UL MAKER MOVEMENT

ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT ~ ウルトラライトとMYOGがつくる熱狂 | Gossamer Gearミートアップ とMYOGer NIGHT

2024.12.13
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文・写真・構成:TRAILS

「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT (ウルトラライト・ガレージメーカー・ムーブメント」の記事シリーズ。

ウルトラライト (UL)とMAKE YOUR OWN GEAR (MYOG) を中心に、トレイルカルチャーにおける「メーカームーブメント (MAKER MOVEMENT) 」である、「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」の刺激となるようなコンテンツを、お届けしていく。

今回は、ULガレージメーカーのパイオニアであるGossammer Gear (ゴッサマーギア) チームとのミートアップと、2024年10月に開催された「MYOGer NIGHT #02」のダブルコンテンツでお届けする。

MYOGer NIGHTのレポートでは、参加したMYOGerたちがつくったギアの一覧や、AWARDに輝いたギアの紹介もあります。

ボリュームたっぷりのレポートですが、最後までお楽しみを!

ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT


「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」のブースターのひとつであるMYOGer NIGHT。

TRAILSのプロダクト「ULTRALIGHT CLASSICシリーズ (※1)」や「MYOGer NIGHT」に込めた、僕たちが熱狂した実験的でイノベイティブなウルトラライト (UL)というカルチャー。

それは2000年代以降に起きた、トレイルカルチャーにおける「メーカームーブメント (MAKER MOVEMENT) 」であり、僕たちハイカーに道具の進化にとどまらない知恵をも与えてくれた。

新たに「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」を合言葉に、シーンを盛り上げるブースターを届けていくことができればと思う。

TRAILSでは、ウェブマガジンだけにとどまらず、GARAGEでのSCHOOLやMYOGer NIGHTなどのイベント、MYOGマテリアルの販売、オリジナルプロダクトなど、さまざまな形で「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」の刺激となるブースターを発信していきたい。


トレイルズのオリジナル「ULTRALIGHT CLASSICシリーズ」のバックパック (写真中央)

メーカームーブメントとは、2000年代以降、インターネットや新しいテクノロジーの普及とともに、製造業全般に世界中で起きたイノベイティブな潮流だ。

大きな製造業が支配的だった世の中に、ITなど新しいテクノロジーの力とDIY精神により、世界中の「ガレージ」 (自宅の作業部屋・工作室) からインディペンデントで、イノベイティブな新しいメーカーが多く立ち上がった。


第三次産業革命にあたる製造業のパラダイムシフトが2000年代以降に起こっていることを捉え、それを「メーカーズムーブメント (メイカーズムーブメント)」という概念で定義した、クリス・アンダーソンによる『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』。(※3)。

3Dプリンターやレーザーカッターのような新しいテクノロジーが個人でも使用可能になり、インターネットを通じてオープンにアイディアを交換し議論できる環境がつくられ、また素材の調達や製造・発注もインターネットにより個人でできるようになった。これらのことが契機で起きた世界的な「メーカー革命」だ。

トレイルカルチャーにおける世界的なULガレージメーカー (※4) の勃興も、大きくはこの世界的なメーカームーブメントの潮流のなかにあったと捉えることもできるだろう。


メーカームーブメントの象徴的な場所のひとつであった、デジタル工作機などが使えるスペース「Tech Shop」の風景。(https://www.researchgate.net/より)

※1 ULTRALIGHT CLASSICシリーズ: 『Simple × Classic × Super Ultralight』をコンセプトにしたTRAILSのオリジナルの超軽量プロダクトシリーズ。https://thetrailsmag.com/store/archives/67155

※2 クリス・アンダーソン『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』:著者は元・WIRED誌の編集長。21世紀の製造業のパラダイムシフトが、ウェブの世界で起こったツールの民主化により起こったことを捉え、それを「メイカーズ・ムーブメント」と名付け、その潮流に大きな影響を与えた著作。

