TRAILS REPORT

Fishing for Hiker | テンカラ釣行 4 days 木曽川水系 (前編)

2026.01.30
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文・写真:Tony 構成:TRAILS

釣り人に春を告げる「渓流解禁」まで、あと1ヶ月になりました。目の前の雪の季節を楽しみながらも、もう頭のなかは渓流釣りモードにシフトしている釣り人やハイカーも多いはず。

ということで、脳内の渓流釣りモードをブーストすべく、「Fishing for Hiker」の記事シリーズをお届けします。

今回はTRAILS Crewトニーが昨シーズンの禁漁ギリギリに行ったテンカラ (※1) 釣行のレポート。

トニーは、夏休みの連休を使って、ヤマトイワナを求めて、それまで行ったことのないエリアに、出かけようとプランニングをした。しかし、あいにく晩夏の豪雨に出くわしたり、一筋縄ではいかない旅模様に。はたして、どんな釣行になったのか。

※1 テンカラ (テンカラ釣り):ロッド (竿)、ライン (糸) 、フライ (毛鉤 けばり) だけという、シンプルな道具で釣る日本の伝統的な釣り (リール等も使用しない)。主に川の上流部の渓流をフィールドに、ヤマメやイワナ、アマゴなどを釣る。欧米など海外では軽量でシンプルなフライフィッシングとして捉えられたりする。

Fishing for Hiker

Fishing for Hiker = ハイカーのための釣り。TRAILS誕生から大切にしてきたトレイルカルチャーのひとつフィッシング(釣り)。僕たちの熱狂の原点にフォーカスした、ウルトラライト・ハイキングに “釣り” を組み合わせる「Fishing for Hiker」のプロジェクト。ULハイカーが釣りをする際にヒントとなる記事に加え、刺激的なULギアのリリースや、実践までをフォローアップするSCHOOLなどもしていく。

夏休みの連休を使って、シーズンラストの釣行。


シーズンラスト釣行はどこに行こうか。

2025年9月後半、遅めの夏休みを取って、禁漁ギリギリにシーズンラストの釣行、どこに行こうかと妄想を膨らませていた。どうせならテンカラ釣りとハイキングを組み合わせて、思いっきり遊びたい!

せっかくの連休だから、北海道でオショロコマ (※3)?山陰のゴギ (※4)?日本各地の魚たちの姿を思い浮かべる。

TRAILS Crewに自分のプランの相談をすると、テンカラ発祥の地と言われている (諸説あり) 、木曽川に行ってみたらと、楽しそうな提案をもらった。


行き先は木曽川水系に。

歴史のところもがっつり掘りたいが、今回はそこまで時間がなさそうなので、シンプルにテンカラを楽しむことに。でも、テンカラにゆかりが深いフィールドで、シーズンラストの釣行を締めくくるのはいいじゃないか。

ということで、行き先は木曽川水系に決定。さっそく、木曽川水系の地図とにらめっこしていると、そういえば!と思い出す。

ここらへんは、もしかしたらヤマトイワナの生息地じゃない?僕は、まだヤマトイワナに出会ったことがなかった。これは初めましてのチャンスになるのではないか。こりゃ、やばいな。

「テンカラに縁がある場所で、ヤマトイワナに出会う」

こうして、シーズンラストに相応しい、釣行プランができ上がった。

※3 オショロコマ:サケ目サケ科イワナ属の魚で、別名カラフトイワナ。絶滅危惧種に指定されていて、日本での生息地は北海道の東部・北部のみ。サケのように海に下って成長する降海型 (サイズは60〜80cm) と一生を川で過ごす河川残留型 (サイズは20~25cm) がいて、現在日本に生息しているのはほとんどが後者だ。

※4 ゴギ:島根県・広島県・岡山県など中国地方のみに生息するイワナの亜種。「幻の魚」とも呼ばれる。イワナによく似ているが、背面にある白点が頭部にまであることでイワナと区別される。河川改修など環境の変化に敏感で減少傾向にあるため、自然保護の象徴ともされる魚。

