TRAIL FOOD #10 | ロング・ディスタンンス・ハイキング × トレイルフード by 関根竜之介
話・写真:関根竜之介 構成:TRAILS
What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキングやハンモック・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。
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ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。
そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。
第10回目の今回は、ロング・ディスタンス・ハイキングの旅をしている関根竜之介くん (トレイルネーム:Dragon)。現在、アメリカのCDT (※1) を歩いている最中のハイカーで、フィッシングをしながらロング・ディスタンス・ハイキングを楽しんでいる。
ロング・ディスタンス・ハイキング × トレイルフード
今回トレイルフードを紹介してくれるのは、関根竜之介くん (トレイルネーム:Dragon)。 TRAILSとHighland Designs主催のLONG DISTANCE HIKERS DAY (※2) にも参加してくれているハイカーだ。
関根くんは、フィッシング (主にルアーフィッシング) を楽しみながら、ロング・ロング・ディスタンス・ハイキングをしている。2019年にはPCT (※3) をスルーハイキング。そして現在は、CDTを歩いている最中だ。
そんな関根くんはロング・ディスタンス・ハイキングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。
・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード
第1位:インスタントラーメン (コールドソーク)
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
今、僕が歩いているアメリカのCDTでは、水で戻すだけのコールドソーク (※4) のスタイルで、インスタントラーメンを食べることが多いです。
朝起きてから仕込んでおけば、少し歩いたタイミングで食べることができる。また釣りをしてる間に、水を入れて放置しておけばできあがる。その手軽さと、何かをしながら (歩きながら、釣りをしながら)、勝手にできあがっている便利さが、とてもお気に入りです。
液体が漏れない密閉できるフタが付いた容器・クッカー (自分はVARGOのBOT700) を使うので、洗う時もキャンプ場でハンドソープと水を入れて、上下に振れば洗えるというメンテナンス性の良さもいいです。CDTでは積極的にプロテインを摂取してるので、容器がそのままシェイカーになるのも、かなり助かってます。
やっぱり温かいものが食べたくなる時がありますが、コールドソークでも、ちょっと芯が残るくらいにふやかして、最後に容器の底に溜まってる濃いスープを飲み干した時は、疲れた体に塩分が染み渡っておいしいです。
普段バーナーを使ってるハイカーでも、次の町までガス缶が微妙に足りるか心配になった時にVARGOのBOT 700みたいなクッカーさえあれば、トレイル上でガスが切れてもラーメンを食べられます。また、きちんとガス缶を使い切ってから新しいガス缶を買うことができるのも、コールドソークのメリットです。
ちなみにアメリカを歩いているハイカーは、「Talenti」のアイスクリームの容器や、ピーナッツバターの容器を好んで使っています。いずれもスクリューロックでシール処理されてる (密閉できる) 容器です。
コールドソークは、火器を使った調理で行なう熱殺菌の工程はないので、衛生面での懸念がありましたが、今のところ自分は問題は起きていません (ただし自己責任です)。また低温調理なので油のこびり付きとか気にはなっていましたが、それも自分はほとんど感じられません。
■ 作り方
スクリュー式の密閉できるフタが付いた容器 (自分はVARGOのBOT 700を使用) に、麺と粉末スープを入れ、水 (自分は目安の分量は、麺の最上部よりも5mm位下) を加えて、フタを閉めて30分放置しておいたらできあがり。
第2位:ツナ
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
「クレイジー・ツナ・ラバー (Crazy Tuna Lover)」というトレイルネームが付けられそうなったほど、ラーメンに次いでツナばかり食べています。
ロング・ディスタンス・ハイキングでは、手軽さが大事になります。パウチタイプのツナは、袋から出してさっとラーメンとかに加えるだけで食べられるのがよいですね。
ツナはプロテイン (タンパク質) を手軽に摂取できるし、アメリカのスーパーで簡単に入手できるのも便利です。
あと、トレイルをずっと歩いていると、いつも同じ味のラーメンだと飽きてしまうので、気軽に味を変えることができるのが気に入ってます。僕がよく買う「StarKist」のツナのパウチは、いろんな味のものが売ってます。
自分は主に辛い物をチョイスしてます。タイチリ、ハラペーニョ、スリラチャ、バッファロースタイルあたりが、ラーメンとの組み合わせがいいので、よく食べます。
他の味も一応買うのですが、結局、トレイル上でフードバックから最初に取り出してしまうのは、辛い味のツナなんです。
■ 作り方
ラーメンの味を変えるためラーメンの中に加えたり、トルティーヤに包んだりして食べる。
第3位:バータイプのスナック
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
余計な動作を最小限にして食べられるので、バータイプのスナックもよく食べます。
「行動食」という言葉通り、ハイキングしながらでも、フィッシングしながらでも、食べられる。他の食料だと、わざわざバックパックを降ろしてとか、クッカーを用意したりとか、また袋を開封してからお湯や水を入れてとか、そういった動作が必要になってしまいます。
長いトレイルを毎日ハイキングしてると、そういったちょっとした動作もだんだん煩わしくなってくるんです。省ける動作は、できるだけ省きたくなってきます。それで1日の大半のフードを、バータイプのスナックだけにして歩いていた時期もありました。あと、数が把握しやすいところもお気に入りです。
僕は特に「スニッカーズ」と「LUNA」のレモン味、「NATURE’s BAKERY」あたりを好んで食べてます。
あと単純にこの手のバーは、おいしいですよね。1個でやめないといけないのに、ついつい2個目にまで手を伸ばしてしまいます・・。
■ 作り方
袋から取り出してそのまま食べるだけ。
記憶に残るトレイルフード:ピザ
■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント
2019年、PCTを歩き始めて間もない頃。トレイルから降りて、カリフォルニアのライトウッドの町に着いたときのことです。
泊まる場所を探すために、この町のアウトドアショップで、トレイルエンジェル (※2) のリストを見せてもらいました。しかし自分の英語力では電話での対応が不安だったので、アウトドアショップの店員に電話をしてもらいました。
そのときに紹介してもらったトレイルエンジェルのお宅が、とても居心地がよかったんです。変に干渉せずに、お互い口数も少ない。でも、とてもいい距離感で接してくれたんです。飼ってる犬も人懐っこくて、とても癒されました。
このライトウッドの町には、ピザが有名なお店がありました。この頃は変に食い意地が張っていたのか、このお店に入る時はハンバーガーが食べたくて、いったんハンバーガーを食べました。でもそれはちょっとイマイチだったので、ハンバーガーを食べ終わってすぐに、続けてピザを頼んでしまいました。
結果、ピザはそこで食べきれずに、ジップロックに入れてトレイル上に持って行くことになります。
このピザの写真を見返すと、トレイル上でピザを食べたこと自体も印象的だったのですが、トレイルエンジェル宅での癒された思い出も含めて、あの頃のPCTの穏やかな日々を思い出すんです。
■ 作り方
そのまま、かぶりつく。
関根くんのロング・ディスタンス・ハイキングにおけるトレイルフードはいかがだっただろうか。
手軽さや余計な動作をせずに食べられるということに徹したトレイルフードの選び方、コールドソークの実践など、関根くんらしさが随所に見られたトレイルフードだった。
また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!。
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