スキーハイキング | #18 トニー、サニー、イエスのBCクロカン & MYOGハンモック・トリップ 2DAYS(トリップ編 その2)

『SKI HIKING (スキーハイキング)』は、「歩くスキー」であるBCクロカンにフォーカスした記事シリーズ。
BCクロカンは、滑りながら歩けるその機動力の高さで、スノーハイキングの旅を拡張してくれる (TRAILSがBCクロカンに惹かれた理由はコチラ)
今年はTony (トニー)、Sunny (サニー)という前年のメンバーに、新たにYes (イエス) が加わり、TRAILS Crewらしく「MYOG (※1)」 がテーマとなった。
今回の記事は「トリップ編 その2」として、MYOGしたハンモックでの雪中キャンプの宴会から、翌日のBCクロカンでのスキーハイキングまでの、旅の後半をお届けする。
ULハンモックやULツリーストラップを自作するMYOG SCHOOLと、また自宅でそれらを自作するMYOG kitもリリースしたので、そちらもチェックしてみてください。(ULハンモック SCHOOL / ULハンモック MYOG kit / ULツリースストラップ SCHOOL / ULツリーストラップ MYOG kit)
※1 MYOG: MAKE YOUR OWN GEARの略。ギアの自作を指す。特にここでは、ロング・ディスタンス・ハイキングとウルトラライト (UL) ハイキングの文脈におけるギアの自作を指す。
MYOGしたハンモック、ツリーストラップ、タープでの、雪中ハンモック・キャンプ。
Tony (トニー)
TRAILS INNOVATION GARAGE(以下、GARAGE) の店長。2015年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) 、2023年にはCT (コロラド・トレイル) をスルーハイキング。
Sunny (サニー)
GARAGEの「MYOG番長」。2016年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) 、2019年にCDT (コンチネンタル・ディバイド・トレイル) をスルーハイキング。
Yes (イエス)
学生時代からTRAILSに出入りし、2024年にJMT (ジョン・ミューア・トレイル)を歩いた後、正式にTRAILS Crewにジョイン。JMTではタープやビヴィをMYOG。
夜の宴会。イエスによる「酒のあおき」開店!
実家の「酒のあおき」の前かけをするイエス。
豪雪のなかラッセル (※2) 続きで、体力を削られたTRAILS Crewの3人。2時間かけて雪の地面を整地して、ようやく雪中ハンモック・キャンプの設営も完了。氷点下7℃という気温の中、夜の宴会がスタートした。
イエス:「じゃーん。うちの実家の『酒のあおき』の前かけ(笑)。夜の営業、開始します!」
トニー:「おー、きたね。それ、伊勢の実家のやつ?」
イエス:「そうです!飲みましょう!」
みんな、まずは一杯目は、TRAILS INNOVATION GARAGEから持ってきたクラフトビールで乾杯。
左からSunny (サニー)、Tony (トニー)、Yes (イエス)。
さっそくイエスが取り出したのが、実家の「酒のあおき」で取り扱っている、地元伊勢にある、かつおの天ぱくの「たべるかつお節」なるもの。
サニー:「んーー!これうまい!チップスじゃないけど、なんかこのしなやかな食感がいいね。で、味は酒にマッチするかつお節の味。いいセレクトだ!」
かつおの天ぱくの「たべるかつお節」。商品説明には「生ハムのようにしっとりとやわらかな鰹節」とある。
イエス:「今日は、お酒はGARAGEのがあったんで、つまみでイチオシのやつ持ってきたんですよ。地元にあるかつお節を燻製する『いぶし小屋』で作ったやつなんです。」
トニー:「これ、めっちゃ酒のつまみにいいね。もうひとつ持ってきてくれた、いぶりがっこも、すごい美味しいじゃん。」
※2 ラッセル: トレースのない深い雪のなかを、かき分けて進むこと。または雪を圧雪して、道を切り開く作業。
トニーの仕込んだ、だんご汁であたたまる。
スタート地点は腰まで埋まるほどの深雪。
晩メシのメインは鍋。今年も料理は、GARAGE店長のトニーが担当した。
