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Fishing for Hiker | 日本の伝統釣法「テンカラ」が世界中のULハイカーに与えた衝撃 #02 ULハイカーの熱狂から拡散されたテンカラブーム

2025.09.05
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文・構成:TRAILS 写真:TRAILS、Tenkara USA

Fishing for Hiker = ハイカーのための釣りTRAILS誕生から大切にしてきたトレイルカルチャーのひとつフィッシング(釣り)。

このタイミングで、僕たちは、熱狂の原点にフォーカスし、ウルトラライト・ハイキングに “釣り” を組み合わせた「Fishing for Hiker」というプロジェクトを始動させる。

釣行のヒントになる記事はもちろん、刺激的なULギアのリリースや、実践までをフォローアップするスクールなど、さまざまな視点でULハイカーを刺激していけたらと思う。

特集記事としてこのプロジェクトの口火を切ったのは、日本の伝統釣法” テンカラ ” を再発見し、世界中のULハイカーに新たなムーブメントを引き起こすきっかけとなったアメリカのテンカラ・ロッドメーカー「Tenkara USA」。

前回の第1回では「Tenkara USAの誕生」というテーマで、日本の伝統釣法テンカラがULハイカーにより最先端のULギアとして発見された衝撃を中心にレポートした。

今回の第2回では、Tenkara USAのクルーに直接インタビュー。記事の前半では、テンカラがULハイカーを起点に拡散し、その後アメリカのフライフィッシングのひとつのジャンルにまで拡大したというエピソードを。記事の後半では、アメリカのフライフィッシャーたちが見た、テンカラとULハイキングの親和性について語ってもらった。

インタビューに答えてくれたのは、Tenkara USAの立ち上げ初期からクルーとして所属し続けている、TJとジョン・ギアの2人だ。
ではTenkara USAへのインタビュー、お楽しみください。

※1 テンカラ (テンカラ釣り):ロッド (竿)、ライン (糸) 、フライ (毛鉤 けばり) だけという、シンプルな道具で釣る日本の伝統的な釣り (リール等も使用しない)。主に川の上流部の渓流をフィールドに、ヤマメやイワナ、アマゴなどを釣る。欧米など海外では軽量でシンプルなフライフィッシングとして捉えられたりする。

※2 フライフィッシング:イギリス発祥の、フライ (西洋式の毛鉤) を用いる釣り。軽いフライを遠く投げるために、長めのライン (釣り糸) とリール (釣り糸を巻き取る道具) を用いる。ラインの重さを使って投げる「キャスティング」など、独自の技術が必要。


右がTenkara USA創業者のダニエル・W・ガルハルド。今回インタビューに答えてくれたのが、TJ (写真右から2番目)とジョン・ギア (写真左)。

ULハイカーたちの熱狂が、アメリカでテンカラを拡散するきっかけをつくった。



「2009年4月以来 (※Tenkra USA創業以降)、従来のフライロッドは持ち出さなくなった。」

 
これはULのレジェンドのひとりBackpacking Light.com主宰のライアン・ジョーダンの言葉で、アメリカでTenkara USAが、ULに与えた衝撃を物語るものだ。
 
今回のインタビューでは、テンカラがアメリカでひとつのジャンルを築くまでにいたる、その最初のきっかけが、ULハイカーたちのテンカラへの熱狂であったところから始めたい。

 

 

ライアン・ジョーダンによるテンカラを紹介するYouTube「TENKARA Ultralight Backcountry Fly Fishing」より。画像は以下よりhttps://www.youtube.com/watch?v=11TH3i-CXdk&t=2s

—— 今回はインタビューの機会をありがとう!2009年のTenkara USA立ち上げから注目し、3段階の長さ調整が可能なRHODO (ロード) も愛用しています。

日本の伝統釣法であるテンカラの価値を再発見し、ULハイキングと釣りを組み合わせる遊びを広げてくれたTenkara USAをリスペクトしています。

まずは日本のユーザーに向けて、簡単にお二人の自己紹介をしてもらえますか?

TJ:こんにちは、TJです。私は創業者のダニエルを除いて、初めてフルタイムでTenkara USAにジョインしたクルーで、もう10年以上Tenkara USAで働いています。今日はよろしく!

