TRIP REPORT

IN THE TRAIL TODAY #16|Hexatrekの西ピレネーを歩く、2週間のセクションハイキング

2024.05.29
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話・写真:ダイスケ 取材・構成:TRAILS

What’s IN THE TRAIL TODAY / TRAILSは、トレイルで遊ぶことに魅せられたピュアなトレイルズたちの日常の中で発生した、 “些細でリアルなトレイルカルチャー” を発信するハンドメイドのコミュニケーションツール『ZINE – IN THE TRAIL TODAY』をスタートさせました。そのZINEにまつわるストーリーを『IN THE TRAIL TODAY』という連載でお届けしていきます。

* * *

長旅をあきらめていた人にも、ロング・ディスタンス・ハイキングの世界への扉は開かれています。セクション・ハイキングという旅の視点を得ることによって、たくさんの人にロング・ディスタンス・ハイキングの旅に出かけてほしい。そんな強い想いから生まれたZINE#02『SECTION HIKING』と、ZINE#03『SECTION HIKING 2』。

今回紹介するトレイルは、フランスのヘキサトレック (Hexatrek ※1)。

Hexatrekはフランスの山岳地帯から田舎町を主に通る3,034kmのトレイル。2022年にオフィシャルにオープンしたばかりで、まだ情報が少なく未知のところも多いトレイル。

2022年にPCT (※2)をスルーハイキングをしたダイスケ a.k.a. Beyoncé (ビヨンセ) が、次に歩くトレイルとして選んだのが、このHexatrekでした。

そんなダイスケくんが紹介してくれるのは、Hexatrekのピレネー山脈 (STAGE6)にある約230kmのセクション。Hexatrekらしい山岳風景から、フランスの田舎の村まで楽しめるセクションだそうです。

ちなみにダイスケくんは日本人初のHexatrekのスルーハイカーで、その貴重なトレイルの情報を2024年の『LONG DISTANCE HIKERS DAY』 (※3) でも語ってくれましたが、今回の記事ではその中でもおすすめのセクションを紹介してくれます。

※1 Hexatrek:フランスを中心にアルプスやピレネーの高山地帯、ヨーロッパの田舎町などを通る3,034kmのトレイル。2022年にオフィシャルに開通したばかりで、世界でも日本でもまだ情報が少ないトレイル。スルーハイキングに要する期間は3~5ヶ月。

※2 PCT:Pacific Crest Trail (パシフィック・クレスト・トレイル)。メキシコ国境からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を経てカナダ国境まで、アメリカ西海岸を縦断する2,650mile (4,265㎞) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。

※3 LONG DISTANCE HIKERS DAY:日本のロング・ディスタンス・ハイキングのカルチャーを、ハイカー自らの手でつくっていく。そんな思いで2016年にTRAILSとHighland Designsで立ち上げたイベント。


ダイスケくんは、2022年6月から9月にかけて、108日間でHexatrekをスルーハイキングした。

情報が少ないチャレンジングなトレイルに行ってみたかった。


Hexatrekの景色。

—— 2022年にPCTをスルーハイキングしましたが、次にHexatrekを選んだのはなぜですか?

情報が少ないトレイルだからですね。PCTの後に、どこか面白いトレイルはないかなと探しているときに、たまたまSNSでHexatrekを見つけたんです。

2022年にできたばかりのトレイルだし、これは誰も知らないだろう!と思って。フランスのロングトレイルってどんな感じなんだろう?という未知への興味もあって、「これだ!」と決めました。

またPCTの次にまたアメリカのトレイルを歩いてもいいかなと思っていたんですけど、もっと情報が少なくて、自分にとって知らないところがたくさんあるトレイルの方が、チャレンジングだし、冒険的な旅ができるんじゃないかと思ったんです。


Hexatrekではヨーロッパの田舎町やそこにある歴史も楽しめる。

—— Hexatrekが候補に挙がってから、他のトレイルと悩んだりはしなかったですか?

Hexatrekの名前を見つけた後に、ホームページに載っていたアルプスやピレネーの山々の写真にも惹かれて、もうぱっと決めてしまいましたね。

決めた3日後くらいには、友達に「フランスのHexatrekってとこに行くことにしたわ」って言いふらしてました。未知なところに惹かれたので、どんなところ?って友達に聞かれても「オレもよくわからん」って感じでした (笑)。

アメリカのトレイルと比べても、地形の特徴や、町や食とかの文化も全然違うのも楽しみでした。PCTのようなトレイルエンジェル (※5) やトレイルマジック (※6) があるかどうかもわからないとか、知らないことだらけ。だからこそチャレンジングな気持ちが掻き立てられました。

※5 トレイルエンジェル:ハイカーをボランティアでサポートしてくれる人のこと。たとえば、自宅やガレージを開放して宿泊スペースや食事を提供してくれたり、トレイルヘッドまでの送迎をしてくれたりする。

※6 トレイルマジック:トレイルエンジェルをはじめとした人たちが、ハイカーのためにトレイル上に用意してくれる食料や飲み物のこと。

アルプスやピレネーの山々からワイン畑が広がるフランスの田舎町まで楽しめる。


PCTでは見なかった、Hexatrekならではの山の景色。

—— Hexatrekをスルーハイキングしてみて、どうでしたか?

高山から低山まであって、またフランスの田舎にあるワイン畑のなかを歩いたり、一部をカヤックで進むセクションもあったり、バリエーションが豊富なところがHexatrekの魅力だと思います。

舗装路を歩くところはPCTなどと比べると多く、その点はちょっと自分はちょっと苦手でした・・。一方で、Hexatrekでは4つの世界遺産にも立ち寄ったのですが、自然だけでなくこういった歴史を楽しめるところも面白いです。


山のなかでもヨーロッパの文化を随所に感じる。

—— 情報が少ないトレイルですが、地図アプリもあるのですか?また町での補給や宿泊の情報はどうしていましたか?

