TRIP REPORT

パシフィック・ノースウエスト・トレイル (PNT) | #05 トリップ編 その1 DAY5~DAY16 by Zoey(class of 2022)

2024.09.13
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文・写真:Zoey 構成:TRAILS

ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズ。

2022年にパシフィック・ノースウエスト・トレイル (PNT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) Zoeyによるレポート。

全8回でレポートするトリップ編のその2。今回は、PNTスルーハイキングのDAY5からDAY16での旅の内容をレポートする。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


パシフィック・ノースウエスト・トレイル(PNT)。正式名称は「The Pacific Northwest National Scenic Trail」。アメリカとカナダの州境付近、ワシントン州、アイダホ州、モンタナ州の3州をまたぐ1,200マイル(1,930キロ)のロングトレイル。歴史は古く、1970年にロン・ストリックランドによって考案された。そして約40年の歳月を経て、2009年にNational Scenic Trailに指定された。現時点において、もっとも新しいNational Scenic Trail。
TRAILSのアンバサダーであり、PNTの管理団体のディレクターであるジェフは、次のように言っている。「PNTにはロング・ディスタンス・ハイキングの良きレガシーが残っている。またPNTでは、他ではできない孤独を経験することができる。またハイカーは真の自立を実践することによる喜びを、感じることができるんだ。」

トレイルでものを干すのはハイカーらしい光景。(DAY5~7)


壮大なPNTの景色のなかを歩いていく。

ヤード (庭) に張ったテントで目覚めた。心なしか頭が重たい。

昨日は数日ぶりの町ポールブリッジにて、同じタイミングでPNTを歩き始めたキートンと再会し楽しく過ごした。

なんだか、久しぶりに同級生と道端でたまたま会った時の様な感じに近い。再会の後に、近くの公園なりカフェなりで、なんでもない話をするだけで楽しいようなあの感じだ。

キートンはもう少し滞在するようなので、テントを畳み一足先に歩き始めることにした。空はカラッと晴れており、絶好のハイキング日和だ。

しばらくはなだらかな砂利道が続く。


休憩のときに服を乾かす。

休憩で立ち止まり、湿っていた服や靴を広げ乾かす。ホステルで洗ったにも関わらず、表現しづらい香りが周りに漂っている。この光景、まさしくハイカーだ!

街中でやるとただものじゃない雰囲気を醸し出してしまうが、周りにはかわいらしいリスしかいない。

干し放題だ。
太陽、ありがとう。


まだ残雪が残る景色のなかを歩く。

ホワイトフィッシュ・ディバイドのエリアに入り残雪がちらほら現れ始めた。

徐々に標高を上げながらいくつかの山を繋いで歩く。開けた稜線、迫力のある岩場。素晴らしい景色をみると言葉に当てはめるのが難しい。

実際にどうだった?と聞かれたら
「行ってみて!また感想教えて!」
と答えるだろう。


ホワイトフィッシュ・ディバイドの景色。

グレーシャー国立公園の途中から左足のかかとに違和感を感じていた。

渡渉で濡れた靴が乾かないまま、ぬかるんだ道を歩き続けたからかもしれない。かかとが擦れて小さな傷になっていた。

とにかく早く街に行き、ゆっくり処置をしようと思う。次の街が少しずつ近づいてきたことを地図アプリで確認し毎日ほっとしていた。


山火事の跡が残るトレイル。

この時初めて山火事の跡を歩いた。

木には焼きただれた跡が残り、葉が焼け落ちているので風がふいていても妙に静かだ。火事以降時間が止まった様な、どこかふわふわとした不思議な場所だった。

ユーレカの中華料理店でスミさんと出会う。(DAY8〜11)


ユーレカの街。ハイカーに必要なものがすべて揃っている。

ユーレカはPNTの中の、最初の主要補給地だ。モーテル、ランドリー、郵便局、アウトドアショップ、いくつかの飲食店やスーパーマーケット等ハイカーが求めるものが揃っている。

補給と足の様子を見るため数日滞在することにした。

早速モーテルにチェックインし、日本にいる妻の協力のもと足の状況を調べた。足は幸い大事ではなかった様で一安心だ。塗り薬を処方してもらい、無事ハイキングを続行出来るとのこと。

診てもらったドクターは日本でしばらく生活していたことがあるそうで、片言だが日本語を話せる。はるばる日本から来たハイカーの僕を気にかけてくれ、翌日にユーレカの街を案内するよと誘ってくれた。足のこともあり、明日は休もうと思っていたし純粋に気遣いが嬉しい。


クーカヌサ湖の景色。舟がたくさん停泊している。

翌日ユーレカの近くにあるレックスフォードに連れて行ってもらった。ここはクーカヌサ湖に面した場所で、皆、舟に乗りながら自然を楽しんでいる。スルーハイキングではなく、改めて観光でユーレカに滞在しのんびりしても楽しそうだ。