ジョン:こんにちは、ジョン・ギアです。自分もTenkara USAの初期の頃にジョインしたクルーです。私たちのTenkara USAに興味を持ってくれて、とても嬉しいです。

—— Tenkara USAの創業の2009年、世界のULの中心地であるアメリカで、日本の「Tenkara (テンカラ)」が盛り上がっていることに、当時の日本のコアなULハイカーたちはエキサイトしていました。Tenkara USAをスタートしたとき、こういったULハイカーたちの反応はやはり強かったのですか?

ジョン:創業者のダニエルも、ULハイキングとテンカラを組み合わせると、渓流で釣りの可能性が広がることに、非常に興奮していました。またULハイカーへの絶大な影響があったBackpacking Light.com主宰のライアン・ジョーアンは、Tenkara USAの創業の頃からの熱烈な支持者でした。

自分がTenkara USAにジョインする前の2010年頃、そのときにテンカラのことを知ったのですが、それもBPLの大ファンのULハイカーから教えてもらったのがきっかけでした。そのことを思い出しても、当時のBPLを中心にしたULハイカーたちが、テンカラにとても注目をしていたのがわかります。

—— BPLのフォーラムでも、テンカラのギアについてのレビューや、どのフィールドでどんな魚で使えるのかという投稿も盛んで、活発に意見交換されていましたね。日本のULハイカーでも、それに触発されてテンカラを始めた人もいました。

TJ:2010年頃、私自身もテンカラに惚れ込んだタイミングで、熱烈なBPLの投稿者の一人でした (笑)。


Tenkara USAの「Hane」画像は以下のサイトより; https://backpackinglight.com/gear/tenkara-hane-fishing-rod/

—— BPLの独占限定販売のオリジナルロッドで、Tenkara USAの「Hane」を作っていましたね (2018年に再発売)。「Hane」は重量77g、仕舞寸法40cmで、当時としては超軽量な、まさにULハイキングに使えるコンパクトなテンカラロッドですね。

TJ:ダニエルはBackpacking Lite.com (以下、BPL※3)主宰のライアン・ジョーダンととても親しい関係でした。二人ともテンカラにULとしての大きな可能性を感じていて、ULハイキングとテンカラを組み合わせて、どのようにバックパッキングの可能性を広げられるかを考えていました。

ジョン:ライアン・ジョーダンからの意見などいろいろ取り入れて、ダニエルはULで求められることを実現した、超軽量でコンパクトなテンカラロッドを作ることを決めたんです。それが「Hane」です。

—— 2010年代前半、ライアン・ジョーダンが、ULハイキングをバイクパッキングやパックラフティングなど、他のアクティビティと組みわせて拡張する実験のなかで、釣りのジャンルでテンカラをフィーチャーしたことは印象に残っています。改めて、ULハイキングの拡張としてテンカラを捉えられたことが、このムーブメントの発端であることは、非常に興味深いですね。

※3 Backpacking Light.com: バックパッキングライト。頭文字をとって通称BPLと呼ばれている。2000年にライアン・ジョーダンによって立ち上げられた、 UL (ウルトラライト) ハイキングの情報を発信する米国のウェブサイト。ハイカーが集う各種フォーラム (掲示板) では、UL黎明期からグラム単位でのきりつめた軽量化のアイディアなども盛んに議論されていた。

アメリカのフライフィッシングのなかで、ひとつのジャンルを作ったTenkara USA。


Tenkara USAが2011年から始めたテンカラサミット。現在にいたるまで継続している。

—— Tenkara USA創業の2009年までは、アメリカではほとんどテンカラは知られていなかったと思います。実際、Tenkara USAをスタートした時、アメリカではテンカラはどの程度認知されていましたか。

ジョン:Tenkara USAを立ち上げたとき、アメリカでテンカラのことを知っていた人は 20人もいなかったと思います。それこそさきほど話をしたように、最初はULハイカーのコミュニティーで話題になったところがスタートでした。

—— その後、どのようにTenkara USAが知られるようになったのですか?

