TRAILS REPORT

HAMMOCKS for Hiker | ハンモックギア2019 #04 ハンモックでスルーハイキング

2019.06.12
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取材・構成:TRAILS 写真:TRAILS, 渡辺ハンモックン, アイちゃん

『ハンモックギア2019』も今回の第4弾で完結です。この記事では、ハンモックを実際のハイキングでどう使いこなせばいいのか? ハウツーをお届けします。

いわば実践編になるわけですが、そのテクニックやTIPSを、とある2人のハイカーを通じてお伝えします。その2人はいずれも一般のハイカーで、ハンモックにハマってしまいハンモック泊をしまくっているのです。

しかも、2人は奇しくも今年のゴールデンウィークに、あらたなチャレンジとして国内のロングトレイルをハンモック泊でスルーハイキングするという旅にでました。

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ハンモックを11個所有している渡辺ハンモックン(左)と、独自のハンモックシステムを持つアイちゃん。

まず1人目は、渡辺ハンモックン(先日の『HAMMOCKS Meeting』の記事にも登場)。彼は、3泊4日で高島トレイル(80km)をスルーハイクしました。

2人目は、アイちゃん。彼女は、5泊6日で熊野古道(110km / 高野山〜熊野本宮〜那智大社)をスルーハイクしました。

2人のハンモックに対する考え方や方法論、リアルなスタイルをぜひぜひ参考にしてみてください。



渡辺ハンモックンが高島トレイルで実践したハンモック・システム(3泊4日 / 80km)



渡辺ハンモックンは、なんとハンモックを11個も所有しているという、コレクターでもある。そんな彼の普段のお気に入りは、軽量 & コンパクトなミニマムなスタイル。しかし今回の高島トレイルでは、日程の長さ、天候を考慮した、ロングトレイル仕様のシステムで臨んだ。

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[ハンモック] WARBONNET OUTDOORS / Blackbird, [タープ] Hummingbird Hammocks / Heron Tarp, [スリーピングバッグ] WESTERN MOUNTAINEERING / SummerLite, [スリーピングマット] THERM-A-REST / RidgeRest

ハンモックン:今回、大きく2つギアを変更しました。1つはハンモックを「WARBONNET OUTDOORS / Blackbird(ウォーボネット・アウトドアーズ / ブラックバード)」というバグネット付きのものにしました。理由は、ゴールデンウィークの高島トレイルは蒸し暑くて虫がいそうだなと。

1日くらいだったらガマンしてもいいんですが、でも今回は3連泊するのでちゃんと寝たいなというのが大きかったですね。そのぶん重量は重くなりますが、今回は重さよりも快適性重視でした。

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このハンモックは斜めに寝やすい独特の形状なので、安眠できるとのこと。

もう1つは、タープ。事前に天気予報を調べていたら、かなりの確率で雨だったんです。それで雨対策で、大きめのタープにしたほうがいいと考えて、「Hummingbird Hammocks / Heron Tarp(ハミングバード・ハンモックス / ヘロンタープ)」にしました。



想像以上の暴風雨に見舞われるも、寝袋が濡れることはなく快適に過ごせた。



予報どおり2日目の夜から雨が降り出した。歩き終えるまで雨という状況だったそうだが、特に2日目の雨は暴風雨で横殴りの雨。いくら樹林帯とはいえ、雨風がかなり厳しかったという。そこをどう乗り越えたのか。

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雨降る根来坂峠。

ハンモックン:タープを大きいサイズに変更しておいて良かったですよ、ほんと。いつものミニマムなものを持っていっていたら、即刻下山でしたね。

あとバグネットが意外に役立ちました。横殴りの雨だったのでタープがいくら大きいとはいえ、横から吹き込んできたりしていて。でもその内側にバグネットがあるので、ある程度防げたんですよね。おかげで内部は濡れずにすみました。これがバグネットなしだったらビショビショで寝られたもんじゃなかったですよ。

