TRIP REPORT

パシフィック・ノースウエスト・トレイル | #02 ギアリスト編 by Zoey(class of 2022)

2024.02.02
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文:Zoey 写真:Zoey, TRAILS 構成:TRAILS

毎年、多くの日本人ハイカーが海外トレイルを歩きに行く。スルーハイキングだったり、セクションハイキングだったり、ソロだったり、カップルだったり……それぞれが思い思いのスタイルでロング・ディスタンス・ハイキングを楽しんでいる。

そんなハイカーたちのロング・ディスタンス・ハイキングのリアルを、たくさんの人に届けたい。できれば、それぞれの肉声が伝わるような旅の記録、レポートを紹介することで、読者の方々にその臨場感や世界観をよりダイレクトに感じてほしい。

そこで、ハイカーが自らのロング・ディスタンス・ハイキングの体験談を綴る、ハイカーによるレポートシリーズをスタートさせることにした。

今回は2022年にパシフィック・ノースウエスト・トレイル (PNT) をスルーハイキングした、トレイルネーム (※1) Zoeyによる、第2回のレポート。

スルーハイキングに向けたギアの準備編をお届けする。

※1 トレイルネーム:トレイル上のニックネーム。特にアメリカのトレイルでは、このトレイルネームで呼び合うことが多い。自分でつける場合と、周りの人につけられる場合の2通りある。


Zoeyが2022年にスルーハイキングしたPNT。

Zoey’s ギアリスト for パシフィック・ノースウエスト・トレイル


  

 
※Base Weight (ベースウエイト) :水、食料、燃料などの消費するものを除いたバックパックの重量。背負うバックパックの重量を測るための基準であるため、ハイキング時に着用するウェアやシューズ等はベースウエイトに含まない。ベースウエイト4.5kg以下 (10ポンド以下)が、UL (ウルトラライト) の一般的な基準となっている。また消費するものを含めたバックパックの重量を、パックウエイトと呼ぶ。今回、ベアキャニスターはほんの一部の区間のみの携行だったため、ベースウエイトには含めていない。

初めてのロングトレイルなので、道具はいつも使っている安心感や心地良さを感じるものを優先して選んだ。

足りない言語力、土地勘はスマートフォンに頼らざるを得ないので、バッテリーは必要以上に持っていくことに。

PNTでは砂浜を歩くエリアもあるため、軽量なサンダルを持っていくことにした。テントを設営してからのリラックス用も兼ねている。

歩く:HIKING GEAR


[バックパック] allmansright / around 50L

バックパックは、allmansright / around 50L。自分は、2020年6月にアメリカ・ニューヨーク州のブロンクスで誕生したこのULブランドに興味を抱き、以前からInstagramで何度かやりとりをしていた。作り手が自分と年齢が同じで、好きなものも近いという感じがして、勝手に親近感を抱いてた。それでallmansrightに頼んで作ってもらったのだ。

今回のバックパックに関しては、いくつかリクエストを出して、以前別のハイカー用に作っていたものをベースに少しアレンジしてもらった。

具体的には、PNT最後のビーチセクションではベアキャニスターが必須になるので、バックパックの上部に固定できるようにV字ストラップを長めにしてもらった。あと、街での補給のタイミングで身軽に行動したいと考えていた。そこで、バックパックから取り外してウエストポーチとしても使用可能な小さいバックを、オプションでつけてもらった。


[シャツ ] (Unknown) / 麻のかりゆしウェア, [ショーツ] cobra caps / Microfiber All Purpose Shorts, [ベースレイヤー] moonlight gear × brown by 2-tacs / tank [アンダーウェア ] BRING / WUNDERWEAR 50/50, [キャップ] HOUDINI / daybreak cap, [ストール] (Unknown) / Batik Stall (cotton), [レインジャケット] OUTDOOR RESEARCH / helium jacket, [傘] Six Moon Designs / Silver Shadow Mini, [ソックス] (Unknown) / メリノ混ソックス, [トレッキングポール] answer4 / Ultra Light Carbon Pole, [サングラス] obj / clip-on, [ロングパンツ] HOUDINI / dock pants (予備)

また、ハイキングで使えるかはっきり分からないけど、問題なさそうだと判断したものも一部取り入れてみた。メインのシャツは、妻の故郷である沖縄のかりゆしウェアの麻のもの。

もともと花柄が好きなのと、日本での日常生活 (アウトドアではない) の雰囲気を感じられるものを身につけていたかったのだ。

ショートパンツは、アメリカで体操服のようなポジションだと書いてあるのを、以前にどこかで見たcobra社のもの。破損しても手に入れやすそうなのと、価格も安く気負わずガシガシ使えそうなものを選んだ。

PNTにはスクランブリング (※2) や長い藪漕ぎが必要なエリアがあり、気温は氷点下から40℃までとさまざまな気温にも対応する必要がある。そこで寒さ対策も含めて、HOUDINIのロングパンツ を予備に持っていくことにした。

※2 スクランブリング:手足を使って岩場をよじ登りながら頂上を目指したり、縦走したりするアクティビティ。明確な定義はなく、ハイキング、登山、ロッククライミングの中間に位置する。