トレイルの地図アプリはHexatrekのオフィシャルのものがあります。歩くときは主にその地図アプリを使っていました。

町の近くに入ると、トレイルの地図アプリでは情報が少ないことも多かったので、そのときはGoogleマップを使っていました。それでスーパーマーケットやキャンプ場の、営業時間とか詳細な情報を確認していました。ちなみにバッテリーを充電できる場所を探すのは苦労しました。


町に補給に下りたら、パン屋には必ず立ち寄っていた。

町でのは補給では、チーズとサラミをよく買ってました。安くて、種類もたくさんあるんですよ。Hexatrekの周りでは、エナジーバーを売っているところがほとんどないので、チーズやサラミはタンパク質を補給するための大事な食材でした。あとアメリカだとインスタントラーメンを買うことが多かったですが、Hexatrekではパスタがメインでした。

町では、フランスのおいしいパンやワインを味わえるのもよかったですね。

ほとんど人に会わずに歩いていた。


ピレネーのセクションの景色。

—— Hexatrekのロング・ディスタンス・ハイキングでは、印象的な人との出会いはありましたか?

歩いているハイカーはかなり少ないので、ほとんど人とは会いませんでした。そんななか、旅の後半でしたがチェコ人のハイカーと出会ったんです。

彼と出会うまではトレイルのことを共有する相手もいませんでした。彼と一緒に歩いたときに、そこまで歩いてきたHexatrekのことを、ようやく他の誰かと話して、振り返ることができたんです。彼と話ができて、自分の気持ちがとても明るくなったのをよく覚えています。


Hexatrekで一緒に歩いた数少ないハイカーの一人。チェコ人のハイカー。

—— 印象的な風景や場所でいうと、どこになりますか?

やはり最後に3,034kmをスルーハイキングしたゴールのことは、とても印象に残っています。無事にゴールできたこともそうですし、ゴール地点は海水浴場にもなっている場所なので、それまで全然人に会わなかったのに、ゴールではたくさん人がいたのも印象的でした。

途中でも景色とかで印象的だったところはいくつもあるのですが、僕はフランス語ができないので、その場所の名前を覚えていないところが多いんですよね (笑)。

トレイルの魅力を凝縮して楽しめる西ピレネーのセクション。


西ピレネー・セクション (STAGE6) がオススメのセクション。

—— 今回選んでくれたセクションは、Hexatrekのなかでもどんなところなんですか?

ピレネー山脈のセクションです。高山帯の山岳景色が楽しめるセクションとしては、アルプスとピレネーがあるのですが、僕はピレネー山脈の方が好きでした。アルプスは人が結構いたのですが、僕が行ったときはピレネーは全然人がいなかったので、自然のなかで解放感を思う存分に味わえました。

紹介するセクションは、そのピレネーの山々も楽しめるし、山から下りたら村も楽しめます。それがひっきりなしにあるセクションなので、汗をかいて山を楽しんで、その後に村でおいしいものも食べられる。そういった楽しみを凝縮した旅ができます。

—— 最後に、ダイスケくんが思うセクションハイキングの魅力を教えてください。

先ほどもお話をしましたが、トレイルの特徴を凝縮して楽しめるところですね。

そういった観点でも、今回ご紹介する西ピレネーのセクションハイキングはオススメです。

他にもこのエリアは、オルタナティブルートもたくさん設定されているので、自分の好みやレベル感に合わせて、ルートを選択できるところもよいです。


凝縮してHexatrekの魅力を堪能できる西ピレネー・セクション (STAGE6) 。

TRIP INFORMATION


Hexatrekの西ピレネーのセクション (STAGE6)。

■トレイル名
ヘキサトレック (Hexatrek)
■セクション名
リュス=サン=ソヴァール~サン=ジャン=ピエ=ド=ポールリュス=サン=ソヴァール~サン=ジャン=ピエ=ド=ポール
■歩く距離・日数
230km・10日
■旅全体の日数
14日
■WEBサイト
Hexatrek(https://www.hexatrek.com/en)
■ベストシーズン
6月~9月
■パーミッション / ブッキング
不要
■予算目安
20万円程度 (総額)
[内訳]
エア代:20万円程度
宿:一泊1万円前後 (7~8月のハイシーズンは観光客も多いので高め。)
現地交通費:4万円
その他(食費など): 5万円程度
■アクセス方法
[空港] パリ=シャルル・ド・ゴール空港:東京から直行便で最短約15時間
[空港から近くの町へ] パリ=シャルル・ド・ゴール空港からルルドまで列車で約6時間
[IN:町からトレイルへ] ルルドからからタクシーに乗りリュス=サン=ソヴァールへ
[OUT:トレイルから町へ] ゴール地点がサン=ジャン=ピエ=ド=ポーの町 (カミーノ・デ・サンティアゴのスタート地点)
■宿泊(町)
宿、キャンプ場
■宿泊(トレイル)
トレイル沿いのキャンプ適地、山小屋。
■補給方法(水、食料、燃料など)
町にスーパーマーケット等があり、食料の補給には不自由しない。燃料はパリなど大きな町で準備しておくとよい。水は浄水すればトレイル上で補給可能。

ZINE#02 SECTION HIKING

アメリカの3大ロングトレイルをはじめ、ニュージーランド、スペイン、北欧ラップランド、ヒマラヤなど、世界中のロングトレイルを紹介。いずれのトレイルも1〜2週間のセクションハイキングをするという方法にフォーカスし、上記『TRIP INFORMATION』も掲載している。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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