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ハミングバードハンモックのヘロンタープが大活躍。

あとスリーピングマットも、雨を想定して保水しない「THERM-A-REST / RidgeRest(サーマレスト / リッジレスト)」にしたのも正解でしたね。

これテントだったらグショグショの地面(※)に設営しないといけなかったわけで、そういう点でもハンモックで良かったなあと思いました。

※地面の状況がわるい時に効果的なハンギングついては、プルージックというロープワークを用いた手法がある。以前、ハイカーズデポのニノがそれを詳しく紹介した記事があるので、コチラを参照ください。

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高島トレイル終点の桑原橋に無事ゴール。

今回、高島トレイルに行ってみて本当に良かったと思っています。一番の魅力は、どこでも幕営できることですかね。

あとは僕にとっては、初めての関西エリアの山旅だったのですが、トレイルからは琵琶湖や高島市の夜景が一望できて、とてもキレイでした。

山も低山ではありますが、高原あり、ブナ林あり、登山道あり、不明瞭なエリアあり、水場も限られアップダウンも激しく、登山の魅力すべてを詰め込んだ感じで。己の実力が試されるようなトレイルだったことも、すごく楽しかったですね。



アイちゃんが熊野古道で実践したハンモック・システム(5泊6日 / 110km)



つづいて、アイちゃん。彼女のスタイルの最大の特徴は、チューブツェルトという大型ツェルトで、ハンモック全体をぐるっと覆ってしまうスタイルであること。とても独創的で、彼女ならではのこだわりや、ハンモックへの偏愛ぶりがビシバシと伝わってくる。

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[ハンモック] Hummingbird Hammocks / Single, [シェルター] FINETRACK / Tubezelt, [スリーピングバッグ] Highland Designs / Down Bag, [その他] THERM-A-REST / Slacker Hammock Warmer

アイちゃん:以前はタープを使っていたんですけど、夏場以外はやっぱり寒いじゃないですか。しかも虫も入ってくるし、開放的すぎて人の視線に触れるのもイヤで。それで、ニノさん(ハイカーズデポのニノ)が、冬期のハンモック泊にチューブツエルトを提案していたのを知って、試してみたのがきっかけです。

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チューブツエルトは、チューブ型ゆえ両端は絞るだけの簡易的な構造になっている。そこでアイちゃんは、密閉性を高めるべく洗濯バサミで閉じる方法を編み出した。

ニノさんは、両サイドをコードで絞るだけの構造なのでラインから水がつたってくるという理由で、雨の日は使えないって言っていたんです。でも、私のように、洗濯バサミでとめる張り方であれば、ぜったい大丈夫だと思っていて。

それで雨の日にも試して大丈夫なのを確認した上で、熊野古道に持っていきました。

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熊野古道に行く前に、自宅近所の裏山でテストを繰り返した。



床に水がたまるハプニング発生! でも、ハンモックは浮いているから問題なし。



1日目から雨に降られたアイちゃん。しかも豪雨。いつの間にか浸水し、気づけば床は水びたし。約2リットルほどの水がたまっていたという。それでも心が折れることもなく、ハンモック泊を楽しんだ。いったい何がそうさせたのか?

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熊野古道は1日目から雨だったが、アイちゃんは装備には自信があったので意気揚々と進んでいく。

アイちゃん:びっくりするほど水がたまっていたんです。チャプチャプいってて(苦笑)。でも、ハンモックは浮いているので寝袋もまったく濡れていないし、雨風もしのげているし、包まれている安心感もあって、問題なく過ごすことができました。

ただ、浸水はなんとかしたいとは思っていたので、3日目はあえて斜面に設営して、チューブツエルトの両サイドを開放して水が流れるようにしてみたんです。これが大成功でした。

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浸水対策として考えた斜め張り。ハンモック泊だからこそ可能なアイデアだ。