いよいよはじまった、木曽川水系でのテンカラ釣行 4days。


渓流沿いのガレた岩場を進んでいく。

早朝に自宅を出発し、お昼前に長野県の木祖村に到着。残暑の暑さも抜けて、ほどよく肌寒いくらいの気温。

今日は、事前に調べていた川の源流部までハイキングをする予定。登山口まで到着。バックパックには、源流部で野営をするためのギアに、テンカラロッド、毛鉤、ランディングネット、それに予備のラインなどのフィッシングギアをパッキングしてある。

登山口の近くにかかっていた橋から下を見下ろすと、透明度が高く青々とした渓相が眼下に一望できた。一刻も早くロッドを振りたい!テンションが上がりすぎて、ニヤニヤが止まらない。

「うしっ!出発っ!」一人なのに、大きな声が出てしまった。

登山口から3時間ほど歩くと、入渓できそうな場所を発見!


テンカラ釣りにベストなポイントを発見。

さらに奥の源流部まで行くために先を急ぐか、ここでちょっとロッドを振るか‥。振ります!

今回持ってきたのは、Tenkara USAのRHODO (ロード)。長さが、270cm、297cm、320cmと3段階で変えられるので、源流域の狭いでも渓流の広め川でも、これ一本でこなせるロッド。今回のような初めての山域で情報が乏しい釣行には、川幅の状況などに応じて、ロッドの長さを変えられるRHODO (ロード)でしょ、と迷わず選んだ。

ロッドを取り出して、水面をジーッと見つめていると、少し先で、パシャッ!という音と共に水面から小さな水しぶきが上がった。

居ても立っても居られず、落ち着けと自分に言い聞かせて、ロッドを振り出す。こういう時に、すばやく釣りを開始できる取り回しの良さがテンカラの魅力のひとつ。


ライズが合った場所の奥を目掛けてキャスト。

ライズ (※5) があった場所に数回、毛鉤を流してみると、黒い魚影が水面に近づき毛鉤に一気に向かってきた。

来た!っとフッキング (※6) もきまり、慌て気味に魚の引きに合わせて寄せようとした瞬間、ローリング (※7) され、針が外れた‥。

うぁーーっ!

叫んだ後は、時すでに遅し。同じ場所に別パターンの毛鉤を流しても、水面はシーンとなり、魚影もなくなってしまった。

はじめての川、しかも1投目の出来事ゆえに興奮と悔しさが込み上げる。くそッ、1投目の雑さが出てしまった… あ〜。

いやいや、まだはじまったばかり。これから3日もある。ここからここから。気を紛らし奥へ進む。

途中からトレイルを外れてオフトレイルを進む。堰堤をいくつか越えながら、5時間ほどハイキングして、源流部の奥へと入っていく。少し暗くなり始めたので、今日はここで終了。


MYOGしたタープを設営。ブッシュは多いがフカフカな寝床をゲット。

ここに来る途中の河原に、ちょうどよいフラットな場所があったことを思い出したが、日が暮れて辺りは徐々に暗くなってしまったため、近くで野営ができそうな場所を探すことにした。

ようやく野営地を見つける。昨年にアメリカを歩いた時にMYOG (MAKE YOUR OWN GEAR=ギアの自作) したタープを広げて設営。明日の釣果に思いを馳せながら、スリーピングバックに潜り込んで眠りにつく。