※3 ガレージメーカー:英語ではCottage manufactures (コテージ・マニュファクチュアラー) とも呼ばれる。

Gossamer Gearチームとのミートアップ。


Gossamer Gearチームとのミートアップ。CEOであるジョナサン (右から1番目)とグレン (右から2番目) 。セールス責任者のグレーシー (左から2番目)、デザイン担当のキャシー (左から3番目)。

2024年10月。ULギアメーカーのGossamer Gear (ゴッサマーギア) の本国のチームがTRAILSに遊びに来てくれた。

Gossamer Gearはいわずと知れた、世界的なULガレージメーカーのパイオニアであり、「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」のファーストウェーブの中心にいたメーカーである。

ファウンダーのグレン・ヴァン・ペスキ (以下、グレン) は、ウルトラライト、MYOG、ULガレージメーカーのゴッドファーザーとしてリスペクトされている。

TRAILSでのグレンの連載『take less. do more. 〜 ウルトラライトとMAKE YOUR OWN GEAR』がつい先日から始まったところなので、それを読んでくれているハイカーやMYOGerもいるかもしれない。(グレンの連載はコチラ


写真左が、Gossamer Gearの現在のCEOであるジョナサン。

この時に遊びに来てくれたのは、Gossamer GearのCEOのジョナサン、セールス責任者のグレーシー、デザイン担当のキャシー、それにグレンのパートナーフランシーというメンバー。

Gossamer GearとTRAILSのお互いで、日本とアメリカそれぞれのウルトラライト、ロング・ディスタンス・ハイキングなどについての情報をやりとりした。新しいULガレージメーカーがここ数年で劇的な多さで誕生しているのは、日米で共通しており、世界中で新しい世代の「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」が起きていることを実感した。

またGossamer Gearの最新プロダクトのひとつとして、本国で昨年にローンチされた「Whisper」 (1人用シェルター、重量278g)についても、話を聞くことができた。グレンが現役のULギアメーカーとして開発・設計したシェルターだ。0.51 ozの極薄のDCF を使用したり、これまでにない新しいデザインをいまもなお生み出そうとする、MYOGerとしてのグレンの魂を感じるプロダクトだ。


TRAILSのバックパック「ULTRALIGHT CLASSIC」を見るグレン。

TRAILSオリジナルのバックパック「ULTRALIGHT CLASSIC」について、グレンからレビューをもらうこともできた。内部の背面パッドスリーブが着脱できる仕様、またそのシンプルな機構について、「これは独創的で面白いね」というコメントをくれた。

全体のデザインのシンプルさ、細いベルトを採用したり極限まで軽量化しようとする設計、また背負ったときのシステム (ショルダーハーネスとウェストベルトのフィット感) など、ULギアの設計者らしい細かな視点でのレビューもしてくれた。

MYOGer NIGHT#02。前回を上回るクレイジーな熱狂。


参加者がMYOGしたギアをお披露目している風景。

Gossamer Gearチームが来た数日後、GARAGEでは2回目の開催となるMYOGer NIGHTを開催した。

ビール片手にワイワイとMYOGについて語り合うMYOGerたちのイベントだ。すでにMYOGをやっている人はもちろん、これからMYOGやりたい!という方もウェルカム。MYOGに興味があること、トレイルで遊んでいること。それだけが参加条件である。イベントでは、参加者で投票する「MYOG AWARD」なども開催する。

今回のMYOGer NIGHTでは、前回の2倍近いMYOGerたちが集まった。前回は初開催ならではのグルーブかと思ったが、今回もMYOGerたちの熱狂がカオスとなって化学反応を起こす、熱量の高い会場が再現された。


MYOGしたギアを見せ合い、参加者投票によるAWARDも開催。

このMYOGer NIGHTは、「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」のブースターのひとつになればという思いで立ち上げたイベントのひとつである。

ウェブマガジンでの発信やSCHOOLの開催、MYOGマテリアルの販売等にとどまらず、グラスルーツ的にMYOGer同士が同じグルーブを共有し、みんなで一緒にシーンを育てていくためのオープンソース的な環境づくりや、健全なMYOGカルチャーを維持するための啓蒙として、目指したい世界観の共有などを、直接的かつ双方向でコミュニケーションができる場があったらという思いで立ち上げたのがMYOGer NIGHTだ。

MYOGer NIGHTのサプライズゲストでUL & MYOGのゴッドファーザー登場!


