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ハイカーの信越五岳(SFMT)100mile | #03 100マイル33時間のトリップ・プラン

2019.09.13
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文:根津貴央 写真・構成:TRAILS

「ロング・ディスタンス・ハイキングの延長として、100マイルを旅してみたい」。

そんな思いから、TRAILS編集部crew & ハイカーの根津が、SFMT(Shinetsu Five Mountains Trail / 信越五岳トレイルランニングレース)100マイルの走り旅をすることになりました。

本番直前(前日!)ということで、もはや人事を尽くして天命を待つ状態。

前回の記事にもあったように、特にこの1カ月間は「カラダという道具を使いこなす」べく準備してきました。果たして成果はでたのでしょうか。

根津は、制限時間33時間の100マイルをどう楽しむのか? レースプランに必要な「カラダの状況確認(再計測)」「補給計画」「使用ギア」の3本立てでお届けします。


レース直前の自分のスペックを、再計測してみた。


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約2カ月前の数値と比べて、AeT値が18下がり、AT値が16上がった。脂質代謝優位の運動域が3.4倍に広がり、より効率的な走りができるようになった。

約2カ月前の僕のスペックと比較すると、こうなった。

<AeT値(有酸素性作業閾値)>
前回 132 bpm → 今回 114 bpm

<AT値(無酸素性作業閾値)>
前回 146 bpm → 今回 162 bpm

※参考までに、トモさん(井原知一さん)は、AeT値 100 ・ AT値 170とのこと。

前回の記事でも書いたように、AT値とAeT値の間の心拍数で走ることが、もっともエネルギー効率のいい走りであり、ずっと気持ちよく走りつづけられる。

僕は前回の計測後、AeT値を下げて、AT値を上げるべくカラダをつくってきたが、その成果がでたということだ。

改善が見られたので素直にうれしい。本番では、この数値をつねに意識しながら走りたいと思う。


このスペックで100マイルを走れるのか? レースプランは?


100マイルの全行程を、あるいは急登以外をぜんぶ走れるか? と言われたら、それはムリだ。この今の自分のスペックでは、登りを走ったりしたら(緩やかな登りであったとしても)あっという間につぶれてしまうだろう。

そもそも僕は、全行程を走ろうとは思っていない。登りは歩いて、平地と下りは走る。この歩きと走りがミックスされているのが、トレイルランニングの好きなところでもあるし、「ロング・ディスタンス・ハイキングの延長として、100マイルを旅してみたい」と思えた理由のひとつでもある。

たとえばこれがマラソンだとしたら、基本的に走りっぱなしなので、そう捉えることはできなかっただろう。

SFMT03_02
トレイルランニングは登りも走ると思っている人も多いが(たしかにトップ選手はかなりのスピードで登っていくが)、登りは歩くのが基本。2015年のSFMTにて。

そして、このSFMTは数ある国内のトレイルランニングレースの中でも、比較的「走れる(走れるレベルの起伏が多い)」コースとしても有名なのだが、実際に高低差のデータを調べてみたところ(目視による根津調べ)、実は登り区間の合計距離は約77キロ。

つまり、100マイルの半分近くは登りであり、僕でいうと歩く区間なのだ。変にがんばり過ぎず、走るべきところ(平地と下り)を “しっかり” 走り、歩くべきところ(登り)を “しっかり” 歩く。それを徹底することこそが、最善策だろうと。

もちろん、この “しっかり” の基準としては、AeT値とAT値の間の心拍数、つまり114 bpm 〜 162 bpmである。

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9/14の6:30PMにスタート。制限時間は33時間で、9/16の3:30AMまでにゴールしなくてはいけない。僕は31時間を目標タイムにした。途中5つの関門があるため、そこを規定の時刻までに通過することがマスト。


補給計画


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[固形物] Make Your Own Mix(トレイルミックス)、Enemoti(恵根餅)、ライスピュレ、トレイルバター、スポーツようかん
[ジェル] Mag-on(マグオン)、MEDALIST ENERGY GEL(メダリスト・エナジージェル)、SPURT(スパート)
※あくまで補給食の一部。本番ではもっと多くの数量を用意する予定。

ハイカーとして100マイルの旅を “楽しむ” ことを考えると、食料は効率や効果よりもおいしいほうがいい。できる限り自分の好きなものを食べて旅したい。ということで選んだのがこれだ。

天候や体調、気分によって、行動中に何をおいしいと感じるかはわからないもの。そのため同じものを大量に、ではなく、たくさんの種類を少量ずつ携行することにした。

なかでもお気に入りなのが、僕が所属しているTRAILSで扱っているオーガニックのオリジナル・トレイルミックス。これはMake Your Own Mixといって、自分の好きなものを好きなだけ選んでつくるトレイルミックス。

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TRAILSで扱っているMYOM(Make Your Own Mix)。ナッツもドライフルーツもすべてオーガニックで、とにかくおいしい。

