AMBASSADOR'S

井原知一の100miler DAYS #18 | 家族との生活(Old Dominion100)

2023.08.23
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文・写真:井原知一 構成:TRAILS

What’s 100miler DAYS? | 『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる、日本を代表する100マイラー井原知一。トモさんは100マイルを走ることを純粋に楽しんでいる。そして日々、100マイラーとして生きている。そんなトモさんの「日々の生活(DAYS)」にフォーカスし、100マイラーという生き方に迫る連載レポート。

* * *

トモさんの暮らしを「走る生活」「食べる生活」「家族との生活」という、主に3つの側面から捉えていきながら、100マイラーのDAYSを垣間見ていこうというこの連載。

第18回目のテーマは、「家族との生活」です。

今回は、アメリカ東部バージニア州の歴史ある100mileレース、『Old Dominion 100』(オールド・ドミニオン 100 ※1) を紹介してくれます。

実はトモさん、とある大きな目標 (詳細は後述) のために、今回のレースを皮切りに、アメリカの100mileレースの連戦がスタート。

66本目となる100mileで、どんな走りを見せてくれたのでしょうか。そして連戦第一戦目の大事な100mileの前後で、家族とどんな生活をしていたのでしょうか?

※1 Old Dominion 100:アメリカはバージニア州で、1979年にスタートした歴史ある100mileレース。累積標高は約4,200m。制限時間は28時間だが、バックルは24時間以内で完走しないともらうことはできない。出走者は100名のみ。


『Old Dominion 100』を軽快に走る。

Old Dominion 100:サブ18 (18時間以内) を目指すも、時差ボケもあり苦しい展開に。

念願の (コロナ禍を挟んで10年越し!) のWestern States Endurance Run (WSER ※2) にようやく当選し、今年は『Grand Slam of Ultrarunning』(グラドスラム ※3) にチャレンジします。

グランドスラムについては、折に触れて紹介していきますが、端的に言うとアメリカで最古の100マイルレースと呼ばれる5つのレースのうち4レースを同じ年に完走することです。

※2 Western States Endurance Run:1977年よりアメリカ・カリフォルニア州で開催されている「世界でもっとも古くもっとも権威のある100mileレース」。世界中のトレイルランナーが憧れるレースでもある。人気ゆえエントリー数が多くかつ抽選制なので、出走は狭き門。トモさんも10年越しでようやく出走が叶った。

※3 Grand Slam of Ultrarunning:アメリカの5つのもっとも名誉がありもっとも古い100mileレースのうち4つを、同じ年に完走すること。該当レースは、Old Dominion 100 (バージニア州)、Western States (カリフォルニア州)、Vermont 100 (バーモント州)、Leadville 100 (コロラド州)、Wasatch 100 (ユタ州)。


エイドステーションは、なんと23カ所もある。そのため、かなり軽装で走るランナーもいる。

今回走った『Old Dominion 100』はWSERに次いで2番目に古いと言われている100mileレースで、もちろんグランドスラムの対象レースです。歴史的には2番目の古さですが、実は開催回数は最も多いレース。それは1番古いWSERが山火事などで中止になった年があるからです。

コースはほとんどが林道とロードですが、農家の裏庭や牧場を通り抜けたりして、「アメリカの田舎に来たなぁ」という感じがします。コースの雰囲気もおすすめのポイントです。


気温も高く、苦しいレースとなった。

グランドスラムとしては4レースでサブ80、5レースでサブ100をターゲットにしているので、『Old Dominion 100』はサブ18を目標にスタートしました。ただ、時差ボケからか途中で眠くなって、ペースダウンしてしまい、カフェインピルを飲んでどうにか乗り切る展開。

リザルトは18時間52分で、2位。かなり暑い気候で、固形物をなかなか受け付けない苦しいレースでした。ジェルだけでもギリギリ乗り切れたかなという感じでしたが、途中で歩いたりしながら凌いで、涼しくなってから勝負を仕掛ける辛抱のレース展開になりました。


目標のサブ18は達成できなかったが、2位でフィニッシュ。

【家族との生活 (その1):レース3週間前】家族で、実家の長野に帰省。

普段であればレース直前まで家族の時間をつくっていますが、今回はアメリカに行く2週間前に、自分のクライアントもたくさん参加する「彩の国100mile」(詳しくはコチラ) でコバくん (Answer4の小林大允) のペーサー。さらに1週間前には「T.D.T」(ツール・ド・トモ / 詳しくはコチラ) の運営。

そんな感じで、渡米前は予定が目一杯詰まっていたので、忙しくなる前に家族でひさびさに長野の実家に帰省してきました。


家族みんなで長野のそばを楽しんだ。

長野といえば善光寺。ということで、「うしにひかれて善光寺参り」(思わぬ他人の誘いで、物事が良い方向に向かうこと) にも行って、そばを食べるという王道の観光ルートをたどってきました。

その翌日は、少し足を伸ばして伊那市に。娘のさくらが前から「行ってみたい!」と言っていたクライミングジムに行き、犬も泊まれるホテルに泊まり、いちご狩りを満喫してきました。