こないだ別れたはずのグレンが、サプライズで登場!

数日前にTRAILSに来てくれたグレンが、再度TRAILSを訪れ、なんと今度は完全プライベートでMYOGer NIGHTにゲスト参加してくれた。

実はTRAILS Crewがグレンに「日本のグラスルーツなMYOGerたちが集まるイベントやるんだよ」という話をしたら、「素晴らしいね。あれ?もしかしたら、その日は帰国の前日で空いてるかもしれない。行ってもいい?」と言ってくれて、参加してくれることになったのだ。


グレンの再登場。日本のMYOGerたちが集まるMYOGer NIGHTに参加してくれた。

サプライズで登場したウルトラライト&MYOGのレジェンドの姿に、MYOGerたちのボルテージが爆発したのは言うまでもない。

その後、MYOGerたちがプレゼンしているのを、ずっと楽しそうに聞いていたグレン。自分もMYOGerとしてうずうずしてきたのだろうか、「私も発表していいかい?」となんと急遽グレン本人もMYOGerとしてプレゼンすることになった。


グレンも急遽MYOGerとしてプレゼンすることに。

手持ちの道具にMYOGしたものがあるのが、さすがグレン。MYOGしたステーショナリーケースをバックパックから取り出して、プレゼンをしてくれた。

自分がいつも持ち運ぶ、ペン、メガネ、名刺を、ピッタリとおさめることができるステーショナリーケースだ。なにげないものにも、最小限で無駄のない道具をつくるところに、グレンのウルトラライトの美学を感じた。

MYOGer AWARD。


MYOGer NIGHT#02の参加者たちのMYOGしたギア。制作したMYOGerは上段左から、1段目:KOH (*上calbee)、JITO (*下: Black DCF)、KOUTA、MIZUYAN。2段目;MASA、O-HASHI、HIDE。3段目:JIRO (*上: Brown Ecopak)、WAKATAKE (*上: Lightblue Nylon)、NARI (*下: Green Ecopak)、SHIMON (*上: Black DCF)、MAI (*下: White DCF)、ODAMAKI、KEISUKE、KANEYAN。4段目:YAN、YANAI、DAISUKE、NENTA。

全員のMYOGのプレゼンが終わったところで、今回もAWARD (賞) の投票を開催。前回同様、3つのAWARDを設けた。

BEST STARTER:
TRAILSによる選出で、MYOGを初めて1年以内のMYOGerで、最も”Challenging”と感じたMYOGerに送られるAWARD。

ULTRALIGHT CLASSIC:
TRAILSが熱狂する実験的でイノベイティブなULカルチャーにおいて、その大事なエッセンスである”Simple × Classic × Super Ultralight”を感じさせてくれるギアをつくったMYOGerに送られるAWARD。

BEST MYOGer:
最も”Excitement (面白い、興奮した、興味をそそられた)” と感じたMYOGerとして、会場の参加者から一番多く票を集めたMYOGerに送られるAWARD。

全員の投票がおわり、AWARDの発表がスタート!

■「BEST STARTER」:バイクパックキング・バッグ by KOUTA

KOUTAくんがMYOGしたバイクパッキング・パック。


自分の自転車に取り付けた状態でMYOGのプレゼンをするKOUTAくん。

「BEST STARTER」のAWARDをゲットしたのはKOUTAくん。なんとこの日は、MYOGしたバイクパッキング・パックを取り付けた自転車でプレゼンするために、鎌倉から日本橋のGARAGEまで自転車で来るという意気込み。

MYOGを始めてまだ1年も経っていないが、GARAGEに初めて来たときから、高いモチベーションだったKOUTAくん。作り方に息詰まる度に、すぐにGARAGEに相談に通ってくれるMYOGerだ。