トニー:「今回は、群馬にちなんで、地元のだんご汁を参考にした鍋にしました。」
サニー:「イエーイ!これトニーさんが事前に仕込みをやってくれたんすか。ありがとうございます!」
トニー「そう、すいとんの団子を事前に仕込んでおいた。だってこの寒さのなか、小麦粉をこねるの地獄でしょ (笑)。この団子に、白菜、ごぼう、きのこを鍋に入れます。」
極寒のなか、早くあたたかいものを食べたいと、3人ともじーっと鍋を凝視し続ける。そしてぐつぐつと煮立ってきて、できあがり。
今回作った、だんご汁風の鍋。使用した鍋は、容量4Lで、重さは53gのULなアルミ箔鍋。
サニー:「うおぉ、これはめっちゃ美味しいです。正直、あたたかいもの食っただけで最高ですよ (笑)」
イエス:「あたたかいもの食べるだけで、マジで疲れが取れますね。あったかいものならなんでもうまい (笑)」
トニー:「おい!ちゃんと味を評価して、味を。」
イエス:「いや、トニーさんの汁の味付け絶妙っすよ。汁がうまい。団子はいらないくらい (笑)」
トニー:「おい。」
サニー:「今回、持ってきたこの53gのUL (ウルトラライト) なアルミ箔鍋も、すげぇ調子いいっすね。3人で使えるサイズで53gですもんね。」
トニー:「このペラペラな感じもULっぽくてたまらんよね。パール金属さんの『アルミ箔深型丸鍋23cm(4.0L)』です。しかも2枚セットで、料理で使う鍋とは別に、もう1つをお湯沸かしでも使えるのがアツい。」
去年のお好み焼きの失敗のリベンジ?そして、食後のパタゴニアの「ワンカップ酒」。
2品目でお好み焼きをつくりはじめる。
GARAGE店長、改めGARAGE料理長トニーの2品目は、お好み焼き。
これは去年のリベンジである。出身の大阪で、学生時代にお好み焼き屋のバイトをしていたトニー。昨年は、自慢のお好み焼きを披露しようとしたところ、ミニトラ (「trangia / mini set」のフライパン) を使ったがために、ひっくり返すときに、バランスを崩し地面にお好み焼きを地面に落としてしまった。結果、自慢のふわふわ感が台無しになったのだった。
サニー:「トニーさん、今年はリベンジで完璧なお好み焼きを、やってくれるんですよね?」
イエス:「僕は去年は参加できなかったので、トニーさんのお好み焼き、楽しみです。‥あれ?トニーさん、どうしたんですか (笑)」
トニー:「あのぅ、間違えて、さっきの鍋に、お好み焼き用に持ってきた肉まで、全部入れちゃった‥。」
イエス:「えーー!それじゃあ、ほぼ具ナシのただの『キャベツ玉』じゃないっすか!」
できあがったお好み焼き。
お好み焼きは、肉なしでさみしくなったものの、自慢のふわふわな仕上がり。そしてトニーが愛用している地元・大阪のソース、またマヨネーズもこだわりのセレクトのものにレモン汁を加えたアレンジで、みんな満足してたいらげた。
お腹も落ち着いたところで、食後用のお酒として、今回持ってきたパタゴニア プロビジョンズの自然酒ミニを取り出した。容量150mlの瓶に入った「ワンカップ酒」だ。3月にローンチされたばかりのこのお酒を、さっそく今回のトリップで試すことに。
今回持参した。パタゴニア プロビジョンズ (Patagonia Provisions)の自然酒ミニ。
トニー:「これ、TRAILSの『BEER RUN』の記事でも登場してくれてる、パタゴニアのユウキくんがオススメしてくれたお酒でさ。前に飲ませてもらったことがあって、すごくおいしくて。」
サニー:「この新しく出た150mlサイズの瓶は、山に持って行くのにいいサイズですよね。」
トニー:「寺田本家の『繁土』と仁井田本家の『やまもり』の2つがあって、蔵に住み着く野生酵母の力を借りたり、木桶で醸したりと、自然環境を大事にしてつくられている、かなりユニークな作り方をしている蔵元なんだよね。」
『繁土』と『やまもり』の2種類がある。
イエス:「ちょっとあっためて、ぬる燗くらいで呑み飲みましょうか。」(熱燗する際の注意点 ※3)
トニー:「『繁土』は、自然に則した酒造り特徴な蔵元なだけあって、特有の酸味とジューシーさがある感じ?あと旨味が強くでてる感じがいいなぁ。」
サニー:「イエスが持ってきてくれたおつまみとのタッグも最高ね。」
イエス:「これ、どっちもかなり個性的なお酒ですね。僕が呑んだ『やまもり』は、常温でもフレッシュさとキレがあって、ちょっとあたためたことで、いい感じにコク深さも出てる感じがします。」
