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リズ・トーマスのハイキング・アズ・ア・ウーマン#22 / ULブランド創業者3人のミニマリズムの思想(前編) Gossamer Gear

2019.10.23
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(English follows after this page.)

文・写真:リズ・トーマス 訳:平井聖也 構成:TRAILS

アメリカには、ULガレージブランドが集うMinimalist Party(ミニマリスト・パーティー)(※1)というイベントがある。そこに参加している、ULコミュニティを代表する3つブランドの創業者に、リズがインタビューをしてきてくれました。

アメリカのガレージブランドが、どのようにULやミニマリズムについて考えているかを知ることができる、貴重なエピソードがたくさんでてきます。この内容を3回連続でお届けします。

第1回目の今回は、Gossamer Gear(ゴッサマーギア)のGlen Van Peski(グレン・ヴァン ・ペスキ)さんです。

※1:Minimalist Party / 2010年のORからスタートしたEvernew主催のイベントで、ウルトラライトギアのブランドやガレージブランドなどを中心とした、ミニマリストたちのパーティー。第1回目は、Gossamer Gear創業者のGlen Van Peski(グレン・ヴァン・ぺスキ)による、ウルトラライト・バックパッキングのプレゼンテーションも行なわれた。

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TRAILSも参加した2013年のミニマリスト・パーティーでのプレゼン風景。

リズも取材レポートを届けてくれた『Outdoor Retailer Show(アウトドア・リテイラー・ショー)』(※2)(詳しくは前回の記事)は、主に大手アウトドアブランドの展示・宣伝の場です。一方、ミニマリスト・パーティーはウルトラライト・コミュニティの成果を祝う場であり、かつガレージブランド(コテージ・マニュファクチュアラー)が抱えているさまざまな課題を共有、議論できる場でもあります。

以前はEvernew(エバニュー)が主催していて、2013年のパーティーには、日本からはULギアショップとしてはHiker’s Depot、メディアとしてはTRAILSが唯一参加していました。

そんなミニマリスト・パーティのコミュニティに参加するULブランド創業者のインタビューをもとに、リズがレポートをまとめてくれました。

※2:Outdoor Retailer Show / 世界最大級のアウトドアギア見本市。アメリカにて年3回開催。会場は、以前はユタ州・ソルトレイクシティだったが、2018年からコロラド州・デンバーに。ORあるいはOR showと呼ばれることが多い。

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創業者のグレン・ヴァン・ペスキ(中央)、社長のグラント・シブル(左)、TRAILS編集部crewのカズ。TRAILSも参加した2013年のミニマリスト・パーティーにて。


イントロダクション:ガレージブランドは、本当に欲しいギアを作ることから始まった。


ウルトラライトのコミュニティが成長してきた理由は、フレキシビリティと機動力の高さ、そして他の業界で珍しいメーカー同士の友好的な関係にあります。

彼らは、アウトドアメーカーの仕組みを教えあったり、ミニマリストのハイカーやランナーをORの会場に呼んだりしてきました。ガレージブランドの人たちは、「less is more」の精神を重視する人たちは、お互いつながりあえることをわかっているのです。

ガレージブランドの人たちにとっては、バックパックにどのロゴが付いているかはたいした問題ではない。どのブランドを持っているかよりも、フィロソフィーや価値観のほうが大事なのです。

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ミニマリスト・パーティーで、食事をしながら語らう参加者たち(写真はTRAILSも参加した2013年)。

アウトドア業界が従来のやり方を続けていたときに、ガレージブランドは、より軽く、よりミニマルなギアを作ってきました。

私がインタビューした3人の創設者は、自分自身や友人のためにギアを作ることから始めていたので、実際にビジネスになるとは考えてもいませんでした。

単に彼らは、大手アウトドアブランドが自分たちにとって本当に欲しいギアを販売していなかったから、自分の手で作ることを選んだだけなのです。でもその結果、創設者たちは、彼らの夢とビジョンが想像以上に多くの人々に響いていることを知ることになりました。


グレン・ヴァン・ペスキ(Gossamer Gear創業者)のULとの出会い。


1976年、グレン・ヴァン・ペスキは高校を卒業後、自転車でアメリカ横断4,200マイル(約6,800キロ)の旅をしました。

荷物をできるだけ軽くするために、歯ブラシに穴を開けて肉抜きをし、寝具はハンモックとタープを選び、食事にはいつも竹の箸を使っていました。

当時彼はライトウェイト・パニアのデザイン・スケッチを描いていました。まだ当時は若かったですが、「お店で売っているものよりも、もっとよいものを自分で作ることができる」と思っていました。

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グレン・ヴァン・ペスキと息子のブライアン。これはグレンがウルトラライトに傾倒する以前のもので、当時31キロもの荷物を背負っていた。photo:Glen Van Peski

彼はその後、大学に行き、仕事を得て、結婚して子どもも生まれました。そしてまたウルトラライト・ギアが彼の人生に戻ってきた。というのも、息子さんがボーイスカウトに参加した時のスカウト・マスターのリード・ミラーが、レイ・ジャーディンの本を読んだことがある人だったのです。

シエラのボーイスカウトの旅では、ヴァン・ペスキの荷物の重量は31キロ(バックパック自体は3キロ)もありました。この旅でリード・ミラーさんに教えてもらったレイ・ジャーディンの言葉がかならず役立つはずだと、ヴァン・ペスキは自分の心にとめておきました。