僕はゴールデンベリー(インカベリー)とヘーゼルナッツが好きなので、それを多めにセレクト。おいしいだけではなく栄養素も高い。

インカベリーはミネラルが豊富でスーパーフードとしても有名。ヘーゼルナッツは一粒あたりの脂質&カロリーが非常に高い。そのため、ロング・ディスタンス・ハイキングや、今回のような100マイルのレースにも適している。

もちろん、ぜんぶ好きなものにするのであれば固形物しかチョイスしない。でも走るという行為は歩く行為よりもかなり大きな負荷がかかるため、バテないためにも高カロリーで即効性のある(すぐにエネルギーに変わる)エナジージェルも必要。

そこで、1時間に1本摂取することを想定してそろえた。


使用するギア


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[バックパック] HARIYAMA Productions / SFMTオリジナルバージョン(20L), [シューズ] ALTRA / OLYMPUS 3.0, [ソックス] ROTOTO / HIKER TRASH, [レインジャケット] OMM / HALO SMOCK, [レインパンツ] Teton Bros. / Breath Pant, [ベースレイヤー] Teton Bros. / Saratoga Hoody PWG, [ウインドジャケット] Teton Bros. / Wind River Hoody, [ウインドパンツ] patagonia / Houdini Pants, [グローブ] HANDSON GRIP / Hobo, [ネックゲイター] patagonia / Capilene Air Gaiter, [腹巻き] montbell / Thermatec West Warmer, [サングラス] FLOAT / URBAN GALAXY, [ライト] SILVA / TRAIL RUNNER 2, PETZL / ACTIK CORE, GENTOS / 閃 SG-455B [その他] 手ぬぐい、エマージェンシーブランケット、ファーストエイドキット、携帯カップなど

今回は順位やタイムを競うのではなく、100マイルの旅を楽しむことが目的なので、快適性を重視した。個人的なこだわりとしては、バックパックと手ぬぐいの2点。

バックパックは、HARIYAMA Productionsの20リットルのもの。たぶんほとんどのランナーが10リットル未満のザックを使用すると思うので、明らかにオーバースペックではある。

でも、生地にリップストップナイロンを用いたこの超シンプルなデザインのバックパックは、重量はたったの272グラムと、トレランザックと比べても遜色ない。特別にフロント部分とボトム部分をコンプレッションできる仕様にしてもらったので、荷物が少なくても揺れにくくなっている。

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バックパックのフロント部分は、バンジーコードが付いているためコンプレッションできる。

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ボトムにはループが付いているため、荷物が少ない時はカラビナで留めて揺れを防止。

今回の100マイルは、前述のレースプランのように歩く時間もかなり長い。たしかに走りメインであれば、走りながら補給食などの出し入れがしやすいベスト型のトレイルランザックが使いやすいだろう。

でも、今回の僕のスタイルだと、なんだかんだバックパックを下ろす機会も意外とあるんじゃないかと思っているのだ。

運動強度の低い歩行時に寒さを感じて、防寒着を出すことも多いかもしれない。エイドステーションで気に入った食べものがあったら、多めにもらっていくかもしれない。いずれの場合も、大きめのザックのほうが便利なはず。ミニマムでパツパツのザックからモノを出し入れするのは何かと面倒だ。

あとは、トレイルラン用だと走るモードになりすぎてしまうというのもある。

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汗などによる顔まわりの不快感は、手ぬぐいで一掃。

手ぬぐいに関しては、ロング・ディスタンス・ハイキングでいつも携行しているという理由から。長旅において顔まわりの汗を手ぬぐいでぬぐうと、すっきりしてリフレッシュできるもの。

今回30時間以上も行動しつづけることを考えた時に、気持ち的にリフレッシュが必要なタイミングが何回かあるだろうなと。その時に、きっと手ぬぐいが役立つと思ったのだ。

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準備は整った。あとは明日の本番を待つのみ。人生初の100マイルの走り旅だけど、不思議と不安はなく、もう楽しみで仕方がない。

いったいどんな旅になるのか。レース直後の9/18にレポート記事をアップするのでお楽しみに!

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根津 貴央

根津 貴央

1976年、栃木県宇都宮市生まれ。幼少期から宇宙に興味を抱き、大学では物理学を専攻。卒業後、紆余曲折を経て広告業界に入り、12年弱コピーライター職に従事する。2012年に独立し、かねてより憧れていたアメリカのロングトレイル「パシフィック・クレスト・トレイル(PCT/総延長4,265km)」のスルーハイクのために渡米。約5カ月間歩きつづける。2014年には「アパラチアン・トレイル(AT/総延長3,500km)」の有名なイベント「Trail Days」に参加し、約260kmのセクションを歩く。同年より、グレート・ヒマラヤ・トレイル(GHT)を踏査する日本初のプロジェクト『GHT Project(www.facebook.com/ghtproject)』を仲間と共に推進中。2018年、TRAILSに正式加入。2024年よりTRAILSのHIKING FELLOWに就任。著書に『ロングトレイルはじめました。』(誠文堂新光社)、『TRAIL ANGEL』(TRAILS) がある。

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