AMBASSADOR'S

井原知一の100miler DAYS #17 | 食べる生活(HK4TUC)

2023.04.26
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文・写真:井原知一 構成:TRAILS

What’s 100miler DAYS? | 『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる、日本を代表する100マイラー井原知一。トモさんは100マイルを走ることを純粋に楽しんでいる。そして日々、100マイラーとして生きている。そんなトモさんの「日々の生活(DAYS)」にフォーカスし、100マイラーという生き方に迫る連載レポート。

* * *

トモさんの暮らしを「走る生活」「食べる生活」「家族との生活」という、主に3つの側面から捉えていきながら、100マイラーのDAYSを垣間見ていこうというこの連載。

第17回目のテーマは、「食べる生活」です。

今回は、トモさんにとって65本目の100mile完走となった、2023年1月に香港で開催された『HK4TUC』(※1) を紹介してくれます。

HK4TUCは、トモさんにとって2回目の出場。前回走った2019年の時は、298kmを57時間台で完走しました。完走するだけでも驚異的なのに、2022年の好調ぶりを継続していたトモさんは、今回なんとSUB50 (50時間以内) での完走を目標に掲げていました。

そんな壮大な目標に向けて、トモさんは日々どんな食生活を送っていたのでしょうか。

※1 HK4TUC:Hong Kong Four Trail Ultra Challengeの略称。2012年に、香港在住のウルトラランナーであるアンドレ・ブルームバーグによって創設された。香港にある4つのロングトレイル (マクリホース・トレイル、ウィルソン・トレイル、ホンコン・トレイル、ランタウ・トレイル) をつなげた、全長298km、累積標高16,500mのレース。4日間かけて走るステージレースとして始まったが、翌年に3日間に短縮、2014年からは制限時間60時間となった。ただし、75時間以内にゴールすればサバイバーとして認定される。


HK4TUCは、レース中のお店等での飲食も許可されている。

HK4TUC (Hong Kong Four Trail Ultra Challenge):暑さのためペースダウンして、タイムを追うことをやめた

HK4TUCは、今回で2回目の出走です。前回の2019年の時は、バークレー (※2) の練習という位置付けで、ハワイの100mileレースであるHURT100 (詳しくはコチラ) の3週間後に走りました。

そのため、充分なピーキング (レースに向けて最高のパフォーマンスを発揮するための調整) とテーパリング (トレーニング強度を減らし本番にピークに持っていくための調整) をしていない状態で挑みました。

しかし、2023年はしっかりとテーパリングもできたし、2022年の調子の良さも引き続き継続できていて、心身ともに良い状態でスタートラインに立てたと思います。

※2 バークレーマラソンズ (Barkley Marathons):アメリカ・テネシー州のフローズンヘッド州立公園で毎年3月に開催されている耐久レース。「世界一過酷なレース」とも呼ばれている。1986年に第1回目が開催。以来、36年間で完走したのはたった15人。エントリー方法も公開されておらず、謎の多いレースでもある。トモさんは、2017年、2018年、2022年に出場してDNF (Do Not Finish)。


スケジュール上、2晩を越さないといけない。

目標としていたタイムは、SUB50 (50時間以内) でした。でも、2つ目のウィルソン・トレイルで暑さのためペースダウンしてからはAプランではなく、Bプランに変更してタイムを追うことをやめ、自分の身体との対話を重要視して進みました。

1日目の夜は眠くなかったものの、2日目の夜に突入すると眠さも出てきました。3つ目のホンコン・トレイルではコース上で何度か短時間睡眠 (数分) を入れながら、朝まで凌ぎました。


ゴール地点にあるグリーンポスト。ここにキスをするのがお決まりの儀式。

4つ目のランタウ・トレイルを開始する前にBASECAMPというトレイルショップのソファーをお借りして30分間ほど寝させてもらってからスタート。

HK4TUCはレースではなくチャレンジなので、順位などの記録はないのですが、この時点ではランタウ・トレイルを2番目にスタート。70km中30kmのフラットなセクションを走り終えて、ラスト40kmで3,500mアップする山岳セクションで先頭を走っていたNUGO (ヌーゴ) 選手に追いつきました。

最後は54時間3分で1番目にグリーンポストにたどり着き、298kmの長い旅を終えることができました。

【食べる生活 (その1):レース2週間前】 お正月ならではの料理を楽しんだ

HK4TUCは毎年旧正月に開催され、2023年度は1月21日に開催されました。

レースの2週間前と言えば、ちょうど日本ではお正月です。


お正月の盛大なパーティー!

