TRAIL FOOD #04 | フィッシング × トレイルフード by 寺澤英明
話・写真:寺澤英明 構成:TRAILS
What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキングやハンモック・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。
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ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。
そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。
第4回目の今回は、日本のULシーンに大きな影響を与えた『山より道具』というブログでもおなじみの、寺澤英明 (てらさわ ひであき) さん (以下、テラさん) だ。
フィッシング × トレイルフード
テラさんと言えば、ゼロ年代の黎明期において、UL (ウルトラライト) ハイキングに関心があったハイカーたちから熱狂的な支持があった『山より道具』(※1) というブログで知っている人も多いだろう。あるいはこのブログをベースに書籍化された『ウルトラライトハイキングギア』(山と溪谷社) を手に取ったことがあるという人もいるかもしれない。
TRAILSの『土屋智哉のMeet The Hikers! #3(後編) – ゲスト:寺澤英明さん』でもかつて語ってくれているが、テラさんは2007年にジョン・ミューア・トレイル (JMT) をセクションハイキングした際に釣りを経験し、その後BPL (※2) のフォーラムで『テンカラはULだ』と盛り上がるハイカーたちを目にしてテンカラを始め、以来テンカラでの源流釣りにどっぷりハマっている。
そんなテラさんは、実際のところ、源流釣りで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。
・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード
第1位:そうめん
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
そうめんは、夏場の昼飯の定番。乾麺は、軽くて夏場でも悪くならないのが利点だ。源流釣りでは清らかな冷たい水が豊富に流れているので、これを利用しない手はない。
渓泊では、朝に飯を炊いて、おかずも調理して昼間の弁当を拵 (こしら) えて、というのはとても面倒。昼間は行動中でもあるので手早く済ませたい。
真夏のシャリバテ防止に糖分と塩分も補給したいならば、そうめんとめんつゆを啜るのが理にかなっている。夏空を背負って冷たく締まったそうめんを啜るのは爽快だ。
行動中はガスストーブで湯を沸かすのだが、大きな鍋は持てないので、2回くらいに分けて作ることになる。燃料と時間の節約のため、お湯の再利用を軸とした上手な茹で方は模索が続いている。
■ 作り方
沢の水で湯を沸かし、そうめんを茹で、バグネットに入れて流水でしめる。源流部の沢の水は夏でも冷たいので、充分にシャキシャキのそうめんに仕上がる。
汁は、粉末スープを浄水器に通した沢の水で希釈する。薬味として、ネギやミョウガがあれば最高。
第2位:Johnsonvilleソーセージ
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
焚き火で炙って、育てた結果が旨さに直結する食材として、岩魚の塩焼きに代えて定番化、採用している。焚き火のはしに寝転がりながら、おいしくなぁれと念じてお世話しながら焼くのが旨さの秘訣。
私が行なう源流釣りに渓泊は欠かせない。以前は釣った岩魚を捌いて、焼き物、刺身、天ぷらなどと岩魚三昧をしていたのだが、抜いて食っていれば確実に個体数が減ることを体感し、それを機に持続可能な釣りの一助にとこれを採用した。
捌く手間が不要で、結局はどう焼いても旨いのだが、私は肉汁を残しつつ、皮をパリッと香ばしく焼くことを目指している。
ちなみにJohnsonville (ジョンソンヴィル) のソーセージは、オリジナルスモークの他にガーリックやチェダーチーズなどバリエーションがあるのも良い。真空パックされており、ジッパーが付いていて開封後も扱いやすい。
■ 作り方
串に刺して焚火でこんがり焼く。煮物の具として投入するのも良し。
第3位:アマノフーズのフリーズドライカレー
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
渓泊の基本として、焚き木と水は豊富にあるから、当然夜は飯を炊く。少し修練すれば、炊きたての飯は旨いに決まっている。
で、渓泊の朝は早い。起きてから再び焚き火を熾してそこから飯を炊くのは面倒、というわけで前の晩の飯の残りを食うのだが、飯はほぼガチガチに硬くなっている。その硬い飯に、しゃばしゃばのカレーをぶっかけて手早く済ませている。
夜に作っておいて一晩置くと、別途入れた香辛料や肉代用のソーセージも味が馴染み旨い。シャリバテにならないため、朝からガッツリと胃の腑 (ふ) に流し込むにはカレーが良い。
アマノフーズのフリーズドライカレーは、大きめの野菜が入っていて食感が良いのが気に入っている。
■ 作り方
煮込むと水分が飛ぶのと、硬い飯にかけるので、多めのお湯で戻すが基本。具として野菜や香辛料、ソーセージを入れて煮込んで一晩置いておく。
野菜にはパプリカなど、軽くて嵩 (かさ) があって歯ごたえの良い物。香辛料にはGABANのガラムマサラやあらびきガーリックが定番。
記憶に残るトレイルフード:岩魚 (イワナ)
■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント
ULでのロングトレイルで、持続可能なタンパク源として川で魚を釣って補給するというアイディアは故・加藤則芳さんの著述で覚醒した。そして2007年に休暇を捻出してのJMTセクションハイキングにおいて、釣りのパーミッションも買って、それを実践することにした。
実は釣りは初めてであり、全然釣れなかったのだが、諦めた時の変な一投に宝石のような斑点のあるブルックトラウトが掛かってくれた。その時は熊に襲われないようにと、とにかく急いで焼いて食べてしまった記憶がある。
思えばそれが、今に続くテンカラ竿を担いで源流に出没する原点。今は食わないが、いざとなれば手に入れて食料とする自信はついた。
■ 作り方
この時は塩焼きにしたが、刺身、なめろう、天ぷら、皮と内臓のソテーなど、どんな調理法でも旨い。
以前は、釣った岩魚を捌いて食べていたが、確実に個体数が減ることを体感してから、持続可能な釣りをするために釣った魚を食べなくなったというテラさん。
なので、今回のテンカラ源流釣りのトレイルフードも、魚の料理は出てこない。
登場するのは、焚き火や、渓流の豊富な水を活かした、源流釣りならではのフードだ。乾麺やドライフードなど、軽量なフードをベースにしている点や、「バグネットでそうめんを冷水にさらす」といったULのTIPSが含まれるのもテラさんらしい。
また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!
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