MYOGer NIGHT当日は、事前に相談しに来たときに話をしていたギアから、さらに新作がたくさん追加されていた。「自分が欲しいからMYOGしたんだ!」という高い熱量と爆発力が、BEST STARTERの選出理由となった。

■「ULTRALIGHT CLASSIC / BEST MYOGer」:ULセモタレ by JITO

JITOさんがMYOGしたULセモタレ。


ULセモタレの使い方をデモンストレーションするJITOさん。

「ULTRALIGHT CLASSIC」のAWARDをゲットしたのはJITOさん。JITOさんは会場のMYOGerが選ぶBEST MYOGerとのダブル受賞となった。

JITOさんがMYOGしたのは、ULセモタレ。ハイカーなら誰しも考える、野営でチルするときの「イス的なもの」を、たった15gという軽さで実現した。

かつてUL黎明期に、CRAZY CREEK (クレイジークリーク)のイスを、背面パッドと兼用して使用するULハイカーもいた。それとは違ったアイディアで、こちらは極限まで無駄を省く志向だ。この極限までシンプルな「イス」が、見た目によらず、しっかり効果がある (座り心地がよい) のも驚きであった。伸びないファブリックのDCFを使っていることもきちんと機能している。

このULセモタレは、無駄を極限まで省くアイディアにヤラれた。「既製品にないからMYOGした」が炸裂している一品。

■「BEST MYOGer」:ガベッジバッグ by KOH

KOHくんががMYOGしたガベッジバッグ。


MYOGer精神を感じる、身の回りのあるチープなものでMYOGしたKOHくん。

JITOさんと同じ得票数で「BEST MYOGer」に輝いたのがKOHくん。彼がMYOGしたのは、ガベッジバッグ。

ハイカーもみんな大好きカルビーのポテトチップスの袋を使ってMYOGした、ロールトップ型のバッグ。開口部はジップロックのジッパー部分を切って取り付け、なんと内部はきちんとシーム処理までしてある。

「これでいいじゃん!」というMYOGの初期衝動を感じずにはいられない、カルビーのポテトチップスを使ったバッグに、会場の参加者から多くの票が集まった。

ちなみにこのガベッジバッグは、ハイキングで出たゴミを入れる袋として作ったもの。ポテチの袋を使ったのは、本来ゴミになるものをギアとして再利用するというアイディアなのだそうだ。

今回だけのサプライズで、グレン選出による「GVP」賞も!

■「GVP」賞:バイクパックキング・バッグ by KOUTA

BEST STARTERとダブル受賞になったKOUTAくん。

MYOGer NIGHT#02でサプライズ・ゲストとして参加したグレンが、この回だけの特別なAWARDとして、「GVP」賞を選んでくれた。

「GVP」賞をゲットしたのは、BEST STARTERにも選ばれたKOUTAくん!


グレンとツーショットのKOUTAくん。サイン入りのチョコレートもプレゼントされた。

グレンの人生最初のビッグトリップは、高校卒業後のアメリカ横断(約6,800km)の自転車の旅だった。最近では2021年にはMYOGしたフレームバッグなどを使って、グレイト・ディバイド・マウンテン・バイク・ルート(GDMBR ※4)も旅している。

そんなグレンも唸る、細かなところまでこだわった仕様のバイクパッキング・バッグが、見事「GVP」賞に選ばれた。グレンとのツーショットで、KOUTAくんは最高の笑顔を見せてくれた。

※4 グレイト・ディバイド・マウンテン・バイク・ルート(GDMBR):北はカナダのアルバータ州・バンフから、南はアメリカのニューメキシコ州・アンテロープ・ウェルスまたはコロンバスまで、総延長4455.3kmの自転車用ダートツーリングルート。バイクパッキング・ムーヴメントの中心地であり、バイクパッカー憧れの地。


MYOGer NIGHT #02に集まってくれたMYOGerたち。

この記事シリーズでは、ウルトラライトやMYOGにまつわる、「ULTRALIGHT GARAGE MAKER MOVEMENT」の刺激となるようなコンテンツを、今後もお届けしていきたい。次回もお楽しみに!

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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