BRAND STORY

#006 GRANITE GEAR / グラナイトギア – マスプロダクト初のウルトラライトバックパック

2017.06.21
article_image


後編:ハイカーズデポ土屋智哉が語る「グラナイトギアと日本のULシーン」

前編からの続き)2003年リリースのヴェイパートレイルは、アメリカでは大ヒットしたものの、当時の日本での評価は一部のコアなユーザーに限られていた。それはゼロ年代前半、日本ではウルトラライトという言葉自体、ほとんど知られていなかったことが大きい。

しかし、その9年後、2012年にその後継モデルであるクラウンV.C.60が発売されると、数多くの日本のハイカーに受け入れられ、国内のウルトラライトシーンに一石を投じる存在となった。

p1220964

この9年という歳月でなにが変わったのか。グラナイトギアのバックパックの国内でのプレゼンスはどう変化していったのか。この変遷について、日本にグラナイトギアの代理店ができる前から同ブランドを見つづけてきたハイカーズデポの土屋智哉氏に伺った。

GG14



日本のULマーケットでエポックメイキングだったのは、ゴーライトではなくグラナイトギアのバックパックだった




- ヴェイパートレイルが発売された2003年当時の国内の状況を教えてください。

土屋「自分がゴーライトのバックパックを見たのが99年。正直、ペラペラで衝撃的でした。当時は僕も今とは考え方が違って、アメリカのクラシカルなバックパックの影響をすごく受けていて。だからフレームもパッドも、スタビライザーも無いのは信じられなかった。結果、ゴーライトやレイ・ジャーディンを面白いとは思いつつも、積極的に輸入しようとは思いませんでした。もっとちゃんと売れる軽量ザックはないかなって探していた時期でした」
Breeze

ゴーライトのブリーズ(Golite / Breeze)。レイ・ジャーディンのデザインをベースにした、元祖ULの「ペラペラ」バックパック。背面のフレーム、パッドもウエストベルトもスタビライザーも無い構造は、あまりに衝撃的だった。それゆえ理解されるまでに時間がかかった。

- 既存のULバックパックは当時の日本では理解できないけど、ヴェイパートレイルなら大丈夫だと?

土屋「ヴェイパートレイルを知ったのは、発売前のアウトドア・リテーラー・ショー(ORショー)。同時にヴァーガも出ていました。ヴェイパートレイルは60ℓで約1kg。いまのULの基準で見ると重いけど、当時であればすごく軽い。背面のフレームはないけどちゃんと背面シートとパッドはついている。ウエストベルトもチェストストラップもある。ゴーライトを知ってる当時の僕もようやく理解ができる一番ミニマムなものが、この背面システムだった。これだったら自分も理解できるし、他の人も理解できる。グラナイトギアは信じられる!と。ULパックはガレージブランド(コテージ・マニュファクチュアラー)が主流でしたが、マスプロダクトが初めて作ったウルトラライトバックパックだと思います」

p1220807

- 実際に仕入れて反響はどうでしたか。

土屋「当時は、僕が働いていたODボックスでしか扱っていなかったこともあって、なかなか理解されなかった。メディアへの露出もなかったし。ちゃんと売れるようになったのは、日本に代理店ができてから。2006〜07年くらいじゃないかな。2005年以降、軽量なものがある程度理解されるような風潮がでてきてからですね。いまでこそオスプレーのエクソスっていう軽量ラインがあるけど、それがまだ無かったときに、軽量でおすすめなのがヴェイパートレイルでした。

最終的にすごく売れたバックパックにはなっていないけど、やっぱり日本のULマーケットの中で何がエポックメイキングだったかといえば、ゴーライトのザックじゃないんですよ。グラナイトギアだった。ヴェイパートレイルがあったことでULの理解が深まりました。たとえばグレゴリーからゴーライトに移行するとしたら落差がありすぎてみんな理解できない。その間のワンクッションになったのがヴェイパートレイルだったんです」