この時、街で暮らすスミさんという日本人の方がされている、中華料理店があることを教えてもらった。

スミさんのお店でチャーハンをオーダーし、冷えたビールと共にかきこむように食べる。PNTのことや日本での生活のことなどをスミさんと話した。

優しいスミさんと話す久しぶりの日本語の会話が、なにより嬉しかった。


中華料理店で出会ったスミさんと久しぶりに日本語で人と話す。

この数日はチャンスを逃すまいと早い時間からビールをしこたま飲んでいる。しこたまはまさにこんなタイミングで使う言葉だろう。寝溜めならぬ飲みだめだ。

まだ明るい時間から、しこたま飲み、のんびりし、街の生活を楽しんだ。

街のアウトドアショップは小さなお店で、ガス缶は大きいサイズのものしか売っていない。
これから先に立ち寄る予定の街で必ず入手出来るか不安だったので、多めに買い先の街へ郵送した。

足の調子は少しずつ良くなっている。
もうそろそろハイキングを再開しようと思う。
体力を持て余し始めている気もするし。

街を出て、再びウィルダネスへ入っていく。(DAY12)


鉄道の線路跡の脇を歩いていく。

ユーレカからの歩き始めはフラットな道で、廃線路に沿って続いている。数日休んだおかげか身体が軽い。のどかな雰囲気の中、気持ち良く歩く。

線路沿いを歩くと名作映画を思い出し、それだけでワクワクする。

トレイルはタバコ川に沿って西に進み、やがてクーカヌサ湖に辿り着く。そこからはしばらくのロードウォークだ。日差しを遮るものがなく暑いが、平坦なので無心で歩ける。

暑さにやられかけるが、バックパックに忍ばせた缶ビールでモチベーションを保つ。多少の重さと引き換えにやる気をキープできるから実質0gだ。


クーカヌサ橋の景色。この先で再びウィルダネスに入る。

休んでいた分を取り戻すように黙々と足を動かし続けた。数時間歩くと現れるクーカヌサ橋という大きな橋を渡りパーセル山脈の自然の中へ入り込んでいく。川の流れはなだらかだが力強い。

トレイルに入ると数日しかブランクがなかったにも関わらず、少しのアップダウンでヘロヘロになった。


ウェッブ山の展望台。

休み休み歩き、夕暮れ前にはウェッブ山の山頂にある展望台に辿り着いた。かわいらしい印象の展望台がある。手作り感のあるペイントだ。

すぐそばの森の中は薄暗くなりかけており、どうしても熊を連想させるので、その日は明るい展望台のすぐそばで夜を明かした。


山の上から眺めた朝日。

夜中目を覚ますとたくさんの星と、遠くに見える遠雷。雷はこちらに来ることなく、無事朝を迎えた。

日が暮れると肌寒かったので、スミさんから頂いたお店のオリジナルTシャツを着て寝ることにした。

展望台を見ると、心がワクワクする。(DAY13〜16)


このエリアに点在する展望台。

ヘンリー山、ガーバー山を始めいくつかの山を繋いで歩く。

このエリアには展望台がいくつかあり、色味や雰囲気などそれぞれ特徴が違うので面白い。
中には入れないが近くで見てみるだけでなぜかワクワクする。暗い海を照らす灯台になぜかロマンを感じるのと近い・・かもしれない。

ここではフォレストロードを起点として、2つルートが設定されており、ハイカーはどちらか好きな方を選ぶ事ができる。僕はノースウエストピークの北側を回るルートを選んだ。


パーセル山脈の景色。

このルートは開けた場所で、簡単なスクランブリングをしながら進む。

パーセル山脈に入ってからの、この数日他のハイカーを見かけていない。一人の時間が長いと独り言が増えるのが困りものだ。水が足りなくなりそうだったが、しばらく進んだ場所で給水することができてラッキーだった。

その日、夜中にテントの近くで、今まで聞いたことのない甲高い動物の鳴き声を聞き、目が覚めた。聞き馴染みのない声だったので頭の中で、口元がぐにゃっとした宇宙人みたいな姿をした生物を想像してしまい怖くなった。

海外の山奥だし、まぁそんな事もあるよな、と思い直しなんとか眠りについた。

一日に歩けるペースが徐々に分かり始めていた。


モンタナ州のセクションが終わり、アイダホ州に入っていく。

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Zoey

Zoey

仕事の関係で六甲山の麓に住み始めてから、週末ハイキングを楽しむようになる。その後、パシフィック・ノースウエスト・トレイル (PNT) の運営団体のエグゼクティブ・ディレクターであるジェフ・キッシュのスルーハイキングレポートがきっかけでPNTを歩くことを決意。2022年にPNTをスルーハイキングした。

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