いちご狩りを楽しむ娘のさくら。

【家族との生活 (その2):レース直前】普段どおりに、自宅で家族団らん。

レース直前だからといって特別な過ごし方はしないで、普段通りのペースで暮らしました。

ただ、そのなかでも大事にしているルーティンが「夜ごはん」です。朝は仕事や学校でバタバタしてしまい、家族揃って食べるのが難しいときもありますが、夜は家族みんなで食卓を囲みます。わが家は内食派です。


大事にしている「夜ごはん」のルーティン。

自分も、日中はトレーニングやクライアントとの1on1などで忙しくしがちですが、夜は家族のための時間にしているので、ゆっくり話すことができます。


さくらとオレオと一緒に、地元の高尾散策。

【家族との生活 (その3):レース直後】やや攻め気味の伊豆旅行を、大満喫。

いよいよ始まったグランドスラム。約4カ月の間に100mileレースを5本走る (4本完走すれば達成だが、自分は5本全部走ることにした) というタフなチャレンジです。最後のWasatch 100 (ユタ州) がある9月まで、2〜3週間おきにアメリカで10日間程度過ごすというサイクルの生活が続きます。

だからこそ、家族、仕事、ランニングのバランスがとても大事になってきます。Old Dominion 100から帰ってきたら、さっそく家族で伊豆に行ってきました。


井原家行きつけの施設「わんわんパラダイス」にて。

伊豆は、犬と一緒に過ごす施設が充実しています。井原家にとってはお馴染みの「わんわんパラダイス」(通称、わんパラ) もあります。ここは愛犬と一緒に過ごせるリゾート施設です。愛犬のオレオとも気兼ねなく遊べるし、海鮮物もおいしいから、よく家族で訪れるのです。

今回はわんパラ以外にも、ある場所に行ってきました。それは知る人ぞ知る「秘宝館」です。家族で行くにはハードルが高いかな? と思いましたが、意外にも女性陣が大ウケ。さくらも、セーラー服を着たオーナーを見て、喜んでいました。


「秘宝館」には、家族も大喜び。

【家族との生活 (その4):レース2週間後】愛娘のクライミング観戦で、良い刺激をもらう。

今年はグランドスラムにチャレンジしていて、日本にいる時間が限られているので、クライアントとの1on1や、ミーティング、出張などを詰め込む感じなってしまっています。それでも、家族との「夜ごはん」のルーティンだけは守っています。


7日1日の自分の誕生日は、ケーキでお祝いしてもらった。

週末は、時間を見つけて、さくらのクライミングのトレーニングや試合の観戦に行きます。

さくらの頑張る姿を見ると、自分もアメリカで頑張らないと、といい刺激をもらっています。自分も、さくらのいい刺激になるようにしっかりと目標を達成しなければという気持ちになります。


さくらのクライミングには、いつも刺激をもらっている。

トモさん66本目の100mileとなった『Old Dominion 100』。胃腸トラブルもありながらも2位という結果を出したトモさんは、さすがである。

しかも、本人曰く「今回は抑えたぶん、レース後4日目からリカバリーランを再開し、すぐさまランニングチームの坂練にも参加できたので、Western States Endurance Runに向けてはよかったのかもしれません」とのこと。

10年越しのWSERでのトモさんの走りが、楽しみで仕方がない。次回の記事でさっそくレポートしてもらう予定だ。

TRAILS AMBASSADOR / 井原知一
現在の日本における100マイル・シーンにおいてもっともエッジのた立った人物。人生初のレースで1位を目指し、その翌年に全10回のシリーズ戦に挑み、さらには『生涯で100マイルを、100本完走』を目指す。馬鹿正直でまっすぐにコミットするがゆえの「過剰さ(クレイジーさ)」が、TRAILSのステートメントに明記している「過剰さ」と強烈にシンクロした稀有な100マイラーだ。100マイルレーサーではなく100マイラーという人種と呼ぶのが相応しい彼から、100マイルの真髄とカルチャーを学ぶことができるだろう。

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井原知一

井原知一

1977年、長野県生まれ。アメリカの大学を卒業後、仕事を転々とした末、2007年にスポーツ商社に転職。同企業のダイエット企画がきっかけでトレイルランニングに出会う。当時31歳。すぐさま夢中になり、トレイルラン2年目でOSJ (アウトドア・スポーツ・ジャパン) のシリーズ戦全戦を完走。3年目にはSFMT (信越五岳トレイルランニングレース) で8位。初めての100マイルは、2010年に自ら企画した草レースTDT(ツール・ド・トモ)。以降100マイルの魅力にとりつかれ、『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げて走るようになる。つねにチャレンジしつづけることをモットーとし、90歳での100マイル完走も目標のひとつ。走ることの素晴らしさを広め、人生を変えるきっかけづくりのために、ポッドキャスト『100miles, 100times.』や、自ら立ち上げた『Tomo's Pit』を通じてコーチングも手がけている。

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