TRAILS REPORT

TRAIL FOOD #10 | ロング・ディスタンンス・ハイキング × トレイルフード by 関根竜之介

2024.07.26
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話・写真:関根竜之介 構成:TRAILS

What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキングやハンモック・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。

* * *

ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。

そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。

第10回目の今回は、ロング・ディスタンス・ハイキングの旅をしている関根竜之介くん (トレイルネーム:Dragon)。現在、アメリカのCDT (※1) を歩いている最中のハイカーで、フィッシングをしながらロング・ディスタンス・ハイキングを楽しんでいる。

※1 CDT:Continental Divide Trail (コンチネンタル・ディバイ・トレイル)。メキシコ国境からニューメキシコ州、コロラド州、ワイオミング州、アイダホ州、モンタナ州を経てカナダ国境まで、ロッキー山脈に沿った北米大陸の分水嶺を縦断する3,100mile (5,000km) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。

ロング・ディスタンス・ハイキング × トレイルフード


今回は、関根竜之介くん (トレイルネーム: Dragon) が、ロング・ディスタンス・ハイキングにおけるトレイルフードを紹介してくれる。

今回トレイルフードを紹介してくれるのは、関根竜之介くん (トレイルネーム:Dragon)。 TRAILSとHighland Designs主催のLONG DISTANCE HIKERS DAY (※2) にも参加してくれているハイカーだ。

関根くんは、フィッシング (主にルアーフィッシング) を楽しみながら、ロング・ロング・ディスタンス・ハイキングをしている。2019年にはPCT (※3) をスルーハイキング。そして現在は、CDTを歩いている最中だ。

そんな関根くんはロング・ディスタンス・ハイキングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介してもらった。

・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード

※2 LONG DISTANCE HIKERS DAY:日本のロング・ディスタンス・ハイキングのカルチャーを、ハイカー自らの手でつくっていく。そんな思いで2016年にTRAILSとHighland Designsで立ち上げたイベント。2016年以降、年1回の頻度で毎年開催している。

※3 PCT:Pacific Crest Trail (パシフィック・クレスト・トレイル)。メキシコ国境からカリフォルニア州、オレゴン州、ワシントン州を経てカナダ国境まで、アメリカ西海岸を縦断する2,650mile (4,265㎞) のロングトレイル。アメリカ3大トレイルのひとつ。

第1位:インスタントラーメン (コールドソーク)


水で戻すだけのコールドソークのスタイルで、ラーメンを食べるのが定番。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

今、僕が歩いているアメリカのCDTでは、水で戻すだけのコールドソーク (※4) のスタイルで、インスタントラーメンを食べることが多いです。

朝起きてから仕込んでおけば、少し歩いたタイミングで食べることができる。また釣りをしてる間に、水を入れて放置しておけばできあがる。その手軽さと、何かをしながら (歩きながら、釣りをしながら)、勝手にできあがっている便利さが、とてもお気に入りです。

液体が漏れない密閉できるフタが付いた容器・クッカー (自分はVARGOのBOT700) を使うので、洗う時もキャンプ場でハンドソープと水を入れて、上下に振れば洗えるというメンテナンス性の良さもいいです。CDTでは積極的にプロテインを摂取してるので、容器がそのままシェイカーになるのも、かなり助かってます。

やっぱり温かいものが食べたくなる時がありますが、コールドソークでも、ちょっと芯が残るくらいにふやかして、最後に容器の底に溜まってる濃いスープを飲み干した時は、疲れた体に塩分が染み渡っておいしいです。

普段バーナーを使ってるハイカーでも、次の町までガス缶が微妙に足りるか心配になった時にVARGOのBOT 700みたいなクッカーさえあれば、トレイル上でガスが切れてもラーメンを食べられます。また、きちんとガス缶を使い切ってから新しいガス缶を買うことができるのも、コールドソークのメリットです。

ちなみにアメリカを歩いているハイカーは、「Talenti」のアイスクリームの容器や、ピーナッツバターの容器を好んで使っています。いずれもスクリューロックでシール処理されてる (密閉できる) 容器です。

コールドソークは、火器を使った調理で行なう熱殺菌の工程はないので、衛生面での懸念がありましたが、今のところ自分は問題は起きていません (ただし自己責任です)。また低温調理なので油のこびり付きとか気にはなっていましたが、それも自分はほとんど感じられません。

■ 作り方

スクリュー式の密閉できるフタが付いた容器 (自分はVARGOのBOT 700を使用) に、麺と粉末スープを入れ、水 (自分は目安の分量は、麺の最上部よりも5mm位下) を加えて、フタを閉めて30分放置しておいたらできあがり。

