STORY

井原知一の100miler DAYS #01 | 走る生活(HURT100)

2020.04.08
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文:井原知一 写真:井原知一、TRAILS 構成:TRAILS

What’s 100miler DAYS? | 『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる、日本を代表する100マイラー井原知一。トモさんは100マイルを走ることを純粋に楽しんでいる。そして日々、100マイラーとして生きている。そんなトモさんの「日々の生活(DAYS)」にフォーカスし、100マイラーという生き方に迫る連載レポート。

* * *

TRAIL TALKに登場してくれたトモさん (井原知一) が、TRAILSのあらたなアンバサダーとして、連載をスタート(彼にオファーした理由については記事末を参照ください)。

『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げる100マイラーのトモさんは、現時点 (4月8日)で、55本の100マイルを完走している。

その実績もクレイジーだが、TRAILSが興味を持ったのはそれ以上に、100マイラーという人生を選んだ、トモさんの普段の生活だった。レース以外の日常にこそ、100マイラーらしさ、トモさんらしさがあるのではないかと直感的に感じたのだ。

この連載では、トモさんの暮らしを「走る生活」「食生活」「家族との生活」という、主に3つの側面から捉えていきながら、100マイラーのDAYSを垣間見ていこうと思う。

今回は、55本目の完走となった『HURT100』 (※1) について、そのレース前後の「走る生活」を紹介してくれます。

※1 HURT100:The Hawaiian Ultra Running Team’s Trail 100-Mile Endurance Runが正式名称。ハワイ (オアフ島) の100マイルレースで、20マイルのループコースを5周する。制限時間36時間、累積標高7,500m。

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大好きなHURT100を走りながら、アドレナリンがあふれ出るトモさん。


HURT100 (ハワイ・オアフ島) :7回も走っているレースは、このHURT100だけ


HURTへの参加は、今回で7回目です。コースの99%がトレイルで、1%がアスファルトと、トレイル率がすごく高い。

木の根っこ、ガレ場、渡渉などが多く、しかもほぼフラットな場所がないので、タフでテクニカルなレースですね。
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エイドステーションでは、応援してくれる仲間たちと会える。手前にいるのは娘のさくら。HURTは毎年家族も連れてきています。

7回も走っているレースは、このHURT100だけ。2013年に初めて参加したんですけど、もう人生が変わるくらインパクトのあったレースで。

特にRD (レースディレクター) のジョンと彼の奥さんのピージェイをはじめとしたHURTのコミュニティがすばらしいんです。だから、レースに出場しなくても「毎年あの場に行きたい!」っていうランナーもいるくらいです。

ぼくが毎年参加してるのも、まるで同窓会のごとくその仲間たちに会えるからでもあるんですよね。

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レースディレクターのジョンと彼の奥さんのピージェイ。毎年、二人と会えるのを楽しみにしています。

ちなみに今回の結果は、順位は総合4位、タイムは23時間57分 (過去2番目に良い)。24時間切りが目標だったので、それは達成できた感じです。


【走る生活 (その1):レース1〜2カ月前】累積標高を意識して、近所の高尾を走る


朝5時〜12時までの7時間は仕事タイムなので、それを終えてから午後に高尾の山を走りに行くのが僕のルーティンです。

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走るのはもっぱらホームマウンテンの高尾。中でもこの南高尾エリアは、ぼくの大好きなエリアです。

普段走る内容は、次の100マイルや、直近で目標にしている100マイルに合わせて少しずつ変えています。

2019年度は、もともとこの3月に出場するバークレー (※2) が本命レースとしていたので、HURT前も基本的にはバークレーに向けた練習をしていたんです。だからHURTは、自分のパフォーマンスがどのくらい上がっているかを確認するためのもの、という感じでした。

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高尾はバリエーションに富んでいるので、あらゆる練習がここでできます。

11月は、月間走行距離が548kmで、累積標高が約2万5,000m。12月は、月間走行距離が508kmで、累積標高が約2万5,000m。かなり累積標高を意識して練習していました。

※2 バークレー・マラソンズ:アメリカ・テネシー州のフローズンヘッド州立公園で毎年3月に開催されている耐久レース。「世界一過酷なレース」とも呼ばれている。1986年に第1回目が開催。以来、34年間で完走したのはたった15人。発案者は、ラズ(ゲイリー・カントレル)。総距離は100マイル以上、累積標高は2万メートル以上、制限時間60時間。エントリー方法も公開されておらず、謎の多いレースでもある。トモさんは、2017年、2018年に出場してDNF(Do Not Finish)。2020年も出場予定だったが、COVID-19のため中止になった。