熟睡できるハンモックと、視界が遮られるチューブツエルト、が最高の組み合わせ。



「ハンモック + チューブツエルト」という独自の組み合わせ。よくよく考えると、じゃあツエルトだけでもいいのでは? ハンモックいらなくない? という疑問や、タープのほうが開放感があるのでは? という意見も出てきそうだ。でも、そこにはこの組み合わせじゃないとダメな明確な理由が存在していた。

アイちゃん:ハンモックはマストです。なぜなら、ハンモックが気持ちいいからです。できることなら、今後、地べたでは寝たくないんです。

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テント泊であれば、これだけ木の枝が落ちていると寝心地に影響するが、ハンモックならお構いなし。

ハンモックを使う前はずっとツエルト泊でしたが、地べただと2時間に一度くらい目が覚めちゃって。でもハンモックにしてから、5〜6時間ぐっすり眠れるようになったんです。ハンモックだとこんなに眠れるんだ! と驚きました。

あと、タープじゃない理由は、開放感がダメなんです。外から見られてしまうのも怖いし、自分もなにかが見えてしまうかも……という恐怖心があるんです。

以前からテントを設営する時は、なるべくフードをかぶって性別がわからないようにしているくらいで。これまで怖い思いをしたことはないんですけど、やっぱり怖いんです。

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フィナーレは荘厳な那智の滝!

いろいろありましたが、熊野古道はめちゃくちゃ楽しかったです。もともと、TRAILSのNIPPON TRAILの熊野古道の記事を見て行きたいと思ったのですが、ハンモックでも不自由なく楽しめるトレイルで、また行きたいと思えるところでした。

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いやあ、本当に個性的で面白い2人でしたね。ハンモックでスルーハイキングなんて、アメリカのAT(アパラチアン・トレイル)でこそ珍しくはありませんが、日本でトライする人なんてこれまで聞いたことがありませんでした。

今回登場した2人は、別に無理をしているわけでもなく、意地になっているわけでもなく、ただただ純粋にハンモックを楽しんでいる姿が印象的でした。

『ハイキングの宿泊道具としてのハンモック』の有用性をあらためて実感するとともに、その大いなる可能性に期待が持てました。

また来年も『HAMMOCKS for Hiker』でお会いしましょう。

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トレイルズ

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佐井聡(1979生)/和沙(1977生)
学生時代にバックパッカーとして旅をしていた2人が、2008年にウルトラライトハイキングというスタイルに出会い、旅する場所をトレイルに移していく。そして、2010年にアメリカのジョン・ミューア・トレイル、2011年にタスマニア島のオーバーランド・トラックなど、海外トレイルでの旅を通してトレイルにまつわるカルチャーへの関心が高まっていく。2013年、トレイルカルチャーにフォーカスしたメディアがなかったことをきっかけに、世界中のトレイルカルチャーを発信するウェブマガジン「TRAILS」をスタートさせた。

小川竜太(1980生)
国内外のトレイルを夫婦二人で歩き、そのハイキングムービーをTRAIL MOVIE WORKSとして発信。それと同時にTRAILSでもフィルマーとしてMovie制作に携わっていた。2015年末のTRAILS CARAVAN(ニュージーランドのロング・トリップ)から、TRAILSの正式クルーとしてジョイン。これまで旅してきたトレイルは、スイス、ニュージーランド、香港などの海外トレイル。日本でも信越トレイル、北根室ランチウェイ、国東半島峯道ロングトレイルなどのロング・ディスタンス・トレイルを歩いてきた。

[about TRAILS ]
TRAILS は、トレイルで遊ぶことに魅せられた人々の集まりです。トレイルに通い詰めるハイカーやランナーたち、エキサイティングなアウトドアショップやギアメーカーたちなど、最前線でトレイルシーンをひっぱるTRAILSたちが執筆、参画する日本初のトレイルカルチャーウェブマガジンです。有名無名を問わず世界中のTRAILSたちと編集部がコンタクトをとり、旅のモチベーションとなるトリップレポートやヒントとなるギアレビューなど、本当におもしろくて役に立つ情報を独自の切り口で発信していきます!

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