グラナイトギアには、ヴェイパートレイルの流れを守りつづけることで定番化していって欲しい




- 国内でウルトラライトを浸透させる上で欠かせない役割を担っていたわけですね。

土屋「そうですね。ただここで大事なのは、ヴェイパートレイルだけじゃなくてヴァーガもあることなんです。ヴァーガは、ヴェイパートレイルと同じくらいのサイズだけど、背面のフレームシートもパッドもついていないモデルなんです。ヴェイパートレイルだけだと、ULバックパックへの不安から、足りないものを付け足そうとする人が出てくるかもしれない。でも、よりシンプルなヴァーガがあったことで、相対的にヴェイパートレイルにも十分な機能があることを提示できていたんです。だから、より軽量なものが欲しい人はヴァーガをどうぞと。要はヴェイパートレイルとゴーライトの中間に位置するバックパックだったのです。

61X6Cj5G3DL._UL1500_

ヴェイパートレイルと同時に発売されたヴァーガ / Virga。容量52ℓで約540gで、背面のフレームもパッドもついていない、よりウルトラライトなモデル。現在はヴァーガ2(写真)にアップデートされている。

順列をつけるならば、【グレゴリーおよびオスプレー】→ヴェイパートレイル→ヴァーガ→【ゴーライト】という感じ。もしグラナイトギアがなかったら、ユーザーの目線がゴーライトまでたどり着かないかもしれないけど、この存在のおかげで理解しやすくなったんです。こういう効果は間違いなくあったと思います」

- 2012年にはヴェイパートレイルに代わってクラウンV.C.60が発売されました。

土屋「ヴェイパートレイルは、実際にロングディスタンスハイカーが選ぶULバックパックとして、使われてきたのが大きいですよね。トラウマが使っていたのもそうだけど、日本だとトリプルクラウンの舟田くんがメリディアンヴェイパーの雨蓋を取ってPCTを歩いています。またハイカーズデポの長谷川もヴェイパートレイルでPCTをスルーハイクしました。そのようなにロングディスタンスハイカーに選ばれた実績や支持があって、それで満を持して登場したのがクラウンだと思います。

GG15

トリプルクラウンを達成した舟田氏は、最初のPCTをスルーハイクした際に、グラナイトギアのメリディアンヴェイパーを選んでいた。

ヴェイパートレイルが出たときのようなインパクトはないけど、進化はしていると思います。背面に樹脂パネルを一枚入れて面をつくり、スタビライザーもつける。それはスルーハイカーを考えてのこと。背負う食料が増えて荷物のかさが増えた際でも背負いやすいようにしているのだろうと。

マイナーチェンジ的な漸進的な進化ですが、グラナイトギアはこのままでいいんです。僕はヴェイパートレイルを今でも自分のお店で売りたいと思っているほどですから(笑)。グラナイトギアは、ヴェイパートレイルの流れを守りつづけることで定番化していって欲しいですね」

P1550301

グラナイトギア / ホグバック(GRANITE GEAR / HOGBACK / 33L, 860g)。2017年春にCROWN2と同時に発売されたホグバック。ゼロ年代からULにハマっていた人はご存知であろう「Wisp」が、2017年にリザインされ「ホグバック」として日本限定で発売。フレームレスで背面シートのみの構造は、ヴェイパートレイルと共通。フロントフラップの内側にポケットが付いたり、サイドにストレッチポケットが付いたり、ヒップベルトがよりシンプルになったり、細かなアップデートがされ、使いやすさが向上している。クラシックなULスタイルが好きな人にぐっとくる、名作のアップデート。ヴェイパートレイルのアップデートも期待してしまう。


関連記事

BRAND STORY #003 OMM / オーエムエム – Product is born in the race.


土屋智哉の10年 ウルトラライトとロングトレイル / (前編)ULハイカーの葛藤


WRITER
根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。現在はアウトドア系のメディアを中心に執筆活動を行なう。著書に『ロングトレイルはじめました』(誠文堂新光社)がある。

>その他の記事を見る