※4 コールドソーク:Cold soak (またはCold soaking)。「水に・浸す」といった意味の言葉で、「火や火器を使わずに、食事を水に浸しておくだけの調理方法」を指す。火器を持ち歩かない、または火器の燃料を最小化することができるため、ULの手段のひとつにもなる。調理方法としては、スクリュー式のフタで密閉できるタイプの容器 (ジップロックのスクリューロックやVARGOのBOTなど) に、インスタントのラーメン、パスタ、マッシュポテトなどを入れて、そこに水を加えて、フタを閉め、そのまま放置しておくだけ。「軽量化」のほか、「調理の手間の簡略化」、事前準備しておけば「調理時間の待ち時間の省略」などのメリットがある。

第2位:ツナ


アメリカのスーパーに売ってるパウチタイプのツナ。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

「クレイジー・ツナ・ラバー (Crazy Tuna Lover)」というトレイルネームが付けられそうなったほど、ラーメンに次いでツナばかり食べています。

ロング・ディスタンス・ハイキングでは、手軽さが大事になります。パウチタイプのツナは、袋から出してさっとラーメンとかに加えるだけで食べられるのがよいですね。

ツナはプロテイン (タンパク質) を手軽に摂取できるし、アメリカのスーパーで簡単に入手できるのも便利です。

あと、トレイルをずっと歩いていると、いつも同じ味のラーメンだと飽きてしまうので、気軽に味を変えることができるのが気に入ってます。僕がよく買う「StarKist」のツナのパウチは、いろんな味のものが売ってます。

自分は主に辛い物をチョイスしてます。タイチリ、ハラペーニョ、スリラチャ、バッファロースタイルあたりが、ラーメンとの組み合わせがいいので、よく食べます。

他の味も一応買うのですが、結局、トレイル上でフードバックから最初に取り出してしまうのは、辛い味のツナなんです。

■ 作り方

ラーメンの味を変えるためラーメンの中に加えたり、トルティーヤに包んだりして食べる。

第3位:バータイプのスナック


エナジーバーや、チョコレートのバータイプのスナック。

■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント

余計な動作を最小限にして食べられるので、バータイプのスナックもよく食べます。

「行動食」という言葉通り、ハイキングしながらでも、フィッシングしながらでも、食べられる。他の食料だと、わざわざバックパックを降ろしてとか、クッカーを用意したりとか、また袋を開封してからお湯や水を入れてとか、そういった動作が必要になってしまいます。

長いトレイルを毎日ハイキングしてると、そういったちょっとした動作もだんだん煩わしくなってくるんです。省ける動作は、できるだけ省きたくなってきます。それで1日の大半のフードを、バータイプのスナックだけにして歩いていた時期もありました。あと、数が把握しやすいところもお気に入りです。

僕は特に「スニッカーズ」と「LUNA」のレモン味、「NATURE’s BAKERY」あたりを好んで食べてます。

あと単純にこの手のバーは、おいしいですよね。1個でやめないといけないのに、ついつい2個目にまで手を伸ばしてしまいます・・。

■ 作り方

袋から取り出してそのまま食べるだけ。

記憶に残るトレイルフード:ピザ


PCTを歩いているとき、レストランでテイクアウトしたピザ。

■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント

2019年、PCTを歩き始めて間もない頃。トレイルから降りて、カリフォルニアのライトウッドの町に着いたときのことです。

泊まる場所を探すために、この町のアウトドアショップで、トレイルエンジェル (※2) のリストを見せてもらいました。しかし自分の英語力では電話での対応が不安だったので、アウトドアショップの店員に電話をしてもらいました。

そのときに紹介してもらったトレイルエンジェルのお宅が、とても居心地がよかったんです。変に干渉せずに、お互い口数も少ない。でも、とてもいい距離感で接してくれたんです。飼ってる犬も人懐っこくて、とても癒されました。

このライトウッドの町には、ピザが有名なお店がありました。この頃は変に食い意地が張っていたのか、このお店に入る時はハンバーガーが食べたくて、いったんハンバーガーを食べました。でもそれはちょっとイマイチだったので、ハンバーガーを食べ終わってすぐに、続けてピザを頼んでしまいました。

結果、ピザはそこで食べきれずに、ジップロックに入れてトレイル上に持って行くことになります。

このピザの写真を見返すと、トレイル上でピザを食べたこと自体も印象的だったのですが、トレイルエンジェル宅での癒された思い出も含めて、あの頃のPCTの穏やかな日々を思い出すんです。

■ 作り方

そのまま、かぶりつく。

※2 トレイルエンジェル:ハイカーをボランティアでサポートしてくれる人のこと。たとえば、自宅やガレージを開放して宿泊スペースや食事を提供してくれたり、トレイルヘッドまでの送迎をしてくれたりする。


「クレイジー・ツナ・ラバー」というトレイルラバーにツナばかり食べている関根くん。

関根くんのロング・ディスタンス・ハイキングにおけるトレイルフードはいかがだっただろうか。

手軽さや余計な動作をせずに食べられるということに徹したトレイルフードの選び方、コールドソークの実践など、関根くんらしさが随所に見られたトレイルフードだった。

また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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