TRAILS REPORT

TRAIL FOOD #08 | ULハイキング × トレイルフード by 大越智哉

2024.03.22
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話・写真:大越智哉 構成:TRAILS

What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキングやハンモック・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。

* * *

ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。

そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。

第8回目の今回は、TRAILSも参画し、レポート記事も掲載してきたローカルハイキングイベント「POP HIKE CHIBA」(詳しくはコチラ) でもお馴染み、大越智哉 (おおこし ともや) a.k.a コッシーさんだ。

ULハイキング × トレイルフード


今回は、大越智哉さん (コッシーさん) が、ULハイキングにおけるトレイルフードを紹介してくれる。

今回トレイルフードを紹介してくれるのは、コッシーさんこと大越智哉 (おおこし ともや) さん。コッシーさんは、Great Cossy Mountain (KING OF MELLOW HIKING GEARを提唱するハイキングギアメーカー) を主宰するハイカーだ。

高校時代は山岳部に所属し、2007〜2008年頃からUL (ウルトラライト) に傾倒。工業大学で建築学を専攻した知識と経験を活かし、ハイキングギアのMYOG (MAKE YOR OWN GEAR) を手がけるようになる。

そんなコッシーさんはULハイキングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。

・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード

第1位:カップヌードルカレー味と塩にぎり


お気に入りは、日清のカップヌードルカレー味と塩にぎりの組み合わせ。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

日帰りハイクのランチや連泊のハイキングでも初日に食すことが多い。

カップヌードルはBIGサイズではなくレギュラーサイズであることがポイント。火器類をミニマムにそぎ落とした場合、BIGサイズ分のお湯を沸かすのは意外と大変だからだ。

必要湯量は、レギューサイズが300ml、BIGサイズが約400ml。たかが100mlされど100ml。300mlなら300mlのマグでもギリギリ対応できるし、アルコールストーブの燃料もより少なくできる。

ヌードルを食した後、塩にぎりを放り込んでカレーおじや風に楽しんでもいいが温度が下がってしまうというデメリットが大きい。

ここはひとつ、カレースープと純粋なおにぎりとして楽しみたい。それなら塩にぎりじゃなくてもいいのでは? という意見が出るだろうが、舌や喉ではあくまでカレーライスを味わいたいのだ。

■ 作り方

お湯を沸かして注ぎ、3分待つ。日帰りハイクなどでは、あらかじめサーモスに入れておいたお湯で十分。

第2位:フライパンカレー


材料は、レトルトカレーと尾西のアルファ米 (白米) のみ。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

フライパンカレーといってもフライパンを使った手の込んだ料理でもなんでもなく、ただ、レトルトカレーをフライパンで直接温めるだけの食事である。

僕が普段使う火器類やクッカーではカレーの湯せんはほぼ不可能である。

そこでフライパンの登場となるが、それでは結局重量が嵩んで本末転倒ではないかという意見もあるだろう。しかし、クッカーを大きなサイズに変更するよりも、フライパンが一つあったほうが調理の幅が格段に広がる。

最近は、牛丼や中華丼、麻婆豆腐などさまざまな種類が存在する。そして、フライパンはとても便利な食器としての機能も有する。

何もガマンすることがULではないのである。多少重量が増えてもフライパンを用いることで、フライパンカレーはもちろんフライパン牛丼やフライパン麻婆丼なども味わえるとなれば、最小限の重量増で最大の効果が手に入るのだ。

■ 作り方

カレーとは別途、白米も用意する。まずはお湯を沸かしてアルファ米に注ぐ。アルファ米ができあがるタイミングを見てフライパンでレトルトカレーを温める。白米をフライパンに投入しカレーライスとして食す。

第3位:ドライカレーとコンソメスープ


尾西のアルファ米ドライカレー味とコンソメスープ。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

長年登山 (ハイキング) を続けている僕にとって尾西のアルファ米は画期的である。好きな味は、ドライカレーとチキンライスで迷うところであるが、今回はドライカレーを紹介させていただく。

アルファ米は不味くて食べられないという意見を少なからず耳にするが、アルファ米はおろか、無洗米すら存在せず、研がない生米をオプティマスの灯油ストーブで朝も夜も炊いていた世代からすれば、アルファ米は、便利で美味しくて、トータルで考えればとてもコスパの高い食事である。

ちなみに、この尾西のドライカレーは内容量が100gで、必要湯量は160ml、できあがり量は260gと、間違いなくULな食事と言える。

スープはコンソメスープが一番だ。理由は特にない。好きだからだ。あえて理由を絞り出すとすれば、飲んだ後の食器の片づけがとても楽なこと。からのカップに少量のお湯を注ぎスプーンでかき混ぜて飲んでしまえばいい。ポタージュ系のスープではこうはいかない。

■ 作り方

お湯を沸かし、注いで3分待つ。お湯を沸かしアルファ米に注ぐ。15分待つ。タイミングを見計らって再度お湯を沸かしコンソメスープに注ぐ。

記憶に残るトレイルフード:トルティーヤとピーナッツバター


オールドエルパソのトルティーヤと、スキッピーのピーナッツバター。

■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント

海外のハイカーが美味しそうに食しているのをネットで見て、予行練習無しに4泊5日のハイキングの全昼食に計画採用したことがある。結果、不味くて、不味くて絶望的な5日間であった。

よくよく考えてみたら、そもそも自分はトルティーヤもピーナッツバターも大して好きではなかったのだ。見た目でちょっと苦手を感じる食べ物というものは存在するけれど、基本的に好き嫌いというものは、一度は食べてみないとわからない。そういう意味でいい経験をしたと自分を慰めることも可能だが、そんな言葉で片づけるには4泊5日は長すぎた。

僕は基本的に喜びより絶望の方が記憶に残る。作家・村上春樹はその処女作『風の歌を聴け』の冒頭でこのように述べている。

「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないように。」

新人作家の前置きとしてこれほど俊逸なものはないだろう。僕もこれにあやかりこう言いたい。

「完璧な食事などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないように。」

しかし、さらに付け加えたい。「完璧とまではいかないけれど、かなり絶望的な食事は存在する。」と。

最後に一言。カレー大好き。

■ 作り方

開封してそのまま食べられる市販のトルティーヤに、ピーナツバターを塗って食べる。


コッシーさんが愛用しているULギアの数々。

コッシーさんのULハイキングにおけるトレイルフードはいかがだっただろうか?

軽量化のために無理やガマンをするのではなく、トレイルフードも含めてULを楽しんでいる姿、その楽しみ方の工夫の仕方が、いかにもコッシーさんらしかった。

また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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