寝る:SLEEPING GEAR


[シェルター] Zpacks / Hexamid Solo Tent

蚊が多いエリアがあるので、テントに蚊帳付きは必須条件。超軽量で蚊帳付きのモデル、Zpacks / Hexamid Solo Tentをチョイスした。


[キルト] ENLIGHTENED EQUIPMENT / Revelation 850 20°F Down Ver, [スリーピングマット] THERM-A-REST / NeoAir XLite Short, [スリーピングマット] 山と道 / minimalist pad, [グラウンドシート] DuPon / Tyvek, [インサレーション (Jacket)] ENLIGHTENED EQUIPMENT / Men’s Torrid Pullover, [インサレーション (Inner)] farpointe / crew neck, [インサレーション (Pants)] senchi designs / Alpha Legging, [サンダル] Bedrock Sandals / minimalist

グラウンドシートはTyvek。裏に適当に手のひらの絵を描いてみた。知らない土地でも自分が描いた手のひらの上でなら、少しは安心して寝られそうな気がした。

スリーピングマットは、THERM-A-REST / NeoAir XLite Short。約230gと軽量でありながらR値が4.2と高いところに惹かれて選んだ。

ただ、PNTのエグゼクティブ・ディレクターであるジェフのPNTのスルーハイキングレポートにあった、スリーピングマットがパンクしたエピソード (詳しくはコチラ) が強く印象に残っていた。そのため、予備で山と道のミニマリストパッドも携行することにした。地面が荒れている場所で併用することを想定していた。

スリーピングバッグは、いろいろ調べたなかでPNTでおすすめされていた、軽量なキルトタイプでありながら-6℃対応のモデル、ENLIGHTENED EQUIPMENT / Revelation 850 20°F Down Verにした。

ただ、パサイテン・ウィルダネスエリアでは真夏でも氷点下になる可能性があるため、ENLIGHTENED EQUIPMENTの化繊のインサレーション、Senchi Designsのレギンスをスリーピングバッグのブースト用とした。

食べる:COOKING GEAR


[クッカー] jindaiji mountain works / Hillbilly Pot 550, [クッカー] jindaiji mountain works / Hillbilly Pot 350, [カトラリー] tritensil / mini [ストーブ] BRS / (Unknown), [浄水器] KATADYN / BeFree 1L, [ウォーターキャリー] CNOC / Vecto 3L, [フードバッグ] URSACK / Ursack Major 2XL (※3)

トレイル上の食事に関しては、袋めんをメインに、食後にコーヒーを飲んでもいいな、ということでクッカーは2つ携行した。バーナーを汚さないようにする意図もあった。

スタッキングが楽しく、バックパック内でのおさまりも良いjindaiji mountain worksのHillbilly Pot 550,350を使用。必要以上に気をつかわず、ガシガシ使えるので愛用している。

PNTでは水場が少ないエリアがあるので、CNOCの3Lのウォーターキャリーも念のために持っていくことにした。

※3 URSACK:PNTA (PNTの運営組織) のオフィシャルHPにおいて、ベアキャニスターと共に使用が推奨されている食品保存容器。PNTはそのほとんどがブラックベアの生息地内にあるため、クマ対策が欠かせない。

エマージェンシー・その他:EMERGENCY GEAR & OTEHRS


[ファーストエイド&エマージェンシーキット] 薬, テーピング, 爪切り,ホイッスル, 予備のコンタクト,目薬, ポイズンリムーバー等, [ヘッドランプ] Petzl / bindi, [衛星通信デバイス] Garmin / inReach MINI2, [モバイルバッテリー] Anker / PowerCore Essential 20000,10000, [トイレセット] QiWiz / trowel Original,トイレットペーパー等, [ソーラーパネル] Flex Solar / Solar panel, [チェーンスパイク] kahtoola / MICROspikes, [カメラ] sony / α6000, [カメラケース] Hyperlite Mountain Gear / camera pod, [マッサージボール] (Unknown) / コルクマッサージボール

土地勘のないところなので、スマートフォンのバッテリーが切れるのが何より恐ろしかった。

パサイテンの嵐で数日間ジェフが滞在を余儀なくされたレポート (詳しくはコチラ) の印象が強く、バッテリー2つとソーラーパネルを用意した。

スタート地点のグレーシャー国立公園の残雪に備えて、チェーンスパイクも必須だった。

電波が入らないところでの万が一に備えて、inReach Mini2 (※4) も携行。これで、日本にいる妻とやりとりをして生存確認をする予定だ。

あと、自分はマッサージ好きなので、コルクボールも欠かせなかった。

※4 inReach:GARMIN (ガーミン) が開発・販売している衛星通信デバイス。携帯電話の電波が届かないエリアでも、双方向通信が可能でSOS発信機能も搭載されている。最新機種の「inReach Mini 2」は、小型&軽量で、重量は約100g。TRAILSでは、「ロングトレイルTOPICS #07 | PCT&ATスルーハイキングに向けた最新情報(2023 Feb)」では、PCTAにインタビューし、inReachの利用増加とともに、適切な利用方法や自身のナビゲーションスキルの重要性をレポートしている。詳細記事はコチラ


お気に入りのギアを持って、初めての海外トレイル、PNTへ。

今回は、PNTをスルーハイキングするにあたってのギアリストを紹介してもらった。次回は、リサプライ (食料やギアの補給) やアクセスのプランニングについてのレポートをお届けする予定だ。

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WRITER
Zoey

Zoey

仕事の関係で六甲山の麓に住み始めてから、週末ハイキングを楽しむようになる。その後、パシフィック・ノースウエスト・トレイル (PNT) の運営団体のエグゼクティブ・ディレクターであるジェフ・キッシュのスルーハイキングレポートがきっかけでPNTを歩くことを決意。2022年にPNTをスルーハイキングした。

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