「私は縫い方については、すでに知っていたのです。なぜなら母は私が小さい頃に、料理のやり方からパンの焼き方、そして裁縫ができるように育ててくれたからです。」


初めてバックパックを縫い、そのパターンをインターネットに掲載。


ヴァン・ペスキが最初に縫ったバックパックはG1でした。 彼はバックパックを改善し続けましたが、彼がG4に到達するまで、他の人が自分で同じバッグパックを縫えるよう、パターンをインターネットに載せました。

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型紙をHPで公開しMYOGカルチャーを推進するなど、G4はGossamer Gear創業当時から存在するUL界におけるエポックメイキングなモデル。創業当時は、ファウンダーであるGlen Van Peski(グレン・ヴァン・ペスキ)の名をとってGVP Gearというブランド名で展開していた。写真はその頃のモデル。

当時、彼はフロリダにあるQuest Outfitters(クエスト・アウトフィッターズ)で生地を手に入れていました。そしてそのお店のウェブサイトで彼の作成したパターンを売ることができるよう、その型を送っていました。実際、彼の作成したものが当時クエスト・アウトフィッターズで最も注文されていたパターンだったそうです。

しかし、ヴァン・ペスキにはエンジニアとしての仕事がありました。それもあって彼は、バックパックを25個も作れば、欲しい人全員に行き渡るだろうと思っていました。


仕事の合間に作っていたバックパックが、瞬く間に有名になる。


でも、実際にはかなりの需要があることがわかり、クエスト・アウトフィッターズはシアトルで縫製店を営む男をヴァン・ペスキに教えました。

ショップの最小ロットは50パックだったので、ヴァン・ペスキは86個のバックパックを納品することに。「彼は私のガレージに泊り込むのかと思った」と店主は笑って言ったそうです。

そしてワンサイズ4色のバックパックを70ドルで販売。「25個ぐらいバックパックを販売して終わりになると思っていた」とヴァン・ペスキは語りました。

もちろん、そのような結果にはなりませんでした。そしてゴッサマーギアは現在4人の従業員がいて、ウルトラライト・ギアのイベントやロングトレイルでよく目にする、メジャーブランドになりました。

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旧ロゴが配されたTwinn Tarp(ツイン・タープ)。生地は、当時ガレージブランドで採用されていたULの代名詞的なマテリアルのひとつ、スピンネイカー(ヨットのセールに使用される生地)。


ヴァン・ペスキが考えるガレージブランドの価値。


主要なアウトドアブランドとガレージブランドの関係について尋ねると、ヴァン・ペスキは次のように語りました。「初期のガレージブランドはしばらく無視されていましたが、今や脚光を浴びるようになりました。彼らは研究のためのリソースをたくさん持っています」。

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以前はカーボンは軽量だが壊れやすく、チャレンジングなガレージブランドでさえ実用性の不安から消極的だった。このLT4は、当時から軽さと丈夫さを両立させ、カーボン製トレッキングポールの汎用化を推し進める一翼を担ったプロダクト。

現在、ウルトラライトや軽量ギアを作っているブランドはたくさんあります。しかし、ユーザーは、今もなおデザイナーによるオーダーメイドを望んでいます。

大手のブランドは商売としてギアを販売しているかもしれませんが、ヴァン・ペスキはそうではありませんでした。彼はこう話していました。「ユーザーが心からやりたいと思うことを実践しているのを見て、私たちは製品の価値を見出しているのです」。

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TRAILS AMBASSADOR / リズ・トーマス
リズ・トーマスは、ロング・ディスタンス・ハイキングにおいて世界トップクラスの経験を持ち、さまざまなメディアを通じてトレイルカルチャーを発信しているハイカー。2011年には、当時のアパラチアン・トレイルにおける女性のセルフサポーティッド(サポートスタッフなし)による最速踏破記録(FKT)を更新。トリプルクラウナー(アメリカ3大トレイルAT, PCT, CDTを踏破)でもあり、これまで1万5,000マイル以上の距離をハイキングしている。ハイカーとしての実績もさることながら、ハイキングの魅力やカルチャーの普及に尽力しているのも彼女ならでは。2017年に出版した『LONG TRAILS』は、ナショナル・アウトドア・ブック・アワード(NOBA)において最優秀入門書を受賞。さらにメディアへの寄稿や、オンラインコーチングなども行なっている。豊富な経験と実績に裏打ちされたノウハウは、日本のハイキングやトレイルカルチャーの醸成にもかならず役立つはずだ。

(English follows after this page)
(英語の原文は次ページに掲載しています)

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Liz Thomas

Liz Thomas

2011年にアパラチアン・トレイルを女性の最速タイムで踏破した記録(当時)を持っていることで知られている。彼女はトリプルクラウンを達成しただけでなく、米国に15以上あるトレイルでのスルーハイクを経験し、今まで15,000マイル以上ものトレイルを歩いてきた。また、彼女はその経験をロング・ディスタンス・ハイキングのコミュ二ティに還元することにも熱心で、American Long Distance Hiking Assosication-West(ALDHA-West)のバイスプレジデンドも務めている。彼女がハイキングを本格的に始める前は、イエ-ル大学の森林環境学部で環境科学の修士課程を修了し、彼女が手がけた、ロング・ディスタンス・ハイキング・トレイルとその保護およびコミュニティに関するリサーチは、名誉あるDoris Duke Conservation Fellowshipの賞を受けた。スポンサーはAltra, Gossamer Gear, Probar, Vermont Darn Tough socks, Mountain Laurel Designs, Sawyer filters, Montbellで、アンバサダーとして活躍している。
http://www.eathomas.com/

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