トニー:「これは、山で飲む定番の酒のひとつになりそうだなぁ。」
サニー:「いい感じにできあがったので、そろそろ寝ましょうかね」
※3 熱燗する際の注意点:小瓶のふたを開けて、常温の水をはった鍋に小瓶を入れて弱火で加熱し、沸騰させずに、約80℃までの温度で湯煎する (沸騰したお湯では瓶が割れる恐れがあり、酒の風味も損なわれてしまう)。
雪中ハンモック・キャンプの夜明け。そして、2日目のスキーハイキング。
雪中ハンモック・キャンプの夜明け。
翌朝。夜中、ずっと細かな雪はやまずに降り続いた。しっかりとハンモックで寝ることができたのだろうか。
サニー:「トニーさん!なんか、足元にシェルが被せてあるんすけど、どうしたんですか!?」
翌朝、トニーのハンモックの足元にシェルが被せてあった。
トニー:「防寒的には全然問題なかったんだけど、やっぱりタープが小さくて、夜の間、風向き的にずっと雪が足元から吹き込んで、ハンモックに入り込んじゃってさ」
サニー:「それで、夜中に足元にシェルを被せたんですか? (笑)」
トニー:「これでばっちりだったよ!」
朝の支度をするサニー。
同じく出発の準備をするイエス。
サニー:「自分はだいぶ快適に寝れました。夜中の雪の重さでタープがたわんじゃったから、もうちょっとタープはしっかり張っておきたかった、っていうのはありますね。」
イエス:「自分もぐっすり寝れましたね。夜中にトイレに起きちゃって、寒さでケツが1回ぶっ壊れそうになりましたけど (笑)」
朝の支度がおわり、ハンモック・キャンプも撤収。ギアをすべてパッキングして、2日目のスキーハイキングをスタートする。
MYOGしたDCFのゲイター (20g / 1個、ダイニーマ®︎ コンポジット・ファブリック 1.43oz)。
降雪量もおさまり、天気は前日よりもだいぶ落ち着いていた。前日のラッセルの苦労を思い起こすと、「今日はあれはやりたくないな」と不安がよぎった。そんなことを考えながら、BCクロカンの板を履いて歩きだす。
サニー:「今日は、昨日よりも全然いいんじゃないですか?BCクロカンらしい、歩き方ができそうですよね。」
トニー:「昨日、自分たちがつくったトレースもうまく使いながら、進めるんじゃないかな」
2日目、笑顔でスタートする3人。
天気は前日よりも落ち着き、降雪量もだいぶおさまっていた。前日のラッセルの苦労を思い起こすと、「今日はあれはやりたくないな」と不安を抱えながら、BCクロカンの板を履いて歩きだす。
前半は前日のトレースをたどりながら、スムーズに進んでいくことができた。BCクロカンらしい、滑りながらスイスイ歩く感じを楽しむ3人。
深い雪に包まれた真っ白な森を抜け、丘の斜面をトラバースして進んでいく。
最初は森の中を進んでいく。
もうこのトリップのゴールも近づいてきた。
トニー:「昨日と比べると、かなり快適だねぇ。ようやく、BCクロカンでのスキーハイキングを楽しめてる感じ。」
サニー:「昨日はマジでラッセルがきつかったですからね。今回、自分が使ってるフィッシャーのエクスカージョン 88は、多少のアップダウンがあっても軽快に歩ける感じが気持ちいいっすよ。」
イエス:「BCクロカンは、スノーシューにはない、この独特の『歩く』と『滑る』の間な感じがやっぱり楽しいですね。」
森を抜けた後は、トラバースしを進む。
2日目の行程は、前日のような激しいラッセルはなく、あっという間にゴールにたどり着いた。
去年に続き、豪雪に見舞われたTRAILS Crewのスキーハイキング。今年は「MYOG」をテーマに、ハンモック、ツリーストラップ、タープなど、雪中ハンモック・キャンプのギアを自作した。
MYOGしたギアは、フィールドで実際に使うことで、アップデートポイントも見つかり、実験の収穫が得られた。
3人は「さて、BCクロカン・トリップはどこに行くか?」という話で盛り上がって、また豪雪の苦労を忘れて、楽しい記憶だけにすでに頭の中は上書きをされていた。
今年も豪雪に見舞われながらも、スキーハイキングを楽しみきったTRAILS Crew。
次回の記事では、BCクロカンの板や、MYOGしたハンモックなどについてレポートする、ギア編をお届けする。
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