TJ:創業の翌年の2010年から、Tenkara USA主催のテンカラサミットというイベントを開催し始めました。テンカラの魅力を伝えるプレゼンテーションや、実際に川でテンカラのデモンストレーションなどがあるイベントです。日本からは石垣さん (テンカラ大王 ※4) も参加してくれました。

最初の年はかなり小規模でやりましたが、2011年には100名以上のユーザーが集まってくれるイベントを開催しました。ゲストとして、先ほど話をしたBPLのライアン・ジョーダンなどULハイカーへの強い影響力をもった人に加え、石垣さんは引き続き参加をしてくれました。またpatagoniaの創業者のイヴォン・シュイナードも来てくれて、2011年のテンカラサミットは大きな注目を集めました。


2011年のテンカラサミット。写真右がTenkara USA創業者のダニエル・ガルハルド、写真中央がパタゴニア創業者のイヴォン・シュイナード。

—— patagoniaも、2014年にテンカラロッドを発売し、同時に『シンプル・フライフィッシング 〜テンカラとロッド・リールのテクニック (Simple Fly Fishing: Techniques for Tenkara and Rod and Reel)』という本もリリースしましたね。これもテンカラの認知において大きなことでしたね。

ジョン:この頃からテンカラの注目度も上がってきました。70名くらい収容できる部屋で開催したのですが、100名以上の人が集まって驚きました。その後は300人ものテンカラフィッシャーが毎年集まるイベントに大きくなっていきました。

この頃からフライフィッシングの展示会にも出展しはじめたのですが、テンカラを扱う唯一の会社だったので、会場でも注目されました。



—— Tenkara USAでは、facebookグループの「Tenkara Anglers」も運営していますね。しかも人数が1万人以上もいますよね。
TJ:はい、私たちはコミュニティをとても大事にしてきました。今では1万人もいるfacebook上のコミュニティになっています。このコミュニティは今はTenkara USAの一番の財産とも言えると思います。

私たちはテンカラについての情報を知る機会として、また誰もが自分のテンカラについてのストーリーをシェアできる機会をつくることに、情熱を捧げてきました。

もちろんテンカラのギアは売るのですが、しかしTenkara USAのビジネスにおいて、ストーリーを伝えることが最も重要な要素であり続けています。

—— アメリカでのテンカラの拡大において、Tenkara USAが作ってきたテンカラ・コミュニティの貢献が非常に大きいというのが伝わりました。ただ規模を大きくするだけでなく、テンカラというものの啓蒙や、ユーザー同志のつながりをつくってきたことで、カルチャーとして定着したのでしょうね。

ジョン:そうですね、フライフィッシングのひとつのジャンルとしてできあがっていると思います。今も私たちのウェブサイトでも、「テンカラ・フライフィッシング」とか「日本式のシンプルなフライフィッシング」と表現したりしています。

毎年開催しているテンカラサミットも、300人以上が毎年集まるイベントになっていますし、今ではアメリカのテンカラロッドメーカーは他にも登場してきて、展示会でもひとつのジャンルとして定着していると思います。

※4 石垣尚男: テンカラの技術や歴史を伝える第一人者の一人。テンカラ大王の愛称で親しまれている。Tenkara USA創業者のダニエル・W・ガラハルドや、patgoniaのイヴォン・シュイナードにもテンカラについての伝えてきた経歴を持つ。著書に『科学する毛鉤釣り』など。

 



これまでの前半では、ULハイカーがムーブメントをつくるきっかけとなったというエピソードや、Tenkara USAのヒストリーについて語ってもらった。
 
ここからの後半では、Tekara USAクルーの二人がテンカラの何に夢中になったのか、そのなかに見たULと通底するテンカラの特徴を聞いていきたい。

 

 

フィッシングバムのTenkqra USAクルーがテンカラにハマったきっかけ。


—— ここからは、お二人がテンカラを始めたきっかけや、テンカラに感じている魅力について聞きたいと思います。まずお二人の釣り遍歴を教えてもらえますか。

TJ:私は6歳くらいの頃から、釣りを始めました。当時カリフォルニア州リバモアに住んでいたのですが、兄たちから釣りのやり方を教わって釣りをしてました。

ちゃんとしたロッドもリールも持っていなかったので、棒の先にひもを結んで、その先にエサになる虫を付けて釣っていました。その頃に釣っていたのはブルーギルとトラウトです。小さい頃の釣り方が、今の私のテンカラの釣り方ととても似ているのは面白いですね!

他にも、サンフィッシュ、ナマズ、バス、そしてトラウトとか、いろいろな釣りをしてきました。

—— ジョンは、どんな釣りをしてきたんですか?