【走る生活 (その2):レース直前】暑さ対策のため、毎日サウナ通い


この時期は、特にHURTに向けてサウナ練をやっていました。これ、練習とはいえまったく走らないんですけど、めちゃくちゃ大事で。普段も週1回は行ってますが、HURT直前の2週間は毎日行ってました。

サウナ練っていうのは何かというと、「サウナ10分 – 水風呂2分」を5セット繰り返すだけです。慣れてきたら「サウナ12分 – 水風呂3分」にします。

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サウナ練といえばここ、「竜泉寺の湯 八王子みなみ野店」。

疲労を取ったり、血流を良くしたり、老廃物を出したりっていう効果もあるんですが、一番の目的は暑さ対策。HURTは常夏だから冬も暑くて、気温でいうと20〜26℃くらい。この暑さに対応できないとHURTはダメなんです。

サウナ練をすることで、汗を出しやすく、かつナトリウムが出にくくなるカラダになる。つまり暑い中でもずっといいパフォーマンスで走りつづけることができるようになるというわけ。

もうサウナの暑さに慣れすぎちゃったから、ハワイに着いた時には、ハワイ来たなーって感じしなかったですよね (笑)。


【走る生活 (その3):レース直後 】最低1週間はレストウィーク


レース直後は、どの100マイルを走った後も同じなんですけど、最低1週間はレストウィークです。

だから今回もほとんど走らなかったけど、何もしないのも良くないので1日30分程度のウォーキングをしました。4日後くらいからは軽いジョギングもしたりして。

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レース直後は、家の近所を歩いたり、軽くジョグしたり。

前にも書いたように、HURTはあくまでバークレーに向けての確認作業でしかないので、レース中も無理をしませんでした。おかげでダメージも少なくて、1週間後にはスムーズに練習を再開できました。


【走る生活 (その4):1週間後】バークレーに向けて、ナビゲーションスキルを高める


ここからまたバークレーに向けた練習を本格化しました。とにかく高尾のキツイ斜面を登りまくりましたね。どのくらいキツイ登りかっていうと、斜面にキスできるくらい!

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アドベンチャーレーサーの武井正幸さんと一緒に夜中の高尾へ。

さらに、ナビゲーションスキルを磨くために、アドベンチャーレーサーの武井正幸さんにコーチングをお願いして、高尾を夜の11時から朝の6時まで走りまくるっていうのを6回くらいやって。

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武井さんが作ってくれたマップ。ここに記されたポイントをたどっていく練習を繰り返しました。

武井さんが設定してくれたポイントを、地図を読みながら追っていくんですけど、ポイントごとに武井さんがアドバイスをくれて、すごく勉強になった。まあ、バークレーでしか活かすタイミングはないんですけどね (苦笑)。

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高尾を走っていると、地元の仲間に会うことも。こうやっておしゃべりするのも楽しいんです。

トモさんの100マイラーとしての「日々の生活(DAYS)」。今回は「走る生活」ということで、当然ながらHURT100に向けてかなり走りこんでいたわけですが、なんだかとても楽しそうなのが印象的でした。

練習が好き、走るのが好き、高尾が好き。そんなトモさんを垣間見れた気がします。

次回は100マイラーの「食生活」を紹介します。

TRAILS AMBASSADOR / 井原知一
現在の日本における100マイル・シーンにおいてもっともエッジのた立った人物。人生初のレースで1位を目指し、その翌年に全10回のシリーズ戦に挑み、さらには『生涯で100マイルを、100本完走』を目指す。馬鹿正直でまっすぐにコミットするがゆえの「過剰さ(クレイジーさ)」が、TRAILSのステートメントに明記している「過剰さ」と強烈にシンクロした稀有な100マイラーだ。100マイルレーサーではなく100マイラーという人種と呼ぶのが相応しい彼から、100マイルの真髄とカルチャーを学ぶことができるだろう。

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井原知一

井原知一

1977年、長野県生まれ。アメリカの大学を卒業後、仕事を転々とした末、2007年にスポーツ商社に転職。同企業のダイエット企画がきっかけでトレイルランニングに出会う。当時31歳。すぐさま夢中になり、トレイルラン2年目でOSJ (アウトドア・スポーツ・ジャパン) のシリーズ戦全戦を完走。3年目にはSFMT (信越五岳トレイルランニングレース) で8位。初めての100マイルは、2010年に自ら企画した草レースTDT(ツール・ド・トモ)。以降100マイルの魅力にとりつかれ、『生涯で100マイルを、100本完走』を掲げて走るようになる。つねにチャレンジしつづけることをモットーとし、90歳での100マイル完走も目標のひとつ。走ることの素晴らしさを広め、人生を変えるきっかけづくりのために、ポッドキャスト『100miles, 100times.』や、自ら立ち上げた『Tomo's Pit』を通じてコーチングも手がけている。

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