井原家での毎年恒例行事となっている、妻の妹家族を高尾の家に呼んでの正月パーティーを開きました。

お節、すき焼き、お寿司、タラバガニ、お雑煮など、大好きなものをとことん食べて、2023年の新たな年を祝いました。

【食べる生活 (その2):レース直前】 長距離の練習をした後に、炭水化物やタンパク質をしっかり摂取

2022年の後半はレース続きでした。9月の信越五岳トレイルランニングレース (100mile) から11月のバックヤードウルトラ東京大会 (約300km)、12月のドイ・インタノン (100mile) と、リカバリーもしっかりとできずに走っていました。


練習で筋破壊したら、炭水化物やタンパク質で回復。

そのため、ドイ・インタノンを終えて、まずは心身ともにしっかりと休むことにしました。HK4TUCに向けての調整は、正月を終えてからスタート。

長距離のトレイルを何度か走って足の感覚を確認しました。長距離のトレイルではラン仲間と一緒に走ることも多く、走った後は炭水化物やタンパク質をたっぷりとり、筋破壊された身体を食べることで労ってあげていました。

【食べる生活 (その3):レース直後】 プロのシェフによるインドネシア料理を堪能

レース直後は、ランタウ島で72時間以内に完走してくる選手を全員見届けました。みんなのゴールを見るのは、自分のこと以上に嬉しかったですね。

食事は、トレイルショップBASECAMPで、JO (ジョー) の奥様 (インドネシア人) のNOVY (ノーヴィ) に、手作りインドネシア料理をご馳走になりました。


豪勢なインドネシア料理。

メニューは、日本でいうおじやと、ニラ煎餅、マンゴプリンのデザートでした。NOVYは普段から会社や個人宅向けにケータリングをしているプロのシェフ。

そんな彼女の料理は、すべて脳天直撃な美味しさで、約54時間しっかりとした食事をしていなかった身体にはものすごく沁みました。

そのほかでは、香港にいるクライアント (実際に会ったのは初めて!) と一緒にレストランでご飯を食べたりして過ごしていました。


インドネシア人のNOVY (ノーヴィ) の手料理は、すべて絶品。

【食べる生活 (その4):レース1週間後】 栄養バランスのとれた妻の手料理

HK4TUCの次のレースは、3月のバークレーでした。まずは1週間半ほどしっかりと休んで、そこから低強度の練習を徐々に開始していきました。


妻の手料理。100マイラーの食生活は偏ってはいけない。栄養バランスが大事。

食事は毎日妻に栄養バランスの取れた食事を作ってもらい、練習量が多い時には炭水化物とタンパク質を多めに入れてもらっていました。

トレーニングだけではなく、こういった妻の手料理をしっかりとることで、バークレーに向けた体づくりを進めていきました。


レース前のカーボローディングでは、大好物のラーメン&ライス。

298kmを約54時間で走り切ったトモさんは、レース中なんのトラブルもなく、無傷でのゴールだったとのこと。

ゴール後もかなり元気だったようで、翌日からは香港の仲間たちと食事やお酒を楽しんだそうだ。

ますますクレイジー度が増している感じがするトモさん。2023年の活躍が楽しみだ。

TRAILS AMBASSADOR / 井原知一
現在の日本における100マイル・シーンにおいてもっともエッジのた立った人物。人生初のレースで1位を目指し、その翌年に全10回のシリーズ戦に挑み、さらには『生涯で100マイルを、100本完走』を目指す。馬鹿正直でまっすぐにコミットするがゆえの「過剰さ(クレイジーさ)」が、TRAILSのステートメントに明記している「過剰さ」と強烈にシンクロした稀有な100マイラーだ。100マイルレーサーではなく100マイラーという人種と呼ぶのが相応しい彼から、100マイルの真髄とカルチャーを学ぶことができるだろう。

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井原知一

井原知一

1977年、長野県生まれ。アメリカの大学を卒業後、仕事を転々とした末、2007年にスポーツ商社に転職。同企業のダイエット企画がきっかけでトレイルランニングに出会う。当時31歳。すぐさま夢中になり、トレイルラン2年目でOSJ (アウトドア・スポーツ・ジャパン) のシリーズ戦全戦を完走。3年目にはSFMT (信越五岳トレイルランニングレース) で8位。初めての100マイルは、2010年に自ら企画した草レースTDT(ツール・ド・トモ)。以降100マイルの魅力にとりつかれ、『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げて走るようになる。つねにチャレンジしつづけることをモットーとし、90歳での100マイル完走も目標のひとつ。走ることの素晴らしさを広め、人生を変えるきっかけづくりのために、ポッドキャスト『100miles, 100times.』や、自ら立ち上げた『Tomo's Pit』を通じてコーチングも手がけている。

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