ジョン:自分は釣り一家で育ったので、4歳の頃から釣りをしていました。バス、ブルーギル、クラッピー、ナマズ、ホワイトバスなどを釣っていました。

基本的には、ずっと西洋式のフライフィッシングをやっています。アメリカ中西部で育ったのですが、トラウトを追いかけたいがために、西部のモンタナに引っ越しました。もう22年モンタナに住んでます。

—— フライフィッシングのために、モンタナに引っ越すなんて、最高ですね。


 
—— 2人がテンカラを始めたのは、どんなきっかけだったんですか?

TJ:仕事でめちゃくちゃ忙しい生活をしているときで、その中で短い時間でも釣りができる方法としてテンカラを始めました。

Tenkara USAにジョインする前は、PCを販売する小さな会社を経営して、そのときにフライフィッシングを探求したいと思っていたのですが、その頃はなかなか釣りをする時間も作れなくて‥。

その頃にテンカラの存在を知って、これなら30分だけでも時間があれば、釣りができる!と思って、それでテンカラを始めたんです。こんなにシンプルに釣りができるのかと感動しました。

そこからテンカラに惚れ込んでしまったんです。テンカラは自分の人生を変えてくれたものでもあるんです。今ではテンカラの会社で働いているのですから。


 
—— 短い時間できびきび釣りができる手返し (※5) の良さは、テンカラの醍醐味でもありますね。ジョンは、テンカラを始めたのはどんなきっかけだったんですか?

ジョン:テンカラを始めたのは40歳頃で、当時は、モンタナ州ボーズマンのフライショップで働いていたんです。同じショップにいた、ULにハマっている友達がいて、彼からテンカラのことを教えてもらったのがきっかけです。その友達も、自分と同じでフライフィッシャーでした。

最初はウェブサイトでテンカラを調べたんですが、シンプルに美しく釣りをする姿に見惚れたのを覚えています。その後すぐにTenkara USAに注文しました。

テンカラ = 渓流でのシンプルなフライ・フィッシング。



—— もともとフライフィッシングをやっていた2人が、なぜテンカラにハマっていったのかを、具体的に聞かせてもらえますか。

ジョン:フライフィッシングと比べて、よりシンプルで、合理的であるところに惹かれました。それでいて、渓流でしっかり釣りができるというのが魅力でした。リールや長い釣り糸がなくてもきちんと釣りができますし、荷物もミニマムで行くことができます。

—— フライフィッシングに比べて、よりシンプルで、より必要十分な合理性がある、というところですね。納得です。TJはどうですか?

TJ:手返しのよさや短い時間でも釣りができることは先ほども話しましたが、他のどの方法よりも効果的でもあると感じています。ジョンと同じように、渓流釣りでは、テンカラが釣りの方法としてとても効果的だと実感できたのが大きいです。


 
—— テンカラは人間と自然の間にある道具が少ないのが特徴ですよね。その分、よりシンプルで、自然に溶け込む体験ができると思っています。この観点で、何か感じていることはありますか。

TJ:テンカラに特徴的なのは、フライ (毛鉤)が、まるで本物の虫が水面に落ちているような感じがすることです。それが魚をキャッチするのに、とても効果的なんじゃないかと考えています。

生きた虫にはラインはつながっていませんよね?ただ川の流れに漂っているだけです。テンカラは人工的な要素がほとんどなく、フライは、川の自然な流れの一部となるのです。まるで本物の死んだ虫が水面に落ちているように。

ジョン:TJの意見に全く同感です。ラインをコントロールしてナチュラルドリフト (※6) をできることが、渓流におけるテンカラの大きなメリットの一つだと思います。手返しのよさ、直感的にフライを流せることは、釣りとしてとても効果的で合理的なところです。

また次のキャストを素早く行うこともできます。それによりフライが、魚がいる場所に長く留まります。この点も、テンカラという釣りの方法が効率的なポイントです。それが渓流における大きなメリットだと思います。

※5 手返し : 一言で言うと、釣りのテンポのこと。例えば、餌釣りでは、餌を鉤に付ける、餌を振り込む、流してアタリを待つ、反応が無ければ引き上げる、次の振り込みのために餌の付いた鉤を左手に持つ、という一連の動作を繰り返すわけだが、テンカラの場合は、餌を付け替えたり、鉤を一旦左手で持ったりせずとも、竿の一振りで次に移れると言う点で、釣りのテンポが早いと言える。釣りではこのようなことを総じて、手返しが良い、と言う。誤解しないで欲しいのは、手返しが良いことが必ずしもマストではないと言うこと。じっくり探って確実に釣ると言う方法もあるのだから。