「ザァーーーーー…」。激しくタープを打ちつける雨音で目が覚めた‥。

想定以上のどしゃぶりに気を揉む。これだけ降られると、川が荒れ、明日は釣りできないんじゃないか‥。

※5 ライズ:魚が水面近くの虫などを捕食しに、水面まで上がってくること。

※6 フッキング:魚が毛鉤や餌に食いついた際、魚の口にフック (針) をしっかりと掛ける動作。魚が逃げたり、針が外れたりするのを防ぐテクニック。

※7 ローリング:ヤマメやイワナが掛かったハリを外そうとして体をねじり、回転する特有の抵抗行動。

大雨によりプラン変更を余儀なくされ、違う支流へと向かう。


一晩続く雨で濁流へと変化した川。

天気予報では雨予報ではなかったが、バタバタとタープに激しく雨が打ち付けられている。

すぐに止むでしょと、自分に言い聞かせて目を閉じるも、1時間、2時間経っても止まない。それどころか更に雨が強くなる。不安な時間が刻一刻と過ぎていった。

朝になり、空が明るくなり始めても雨音は静まらず、心配になりタープから出て川の様子を見に行くと、昨日まで美しかった渓相が濁流へと豹変していた。

答えはわかりきってはいた。それでもわずかな奇跡を信じて、試しにキャストしてみる。しかし強風と濁流で、全くといっていいほど釣りにはならなかった。

おまけに、昨夜、野営を予定していたフラットな河原は、川から離れていたにも関わらず、濁流の底に沈んでしまっていた。改めて増水した時の川の恐ろしさを目の当たりにした。昨夜まで、いよいよ本番!と息巻いていた自分が懐かしい。


この川では釣りを諦め、雨の中、下山をする。

この状況では流石に釣りを続けることもできないと思い、思い切って下山を決断。雨に打たれながら下山をして登山口まで戻ってきた。

気落ちはするものの、なんとかプラン変更して、この水系で他にいける川はないかと考えていると、またすぐにやる気が復活してきた。

こういうことがあってからの方が、旅が面白くなるのは、経験上わかっていた。

地元の人に木曽川水系の情報を聞き取り、なんとか入渓ポイントを見つける。


下山後、釣りができそうな場所を見つけて再度、源流部を目指す。

一度、下山をすると、まずは登山口近くのお店やキャンプ場の管理人さんに、現地情報の聞き取りを開始!

「さすがに、この雨の状況では釣りは難しいですよぉ〜」と、想像通りの答えが返ってきた。

僕がいたキャンプ場に、ちょうど漁協の担当者が来て、この人なら釣れる場所を知っているかもしれないと、前のめりで相談してみた。

すると、予想的中!今朝時点ではまだ濁りがマシだったという川をいくつか教えてくれた!


増水しているものの、濁りは浅く、なんとか釣りができそうな渓相に。

情報をゲットした川を、1本1本、実際に足を運んで様子を確認しに行く。

1本目、2本目の川は無惨にも濁りがひどくなっており断念。3本目は水量は増えているが、濁りは浅く、釣りができないほどではない。

地図を確認すると、源流部で支流がいくつかに分かれており、一本がダメだったとしても違う支流を狙いに行ける場所だったので、ここしかない!という直感がはたらき早々に決断。その川の源流部に向かって歩き出した。

すでに夕暮れが近づき、徐々に辺りは暗くなってきたが、少しでも源流部に近付こうとナイトハイキングを続けた。先に進んだはいいが、野営地を見つけるのは大変だった。無理やり、見つけたのは、本当に狭い場所で、不恰好ながら無理やりタープを張る。


快適ではなくても、眠れる場所を見つけて野営。


温かい晩御飯がナイトハイキングで疲れ切った体を温める。

狭い野営地で、食事をとって休息。

今回持参したストーブセットは、FLAT EARTH EQUIPMENTのMONK’S STOVEに、EVERNEWのTornado flamerという組み合わせ。300ml程度のお湯を沸かすのに最適化したミニマルなアルストに、風防のフィンが炎を旋回させ加熱効率を高めてくれるTornado flamerで、より効率的な燃焼をさせるという組み合わせ。

食事はマウンテングルメラボのリゾットを入れて、ちょっと贅沢な気分を味わえる食事で、1日の疲れをいやす。

明日はどんなことが待ち構えているのか、ヤマトイワナに出会えるのか、それ以上に釣りはできるのか。

そんな不安を抱えながら、でもどこか、この状況を楽しんでいる自分がいた。


狭い野営地での休息のひととき。

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利根川 真幸 | TRAILS Crew

利根川 真幸 | TRAILS Crew

2015年にPCT (パシフィック・クレスト・トレイル) をスルーハイキング。2023年にはCT (コロラド・トレイル) をUL × MYOG (MAKE YOUR OWN GEAR)のスタイルでスルーハイキングした、ロング・ディスタンス・ハイカー。トレイルネームはTony (トニー)。2023年10月にTRAILSにジョインし、『TRAILS INNOVATION GARAGE』の店長に。

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