人用で考えれば、400〜500mlの容量でもまったく問題ない。ただ、今回のように1泊2日という短い期間、かつ仲間と行くことを考えると、この大きめのサイズ感のほうが食事の楽しみの幅が広がるはずだ。

今回は別途大きな鍋を持って行ったが、もしそれがなかったとしても、この「GREASE POT」であれば複数回に分けて鍋を楽しむことができただろう。

ストーブは、冬用アルコールストーブ「Shara Project / Shara Ex Stove」。ガスストーブのほうがラクだし火力も強いけれど、今回の1泊2日の行程だと夜と翌朝しかストーブを使わないこともあって、満タンのガス缶は必要ない。燃料を使うぶんだけ携行するためにも、冬用のアルストをチョイスした。

ウォーターストレージは、「Platypus / platy 2L」をあえて選んだ。たった36gと超軽量で耐久性があることはもちろんだが、最大のポイントは耐熱温度が90℃であること (上限が50〜60℃のモデルも結構多い)。今回のような厳冬期でのテント泊の場合、ウォーターストレージにお湯を入れて湯たんぽ代わりにすることもある。そのため、耐熱温度の高さは重要なファクターだった。

エマージェンシー・その他:EMERGENCY GEAR & OTEHRS


[ファーストエイド & エマージェンシーキット] — / 薬, 安全ピン, 針, テーピング, 爪切り, ホイッスル, ファイアースターター等, [ヘッドランプ] Petzl / e+LITE, [モバイルバッテリー] Anker / powercore 10000, [スノーショベル] MIZO / Snow Shovel, [アイスアックス] CAMP / CORSA, [ソリ] ALPACKA RAFT / Adrenaline Sled, [トイレセット] MIZO / MOG (24g), トイレットペーパー

基本的には、いつもの国内におけるハイキングの時と変わらないエマージェンシーギアを用意した。ただ、絶対に忘れないように念入りにチェックしたのが、ファイヤースターターである。今回のような厳冬期だと、ライターがつかない可能性もあるので欠かすことはできない。

今回、追加で持っていったのが、「ALPACKA RAFT / Adrenaline Sled」。日本語にすると「アドレナリン・ソリ」という、おバカでクレイジーな臭いのするギア。パックラフトメーカーのアルパカラフトから発売されたばかりの新製品で、早く試してみたくて今回持参した。

これは正直、遊びで持って行ったのだが、大正解だった。その名の通り、まさにアドレナリンが出るソリで、3人とも夢中になって滑りまくった。

今回は新雪が積もってしまったこともあり、BCクロカンにはやや不向きなタイミングでもあった。でも、このアドレナリン・ソリのおかげで、その新雪を存分に楽しむことができた。今回に限っては、間違いなくこのソリはマストアイテムだった。


TRAILS Crew3人によるBCクロカン・トリップは、最高に楽しかった。さて次はどこに行こう。

計画編、トリップ編 (その1・その2)、ギア編 (その1・その2)と全5回にわたってお届けした、『トニー、サニー、ノブのBCクロカン・トリップ あまとみトレイル2DAYS』いかがだっただろうか?

ハイキングを拡張してくれる遊びとしてのBCクロカンは、まだまだ可能性を秘めている。この5回の連載は、これからBCクロカンを始めてみたいハイカーにも、参考になる記事だったはず。

僕たちも引き続きBCクロカンを楽しんでいきたいと考えているので、今後の記事にもご注目ください。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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