※6 ナチュラルドリフト: フライが自然と流れること。対して、ラインなどに引っ張られて水面を滑るなど不自然な動きをしてしまうことをドラグがかかるという。

テンカラのシンプルさがもたらす自然との距離の近さ、ULとの共通性。


 
—— 道具が少ないからこそ、自然との距離が近く感じられる部分がありますね。また機能性を突き詰めたシンプルさという部分もあると思います。 そういった部分が、ウルトラライトのフィロソフィーと近いのだと思っています。

ジョン:そうですね。テンカラのロッドで初めて魚を釣り上げた時、あのダイレクトな繋がりには本当に興奮しました。私はフライフィッシングをずっとやってきましたが、テンカラは信じられないほど親密な体験で、魚とフライ、そして水の中の魚とつながれる感覚が味わえます。本当に楽しくて、またそれはとても美しい体験でもあります。

—— テンカラって、とてもシンプル。そしてイージーな側面もある。でもある部分では、とても深い釣りですよね。少ない道具で工夫しなければならない分、スキルとか知恵が磨かれていく感覚があります。それについては、どう思いますか?

TJ:例えば、テンカラはスニーキー (忍者みたいな静か) になるスキルが必要になったりしますね。これは遠くにフライを飛ばしづらいとか、テンカラのシンプルさによるものです。

またシンプルだからこそ、自然の水の流れを理解して釣りをすることが、重要になったりしますね。

—— 釣りを楽しみ始めると、自然のことをたくさん理解するようになりますよね。例えば、今日はどういう風が吹いているかとか、今どんな虫が飛んでるかとか。そういったことをたくさん理解するようになりますよね。テンカラは、こういったことを、より推し進めてくれると思うんです。より少ない道具でやる釣りなので、より自然を理解しなきゃいけない。

TJ:テンカラでは、身の回りの自然環境を、きちんと観察することが大事になります。

例えば、釣りに行って、鳥が水に潜って虫か何かを追っているような動きをしているのを見たとします。そうすると鳥が、そこに魚がいる可能性が高いと教えてくれるわけです。テンカラは、そうやって自然を知ろうとするきっかけを与えてくれるんですよね。

—— シンプルな道具であるが故、自然を知ろうとし、新しい工夫を必要とさせてくる喜びがありますよね。

ジョン:そうですね。釣りに行けば、周りの自然について深く知ることができるのも、テンカラに夢中になる理由のひとつだと思います。

ギアを売るだけでなく、日本のテンカラのストーリーを伝えるという理念。


 
—— テンカラを広めるために、Tenkara USAとして何を大事にしていましたか?

TJ:Tenkara USAは、日本以外でテンカラを、きちんと理解し、伝えた最初のメーカーです。Tenkara USAは、テンカラがまったく存在しなかった市場に、新たにテンカラを持ち込みました。

それだけではなく、今では日本国外の人々に広く知られるテンカラのストーリーを、全力で伝えることに、今でも最大の情熱を注いでいます。ただプロダクトを売るだけではなく、テンカラのストーリーを伝えたいというのが、私たちの情熱です。

石垣さんのように日本のテンカラに詳しい人々から教わったストーリーを伝えたいという私たちの情熱と、お客様に対する私たちの真の思いやり、これは一部の企業が言うような単なるキャッチフレーズではありません。それが、Tenkara USAが今も事業を続けている最も重要な理由のひとつです。

私たちはテンカラのストーリーを愛し、その一部であることを誇りに思っています。Tenkara USAがなければ、アメリカでテンカラのことを知る人はほとんどいなかったでしょう。私たちは「Tenkara revolution (テンカラ革命)」の始まりに貢献できたと自負しています。そして今もテンカラのストーリーを伝え続けることに貢献するメーカーであることを誇りに思っています。


 
「Fishing for Hiker」の第2回として、ULハイカーの熱狂から拡散されたテンカラブームのエピソードと、テンカラに見るULハイキングの本質との共通性について、Tenkara USAクルーの二人に語ってもらった。。
 
次回の記事では、テンカラが日本のULハイカーに与えた影響についてレポートする。

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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