TRAIL FOOD #11 | パックラフティング × トレイルフード by 小川竜太
話・写真:小川竜太 構成:TRAILS
What’s TRAIL FOOD? | 「トレイルで、実際みんな何を食べているの?」。みんなのリアルなTRAIL FOOD (トレイルフード) が知りたくて立ち上げた、トレイルフードを紹介する記事シリーズ。ULハイキングをはじめ、ロング・ディスタンス・ハイキングやハンモック・ハイキング、パックラフティング、さらにはフライフィッシングやテンカラなど、それぞれの遊びに没頭している人たちに、普段どんなトレイルフードを食べているかを紹介してもらう。トレイル上のリアルに触れることが、きっと新たな気づきや刺激になるはずだ。
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ここに登場するのは、世の中でよく紹介されるような「山でこんなに美味しいものが食べられる!」というフードがかならずしもメインではない。それぞれの遊び方やスタイルのなかで、時には質素に見えるかもしれないが、みんなが実際に食べているリアルなトレイルフードだ。
そこには、旅を楽しむための大事なエッセンスや、アクティビティをする上での実践的なTIPSが詰め込まれているはず。そんなリアルなトレイルフードが知りたくて、この連載記事を立ち上げた。
第11回目の今回は、TRAILS crewのなかでも最もパックラフティングに傾倒している小川竜太だ。
パックラフティング × トレイルフード
今回トレイルフードを紹介するのはTRAILS crewの小川竜太。日本各地をパックラフティングの旅でめぐっている。
TRAILS crewのテーマでもある、川をハイキングの延長である「リバートレイル」として捉えるハイキング & パックラフティングのスタイルでも、ニュージーランドのクラレンスリバーや、国内では釧路川や四万十川を旅している。
そんな小川はパックラフティングで何を食べているのだろう? 下記2つの視点で紹介する。
・「食べる頻度の高い」トレイルフードベスト3
・「記憶に残る」トレイルフード
第1位:ローカルフード (主に麺類・汁物)
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
僕のパックラフティングの旅では、はじめに出発地点近くにあるローカルのスーパーマーケットや物産販売所に立ち寄ります。「ここのうまいものはなんだ」と、まずはローカルフードを物色です。
山では持っていくのを控えるような生麺や汁物とか、水を多く使ったり、重量やかさがあるフードを積極的にセレクトすることも多いです。わりと思いのままに、地元のうまそうなものを選びます。
荷物をずっと背負って歩く山でのハイキングと違って、パックラフティングでは、舟に荷物を積めば、多少重さのある食材でも許容できます。また山とは違って、河原での野営では、水や燃料には基本的に困ることはほとんどはないので、その分は持ち運ぶ荷物の重量を減らせます。水はその場でいくらでも汲むことができるし、薪も豊富に現地調達することができるからです。
岩手の閉伊川 (へいがわ) では盛岡冷麺を、静岡の気田川 (けたがわ) では静岡おでんを、トレイルフードとして楽しみました。いずれも汁物でですが、パックラフトの旅だと、1食分くらいのこの重量増は許容してしまうところがあります。焚き火をしながら、ローカルフードを味わうのがパックラフティングの定番の楽しみのひとつなのです。
■ 作り方
例)冷麺:麺を茹でて、水で冷やす。事前につくっておいたスープに麺を入れて、最後にパッケージに入っている具材を載せてできあがり。
第2位:旬の野菜の炭火焼き
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
パックラフティングの野営で食べるトレイルフードといえば、まずは「焚き火で焼いて食ったらうまいもの」というのが、いつも頭にあります。僕は凝った料理はできず、ただ焼くだけでうまいものという無骨なものが定番になります。
僕のパックラフティングの楽しみは、舟をバックパックに詰め込んでハイキングの延長で自由に旅ができること、川の流れの美しさや奔放さと戯れること。そしてフードについて言えば、河原で気ままに焚き火をしながら野営をすることが楽しみです。
焼き物としては、地元のスーパーマーケットで、その季節の旬の野菜をセレクトします。アスパラ、オクラ、きのこなどは、パックラフティングにおける僕の定番の焼き物です。シャキシャキ感と歯応えがあるものが好みなのです。
「焚き火で焼いたらなんでもうまい」と言ったら乱暴かもしれませんが、ある意味では間違いのない事実。遠赤外線で中までしっかり焼けるほくほく感に、薪のスモーキーな香り、それにいい塩梅の焦げの風味が加われば、絶品のトレイルフードになります。
■ 作り方
塩をかけて、焚き火で焼くだけ。
第3位:ローカルで調達した魚
■ 頻度が高い理由とお気に入りのポイント
清流と呼ばれる川では、鮎などの漁をするための仕掛けである簗 (やな※1) を目にすることがあります。僕がよく漕ぎに行く栃木の那珂川 (なかがわ) や、遠征で訪れた岐阜の長良川 (ながらがわ) にも簗がありました。そういった川では、川沿いで鮎を調達して、焚き火で炙って食べるのが定番となります。
那珂川の簗は、日本のなかでも最大規模のもので、なんでも漁獲量も全国1位なんだそうです。那珂川では、いつもJR烏山線の終着駅である烏山駅から漕ぎ始めます。ゆっくりと半日ほど漕いで、いつも野営をする河原の手前に、「大瀬やな」という簗があります。
野営地に着く前に、この簗に寄るために上陸して、鮎を調達します。野営地の焚き火で、じっくりと遠火で炙った鮎を、白飯と一緒にいただくのは、パックラフトの旅における定番の贅沢のひとつです。
■ 作り方
焚き火で、遠火でじっくり炙る。
記憶に残るトレイルフード:りんご
■ 記憶に残る理由とお気に入りのポイント
長野の千曲川 (ちくまがわ) を漕いだときのこと。このときは犀川 (さいがわ) から漕ぎはじめました。犀川の流れは千曲川に合流し、そのまま千曲川をしばらく漕ぎ進みました。そして、適当な河原を見つけて野営をしました。
翌日、朝の早い時間、川面にはまだ霧がうっすらと覆われているなかを、漕ぎ始めました。ゆったりと大きい流れの千曲川に身を任せてまどろんでいると、川に赤い点のようなものが浮かんでいるのに気がつきました。そう、川にりんごが流れているのです。さながら、川でのトレイルマジック (※2) です。川に流れる信州のりんごを手に取って、おもむろにかじるとジューシーでしゃきっとした、おいしいりんごでした。
一緒に漕いでいたパートーナーは、「赤〜い〜リンゴに〜 くちび〜る 寄〜せ〜て〜」と、しばらくは並木路子の『リンゴの唄』を口ずさんでいました。
川に浮かんでいるものを、そのまま食べる経験はなかなかありません。このりんごは、僕の印象に残っているトレイルフードのひとつです。
■ 作り方
川に流れてきたりんごを拾って、食べるだけ。腐ってないかなどはオウンリスクでジャッジ。
パックラフトの旅は、河原での焚き火をしながらトレイルフードが大きな特徴のひとつ。そして荷物を背負わずに舟に詰めること、水を好きなだけいつでも汲めること、焚き火では基本的に燃料に困らないことなどのメリットにより、トレイルフードの選択肢の幅が大きく広がる。
また漁場の近くで魚を調達できたり、ときには釣り師に魚を譲ってもらったりと、川旅ならではフードとの出会いもある。
また次回の『トレイルフード』もお楽しみに!
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